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平成17年(ネ)第10056号(東京高裁平成16年(ネ)第4100号)
特許権侵害差止等請求控訴事件
平成17年7月12日判決言渡,平成17年2月22日口頭弁論終結
(原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第6064号,平成16年7月14日判
決)
     判    決
 控訴人 有限会社アルファグリーン
 訴訟代理人弁護士 松坂祐輔,小倉秀夫
 輔佐人弁理士 長門侃二,山中純一,坪井健児
 被控訴人 株式会社第一アメニティ(以下「被控訴人足利第一アメニティ」とい
う。)
 被控訴人 株式会社第一アメニティ(以下「被控訴人川崎第一アメニティ」とい
う。)
 両名訴訟代理人弁護士 新保克芳,村田真一
 両名輔佐人弁理士 鈴木俊一郎,八本佳子,辻野利永子
     主    文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
     事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人らは,「プライオグリーン」という商品名の緑化土壌安定剤を製造
し,使用し,譲渡し,貸し渡し,譲渡又は貸渡しの申出をしてはならない。
 3 被控訴人らは,前項記載の緑化土壌安定剤及びその半製品を廃棄せよ。
第2 事案の概要
 1 手続の経緯
 (1) 控訴人は,原審において,「プライオグリーン」という商品名の緑化土壌安
定剤(以下「被控訴人製品」という。)が,控訴人の持分に係る特許第29354
08号の請求項3記載の特許(以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」
という。)の発明の技術的範囲に属し,被控訴人足利第一アメニティが被控訴人製
品を製造し,被控訴人川崎第一アメニティがこれを販売する行為が本件特許権を侵
害すると主張して,被控訴人製品の製造等の差止め及び被控訴人製品等の廃棄を求
めた。
 (2) 原審は,被控訴人製品が本件発明の構成要件Bb(「硫酸カルシウム 1~
20重量%」との構成要件)を充足するとは認められないと判示して,控訴人の請
求をいずれも棄却した。
 (3) 控訴人は,原判決を不服として控訴し,当審において,被控訴人製品が本件
発明の構成要件Bbを充足しないとしても,特許請求の範囲に記載された構成と均
等なものとして,又は,本件発明の不完全利用として,本件発明の技術的範囲に属
する,との主張を追加した。
 2 争いのない事実,争点等
 前提となる事実等,争点及び争点についての当事者の主張は,原判決の「事実及
び理由」の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。
 3 当審における当事者の主張
 (1) 控訴人
 ア 被控訴人製品は,本件発明の構成要件Bbを充足する。
 (ア) 甲4(報告書)によれば,被控訴人製品には2.60重量%の酸化硫黄
(1.04重量%の硫黄に相当する。)が含まれる。また,甲19(調査報告書)
によれば,被控訴人製品には0.98重量%の硫黄が含まれる。甲4と甲19は,
分析方法を異にしているが,上記のように,硫黄の含有量について実質的に同一の
結論に到達しているから,ともに信用性が高い。そして,甲15(見解書)によれ
ば,被控訴人製品には,硫酸アルミニウムが1.4重量%(0.39重量%の硫黄
に相当する。),硫酸カルシウムが2重量%(0.47重量%の硫黄に相当す
る。)が含まれる。甲19によれば,被控訴人製品には0.98重量%の硫黄が含
まれているから,この0.98重量%の硫黄は,0.39重量%が硫酸アルミニウ
ムに,0.47重量%が硫酸カルシウムに,0.12重量%がフライアッシュとセ
メントにそれぞれ起因することになる。そうすると,甲15による被控訴人製品の
硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムの含有量は,甲19による被控訴人製品の硫黄
の含有量と整合するから,甲15は,信用性が高い。
 これに対し,被控訴人らの開示した構成成分量によると,被控訴人製品には,硫
酸アルミニウムが2.8重量%(0.79重量%の硫黄に相当する。),硫酸カル
シウムが4.5重量%(1.06重量%の硫黄に相当する。)が含まれるから,こ
れらに起因する硫黄が少なくとも1.85重量%含まれている。甲19によれば,
被控訴人製品には0.98重量%の硫黄が含まれるにすぎないから,その差の0.
