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平成13年(行ケ)第339号 審決取消請求事件(平成14年11月11日口頭
弁論終結)
          判         決
       原      告   A
       訴訟代理人弁理士   右   田   登 志 男
同          千   且   和   也
       被      告   特許庁長官 太 田 信一郎
       指定代理人   神   崎       潔
同          大   熊   雄   治
同          藤   井       昇
同山   口   由   木
同          高   木       進
同          宮   川   久   成
          主         文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が不服2000-5995号事件について平成13年6月11日にし
た審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は、平成2年12月13日、名称を「2自由面への斉発穿孔発破におけ
る装薬量決定方法」とする発明について特許出願(特願平2-419254号、以
下「本件特許出願」という。)をしたが、拒絶査定を受けたので、平成12年4月
26日、これに対する不服の審判を請求した。特許庁は、同請求を不服2000-
5995号事件として審理した上、平成13年6月11日、「本件審判の請求は、
成り立たない。」とする審決をし、その謄本は、同年7月2日、原告に送達され
た。
2 本件特許出願の願書に添付した明細書(平成4年12月4日付け及び平成9
年10月29日付け手続補正書による補正後のもの。以下「本件明細書」とい
う。)に記載した発明の要旨(以下、【請求項1】に係る発明を「本願発明1」、
【請求項2】に係る発明を「本願発明2」という。)
   【請求項1】1つの自由面に開口部をもち、かつ、他の自由面に対して最短
破壊距離WとWを保って略平行に所定の穿孔長hに穿った孔を所定の穿孔間隔長F
で複数設ける場合において、
   前記最短破壊距離Wと込物長Eと穿孔間隔長Fとを略等しく設定し、
   発破係数をcとした場合に装薬量Lの値をL=c×W×F×hにより、ま
た、装薬長Pの値をh-Eにより算定する、
   ことを特徴とする2自由面への斉発穿孔発破における装薬量決定方法。
   【請求項2】1m当りの装薬量L1値をL1=L/Pにより算出し、その値
と、所望の爆薬比重における穿孔径Rとを対比して穿孔径Rを決定することを特徴
とする請求項1記載の2自由面への斉発穿孔発破における装薬量決定方法。
 3 審決の理由
   本件審決の理由は、別添審決謄本写し記載のとおり、本願発明1、2は、社
団法人工業火薬協会編「新・発破ハンドブック」(平成元年5月15日株式会社山
海堂初版発行、甲第2号証)184頁~186頁(以下「引用例」という。)に記
載された発明(以下「引用例発明」という。)に基づいて、当業者が容易に発明を
することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決の理由中、「1.手続の経緯・本願の発明」、「2.引用例とその記載事項
の概要」及び「3.発明の対比」は認め、その余は争う。
   審決は、本願発明1と引用例発明の相違点の判断を誤り(取消事由)、ひい
ては本願発明2の進歩性の判断をも誤ったものであるから、違法として取り消され
るべきである。
2 取消事由(相違点の判断の誤り)
  (1) 審決は、「本願発明(注、本願発明1)では、『最短破壊距離Wと込物長
Eと穿孔間隔長Fとを略等しく設定』するというものであるのに対し、引用例には
このような設定についての明確な言及がない点」(審決謄本4頁23行目~25行
目)を本願発明1と引用例発明との相違点と認定した上、「引用例記載の発明
