弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

令和元年(許)第14号終局決定変更申立て却下決定に対する抗告棄却決定に
対する許可抗告事件
令和2年4月16日第一小法廷決定
主文
原決定を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
抗告代理人大貫憲介,同髙木由美子,同山本奈緖の抗告理由第1について
1記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)抗告人,相手方及び両名の子(以下「本件子」という。)は,ロシアで同
居していたが,本件子(当時9歳)が平成28年5月に,抗告人が同年8月に,日
本に入国した。
(2)相手方は,平成28年11月,本件子について,国際的な子の奪取の民事
上の側面に関する条約の実施に関する法律(以下「実施法」という。)26条の規
定による子の返還の申立てをした。同申立てに係る事件は家事調停に付され,平成
29年1月,抗告人と相手方との間で,抗告人が同年2月12日限り本件子をロシ
アに返還する旨の合意及び養育費,面会交流等についての合意が成立し,これらが
調書に記載された(以下,これにより成立した調停を「本件調停」といい,本件調
停における子を返還する旨の定めを「本件返還条項」という。)。
(3)本件子は,平成29年2月12日の経過後も,日本にとどまっている。
2本件は,抗告人が,本件調停の成立後に,事情の変更により本件返還条項を
維持することが不当となったと主張して,実施法117条1項の規定に基づき,本
件返還条項を変更することを求める事案である。
3原審は,次のとおり判断して,抗告人の本件申立てを却下すべきものとし
た。
子の返還を命ずる終局決定が確定した場合,子の返還は迅速に行われるべきであ
るが,実施法117条1項の規定は,事情の変更が生じたときに特別に子の福祉の
観点から上記決定を変更することができることとしたものであり,変更の対象を上
記決定に限定している。また,子の返還申立事件に係る家事調停においては,種々
の利益調整をした上,子の返還の合意と併せて他の合意がされる場合があるとこ
ろ,その場合は,子の返還申立事件に係る家事調停における子を返還する旨の定め
(以下「子の返還条項」という。)のみを変更することは相当ではないのが通常で
ある。したがって,同項の規定により子の返還条項を変更することはできない。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
実施法117条1項は,「子の返還を命ずる終局決定をした裁判所(中略)は,
子の返還を命ずる終局決定が確定した後に,事情の変更によりその決定を維持する
ことを不当と認めるに至ったときは,当事者の申立てにより,その決定(中略)を
変更することができる。ただし,子が常居所地国に返還された後は,この限りでな
い。」と規定しており,子の返還条項について同項の規定を直接適用することはで
きないと解される。
もっとも,実施法117条1項の規定は,子の返還を命ずる終局決定が確定した
場合,子の返還は迅速に行われるべきではあるが,子が返還される前に事情の変更
により上記決定を維持することが子の利益の観点から不当となることがあり得るた
め,そのようなときには,上記決定が子に対して重大な影響を与えることに鑑み
て,上記決定を変更することができることとしたものと解される。子の返還条項は
確定した子の返還を命ずる終局決定と同一の効力を有するところ(実施法145条
3項),子を返還する旨の調停が成立した場合も,事情の変更により子の返還条項
を維持することが子の利益の観点から不当となることがあり得るため,そのような
ときに子の返還条項を変更する必要があることは,上記決定が確定した場合と同様
である。
また,子の返還申立事件に係る家事調停において子の返還の合意と併せて養育
費,面会交流等について他の合意がされ,その後に子の返還条項を変更することに
伴って当該調停における他の定めも変更する必要が生ずる場合があるが,その場合
は,上記定めについて,別途,家事事件手続法上の変更手続等により対処すること
が可能であるから,上記の場合があることをもって,子の返還条項を変更すること
ができると解することに支障があるとはいえない。
以上によれば,裁判所は,子の返還申立事件に係る家事調停において,子を返還
する旨の調停が成立した後に,事情の変更により子の返還条項を維持することを不
当と認めるに至った場合は,実施法117条1項の規定を類推適用して,当事者の
申立てにより,子の返還条項を変更することができると解するのが相当である。
5以上と異なり,実施法117条1項の規定により子の返還条項を変更するこ
とはできないとして抗告人の本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には,
裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定
は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこ
ととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官
山口厚裁判官深山卓也)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