87重量%もの硫黄が消失していることになり,フライアッシュとセメントに起因
する硫黄が含まれていることを考えれば,更に多くの硫黄が消失していることにな
る。そうすると,被控訴人らの開示した構成成分量による被控訴人製品の硫酸アル
ミニウムと硫酸カルシウムの含有量は,甲19による被控訴人製品の硫黄の含有量
と整合しないから,被控訴人らの開示は,信用性がない。
 したがって,被控訴人の開示は信用性がなく,甲15は,甲19の分析結果と一
致して信用性が高いのであって,これによれば,被控訴人製品が本件発明の構成要
件Bbを充足するものである。
 (イ) 被控訴人らの開示した構成成分量に従い,被控訴人製品444㎏中に硫酸ア
ルミニウム12.5㎏が含まれるときに,添加剤84㎏に対する硫酸カルシウムの
含有率を20重量%(16.8㎏)と仮定して,硫酸アルミニウム及び硫酸カルシ
ウム硫黄に由来する硫黄の含有量を算出すると,7.45㎏(1.68重量%)に
なる。甲19によれば,被控訴人製品には0.98重量%の硫黄が含まれるとこ
ろ,甲4と甲19との対比による甲19の測定誤差を考慮しても,被控訴人製品4
44㎏中に硫酸アルミニウム12.5㎏が含まれるときに,添加剤に対する硫酸カ
ルシウムの含有率が20重量%を超えることは極めて少ないから,被控訴人製品は
本件発明の構成要件Bbを充足するものと認定すべきである。
 (ウ) 甲19の図-2におけるSi,Ca,Alの成分割合を比較すると,被控訴
人製品(同図中の「イ号物件」)は,被控訴人らが開示したもの(同図中の「合成
品」)とは異なり,控訴人が主張するもの(同図中の「イ号成分推定品」)とほと
んど同じであるから,被控訴人製品が本件発明の構成要件Bbを充足する。
 イ 仮に被控訴人製品が本件発明の構成要件Bbを充足するとは認められないと
しても,被控訴人製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,
特許発明の技術的範囲に属する。
 (ア) 「厚層基材種子吹付け工法」として公知であった先行技術は,「客土,種
子,養成剤,肥料,土壌改良剤,促進剤,土壌固結剤(糊剤)などを所定の割合で
混合して成る混合物を水に懸濁してスラリー客土とし,得られたスラリー客土を例
えばラス網が張設されている法面に吹付けて,当該法面を所望厚みの吹付け面で被
覆する工法」であるが,糊剤の硬化に2,3日を要し,硬化前の降雨で吹付け面全
体が流亡したり,糊剤の硬化により客土の表面が乾固状態になって,保水性や通気
性が劣化して発芽率は低下したり,吹付け面の厚さによっては3ないし5日間の施
工期間が必要となる問題があった。本件発明は,上記のような先行技術だけが公知
であったときに,硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムを添加剤に含め,材料を水に
分散させてスラリー状にしたときに,①硫酸アルミニウムが,水に溶解して電解質
として機能して,コロイド状に分散している灰成分(例えばフライアッシュ)との
間でエトリンジャイトを生成するとともに,その凝集と土壌粒子を巻き込んだ凝結
とを促進し,②硫酸カルシウムが,硫酸アルミニウムと同じように,エトリンジャ
イトの生成と凝集を促進するとともに,ケイ酸カルシウム水和物を生成
し,また,それ自体石膏成分である硫酸カルシウムは,石膏化によってスラリーの
固化を促進し,③これら水和化合物と土壌粒子との複合した多孔質団粒が,急速に
形成されて硬化し,通気性,保水性,弾力性に富んだものとなって,土壌を安定化
するようにしたものである。したがって,本件発明の本質的部分は,上記のよう
に,硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムを添加剤に含める点にあるのであって,こ
れらを特定の割合で混合することは本件発明の本質的部分ではない。
 これを硫酸カルシウムについてみると,含有量を20重量%以下としたのは,
「20重量%より多くなると,硫酸カルシウムその自体は石こう成分であるため,
調整されたスラリーの石こう化が始まって固くなり,吹きつけ加工が行いにくくな
る」からであり,吹きつけ加工上の多少の不便を甘受すれば,20重量%より多く
しても,上記の効果を得ることができるのである。被控訴人製品は,硫酸カルシウ
ムの含有量が23.8重量%であって,本件発明の構成要件Bbとの間に3.8重
量%の差があるにすぎないところ,この程度の差は,硫酸カルシウムの石こう化に
よる固化をいくぶんか促進し,調整されたスラリーの固化にいくらかの違いを生じ
させる程度であって,スラリーの固化時間や粘度は,吹付け施工時に適宜調整する
ものであるから,硫酸カルシウムの含有量が20重量%以下であることは,本件発
明の本質的部分ではない。
 (イ) 被控訴人製品の硫酸カルシウムの含有量を23.8重量%にしても,スラリ
ー固化の速度が遅くなるだけで,本件発明の目的を達することができ,また,本件
発明と同一の作用効果を奏する。
 (ウ) 被控訴人製品の硫酸カルシウムの含有量を23.8重量%にすることは,当
業者が適宜選択することができる事項であって,技術的に重要な意義を有するもの
ではなく,当業者が容易に想到することができたものである。
 (エ) 被控訴人製品は,樹脂ポリマーを糊剤とする本件特許出願当時における公知
