弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人伊藤幸人の上告理由第一点について。
 民訴一三三条により終結した口頭弁論の再開を命ずると否とは、裁判所の裁量に
委ねられている事項であるから、原審が、所論のように弁論を終結して上告人の弁
論再開申請を採用しなかつたとしても、違法ではない。またその他の所論は独自の
見解にもとづく主張に過ぎないので、論旨はすべて採用できない。
 同第二点について。
 所論は、原判決の引用する一審判決が、挙示の証拠により、所論判示事実を認定
したことは実験則に反すると主張する。しかし、一審判決挙示の証拠によれば、所
論一審判示事実を認めるに足り、実験則に反する認定ということはできない。論旨
は原判決において適法になした事実の確定を非難するもので採用できない。
 同第三点について。
 所論は、原審において主張判断のない事項にもとづく主張であつて採用できない。
のみならず、かりに所論のごとく上告人に過失なく、被上告人に過失があつたとし
ても、そのことから直ちに上告人が無権利者たる渡辺修蔵から売買により本件建物
の所有権を取得するいわれはない。論旨は理由がない。
 上告代理人元林義治の上告理由第六の一、二について。
 民訴一四七条には口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書によつてのみこれを
証することができる旨明定してあり、原審の昭和三元年一二月一九日午前一〇時の
口頭弁論調書には「裁判長は合議の上、弁論を終結する旨を告げ、裁判言渡期日を
来る昭和三二年一月二八日午前一〇時と指定して告知した」と明記されているから、
右調書の記載に反する口頭弁論の方式に関する事項を主張する所論は理由がない。
 同第六の三について。
 原審は上告人の申出に係る文書取寄申請に対して許否の裁判をなすことなく弁論
を終結したことは所論のとおりである。しかし、右文書取寄申請が唯一の証拠方法
でないことは記録に徴して明らかである。そして当事者の申出でた証拠が唯一の証
拠方法でないときは、該申出に対する許否を決定することなく結審しても違法でな
いことは、当裁判所の判例(昭和二四年(オ)第九三号、同二七年一二月二五日第
一小法廷判決、民集六巻一二号一二四〇頁)とするところであるから、所論は採用
できない。その他原判決には所論審理不尽の違法がない。論旨はすべて採用できな
い。
 同第六の三について。
 論旨は、原審において当事者双方が一審口頭弁論の結果を陳述したのは事実上の
主張についてのみであつて、証拠関係については陳述していないし、また当事者双
方提出の書証の原本は顕出されていないから、原判決には、証拠によらずして裁判
をなした違法があると主張する。しかし、原審において当事者双方が一審口頭弁論
の結果を陳述したことは所論のとおりであり、控訴審において当事者が一審におけ
る弁論の結果を陳述したときは、一審において提出された一切の訴訟資料はすべて
控訴審に顕出されたものとなるのであるから、所論は理由がない。
 同第六の四について。
 原審は上告人の申出に係る文書取寄申請を却下することなく弁論を終結している
ことは所論のとおりである。しかし、記録上、原審は所論申請を取調の必要がない
として、暗黙に排斥したものであることが窺われるから、原判決には所論の違法は
ない。論旨は理由がない。
 同第六の五について。
 原審が上告人の申出に係る文書取寄申請を許可したが、その嘱託手続を採つた形
跡は記録上認めえないことは所論のとおりである。しかし、所論申請書はこれにも
とづいて文書の取寄せをなすに由ない不備なものであることは記録上明らかである
から、原審は所論嘱託手続を採らなかつたとしても違法ではない。所論は採用でき
ない。
 同第六の六について。
 原判決が一審判決の理由中どの部分を引用したものであるかは、原判文上明瞭で
あるから、所論は理由がない。
 同第六の七について。
 所論は、要するに、原判決の引用する一審判決には経験則違反、審理不尽、理由
不備、理由齟齬ないし証拠によらないで、事実を認定した違法があるというに帰す
る。しかし、一審判決の所論認定は、その挙示する証拠に照らし、いずれもこれを
首肯するに走り、その間、所論の違法は認められない。論旨はすべて採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   橋       潔
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己

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