弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を三次簡易裁判所に差戻す。
         理    由
 検事佐々木道雄の控訴の趣意は末尾に添えた書面記載のとおりである
 論旨第二点原判決には判決に影響を及ぼすことの明かな法令の適用の誤りがある
との主張について
 <要旨第一>医師が他人の健康状態に関し、診察の結果にもとづいて意見、判断を
記載して作成した証明文書はすべて診断書であるというべきであること
は所論のとおりである。而して公職選挙法施行令第五二条第一項第三号にいうとこ
ろの証明書もその必要的記載事項は一般の診断書のそれに比して簡単ではあるが、
等しく人の健康状態に関する意見、判断を記載するのであるから、その名称は証明
書となつていたとしても、実質は診断書であることにかわりはない。
 原審はこの証明書をも診断書と解すると、前記に掲げられた助産婦の作成すべき
証明書や医師法第二十条に相当する保健婦、助産婦、看護婦法第四十条の規定によ
る出産証明書、死産証書、又は死胎検案書などと比較して医師に酷であつて取締上
の均衡を失する結果となると一応もつともな論拠を挙げているので、此の点につい
て考えると、助産婦などに右の証明書を発行する権限を認めた趣旨は公職選挙法第
四十九条第一項第三号に掲げられた身体障害者にも広く選挙権を行使し得るの機会
を与えんとするにあることは勿論であるが、それだからといつて右証明書記載の判
断に誤りがあつてもよいという論拠とはなし得ない。医師は助産婦なととは違つて
高度の医学的知識経験を具えており、社会的信用も亦自ら高いのに伴つてその責任
もこれらの者に比してより一層加重されているとしても、これはまことにやむを得
ないところでもあり、又当然でもあるということが出来る。
 従つて、医師が自ら診察しないで右の証明書を交付した場合に於ては、医師法第
三十三条第二十条違反の罪責を免れることは出来ないものと断ぜざるを得ない。
 <要旨第二>尤も医師が自ら診察しないで診断書を交付したといい得るためには、
当人をいまだかつて診察したことのない場合は勿論のこと、前に診察し
たことはあるが、すでに相当の日時を経過していて、当時の健康状態から推しては
その判断は正確を期し得ないと考えられるに拘らずこれに対する診断書を交付した
場合も含まれるものと解すべきである。
 これは要するに、医師としての知識経験を信頼し、延いては診断書の記載内容の
正確性を保証せしめんとするにあるものと見られるから、診断書交付の当日診察し
た事実がないとしても、その前の診察の結果を医学的知識経験に照らし、これから
推して変化の予想されない場合、いいかえれば、人の健康状態に関する判断の正確
性を保証し得る場合には、その都度診察しなくとも、前の診察の結果にもとづいて
診断書を交付しても敢て違法とはいえない。
 ひるがえつて、被告人が証明書を交付したA等十九名の者について見るに、その
大部分の者について、被告人は日時はそれぞれ異るが、その当時又はその前に於
て、いづれも診察した事実のあることは記録に徴して明かである。
 加うるに、右十九名の者の大部分は極度の高齢者であつて、「老衰」「卒中」そ
の他このような高齢者に於ては殆ど不治か又は短日月の間には到底回復の見込みの
ないものであろうことは、特に医学的知識経験のない者に於ても容易に推測し得る
ような病名がつけられていることも亦右の者等に対する各証明書その他によつて明
かである。これらのことを医学的知識経験に照らせば相当の期間診察しなかつたと
しても、前の診察の結果にもとづいてした健康状態に関する判断は、その正確性の
保証につき欠くるところがないと認められる場合があり得るであろうことは想像に
難くない。
 況んや、公職選挙法第四十九条第一項第三号所定の証明を要すべき事項は疾病そ
の他の原因によつて、著しく歩行が困難であるとの単純なる判断にすぎないことは
本件に於て特に留意する必要がある。従つて、被告人が診察しないで右の証明書を
交付したとしてその罪責を明かにするためには、A等十九名の個々の者について、
診察の有無、診察(触診たると問診たると問はない)したことのある者について
は、その日時、年齢、病名などについて考察し、被告人の判断が果して正確性の保
証の観点から診察せずして証明書を交付したといい得るかどうかについて審理した
後に於てはじめて判定し得るべきところであるといわねばならぬ。
 而して原審が右証明書の解釈を誤つたのは、結局に於て法令の適用を誤つた違法
があることに帰し、この違法は判決に影響を及ぼすことが明かであつて、原判決は
この点に於て破棄すべきであるから、その余の論旨に対する判断を省略する。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条に則つて原判決を破棄し、同法第四百条本文に
従つて本件を原裁判所に差戻すべきものとし、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 伏見正保 判事 宮本誉志男 判事 小竹正)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