技術と同一ではなく,当業者が公知技術から本件特許出願時に容易に推考すること
ができたものではない。
 (オ) 本件発明において硫酸カルシウムの含有量を20重量%以下としたのは,硫
酸カルシウムの石膏化の影響と施工上の便宜とを配慮して少し詳しく規定したにす
ぎず,硫酸カルシウムの含有量を20重量%より大きくしても,スラリーが固化す
る前に手早く施工するか,施工時にスラリーの粘度を調整すればよいだけである。
本件発明は,樹脂ポリマーを糊剤とする本件特許出願当時における公知技術とは全
く異なるのであって,施工上の便宜を配慮することはあっても,硫酸カルシウムの
含有量が20重量%より大きい場合を意識的に除外したものではなく,その他特段
の事情もない。
 (カ) したがって,硫酸カルシウムの含有量が23.8重量%であるとしても,被
控訴人製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の
技術的範囲に属するというべきである。
 ウ 仮に被控訴人製品が特許請求の範囲に記載された構成と均等なものでないと
しても,被控訴人製品は,特許発明の不完全利用であるから,本件発明の技術的範
囲に属する。
 (ア) 被控訴人製品は,硫酸カルシウムの含有量が23.8重量%であって,本件
発明の構成要件Bbとの間に3.8重量%の差があるにすぎず,本件発明と同一の
技術思想に基づくものである。また,本件発明において硫酸カルシウムの含有量を
20重量%以下としたのは,「吹きつけ加工の行いやすさ」という些末的な観点か
らであって,本件発明の構成要件の中では重要度が非常に低い。
 (イ) 本件発明は,既に公知であるから,硫酸カルシウムの含有量を23.8重量
%にするのは,非常に容易である。
 (ウ) 被控訴人製品の硫酸カルシウムの含有量を23.8重量%にすることによっ
て,吹きつけ加工の行いやすさが犠牲になることは明らかであり,したがって,技
術的完全を期する限り,このような省略をするはずがない。
 (エ) 上記(ウ)のように,被控訴人製品の硫酸カルシウムの含有量を23.8重量
%にすることによって,吹きつけ加工の行いやすさが犠牲になるが,厚層基材種子
吹付工法において,「コロイド状に分散している灰成分(例えばフライアッシュ)
との間でエトリンジャイトを生成するとともに,その凝集と土壌粒子を巻きこんだ
凝結とを促進し」たり,「ケイ酸カルシウム水和物を生成し,また,それ自体石膏
成分である硫酸カルシウムは,石膏化によってスラリーの固化を促進し,これら水
和化合物と土壌粒子との複合した多孔質団粒が,急速に形成されて硬化」したりさ
せて,「通気性,保水性,弾力性に富んだものとな」るようにできるのであり,本
件発明の特許出願前の技術に比べて,作用効果が特に優れている。
 (オ) したがって,硫酸カルシウムの含有量が23.8重量%であるとしても,被
控訴人製品は,特許発明の不完全利用であるから,本件発明の技術的範囲に属する
というべきである。
 (2) 被控訴人ら
 ア 被控訴人製品は,本件発明の構成要件Bbを充足しない。
 甲19及び甲4は,被控訴人製品(甲19では「イ号物件」)におけるアルミニ
ウムとカルシウムの含有量,被控訴人製品(甲19では「イ号物件」)及び控訴人
製品におけるカリウムの含有量,控訴人製品における硫黄濃度等において,矛盾し
ているから,対象とした試料の同一性と測定結果のそれぞれに信用性がない。
 したがって,このことを吟味しないで,甲19を前提に主張をしても無意味であ
る。
 イ 被控訴人製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものではない。
 (ア) 本件発明は,添加剤中の各成分の割合を一定の範囲にすることをその特徴と
するものであり,本件明細書には,硫酸カルシウムについて,「20%より多くな
ると,硫酸カルシウムそれ自体は石こう成分であるため,調整されたサラリーの石
こう化が始まって固くなり,吹きつけ施行が行いにくくなるからである」として,
その含有量を20%に限定することの意味が記載されている。
 被控訴人製品は,硫酸カルシウムの含有量が27.6重量%であって,本件発明
の構成要件Bbの1ないし20重量%とは明らかに差のある値であるから,この部
分は本件発明の本質的部分である。
 (イ) 添加剤に対する硫酸カルシウムの含有量の上限は,上記(ア)のとおり,石こ
う化が進んでしまうことから規定されたものであって,硫酸アルミニウム,硫酸カ
ルシウム,シリカ粉末及びセメント成分からなる添加剤中で硫酸カルシウムの含有
量が27.6重量%に達したときに,本件発明と同じ作用効果を奏するものである
かどうかは容易に分かることではないから,被控訴人製品の硫酸カルシウムの含有
量を27.6重量%にすることは,当業者が容易に想到することはできない。
 (ウ) 硫酸カルシウムの含有量を1ないし20重量%としたことが,20重量%よ
り大きい場合を意識的に除外したものであるということができる。
 ウ 被控訴人製品は,本件発明の不完全利用ではない。
 本件発明は,添加剤中の各成分の割合を一定の範囲にすることをその特徴とする
ものであって,硫酸カルシウムの含有量が1ないし20重量%との数値限定範囲に
属するか否かは本質的部分であり,本件発明の構成要件の中で重要度が非常に低い
