弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
主文同旨
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決二枚目
表一二行目の「本件支出」を「本件支出を」と、同裏末行の「著しい」を「著し
く」と各訂正する。)から、これを引用する。
一 控訴人
1 本件条例六条は、本件条例二条別表で明記できないような、予想し得ない特別
の考慮を必要とするものが生じた場合に備えて、市長が複雑多様化する行政需要、
社会的諸事情に迅速かつ適正に対応するために補充的、特例的に置かれたもので、
市長に対する委任の仕方に「特別の考慮を必要とするもの」という限定があるこ
と、「臨時に」支給することができるとされていることからして、議会が一定の要
件の下に手当の支給を補充的、特例的に市長に委任したもので、十分な合理性があ
り、給与条例主義に抵触するものではない。
2 本件手当は、通常の業務と異なる特殊性を有する昼休み窓口業務の拡大に伴
い、支給対象延べ人員が増大したことから、支給合計額の増大を招いたもので、熊
本市の規模、職員数からして、市民サービスの充実のため止むを得ないものであ
り、また、本件手当は、将来職員数や窓口業務が大幅に増減した場合、職員の勤務
に対する考え方や市民の昼休み時間に対する考え方が変化した場合などには勤務の
特殊性が変化することがあり得ることから、将来的な見直しが予想されたため、支
給期間を一年間として一年毎に臨時に支給されてきたものであるから、本件手当の
支給が大規模で継続的な支給とはいえないし、もともと本件条例六条の前記制定趣
旨からすれば、大規模で継続的な支給も同条の予定するところであるから、本件手
当は適法である。
3 控訴人は、本件条例六条に基づき昼休み窓口業務が特殊性を有するとして議会
の承認を得た上本件手当を支給したもので、本件手当の支給は、本件条例六条によ
って議会から市長に委任された授権の範囲内の行為として、行政需要の高まりに対
応した控訴人の市長としての裁量の範囲内の事柄であって適法である。
4 本件手当は昭和五七年から支給されているところ、当時控訴人は助役にすぎ
ず、何ら支給決定に関与していたわけではない(前任者の市長が決定したものであ
る。)。控訴人は、前任者の措置を引き継いで本件条例六条に基づき本件手当を支
給したもので、控訴人には本件条例を改正する権能もなく、本件条例六条に基づく
支給が違法であることが一見明白とはいえない以上、条例改正の発案をする義務も
ないことからすると、誠実かつ合理的な判断に基づいて控訴人が本件手当を支給し
たことに過失はない。
二 被控訴人
1 本件条例六条にいう「臨時に」手当を支給できるとの要件は、同条例が手当の
支給に関し具体的にその規範や基準を定めたものであるから、厳格に解釈されるべ
きである。
2 地方自治法二四二条の二第一項の四号請求に関しては、控訴人主張のように違
法性や過失を限定的に解釈しなければならない文言もなく、実質的にも地方公共団
体の行為に関連する事柄は住民の監視の下に行われるべきであるから、控訴人の見
解は誤りである。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因1ないし3の各事実は当事者間に争いがない。
二 普通地方公共団体は、その職員に対して、条例で特殊勤務手当を支給すること
ができる(地方自治法二〇四条二項、地方公務員法二四条六項、二五条一項、三項
四号)が、反面、法律又はこれに基づく条例に基づかずには、いかなる給付も支給
することができない(地方自治法二〇四条の二、地方公務員法二五条一項)とこ
ろ、原本の存在及び成立に争いのない乙第一、第二号証によれば、熊本市において
は、地方公務員法二四条六項に基づく条例として、熊本市一般職の職員の給与に関
する条例を制定し、同条例一六条においては、特殊勤務手当の種類、支給を受ける
者の範囲、手当の額及びその支給方法は、別に条例で定めるものとされ、これをう
けて、職員の特殊勤務手当の支給に関し、熊本市職員特殊勤務手当支給条例(本件
条例)が制定されていること、本件条例においては、手当の種類、手当を受ける者
の範囲及び手当の額について別表を設けている(本件条例二条)ほか、同条例に定
めるもの以外の勤務で特別の考慮を必要とするものに対しては、市長は、臨時に手
当を支給することができ、その手当の額は、そのつど市長が定めることとされてい
る(本件条例六条)こと、本件手当については本件条例の別表には記載されていな
いことが認められる。
三 控訴人は、本件支出は本件条例六条に基づくもので適法である旨主張するのに
対し、被控訴人は、本件条例六条そのものが、その市長に対し手当の支給を白紙委
