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平成22年2月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(行ケ)第10335号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年2月17日
判決
原告株式会社フィルモア
同訴訟代理人弁理士牛木理一
被告Y
同訴訟代理人弁理士山口朔生
真島竜一郎
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が取消2009−300221号事件について平成21年9月15日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1の被告の本件商標に係る商標登録について,不使用を理
由とする当該登録の取消しを求める原告の下記2の本件審判請求が成り立たないと
した特許庁の別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)
には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案であ
る。
1本件商標
本件商標(登録第2015101号商標)は「SEMIEMOSELEY」,
の欧文字を書してなり,昭和60年10月28日に登録出願され,第24類「ギタ
ー,その他の楽器,その他本類に属する商品」を指定商品として,昭和63年1月
,,,26日に設定登録されその後2度にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ
また,平成20年9月3日に被告を登録名義人とする一般承継による本権の移転登
録がされ,さらに,同年12月10日に第15類「ギター,楽器,演奏補助品,音
さ」を指定商品とする書換登録がされたものである(甲1,2。)
2特許庁における手続の経緯
原告は,平成21年2月16日,本件商標がその指定商品のすべてについて,継
続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいず
れもが使用した事実がないことをもって,不使用による取消審判を請求し,当該請
求は同年3月3日に登録された。
特許庁は,これを取消2009−300221号事件として審理し,平成21年
9月15日「本件審判の請求は,成り立たない」との本件審決をし,同月29,。
日にその謄本が原告に送達された。
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,要するに,商標権者及び通常使用権者が,本件審判の請求の
登録前3年以内に日本国内において,指定商品に含まれる「ギター」について,本
件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をした,というものである。
4取消事由
商標権者及び通常使用権者が「ギター」に本件商標の使用をしていたとの認定判
断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
商標権者及び通常使用権者は,以下の(1)及び(2)のとおり,本件審判の請求の登
録時である平成21年3月3日から前3年以内に本件商標を使用していない。
(1)被告開設のウェブページにおける画像について
本件審決は,被告開設のウェブページに記載された商品の仕様には「ヘッドロゴ
/SEMIEMOSELEYサイン入り(/」は2段となっていることを」「
示す。以下同じ)との記載があり,また,同ウェブページに掲載された写真のギ。
ターのヘッド部には「SEMIEMOSELEY」とのサインが表示されている
として,被告による本件商標の使用の事実を認定しているが,上記ウェブページに
掲載された写真では,以下のア及びイのとおり,本件商標の最近の使用の証明とは
ならない。
ア被告開設のウェブページに掲載された写真における古いギターの現品がもし
現存しているものであったとしても,そのシリアルナンバーが古いものであること
からして,そこに表されたサインは,セミー・モズレーが生存中にしたサインであ
ったならば,それは単にサインであって,商標としての使用ではない。セミー・モ
ズレーやモズライト社がそのギターに使用する商標とは「Mマークmosri,
teofCalifornia」であった。
ギターという商品に表示されるメーカーとしての商標と,その商品を購入したユ
ーザーにメーカーとしてのセミー・モズレーが頼まれてするサインとは峻別される
べきである。
イしたがって,被告によるセミー・モズレーのサインの使用は,商標としての
使用とはいえない。
(2)通常使用権者作成とされる納品書等について
,,,,,また本件審決は通常使用権者作成とされる納品書物品受領書契約書から
通常使用権者による本件商標の使用の事実を認定しているが,上記納品書等では,
以下のア∼ウのとおり,本件商標の最近の使用の証明とはならない。
(「」。)ア被告と株式会社SwingScience以下スウィング社という