とはいえない。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次の
2において,当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の
「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これ
を引用する。
 2 当審における控訴人の主張について
 (1) 被控訴人製品が本件発明の構成要件Bbを充足するか否かについて
 ア 第2の3(1)ア(ア)の主張について
 (ア) 甲4(報告書)は,中外テクノス株式会社が,控訴人の依頼に基づき,アル
ファグリーン(控訴人の製品)及び被控訴人製品について,それぞれの成分(Si
O2,Al2O3,Fe2O3,CaO,MgO,Na2O,K2O,SO3,P2O5,CO2
)をJIS M8815,JIS M8217,ICP発光分光分析法及び中和滴
定法により分析し,その含有割合を数値で示した結果の報告書であるが,その中
で,酸化硫黄(SO3)については,JIS M8217により分析し,被控訴人製
品では2.60重量%であるとの結果が得られたことが示されている。
 しかし,甲4において,JIS M8217による分析方法について,その具体
的な測定方法や測定条件等は明らかにされていない。また,ICP発光分光分析法
についても,その具体的な測定方法や測定条件等は明らかでないのであって,そう
であれば,甲4の分析結果が被控訴人製品の構成を正確に示しているとは認め難い
といわなければならない(なお,控訴人は,JIS M8217はJIS規格の分
析方法であり,また,ICP発光分光分析法は確立された分析方法に基づくもので
あって,いずれも具体的な測定条件等は明らかであり,その結果に基づき,被控訴
人製品における硫酸アルミニウム,硫酸カルシウム,シリカ粉末,ファライアッシ
ュ,セメント成分の含有量を算出することができると主張するが,JIS M82
17がJIS規格の分析方法であり,また,ICP発光分光分析法が確立された分
析方法に基づくものであるとしても,上記の測定方法において,用いた試薬や試
料,使用した測定装置などの具体的な測定方法や測定条件等が一義的に規定され,
あるいは確立されているというわけではないから,具体的な測定方法や測定条件等
は明らかでないといわざるを得ない。したがって,その分析結果に基づ
き,硫酸アルミニウム等の含有量を算出したとしても,これが被控訴人製品の構成
を正確に示しているということはできないから,控訴人の上記主張は,採用するこ
とができない。)。
 甲19(調査報告書)は,株式会社ハイメック中国事業所が,控訴人の依頼に基
づき,アルファグリーン製品(控訴人の製品),イ号物件(被控訴人製品),合成
品(被控訴人らが開示した被控訴人製品の構成成分量に従い,控訴人が合成したも
の)及びイ号成分推定品(控訴人が主張する被控訴人製品の構成成分量に従い,控
訴人が合成したもの)について,EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)に
より分析した結果の報告書であるが,その中で,被控訴人製品では硫黄(S)が
0.98重量%であるとの結果が得られたことが示されている。
 控訴人は,甲4と甲19が硫黄の含有量について実質的に同一の結論に到達して
いると主張しているところ,アルファグリーン(控訴人の製品)について,同じ硫
黄の含有量についてみると,甲4においては酸化硫黄(SO3)の含有量が4.87
%(1.95重量%の硫黄に相当する。)であるとの結果が得られたのに対し,甲
19においては硫黄の含有量が2.63重量%であるとの結果が得られたものであ
るから,このことにかんがみると,甲4の分析結果だけでなく,甲19の分析結果
も,その正確性は疑わしいといわなければならず,したがって,甲19において,
その分析結果がそれぞれの製品の元素の含有量を正確に示しているとは,即断する
ことができない。
 したがって,甲4と甲19が,被控訴人製品の硫黄の含有量について実質的に同
一の結論に到達したからといって,ともに信用性が高いということはできない。
 (イ) 甲15(見解書)は,控訴人補佐人が,甲4の分析結果を前提として,フラ
イアッシュやセメントの組成について平均値を用いて,被控訴人製品の各構成成分
の含有量を計算した結果の見解書であるが,これによると,多数の計算結果の中
で,フライアッシュ(灰)100重量部に対し,硫酸アルミニウム7重量%,硫酸
カルシウム10重量%,シリカ粉末15重量%,セメント成分68重量%からな
る,添加剤25重量部を混合したものの計算結果が,甲4の分析結果に最も近いと
記載されている。
 しかし,上記(ア)のとおり,甲4の分析結果は,被控訴人製品の構成を正確に示し
ているとは認め難いから,上記の計算結果が甲4の分析結果に最も近いからといっ
て,これが被控訴人製品の構成を正しく反映しているということはできない。しか
も,上記(ア)のとおり,甲19の分析結果は,それぞれの製品の元素の含有量を正確
に示しているとは即断することができないから,甲15による被控訴人製品の硫酸
アルミニウムと硫酸カルシウムの含有量が,たまたま甲19による被控訴人製品の
硫黄含有量と整合するからといって,甲15が信用性が高いということはできな