任する内容のものであって、無効であり、仮に本件条例六条が有効であるとして
も、同条に基づく支給は、特殊勤務について、「臨時に」かつ「そのつど」額を定
めて支給できるだけであるのに、本件手当は、昭和五七年以降継続的に支給されて
きたものであるし、そもそも昼休み窓口業務には特殊勤務性がないから、本件条例
六条の要件を充たさず、同条に基づく支給とはいえない旨主張するので、以下、検
討する。
1 本件条例六条の有効性について
特殊勤務手当の対象となる特殊な勤務とは、著しく危険、不快、不健康又は困難な
勤務その他特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で
考慮することが適当でないと認められるものをいうと解されるところ、具体的にど
のような勤務が右の特殊な勤務に該当するかは、当該勤務の性質、形態に照らして
客観的に判断することになるけれども、ある勤務が特殊勤務手当の対象となる特殊
な勤務といえるか否かは、必ずしも一義的に明確ではないうえ、勤務の特殊性につ
いての考え方も時代とともに変遷する余地があること、本件条例二条において特殊
勤務手当の対象となるあらゆる特殊勤務を漏れなく列挙することは立法技術的にみ
ても困難であること等からすると、本件条例二条別表において定める特殊勤務のほ
かに、特殊勤務手当の対象となるべき特殊勤務も考えられるものといえるから、本
件条例六条は、そのような本件条例二条別表の対象とはならない特殊勤務について
も、手当を支給する必要があることに鑑み、本件条例二条別表に定めるもの以外の
勤務で特別の考慮を必要とするものに対しては、「臨時に」かつ「手当の額をその
つど市長が定める」ことを要件として、その支給を市長の合理的な裁量に委ねたも
のと解することができる。
したがって、本件条例六条そのものが、手当の支給を市長に白紙委任したものとい
うことはできず、同条が地方自治法二〇四条の二等に規定するいわゆる給与条例主
義に違反するものではないというべきであり、本件条例六条に基づく特殊勤務手当
の支給であっても、それが同条の要件を充足する限り、適法な支給と解するのが相
当である。
2 本件手当の本件条例六条充足性について
(一) 成立に争いのない甲第一ないし第二四号証、乙第三号証、第二一ないし第
四八号証、第五一、第五二号証、第一四六ないし第一六七号証、第一九七ないし第
二一一号証、第二一三、第二一四号証(乙第三号証、第二一三号証、第二一四号証
については原本の存在も争いがない。)、原審証人A、当審証人Bの各証言及び弁
論の全趣旨によれば、次の事実が認められ、他にこの認定に反する証拠はない。
(1) 熊本市においては、職員の休憩時間は、土曜日を除き午後〇時一五分から
午後一時までとされており、昼休み時間(午後零時から午後一時までの間)は窓口
を開いて業務をすること(以下「昼窓業務」という。)はなかったが、「住民サー
ビスのため昼休みも窓口を開いてほしい。」との市民からの要望が強く、昭和四七
年には、市民課の住民票や戸籍謄抄本の交付について、電話予約することにより、
午前一一時までに予約すれば昼休み時間内に、昼休み時間内に予約すれば午後二時
からに、その交付が受けられる取扱いをとったが、電話予約の煩わしさや業務内容
が限定されていることから利用度は十分でなく、住民の不満は解消されなかった。
(2) その後昭和五三年ころから、昼窓業務の問題が再燃し、市民団体の要望や
マスコミの働きかけがあり、熊本市議会においても再三取り上げられたため、熊本
市内部においても、昼窓業務を実施した場合の担当局となる市民局を中心として、
そのころから、類似の地方公共団体や九州管内の地方公共団体の昼窓業務の範囲の
設定、勤務体制、休憩・休息時間の付与、手当等の実情を調査して検討を行い、昼
窓業務導入のため職員団体と勤務条件の整備について交渉した(熊本市長と職員団
体との間では、遅くとも昭和五〇年ころより、労働条件の変更に関する問題につい
ては、両者で事前協議することが合意されてきている。)。
なお、当時の熊本市内部の調査では、昼窓業務に対し、時間外手当や特殊勤務手当
の形で手当を支給している地方公共団体が約一四〇団体中六〇団体程度と相当数あ
った。
(3) これに対し、職員団体側は、昼窓業務を実施すると、(1)労働基準法上
の一斉休暇の原則が崩れる、(2)昼休み時間外に休憩時間が与えられても、休憩
場所が整備されていないので昼食が取りにくく、外出も、市職員には制服が義務付
けられていることもあって、市民から時間外に遊んでいると見られるおそれがあ
り、精神的に制約されるなど自由に休憩がとれない、(3)現状の人員のまま勤務
時間の割り振りで対応すると、必然的に少ない人員で昼窓業務をさばくことにな
り、昼休み中の一人当たりの業務量が増え、労働強化となる、として反対し、結
