弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 検察官片岡力夫の控訴の理由は記録編綴の控訴趣意書に記載してあるとおりであ
るから、これをここに引用する。
 論旨第一点 原判決には法令の適用を誤つた違法があるとの主張について
 本件売いん等取締条例の目的とするところは、同条例第一条に売いんに関する諸
行為を取締ることにより善良の風俗を維持し、社会の健全なる発達を図ることを目
的とす、と規定しているので、例えば昭和二十四年東京都条例第五十八号第四号の
ように、売いんのあつ旋の目的を以つてする一切り勧誘行為又は客引行為を禁止
し、これを取締るのでなければ、完全にはその目的を達し得ないといわねばならな
い。然しながら売いんは公には禁止されているとはいうものの、広島県に於ては現
実には一定の条件の下に、殆ど公認された形に於て許されているので、勧誘乃至あ
つ旋の行為を全く禁止し得ない実状にあるものとして、前記広島県条例第三条、第
四条に於て通行人その他の者の進路に立ちふさがり、又はその身辺に追従したりな
どして勧誘又は客引をすることを禁止する規定そ設けざるを得なかつたものと認め
られる。
 <要旨>従つて同条例第四条第一号に通行人その他の者の進路に立ちふさがり、又
はその身辺に追従したりということは、所論のようにその例示にすぎないと
ころではあるが、勧誘又は客引する一切の行為を禁止したものと解すべきではなく
して、通行人その他の者の進路に立ちふさがつたり、又はその身辺につきまとふた
りなどして、通行人その他の者の交通の妨げとなつたり、又はこれらの者に迷惑を
感ぜしめ、或は又困惑せしめるような仕方、その他善良な風俗を害するような振舞
によつて勧誘し又は客引することを禁止するにあるものというべきである。
 ひるがえつて、訴訟記録を検討するに、被告人が売いんの勧誘又は客引をするに
当つて、右に説明したような振舞に及んだと認むべき点は見当らない。
 論旨は結局右条例第四条第一号の解釈を誤解したものであるから採用し難い。
 論旨第二点 原判決には事実を誤認した違法があるとの主張について訴訟記録を
精査し、所論を検討するに、たとえ所論のような事実があつたとしても、被告人に
於て前段で説明したようにAに対し交通の妨害となり、又は迷惑を感ぜしめるよう
な勧誘乃至客引の手段にいでたと認めるに足る証拠は存在しないから、原判決に事
実の誤認はない。
 論旨は結局右条例の趣旨の誤解から出発したものであつて理由がない。
 その他記録を精査しても、原判決には事実の誤認その他の違法はない。
 論旨はいづれも理由がない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に則つて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 伏見正保 判事 宮本誉志男 判事 小竹正)

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