い。
 (ウ) そして,仮に被控訴人らの開示した構成成分量が真実に反するものであった
としても,そのことから,直ちに,被控訴人製品が本件発明の構成要件Bbを充足
するということにはならないし,上記(ア)のとおり,甲19の分析結果は,それぞれ
の製品の元素の含有量を正確に示しているとは即断することができないから,被控
訴人らの開示した構成成分量による被控訴人製品の硫酸アルミニウムと硫酸カルシ
ウムの含有量が,甲19による被控訴人製品の硫黄の含有量と整合しないとして
も,被控訴人らの開示が信用性がないということにはならない。
 (エ) したがって,甲15の計算結果などから,被控訴人製品が本件発明の構成要
件Bbを充足するということはできない。
 イ 第2の3(1)ア(イ)の主張について
 控訴人は,被控訴人らの開示した構成成分量に従い,被控訴人製品444㎏中に
硫酸アルミニウム12.5㎏が含まれるときに,添加剤に対する硫酸カルシウムの
含有率が20重量%を超えることは極めて少ないと主張するところ,これは,被控
訴人らが開示した構成成分量において,硫酸カルシウムの分量だけが不正確であ
り,他の分量は正確であるとの前提に立つものであるが,このような前提に立つこ
とに合理性があるとは考え難い。また,上記ア(ア)のとおり,甲19の分析結果が,
それぞれの製品の元素の含有量を正確に示しているとは即断することができないか
ら,これと上記前提のもとで算出した結果とを比較しても,意味がないといわなけ
ればならない(なお,上記ア(ア)のとおり,甲4の分析結果は,被控訴人製品の構成
を正確に示しているとは認められないから,甲4と甲19との対比による甲19の
測定誤差を考慮しても,意味がない。)。
 したがって,このようなもとで,添加剤に対する硫酸カルシウムの含有率が20
重量%を超えることは極めて少ないという結果を得たとしても,このことから,被
控訴人製品が本件発明の構成要件Bbを充足するということはできない。
 ウ 第2の3(1)ア(ウ)の主張について
 甲19には,主元素(Al,Si,Ca,Fe)のSi含有量を100としたと
きの成分割合が図示(図-2)され,「図-2から,アルファグリーン,イ号物
件,イ号物件推定品は似かよった主元素成分割合であることが判ります。」と記載
されている。
 しかし,甲19の分析結果は,上記ア(ア)のとおり,それぞれの製品の元素の含有
量を正確に示していると即断することはできない。しかも,アルファグリーン製品
(控訴人の製品)は,その構成が明らかでなく,仮に甲7(見解書)に記載された
「灰成分(フライアッシュ)100重量部に対し,硫酸アルミニウム1.74重量
%,硫酸カルシウム6.96重量%,シリカ粉末6.96重量%,セメント成分4
5.2重量%とから成る添加剤40.4重量部」との構成であるとしても,フライ
アッシュやセメントの具体的な成分が明らかでない上,添加剤中の未開示部分3
9.14重量%の具体的な成分が明らかでない。また,合成品について,控訴人
は,これに用いたセメントが太平洋セメント製である旨釈明する(平成15年9月
29日付け「求釈明に対する回答書」)が,そのグレードや製品名等は明らかにし
てないから,その成分が明らかでないし,イ号成分推定品についても,その構成が
明らかでなく,仮に控訴人が主張するように「フライアッシュ成分100重量部に
対し,硫酸アルミニウム約7重量パーセント,硫酸カルシウム約10重量パーセン
ト,シリカ粉末約15重量パーセント,セメント成分約68重量パーセン
トとから成る添加剤約25重量部」との構成であるとしても,フライアッシュやセ
メントの具体的な成分が明らかでない。
 したがって,主元素(Al,Si,Ca,Fe)のSi含有量を100としたと
きの成分割合について,アルファグリーン,イ号物件及びイ号物件推定品が似かよ
ったものであるとしても,このことから,被控訴人製品の硫酸カルシウムが1ない
し20重量%の範囲にあると推認するには足りない。
 エ そうであれば,原告の上記主張を考慮して検討しても,なお,被控訴人製品
が本件発明の構成要件Bbを充足すると認めるには足りない。
 (2) 被控訴人製品が特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるか否か
について
 ア 上記のとおり,被控訴人製品は,本件発明の構成要件Bbを充足すると認め
るには足りないから,本件発明の技術的範囲に属するということはできない。しか
し,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合で
あっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,②上記部分を対象製品等
におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効
果を奏するものであって,③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品
等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④対象製品等
が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願