(注、引用例発明)において、所要の操業状況等に対応して、上記の相違点で指摘
した本願発明と同様の設定条件を想定することは、当業者にとって格別困難とはい
えない」(同5頁9行目~11行目)と判断したが、誤りである。
    審決は、上記相違点の判断に当たり、引用例(甲第2号証)には、「『孔
間隔』、つまり『穿孔間隔長F』に関して、『最小抵抗線の1.25倍が標準とされて
いるが,普通は,0.8倍から1.4倍までとられている』という記載があり、最短破壊
距離(最小抵抗線)Wと穿孔間隔長Fとを『略等しく設定すること』については、
引用例に示唆があるといえる」(同4頁29行目~32行目)、「込め物長に関し
て『発破効果等から,最低,最小抵抗線の長さはなくてはならない』という記載が
あるし、拒絶査定の理由で直接の引用はされていないが、上記刊行物には『ベンチ
カットのような下向きせん孔の長装薬で、2自由面発破のときには最小抵抗線の1
~1.5倍程度を込め物長とし』(91頁第6~7行)という記載もあるところから、
引用例には『最短破壊距離Wと込物長E』とを略等しく設定することについての示
唆もあるといえる」(同4頁33行目~5頁1行目)と認定判断した。しかしなが
ら、審決が摘記した引用例の記載から想定される穿孔間隔長F、最短破壊距離W及
び込物長Eの組合せは多数あり、これらの組合せの中からあえて穿孔間隔長F、最
短破壊距離W及び込物長Eの長さを略等しくするという組合せを選択することは、
引用例に示唆されておらず、その選択は容易ではない。
  (2) 被告は、引用例(甲第2号証)の「孔間隔は・・・普通は,0.8倍から
1.4倍までとられている」(185頁20行目~22行目)との記載について、四捨
五入が有効とされるような日常生活の局面では、約1倍を意味すると解するのが適
切な場合も存在し得ると主張する。しかしながら、日常生活においても、通常二桁
の数字を四捨五入することはないので、「0.8から1.4倍」が約1倍と理解されるこ
とはない。また、本願発明1は、日常生活と異なり、極めて危険を伴う発破作業に
おいて使用されるものであって、このような作業において四捨五入を用いるのは、
極めて危険である。
    被告は、さらに、本願発明1が、最短破壊距離W、込物長E及び穿孔間隔
長Fを略等しく設定しており、これらを厳密に等しく設定するものではないと主張
するが、本願発明1の「略」という記載は、誤差も含むという趣旨である。引用例
(甲第2号証)の「0.8倍から1.4倍」との記載は、危険を伴う発破作業において誤
差の範囲内とはいえない。
    被告は、加えて、引用例発明の「0.8倍から1.4倍」という要件は、本願発
明1より安全性を重視したものであると主張するが、原告の実験によれば、孔間隔
を最小抵抗線の1.25倍とすると、孔間隔を長くした分だけ装薬量が増え、上方及び
最小抵抗線方向の力を増加させるため、本願発明1よりも、多くの飛石が生じ、安
全性を重視したということはできない。
  (3) このように、2自由面への斉発穿孔発破において、引用例(甲第2号証)
の記載から想定される穿孔間隔長F、最短破壊距離W及び込物長Eの無限の組合せ
の中から一つを選択して装薬量Lを決定した場合、飛石が生ずる危険な発破を行っ
てしまう可能性が多い。これに対し、本願発明1は、相違点に係る構成を採用する
ことにより、熟練した技術や知識を有しない者であっても、容易に飛石が生じない
安全な2自由面への斉発穿孔発破を行うことができるのであるから、引用例発明よ
りも高度な技術といえる。
  (4) また、審決は、「ベンチカット発破の設計に当たっては、作業目的に係る
『破砕の程度』を考慮すると共に、『岩質,岩盤の状況』等を検討して試験発破を
行い,また、『実操業に入った後でも,ベンチの岩質,節理の発達状況』等の変化
に対処する必要があるとされるところから、極めて多岐にわたる作業の状況や条件
に対して適切に対応する結果として、『最短破壊距離Wと込物長Eと穿孔間隔長F
とを略等しく設定』する場合もありうることは当然想到されるべき事項といえる」