との間で締結された契約書(甲21)には,そもそも本件商標の使用についての的
確な条項は存在せず,スウィング社を通常使用権者と認めることはできない。
イスウィング社が作成したとする納品書(甲18)及び物品受領書(甲19)
の「SemieMoseley(サイン入り」との手書き部分は,後日,他人)
が付記したものと認められ,スウィング社が使用していたものではない。
ウまた,上記納品書及び物品受領書に記載されている手書き文字の記載をもっ
て,社会通念上,本件商標と同一と認められる商標の使用ということもできない。
〔被告の主張〕
商標権者及び通常使用権者は,以下の(1)及び(2)のとおり,本件審判の請求の登
録時である平成21年3月3日から前3年以内に本件商標を使用している。
(1)被告開設のウェブページにおける画像について
原告は,被告開設のウェブページに掲載された写真における「SEMIEMO
SELEY」はサインであって商標としての使用ではないと主張する。しかしなが
,,「,」,「」,ら商標は文字図形その他の記号…であるから商品に付した文字は
「商標」ということができる。
(2)通常使用権者作成とされる納品書等について
,,原告はスウィング社が作成した納品書や物品受領書に記載されている手書きは
後日,他人が付記したものであると主張するが,これも何らの証拠に基づかない推
測である。
第4当裁判所の判断
1被告開設のウェブページにおける画像について
(1)認定事実
証拠及び弁論の全趣旨を加えると,次の事実が認められる。
アモズライトギターは,被告の夫であった故セミー・モズレー及びその関連会
社が製作してきたギターの名称である。
イ被告が開設した「モズライトの公式ウェブサイト」とするウェブサイト(甲
5∼17)中のウェブページ(甲6)には,本件商標の登録名義人である被告によ
る「夫セミーは16年前の8月7日に他界しました。私はセミーの遺志を継ぎ,モ
ズライト完全復活をメモリアルディの8月7日と定め,予約の受付を開始すること
に致しました。mosriteは発売当時より日本での人気が高くファンが多かっ
,,たことまたホームページでは日本のファンの皆様から沢山のご要望を頂いたこと
また気候や風土の関係も考慮し,カスタムショップを日本に設置することに致しま
した。ギター製作につきまして担当しますのは,セミーの一番弟子であったMr.
JesusDiazが京都の工房にて請け負います。彼は,モズライト工場がノ
ースキャロライナ州ジョナスリッジにあったころから工場長を務めておりまして,
お客様のカスタムオーダーから材料を厳選し,ひとつひとつ丁寧に完成させてお届
けすることができます。しかし,全ての工程がハンドメイドになりますので量産は
できません。…Y平成20年8月」との記載がある。
ウ上記ウェブページの上部の「ショッピング」をクリックし,表われたウェブ
ページ(甲8)左上の商品カテゴリー一覧中の「モズライトギター」をクリックす
ると「商品一覧」として「Mosrite’63Modelサンバースト」,
[#125「Mosrite’63Modelキャンディアップルレッド」],
[#125]及び「Mosrite’65Model[#110]との記載と」
各ギターの写真が掲載され,価格が表示されているウェブページ(甲9,10)が
表われる。
エこれらの商品一覧に掲載されたギターの写真をクリックすると,ギターの拡
大写真(甲11,商品の仕様の記載(甲12∼14,ギターヘッド部の拡大写))
真(甲15∼17)が表われる。
オ上記仕様の記載中には「ヘッドロゴ/SEMIEMOSELEYサイ,
ン入り」との記載があり,また,上記撮影されたギターのヘッド部には「SEMI
EMOSELEY」のサインが表示されている。
(2)使用の有無
ア上記(1)の事実によると,被告は,平成20年8月時点において,日本国内
における予約販売広告のウェブページにおいて商品であるギターの商品仕様にヘ,「
ッドロゴ/SEMIEMOSELEYサイン入り」との記載をし,また,ギタ
ーヘッド部に「SEMIEMOSELEY」のサインが表示されたギターの写真
を商品の写真として掲載したものであることが認められる。
そして「ヘッドロゴ/SEMIEMOSELEYサイン入り」との記載に,
ついてみると,このうちの「ヘッドロゴ」及び「サイン入り」とは,商標の付され
た場所及び「SEMIEMOSELEY」とのサインが付されていることを示す
意味の記載であって「ヘッドロゴ」及び「サイン入り」という記載それ自体は識,
別性を有するものではないから「SEMIEMOSELEY」との部分が識別,
性を表す要部と認めることができ,同要部は,少なくとも本件商標と社会通念上同
一と認められる商標と解することができる。
また,上記「SEMIEMOSELEY」とのサインは,本件商標とは,書体
のみに変更を加えた同一の文字から成る商標であって,本件商標と社会通念上同一
と認められる商標と解することができる。
イこの点につき,原告は,被告開設のウェブページに掲載された写真における
古いギターの現品にセミー・モズレーが生存中にしたサインがあったとしても商標
としての使用ではなく,セミー・モズレーのサインの使用は,商標としての使用と