時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手
続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情
もないときは,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なもの
として,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成
6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号11
3頁)。
 イ そこで,これについてみるのに,まず,「硫酸カルシウム 1~20重量
%」との部分が本件発明の本質的部分であるか否かについて検討する。
 (ア) 本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,次の記載がある。
 「【従来の技術】・・・この厚層基材種子吹付け工法は,客土,種子,養成剤,
肥料,土壌改良剤,促進剤,土壌固結剤(糊剤)などを所定の割合で混合して成る
混合物を水に懸濁してスラリー客土とし,得られたスラリー客土を例えばラス網が
張設されている法面に吹付けて,当該法面を所望厚みの吹付け面で被覆する工法で
ある。」(段落【0002】)
 「【発明が解決しようとする課題】・・・まず,従来のスラリー客土は土壌粒子
を団粒化するための糊剤が樹脂ポリマーを主体とするため,その硬化速度は遅いこ
とである。・・・
 ・・・また,従来のスラリー客土は糊剤が樹脂ポリマーを主体としているため,
糊剤の硬化が完了すると,団粒化した客土の表面は乾固状態になり,保水性や通気
性も悪く,全体として,植生材料の発芽状態はまだらとなり,またその発芽率は低
下するという問題がある。・・・
 また,従来から用いられているスラリー客土は,糊剤の硬化速度が遅いというこ
とからして,単時間で厚い吹付け面を形成することが困難である。・・・」(段落
【0004】ないし【0006】)
 「本発明は,厚層基材種子吹付け工法に用いられてきた従来のスラリー客土にお
ける上記した問題を全て解決し,吹付け施工後,1~3時間程度経過すると団粒化
が起こり通常の降雨量でも流亡することがなく,また1度の吹付け作業で8cm程度
の厚みの吹付け面を形成することができ,しかも形成された吹付け面は多孔質で通
気性や保水性に富み,吹付け面全体から高い発芽率で植生種子を発芽成長させるこ
とができ,凍上劣化も起こすことがない客土にすることができ,更には,泥状土壌
に混合して用いるとその泥状土壌を短時間で固化して安定化することができる緑
化・土壌安定化用無機質材料とそれを用いた厚層基材種子吹付け工法または土壌安
定化工法の提供を目的とする。」(段落【0008】)
 「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために,本発明におい
ては,灰成分100重量部に対し,硫酸アルミニウム1~20重量%,硫酸カルシ
ウム1~20重量%,シリカ粉末1~20重量%,セメント成分10~80重量%
から成る添加剤10~50重量部を混合して成ることを特徴とする緑化・土壌安定
化用無機質材料(以下,第1材料という)が提供される。
 また,本発明では,灰成分100重量部に対し,硫酸硫酸アルミニウム1~20
重量%,硫酸カルシウム1~20重量%,シリカ粉末1~20重量%,セメント成
分10~80重量%から成る添加剤10~50重量部およびセラミックス粉末10
重量部以下を混合して成ることを特徴とする緑化・土壌安定化用無機質材料(以
下,第2材料という)が提供される。」(段落【0009】,【0010】)
 「本発明の第1材料は後述する灰成分と添加剤を必須とし,また第2材料は,こ
の第1材料に更に後述するセラミックス粉末を配合して構成される。・・・」(段
落【0012】)
 「・・・次に,本発明の第1材料,第2材料において,配合する添加剤は,硫酸
アルミニウム,硫酸カルシウム,シリカ粉末,セメント成分を必須成分として成
る。」(段落【0015】)
 「硫酸アルミニウムは,本発明材料を水に分散させてスラリー状にしたときに水
に溶解して電解質として機能し,コロイド状に分散している灰成分との間でエトリ
ンジャイトを生成し,その凝集を促進する。そして,土壌が共存している場合は,
加水分解を経て水酸化アルミニウムが生成する過程でアルミニウムの重縮合イオン
が高分子体として生成し,これが土壌粒子をまき込みながら凝結していく。
 この硫酸アルミニウムの割合は,添加剤の全量に対し,1~20重量%に設定さ
れる。この割合が1重量%よりも少ないときは灰成分の凝集効果やエトリンジャイ
トの生成効果が低下して土壌の迅速な安定化や土壌中の水分を効果的に吸収できな
くなり,逆に,20重量%より多くしても,配合効果は飽和に達するだけで,徒に
コストアップを招くようになる。
 硫酸カルシウムは,硫酸アルミニウムの場合と同じように,スラリーを調製した
ときに水に溶解して解離し,灰成分の凝集を引起し,また灰成分と反応してエトリ
ンジャイトやケイ酸カルシウム水和物を生成する。この硫酸カルシウムの割合は,
添加剤の全量に対し,1~20重量%に設定される。この割合が1重量%より少な
いときは上記した効果が充分に発揮されず,逆に20重量%より多くなると,硫酸