(審決謄本5頁2行目~8行目)と判断するが、本願発明1は、このような偶然の
設定を前提にしておらず、引用例(甲第2号証)からは想定し得ないものである。
第4 被告の反論
 1 原告主張の取消事由は理由がなく、審決の認定判断に誤りはない。
 2 取消事由(相違点の判断の誤り)について
  (1) 原告は、引用例発明(甲第2号証)について、想定される穿孔間隔長F、
最短破壊距離W及び込物長Eの組合せが多数あると主張するが、引用例には、「標
準的には最小抵抗線の1.25倍が標準とされているが,普通は,0.8倍から1.4倍まで
とられている」と記載され、四捨五入が有効とされるような日常生活の局面では、
これらの記載が約1倍を意味すると解するのが適切な場合も存在し得る。しかも、
本願発明1は、最短破壊距離W、込物長E及び穿孔間隔長Fを略等しく設定し、厳
密に等しく設定していないから、日常生活の論理に従う方が適切である。
  (2) 原告は、また、多数ある組合せの中からあえて穿孔間隔長F、最短破壊距
離W及び込物長Eの長さを略等しくするという組合せを選択することが引用例に示
唆されておらず、そのような選択は容易ではないとも主張する。しかしながら、穿
孔間隔長F及び込物長Eのそれぞれについて、最短破壊距離Wと等しい値とし得る
旨の記載がある以上、これらを略等しくすることについて示唆がないとはいえな
い。
  (3) 原告は、さらに、本願発明1の飛石に係る作用効果についても主張する。
確かに、引用例に飛石に関する言及はないが、飛石が生じないことは発破作業の安
全性に関し極めて重大であるところから、飛石の生じない安全な装薬量Lは、当然
求められるべきものである。しかも、引用例における、孔間隔は最小抵抗線の
1.25倍が標準、込物長は最低でも最小抵抗線の長さはなくてはならない旨の記載
は、本願発明1が規定する、最短破壊距離W、込物長E及び穿孔間隔長Fを略等し
く設定するという条件よりも、更に安全性を重視したものとみるべきである。
    原告の行った実験も、本願発明の上記作用効果を立証するものではない。
すなわち、原告の実験における比較発破と本願発明の発破を比較すると、前者では
最小抵抗線及び込物長が3.2m、装薬量が37.30kgであるのに対し、後者では最小抵
抗線及び込物長が3.48m、装薬量が35.29kgであり、後者の方が深い位置に少量の火
薬を配置するのであるから、後者の飛石が少ないことは、予測される結果にすぎな
い。発破作業において、安全性の見地から「全体のバランス」を考慮するのは当然
のことというべきであって、「最短破壊距離Wと込物長E及び穿孔間隔長Fとを略
等しく設定」することによる格別の効果が本件明細書に明示されているわけではな
い。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由(相違点の判断の誤り)について
  (1) 本件明細書(甲第3号証)には、「この発明(注、本願発明1、2)は、
例えば崖のように2つの自由面を有する岩盤に対して斉発穿孔発破すなわち複数の
孔を列刻して一斉に発破を行う場合において、装薬量を決定する方法に関し・・・
安全最多装薬量、穿孔径、装薬長、込物長及び穿孔間隔長を決定する方法に関す
る。・・・従来、発破の装薬量を決定する算出式として、ハウザーの公式、すなわ
ち装薬量L(kg)=発破係数c×最小抵抗線W3
が周知である。・・・ハウザーの公式
は・・・自由面が2つの場合に対応し得ない。・・・ハウザーの公式は、1点集中
装薬方式であって、装薬量Lkgの実体、すなわち、穿孔径Rmm、装薬長Pm、込物
長Em、及び斉発穿孔発破における穿孔間隔長Fmが無視されている。従って、そ
れらの実体因子間のバランスを欠いた状態で発破を行う危険性があり、事実、その
ために飛石事故が生じる事例が多発している」(2頁左欄20行目~右欄11行
目)、「ハウザーの公式L=c×W3
において、W3
=W×F×hを代入して・・・
穿孔長hは、h=E+P・・・L=c×W×F×(E+P)・・・この発明では、
