弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決中,「106万0061円及びこれに対する
平成21年8月18日から支払済みまで年5分の割
合による金員」を超える金員の支払請求に関する部
分を破棄する。
2前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判
を求める申立てにつき,本件を名古屋高等裁判所に
差し戻す。
理由
上告人の上告受理申立て理由について
1本件は,被上告人が,貸金業者である株式会社A及び同社からその資産を譲
り受けた上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限
法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて
利息として支払った部分を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,上
告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告人は,平成5年11月12日,Aとの間で,金銭消費貸借に係る基
本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行っ
た。
(2)Aは,平成14年3月29日,上告人との間で,同年5月2日を契約の実
行日(以下「クロージング日」という。)として,Aの消費者ローン事業に係る貸
金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括して上告人に売却する旨
の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。
(3)本件譲渡契約は,第1.3条において,上告人は,譲渡対象資産に含まれ
る契約に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日後に発生し,かつ,クロージ
ング日後に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を定め,第1.4条
(a)において,上告人の承継しない義務又は債務の例として,譲渡対象資産に含
まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のAの義務又は債務(支払利息
の返還請求権を含む。)を挙げる。
(4)被上告人は,上告人との間で,平成14年5月8日,新たに金銭消費貸借
に係る基本契約を締結して,同日から平成20年12月19日まで,継続的に金銭
の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(5)被上告人は,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位
は上告人に承継され,これに伴い,当該取引に係る過払金返還債務(以下「本件債
務」という。)も上告人に承継されると主張する。
3原審は,上記事実関係の下で,本件債務の承継の有無につき,次のとおり判
断し,被上告人の請求を認容すべきものとした。
(1)本件譲渡契約は営業譲渡契約であるから,特段の事情がない限り,Aの営
業に関する債権のみならず,金銭消費貸借取引に係る契約上の地位も上告人に移転
したというべきである。
(2)上告人は,本件譲渡契約には上告人において本件債務を承継しない旨の定
めがあると主張する。しかし,金銭消費貸借取引に係る基本契約に基づく貸金債権
と過払金返還債務とは表裏一体の関係にあり密接に関連するところ,過払金返還債
務のみを承継の対象から除外すると,借主は取引期間全体につき弁済金の充当計算
をして過払金の返還を請求する利益を喪失するのであるから,借主がこのことを承
知の上で金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転を承諾したなど特段の事情が
ない限り,過払金返還債務も承継の対象になるというべきである。本件において,
上記特段の事情は認められず,本件債務は上告人に承継され,上記のような定めが
あることは,本件債務の承継を否定する根拠にならない。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以
下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有
する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべ
きであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間
の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転する,あるいは,
譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を上記譲渡の対象に含まれ
る貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない(最高裁平
成22年(受)第1238号,同年(オ)第1187号同23年3月22日第三小
法廷判決・裁判集民事236号登載予定参照)。そして,借主と譲渡業者との間の
金銭消費貸借取引に係る基本契約が,過払金が発生した場合にはこれをその後に発
生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであったとしても,借主は
当然に貸金債権の一括譲渡の前後を通算し弁済金の充当計算をして過払金の返還を
請求する利益を有するものではなく,このような利益を喪失することを根拠に,譲
受業者が上記取引に係る過払金返還債務を承継すると解することもできない。
前記事実関係によれば,本件譲渡契約において,上告人は本件債務を承継しない
旨が明確に合意されているのであって,上告人は本件債務を承継せず,その支払義
務を負わないというべきである。
5以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法が
ある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,不服申立ての範囲
である106万0061円及びこれに対する平成21年8月18日から支払済みま
で年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れな
い。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記部分及び上告人の民訴法260条2
項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官櫻井龍子裁判官宮川光治裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

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