カルシウムそれ自体は石こう成分であるため,調製されたスラリーの石こう化が始
まって固くなり,吹付け施工が行いにくくなるからである。
 シリカ粉末は,本発明の材料が団粒・固化したときに,その団粒の中に分散して
強度保持に寄与する。用いるシリカ粉末としては格別限定されるものではないが,
例えば,ヒュームドシリカや天然のシラスなどを好適なものとしてあげることがで
きる。とくに,ヒュームドシリカは非晶質であるため,スラリーの調製と同時に激
しく結晶化しながら灰成分や後述するセメント成分と結合して団粒の強度を高める
ことができるので有用である。
 シリカ粉末の割合は,添加剤の全量に対し,1~20重量%に設定される。この
割合が1重量%よりも少ないと,前記した強度向上効果が充分に発揮されず,逆に
20重量%より多くしても,配合効果は飽和に達し,徒にコストアップを招くよう
になる。セメント成分は,調製したスラリー客土を例えば法面に吹付けたとき,そ
のスラリー客土を短時間で凝結させると同時に,吹付け面の強度確保のために配合
される。
 このセメント成分としては格別限定されるものではなく,例えばポルトランドセ
メントや,緊急工事用の建設材料として用いられている早強セメントなどが好適で
ある。このセメント成分の割合は,添加剤の全量に対し,10~80重量%に設定
される。この割合を10重量%より少なくすると,上記した効果が充分に発揮され
ず,逆に80重量%より多くすると,施工後のスラリーの凝結が過度に進んで非常
に固い施工面になってしまい,例えば植生材料を添加したときにその植生材料の発
芽成育に支障をきたすからである。
 本発明の第1材料,第2材料は,いずれも,灰成分100重量部に対し前記添加
剤を10~50重量部混合して成る。添加剤の混合割合を10重量部より少なくす
ると,調製したスラリーの迅速な団粒・固化が進まず,また,50重量部よりも多
くすると,相対的にセメント成分が増量するので施工面や施工土壌が過度に固くな
る。いずれにしても,雨水で流亡せず,凍上劣化を起こさず,植生材料が吹付け面
から万遍なく発芽成育する緑化吹付け用材料や,泥状土壌の安定化材料としては不
満足である。
 第2材料においては,この第1材料に更にセラミックス粉末が必須成分として配
合される。・・・」(段落【0016】ないし【0023】)
 「本発明の厚層基材種子吹付け工法は次のようにして行われる。まず,所定容積
のタンク内に,水,客土,種子,養成剤,肥料,土壌改良剤,促進剤などを投入し
たのち撹拌し,更にここに本発明材料を投入する。このとき,吹付け施工に適合す
る粘度となるように注入水量と客土量は適宜に調節される。そして,全体を充分に
撹拌して吹付け用のスラリー客土とする。
 得られたスラリー客土を所定の地表,例えば法面に吹付けてそこに付着させ施工
を終了する。吹付けと同時に客土は流動性を失って地表に強固に付着し,また迅速
に客土の団粒化が進んで全体は弾力性をもって固化する。次に,本発明の土壌安定
化工法においては,対象とする泥状土壌と本発明の材料の所定量とを混合・攪拌・
転圧すればよい。
 材料の水和反応により,泥状土壌中の水分は迅速に吸収されながら泥状土壌の団
粒・固化が進行して高強度化する。その結果,短時間で泥状土壌は安定化する。」
(段落【0025】ないし【0027】)
 「【発明の効果】・・・請求項1の緑化・土壌安定化用材料は,吹付け施工後1
時間程度の時間が経過すれば,通常の降雨では全く流亡しない。また,傾斜面が3
5°程度の通常斜面であれば,ラス網やネットなどを用いることなく厚層基材種子
吹付けが可能である。更には,凍上劣化を起こすことがないので寒冷地における緑
化吹付けが可能になる。
 そして,ぬかるんだ泥状土壌に対しても,短時間でそれを固化し安定化させるこ
とができる。また,水で流亡しないということから,湖沼や親水公園などの水際へ
の水性植物の吹付け移植が可能となり,環境浄化,環境保全に資することができ
る。本発明の材料は,構成する成分間における水和反応によって水和化合物が生成
し,これが土壌粒子を核とする多孔質の団粒を迅速に形成するので,その団粒は通
気性と保水性に富み,添加される肥料の保持力も良好で,添加される植生材料の発
芽成育にとって非常に好適な環境を提供することができる。
 また,請求項2の材料には,更に多孔質粒子の集合体であるセラミックス粉末が
配合されているので,保水性や透水性が一層良好になるとともに,種子の活着性も
優れ,肥料などの効能を長期に亘って確保することができる。」(段落【003
7】ないし【0039】)
 (イ) 以上の記載によると,従来の厚層基材種子吹付け工法におけるスラリー客土
は,客土,種子,養成剤,肥料,土壌改良剤,促進剤,土壌固結剤(糊剤)などを
所定の割合で混合して成る混合物を水に懸濁したものであるが,従来のスラリー客
土は,土壌粒子を団粒化するための糊剤が樹脂ポリマーを主体とするため,その硬
化速度が遅く,また,糊剤の硬化が完了すると,団粒化した客土の表面は乾固状態
になって,保水性や通気性も悪く,全体として,植生材料の発芽状態はまだらとな
り,その発芽率は低下し,さらに,糊剤の硬化速度が遅く,単時間で厚い吹付け面
を形成することが困難であるという問題があったところ,本件発明は,これらの問
題を解決することを目的として,「添加剤が硫酸アルミニウム1ないし20重量