W≒E≒F・・・とする」(同頁右欄37行目~47行目)、「この発明によれ
ば、2自由面において斉発穿孔発破を行う場合に、装薬量Lの実体因子を明らかに
し、かつ、最短破壊距離Wと込物長E及び穿孔間隔長Fとを略等しく設定して、全
体のバランスを考慮したので、飛石事故を生ずるおそれのない安全性を確保するこ
とができ、その基礎に立って、最多装薬量を決めることが可能となった」(4頁右
欄2行目~8行目)との記載がある。
    これらの記載によれば、本願発明1は、名称を「2自由面への斉発穿孔発
破における装薬量決定方法」とする発明であるが、単に装薬量の決定のみならず、
斉発穿孔発破に関する穿孔径、装薬長、込物長及び穿孔間隔長の決定をも技術事項
に含む発明であると認めることができる。そして、従来のハウザーの公式は、1点
集中装薬であることと、穿孔径、装薬長、込物長、及び斉発穿孔発破における穿孔
間隔長間のバランスを欠いた状態で装薬量を決定するため、飛石事故の原因となる
ことが指摘されており、最短破壊距離、込物長及び穿孔間隔長を略等しく設定した
上、ハウザーの公式において考慮されていない装薬長P、込物長E及び穿孔間隔長
Fをも装薬量算定のパラメータに加え、2自由面における斉発穿孔発破においてよ
り合理的に装薬量を決定するものと解される。
  (2) しかしながら、本願発明1における算出式は、装薬長P、込物長E及び穿
孔間隔長Fを略等しくするものの、装薬量Lについて、L=c×W×F×hなどと
記載されており、具体的な算出に当たっては、「W≒E≒F」との記載はあるもの
の、「W=E=F」を前提とする計算式ではなく、これらが異なる場合にも個々の
W、E、F及びPに基づいて算出する旨記載されている。そうすると、本件明細書
の記載は、「略」が誤差の範囲内の趣旨であるとは認められず、技術上の誤差の範
囲を逸脱する数値も許容するものと解さざるを得ない。
  (3) 引用例(甲第2号証)には、「孔間隔は,最小抵抗線と関係し,この間隔
の大小は破砕粒度と関係づけられる.標準的には最小抵抗線の1.25倍が標準とされ
ているが,普通は,0.8倍から1.4倍までとられている」(185頁20行目~22
行目)、「込も物長(注、「込め物長」の誤記と認める。)は,発破孔の装薬量と
孔径によって自ずから決まってくるが,発破効果等から,最低,最小抵抗線の長さ
はなくてはならない.・・・種々条件を考慮に入れて,最小抵抗線,孔間隔等が決
定される」(同頁30行目~35行目)との記載があり、これによれば、引用例発
明は、孔間隔(穿孔間隔長)と最小抵抗線(最短破壊距離)との関係につき、この
間隔の大小は破砕粒度と関係付けられるとした上、両者が等しい場合を含む「0.8倍
から1.4倍」との限定を付したものである。
    また、引用例(甲第2号証)には、「せん孔発破において特に重要な事項
として考えられるのが爆落石の破砕の程度である.この破砕粒度は積込み作業に直
接影響を与えるばかりでなく,運搬,破砕作業や,それぞれのコストに対しても大
きな影響を与える.このためにベンチカット発破の設計に当たっては,爆落石の破
砕の程度を,積込み作業等関連作業に最も適した大きさにすることを目的として考
慮がなされなければならない」(184頁31行目~末行)と記載があり、これに
よれば、孔間隔と最小抵抗線との関係は、破砕粒度をどの程度の大きさとするかに
よって、上記「0.8倍から1.4倍」の範囲内から適宜選択されるものと認められる。
    そうであれば、その破砕粒度から割り出した孔間隔と最小抵抗線との関係
が略等しい場合もあり得るというべきであって、審決の「最短破壊距離(最小抵抗
線)Wと穿孔間隔長Fとを『略等しく設定すること』については、引用例に示唆が
あるといえる」(審決謄本4頁31行目~32行目)、「ベンチカット発破の設計
に当たっては,作業目的に係る『破砕の程度』を考慮すると共に、『岩質,岩盤の
状況』等を検討して試験発破を行い,また、『実操業に入った後でも,ベンチの岩