はいえないなどと主張する。
しかしながら,ギターヘッド部に「SEMIEMOSELEY」のサインが表
示されたギターの写真が被告の予約販売のウェブページに掲載されていることは,
被告が予約販売する商品であるギターに「SEMIEMOSLEY」というサイ
ンが入っているという趣旨にとどまるものではなく,上記(1)のとおり,ヘッドロ
ゴとしての「SEMIEMOSLEY」のサインを付した種別の商品であるギタ
ーを予約販売するという趣旨で,同サインを付したギターを広告しているものであ
って,まさに「SEMIEMOSELEY」のサインの表示を識別性を持つ商標
として使用しているものと解することができるものであり,その表示を単なるサイ
ンにすぎないという原告の主張は採用し得ない。
ウしたがって,本件商標の登録権者である被告は,本件審判の請求が登録され
た平成21年3月3日前3年以内である平成20年8月時点において,本件商標の
指定商品であるギターに関する広告に本件商標を付して電磁的方法により提供する
行為をしたものと認めることができる。
2通常使用権者作成とされる納品書等について
(1)認定事実
証拠及び弁論の全趣旨を加えると,次の事実が認められる。
ア被告は,平成20年2月19日付け契約書(甲21)において,台湾に本店
を有し,京都府亀岡市に支店を有するスウィング社(甲20)の最高責任者である
Aに対し,世界市場においてモズライトギター等の営業,販売等に係る代理として
行動することを許諾した。
イ平成20年8月7日付けで,スウィング社は,大阪市所在の「バスウッド6
5」に対し「mosriteギター♯12563年モデル」2本及び「同ギ,
ター♯11065年モデル」1本を納品し,その旨の納品書(甲18はその控
え)を作成し,これを「バスウッド65」に交付し「バスウッド65」は,上記,
ギター3本の物品受領書(甲19)を作成し,これをスウィング社に交付した。こ
れらの納品書及び物品受領書の商品コード欄には,いずれも「SemieMos
eley/サイン入り」との記載がある。
(2)使用の有無
ア前記1(1)及び上記2(1)の事実によると,被告から,被告の製造販売するギ
ターに付される本件商標について少なくとも通常使用権の設定を受けたと解するこ
とができるスウィング社は,平成20年8月7日ころ,日本国内において,商品で
あるギターについての取引書類である納品書に「SemieMoseley/,
サイン入り」との記載を付して取引先である「バスウッド65」に交付したもので
あることが認められる。
そして「SemieMoseley/サイン入り」との記載は「Semi,,
eMoseley」と「サイン入り」との2段に分かれて記載され,また「サ,
イン入り」とは,サインが付されていることを示す意味の記載であって,それ自体
,「」が識別性を有するものではないからSemieMoseley/サイン入り
との記載のうち「SemieMoseley」との部分が識別性を表す要部と認
めることができ,同要部は,本件商標とはその一部につき欧文字の大文字と小文字
との表示を変更するなどしたものにすぎないものであって,本件商標と社会通念上
同一と認められる商標と解することができる。
イこの点につき,原告は,上記納品書の「SemieMoseley」との
記載は,後日,他人が付記したものであって,スウィング社が使用していたものと
は認められないなどと主張する。
しかしながら,上記納品書の控え(甲18)は,複写方式によって作成されたと
考えられる「バスウッド65」作成名義の物品受領書(甲19)とその内容におい
て矛盾していないこと及び「SemieMoseley」との記載が納品書にお
いて当然に記載される金額欄の記載と筆跡において類似していることなどからする
と,上記納品書の「SemieMoseley」との記載が後日に他人が付記し
たものと疑わせる事情はなく,原告の主張は採用することができない。
なお,被告とウィング社との間で締結された契約書(甲21)は,被告がスウィ
,,ング社の最高責任者であるAに対し世界市場においてモズライトギター等の営業
販売等に係る代理として行動することを許諾するものであるから,被告は,スウィ
ング社に対して,被告製作販売に係るギターに付される本件商標の少なくとも通常
使用権を許諾したものと解することができ,同契約書に本件商標の使用についての
的確な条項が存在しないという原告の主張を採用することはできない。
ウしたがって,本件商標の通常使用権者であるスウィング社は,本件審判の請
求が登録された平成21年3月3日前3年以内である平成20年8月7日ころにお
いて,本件商標の指定商品であるギターに関する取引書類に本件商標を付して頒布
したものと認めることができる。
3結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却
されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官本多知成
裁判官浅井憲

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