弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人林頼三郎の上告趣意は添附別紙記載のとおりである。
 第一点に対する判断
 公判請求書の記載によると「……昭和二三年二月一九日、二〇日の両日前後七回
に亘り一般公衆六千余名の面前である甲府市a町映画館A劇場舞台上に於て「Bの
宿」と称する演芸出演に際し全面を暗黒とした上劣情を催す如き全裸体となり其の
局部辺に照明を集中して露出せる局部を観覧に供し以て公然猥褻の行為を為し……」
と近接して行われた同一場所における同一内容の公然猥褻という七個の起訴事実に
ついて、日時、場所、方法を明らかにして犯罪事実を特定して示しているのである。
なるほど右記載には所論のように犯行の時間、回次までは摘示していない。そして
又本件記録によつてみると所論のように八回の上演があつたことはわかるが、所論
八回の中第二日目の第三回目一回は局部を露出しなかつたので局部を露出したのは
他の七回だというのである。しかして局部を露出した事実が起訴状の公訴事実中に
記載してあるから右局部を露出した七回が起訴されたので露出しなかつた一回が起
訴されなかつたものであること明らかである。されば本件公訴請求書の記載として
は前記の程度を以て足るものということが出来る。しかも記録によれば右起訴され
た七個の事実の時間の点についても検事が原審公判において公訴事実を右時間の点
を明示した一審判決摘示事実に基いて述べて指摘し、更に所論釈明をも加えている。
しかして右陳述乃至釈明は本件公訴事実の同一性を害さない範囲内でその趣意を明
らかにしたものというべきである。従つて所論は理由がない。
 第二点に対する判断
 被告事件の陳述は必ずしも公判請求書に基かなければならないということはない。
同一性を害しない限り第一審判決摘示事実に基いてこれを為しても差支えない。そ
して本件において右両者の間に同一性を欠くことはないから論旨は理由がない。
 第三点に対する判断
 (一)原審挙示の証拠殊にC及Dに対する検事の聴取書の記載によれば、右Dが
全裸となつた時照明が其身体を照して居たことがわかる。然る以上証拠中に特に「
集中─」という文句がないからといつて罪となるべき事実の認定に影響はない。(
二)犯罪の日時はそれが特に要件となつて居る場合の外犯行の同一性を特定するに
足る程度に判示すれば足りるのである。犯罪の日時は罪となるべき事実ではないか
ら証拠によつてこれを説明する必要はない。それ故論旨は理由がない。
 第四点に対する判断
 所論判例は単一犯罪を認めたのであつて所論の様な連続犯の理論を認めたのでは
ない。本件の場合一回の出演中に数度裸体となつたというならば或は右判例の場合
に当るかも知れないけれどもそうではなくして前後七回各異る多数の観客の前に別
個独立の演劇行為をしたのであるから七個の独立の犯罪があつたものというに差支
えない。刑法第五五条がなくなつた今日所謂意思継続があつたからといつてそれだ
けで一罪として処断しなければならないということはない、論旨は採用し難い。
 よつて旧刑訴四四六条に従つて主文の如く判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 堀忠嗣関与
  昭和二五年一二月一九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保

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