%,硫酸カルシウム1ないし20重量%,シリカ粉末1ないし20重量%,セメン
ト成分10ないし80重量%からなり,フライアッシュ成分100重量部に対し添
加剤10~50重量部を混合すること」という構成を採用し,これにより,吹付け
施工後,1ないし3時間程度経過すると団粒化が起こり通常の降雨量でも流亡する
ことがなく,また,1度の吹付け作業で8cm程度の厚みの吹付け面を形
成することができ,しかも,形成された吹付け面は,多孔質で通気性や保水性に富
み,吹付け面全体から高い発芽率で植生種子を発芽成長させることができ,凍上劣
化も起こすことがないという作用効果を奏するものであることが認められる。そう
すると,本件発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的部分は,「添加剤が硫酸
アルミニウム1ないし20重量%,硫酸カルシウム1ないし20重量%,シリカ粉
末1ないし20重量%,セメント成分10ないし80重量%からなり,フライアッ
シュ成分100重量部に対し添加剤10~50重量部を混合すること」という特定
の範囲内の混合割合を用いることにあると認められる。
 したがって,本件発明の本質的部分は,硫酸カルシウムが1ないし20重量%の
範囲内にあることを含む,成分を特定の割合で混合することであるということがで
きる。
 (ウ) 控訴人は,本件発明は,「客土,種子,養成剤,肥料,土壌改良剤,促進
剤,土壌固結剤(糊剤)などを所定の割合で混合して成る混合物を水に懸濁してス
ラリー客土とし,得られたスラリー客土を例えばラス網が張設されている法面に吹
付けて,当該法面を所望厚みの吹付け面で被覆する工法」が公知であったときに,
硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムを添加剤に含めることによって,土壌を安定化
するようにしたものであるから,成分を特定の割合で混合することは,本件発明の
本質的部分ではないと主張する。
 しかし,控訴人は,特許請求の範囲において,添加剤につき,硫酸アルミニウム
1ないし20重量%,硫酸カルシウム1ないし20重量%,シリカ粉末1ないし2
0重量%,セメント成分10ないし80重量%と限定し,発明の詳細な説明におい
て,段落【0016】ないし【0023】に上記(ア)のとおりの記載をしているので
ある。そして,硫酸カルシウムについてみると,控訴人は,第2の3(1)イ(イ),(ウ)
のとおり,硫酸カルシウムの含有量を23.8重量%にしても,スラリー固化の速
度が遅くなるだけで,本件発明の目的を達することができ,本件発明と同一の作用
効果を奏する,硫酸カルシウムの含有量を23.8重量%にすることは,当業者が
適宜選択することができる事項であって,技術的に重要な意義を有するものではな
く,当業者が容易に想到することができたと主張しているところ,仮にこの主張の
とおりであるとすれば,控訴人が,本件発明の特許出願に際して,硫酸カルシウム
の含有量を1ないし20重量%の範囲に限定するとは考え難いが,それにもかかわ
らず,控訴人はあえて限定しているのである。そうであれば,本件発明特有の課題
解決手段を基礎づける特徴的部分は,硫酸アルミニウムと硫酸カル
シウムを添加剤に含めるというにとどまらず,特定の混合割合の硫酸アルミニウム
と硫酸カルシウムを添加剤に含めるところにあるというべきであり,したがって,
これが本件発明の本質的部分である。これと異なる控訴人の上記主張は,採用する
ことができない。
 (エ) 被控訴人製品は,本件発明の構成要件Bbを充足すると認めるには足りない
ところ,この部分は本件発明の本質的部分であるから,そうであれば,被控訴人製
品が特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるということはできない。
 (3) 被控訴人製品が本件発明の不完全利用であるか否かについて
 被控訴人製品は,上記のとおり,本件発明の構成要件Bbを充足すると認めるに
は足りないところ,この部分は本件発明の本質的部分である。
 ところで,特許権侵害訴訟において,特許請求の範囲に記載された構成中に対象
製品等と異なる部分が存する場合であっても,一定の要件があるときは,相手方が
製造等をする製品又は用いる方法が,特許発明の不完全利用として,特許発明の技
術的範囲に属するものと解する余地があるとしても,本件においては,構成要件B
bに係る部分が本件発明の本質的部分であるから,このような部分においてまで,
特許発明の不完全利用として,特許発明の技術的範囲に属すると解することは相当
でないというべきである。
 したがって,被控訴人製品が本件発明の不完全利用であると認めることはできな
い。
第4 結論
 以上のとおりであって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,控訴人の
控訴は理由がないから,これを棄却すべきである。
  知的財産高等裁判所第4部
         裁判長裁判官 塚   原   朋   一
            裁判官 塩   月   秀   平
            裁判官 髙   野   輝   久

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