局、昭和五三年七月に、前記(1)の従前の取扱いのほかに、新たに印鑑証明書の
交付を加えて窓口業務を拡大することが実施された程度にとどまり、昼窓業務の導
入には至らなかった。
(4) しかし、昭和五六年に熊本市庁舎が新設されたことから、「新庁舎に見合
うサービスを」として、再び市民やマスコミ、議会から昼窓業務の要望が高まった
ため(手当を導入してでも昼休みの窓口業務を行うようにすべきであるとの新聞論
調もあった。)、熊本市(市民局)においても昭和五七年から昼窓業務導入の本格
的な検討に入った。
(5) 熊本市は、全国及び九州管内並びに熊本県内の主要地方公共団体につい
て、昼窓業務実施の有無、業務の範囲、勤務体制、休憩・休息時間の取り方、手当
の有無等を調査した上、職員団体と折衝した結果、職員団体側も昼窓業務を求める
世論に押され、昼窓業務の導入自体は止むを得ないとしつつ、前記(3)(1)な
いし(3)を理由に、代償措置を求める対応をとった。
(6) その結果、熊本市当局と職員団体は、昭和五七年八月末、昼窓業務が前記
(3)(1)ないし(3)の特質を持ち、特殊勤務に該当すること、したがって、
その勤務の対価として特殊勤務手当を支給すること、その額については、他都市に
おける昼窓業務に対する手当及び窓口職場の課全員に対しての手当並びに熊本市の
他の特殊勤務手当を考慮して決定することで合意し、同年九月一日、当時の熊本市
長Cは、昼窓業務について本件条例六条を適用して特殊勤務手当を支給することと
して(支給期間は昭和五九年三月三一日まで。支給額は、昼休み時間における実働
が三五分程度であることから、勤務一回につきこれに見合う額)、同月六日から、
熊本市役所市民課、年金課、保険課及び六支所で昼窓業務が実施された。
(7) 右の合意に先立ち、熊本市当局は、昼窓業務の実施に際し、担当職員に手
当を支給することの適否についても検討したが、当時昼窓業務について手当を支給
する地方公共団体が相当数あった(ちなみに、昭和五七年五月二七日発行社団法人
地方行財政調査会地方行財政調査資料によれば、同年三月一日現在で、昼窓業務を
実施している地方公共団体一〇七のうち、手当を支給しているものは三二地方公共
団体に及んでいた(内訳特殊勤務手当一七、時間外勤務手当一五ごことから、職員
団体の同意を得るために、新たに昼窓業務を実施する以上、手当を支給するのも止
むを得ないとした。そして、その支給根拠につき、時間外勤務手当とするのは、昼
窓業務については別途休憩時間が付与されることから時間外といえるかどうか問題
があり、むしろ、前記(3)(1)ないし(3)の事情からすると、当時の情勢の
下では昼窓業務の特殊性を否定できないとして、昼窓業務が特殊勤務に該当すると
判断したうえ、なお、職場の職員数の増加、機械化による対応、昼窓業務が支障な
く定着すれば、職員の意識としてもそれが特殊な勤務とは見なくなることも予想さ
れたこと等から、昼窓業務に対する手当支給の是非については将来再検討の余地が
あり、恒久的な手当とするのは好ましくないと考えた。そこで、本件条例二条の別
表を改正して昼窓業務に対する特殊勤務手当を明文化するよりは、本件条例六条に
より臨時的な手当として支給するのが適当であると判断して当時の市長にその旨具
申し(なお、熊本市において調査した地方公共団体中、昼窓業務について特殊勤務
手当を支給していた地方公共団体は、条例自体で昼窓業務を特殊勤務と定めていた
けれども、当時の熊本市当局は、そこまでの調査はしていなかった。)、前記
(6)のとおり当時の市長の決裁を経て昼窓業務が実施されるに至った。
(8) 昼窓業務に対する特殊勤務手当は、翌昭和五八年より、毎年支給され(適
用期間は、当該年の四月一日から翌年の三月三一日まで)、支給額は、ベースアッ
プに伴い、毎年改定されてきた。なお、熊本市では、給与・手当等の予算を含む毎
会計年度予算について議会の議決を得るに際し、給与関係の費目として特殊勤務手
当を挙げており、昼窓手当もその中から支給されている。
(9) 控訴人は、昭和六一年一二月、熊本市長に就任したが、市長就任後、前市
長時代と同様に、毎年度毎に昼窓業務に対して特殊勤務手当を支給してきた。な
お、昼窓業務は、平成元年一一月一日からは熊本市の税務部門にも拡大された。
(10) 熊本市当局は、昭和六三年ころから、同じく昼窓業務に従事しながら、
特殊勤務手当の対象となる部署とそうでない部署があることによる不均衡が生じた
り、特殊勤務手当の対象とならない部署からの苦情が出てきたこと、反面、昼窓業
務に対して特殊勤務手当の支給対象となっている部署においても、昼窓業務が定着
化し、それが特殊な勤務であるという意識が薄らいできたことから、特殊勤務手当
の支給の見直しを検討し、毎年の協議の都度、職員団体にも撤廃を含めた検討を求
めていたが、応じるところとはならないまま推移していた。
(11) この間、熊本市議会や市民の間から、昼窓業務に対して特殊勤務手当を
支給することについて格別の異論は出されなかったが、平成二年三月ころから、昼
窓業務は当然のことであり、業務に不快性や特殊性がないにもかかわらず、手当を
支給するのは問題であるとして、市民やマスコミから批判が出始め、同年四月にそ
の廃止・既払手当の返還を求める住民監査請求がされたり、同年六月に本件訴訟が
提起されるなどしたため、控訴人は、平成三年二月に職員団体の了承のもとに昼窓
業務に対する特殊勤務手当を廃止することとした。
(二) 右認定した事実に基づき、本件手当が本件条例六条に該当するものといえ
るか否かについて考えるのに、本件条例六条が、一定の要件を課したうえ、市長の
合理的な裁量のもとに特殊勤務手当の支給を認めていることは前記1で説示すると
おりであるところ、昼窓業務の実施は、昼休みは休憩時間であって窓口業務を行わ
ないという従来からの取扱いを変えるものであるから、これに反発する職員団体の
対応にも無理からぬ面があること、手当の支給は、昼窓業務の実施の代償措置とし
て職員団体から要求されたもので、昼窓業務の実施がされていない当時の状況のも
とでは、前記(一)(3)(1)ないし(3)の事情をもって昼窓業務に特殊性が
あるとした当時の市長の判断ひいてはこれを引き継いだ控訴人の措置が市長の合理
的な裁量権の範囲を逸脱したものとは認め難いし、手当の支給期間、その額も毎年
決定されていたことからすると、同手当の支給が「臨時に」かつ「そのつど」決定
されたものというべきである。
もっとも、控訴人が熊本市長に就任した昭和六一年当時は、すでに昼窓業務に対す
る特殊勤務手当が支給されはじめてから四年を経過しており、このことからする
と、控訴人が市長就任当時及びそれ以降は、右手当が臨時に支給されるものとの観
念は薄らいできていたとみる余地もないではないが、本来右手当を、本件条例二条
によらず、六条に基づいて支給してきたのは、右手当については将来の見直しもあ
り得ることから当面の措置として行われたものといえるし、右手当の支給の是非に
ついても、毎年度職員団体との協議のうえ、結果として手当の支給を決定していた
ものであり、特殊勤務手当の支給自体については議会の議決を経ているのであるか
ら、それが本件条例六条にいう「特別の考慮を必要とする」特殊な勤務に対する手
当であるとした市長である控訴人の判断がその裁量権を逸脱したものとはいえない
し、手当の支給も、「臨時に」かつ「そのつど」決定されたものと認定して妨げな
いというべきである。
なお、本件支出は、延べ人員一万〇二二一人に対し合計一〇二九万〇九二七円とい
う多額なものとなっているけれども、そうであるからといって、昼窓業務に対する
市民の要望や右の支給経過に照らせば、本件手当の支給が本件条例六条の予定した
ところではないとか、運用上給与条例主義に違反するものとはいえないと解するの
が相当である。
したがって、本件支出が本件条例六条に違反し、違法であるとする被控訴人の主張
は理由がないから、控訴人に対し、本件支出額と同額の損害賠償を求める被控訴人
の請求は理由がないものとして棄却すべきである。
3 控訴人の故意・過失についてのみならず、前記2(一)で認定した事実によれ
ば、控訴人は、昼窓業務に対し特殊勤務手当の支給を決定した前市長の方針を受け
継いだものであるし(原審証人Aの証言によれば、当時控訴人は熊本市の助役であ
ったことが認められるけれども、同手当の支給権者は当時の市長であるから、その
ことだけでは、控訴人自身に同手当支給の責任があるとはいえない。)、毎年度毎
に熊本市当局と職員団体との交渉を踏まえたうえ、支給の是非を検討して、なお手
当を廃止するには至らないと判断して昼窓業務に対する特殊勤務手当の支給を決定
してきたものであるし、右手当の支給に対して市民やマスコミの批判が出始めたの
は本件支出の終了間際である平成二年三月ころからであって、控訴人においてこれ
に速やかに対応して平成三年二月には手当の支給を廃止していることからすると、
昼窓業務が特殊な勤務にあたらないとの意識が職員や市民の間に定着したのは本件
支出後であるといえるから、控訴人が本件支出をするに際し、控訴人に故意又は過
失があったとも言い難い。
したがって、この点からしても被控訴人の請求は理由がないというべきである。
四 よって、これと趣旨を異にし、被控訴人の請求を認容した原判決は不当である
から、民訴法三八六条により原判決を取り消して被控訴人の請求を棄却することと
し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 柴田和夫 有吉一郎 山口幸雄)

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