質,節理の発達状況』等の変化に対処する必要があるとされるところから、極めて
多岐にわたる作業の状況や条件に対して適切に対応する結果として、『最短破壊距
離Wと込物長Eと穿孔間隔長Fとを略等しく設定』する場合もありうることは当然
想到されるべき事項といえる」(同5頁2行目~8行目)との判断に誤りはないと
いうべきである。
  (4) また、引用例発明(甲第2号証)は、込物長と最小抵抗線との関係につ
き、前者が後者以上であるとし、この点で本願発明1の「略等しい」と一致する部
分を含む。そして、引用例には「込め物長は,発破孔の装薬量と孔径によって自ず
から決まってくる」(185頁30行目~31行目)との記載があるところ、これ
は、同一穿孔長に対して、装薬量と孔径が決まれば、装薬長が一義的に決定し、そ
の結果穿孔長と装薬長の差分である込物長が自然と定まることを述べたものであ
る。引用例発明において、穿孔径が小さければ装薬長が長くなり、ひいては込物長
が短くなることから、込物長の長さは穿孔径次第であることが明らかであり、込物
長が最小抵抗線と同程度となるまで穿孔径を小さくしてはならない理由は見当たら
ないから、引用例の上記の記載は、込物長と最小抵抗線を略等しくする場合がある
ことを示唆するといい得るものであって、審決の「引用例には『最短破壊距離Wと
込物長E』とを略等しく設定することについての示唆もあるといえる」(審決謄本
4頁末行~5頁1行目)との認定判断に誤りはない。
    そうすると、審決の「引用例記載の発明において、所要の操業状況等に対
応して、上記の相違点で指摘した本願発明と同様の設定条件を想定することは、当
業者にとって格別困難とはいえない」(審決謄本5頁9行目~11行目)との判断
にも誤りはないというべきである。
  (5) 原告は、本願発明1の作用効果について、原告の実験によれば、孔間隔を
最小抵抗線の1.25倍とすると、本願発明1よりも多くの飛石が生じると主張する。
    しかしながら、装薬量が孔間隔に比例することは、装薬量算出式から明ら
かであり、孔数は孔間隔に反比例するから、斉発穿孔発破における総装薬量が孔間
隔によらないことは明らかである。また、装薬量算出式によれば、装薬量は穿孔長
には比例するものの、穿孔長が一定である場合には、込物長にはよらないことが明
らかである。すなわち、孔間隔を増加した場合、総装薬量及び総破壊力は不変で、
個々の装薬量及び破壊力が増加する。そして、2自由面への斉発穿孔発破では、二
つの自由面への方向及び隣接する孔方向の計3方向に岩盤破壊が進むのであるか
ら、孔間隔及び個々の破壊力を増加した場合、二つの自由面への方向への破壊力が
過剰となり、多量の飛石を生ずることは、当業者であれば容易に予測し得ることで
ある。
    したがって、引用例発明(甲第2号証)に従い、破砕粒度の観点から最短
破壊距離と穿孔間隔長を略等しくした場合に、飛石防止の点で有利であることは、
当業者にとって容易に予測し得るというべきである。
    また、原告の実験(甲第5、第6号証)は、最短破壊距離と込物長を略等
しくした場合とそうでない場合とを比較した実験ではないから、両者が略等しい場
合に飛石が少なくなるとの作用効果を立証するものではない。理論上も、込物長が
大きくなったとしても、個々の装薬量は変わらず、爆薬と自由面の距離が大きくな
るのであるから、これによって飛石が多くなると理解することは困難である。
  (6) 原告は、また、多数ある組合せの中からあえて穿孔間隔長F、最短破壊距
離W及び込物長Eの長さを略等しくするという組合せを選択することが引用例に示
唆されていないとか、本願発明1が、このような偶然的な設定を前提にしているも
のではなく、引用例からは想定し得ないものであると主張する。しかしながら、本
願発明1がこのような選択発明として進歩性を有するというためには、その作用効
果が当業者の予測し得ないほど顕著なものであることを要するところ、上記のとお
り、穿孔間隔長と最短破壊距離を略等しくした場合の作用効果には予測性があり、
最短破壊距離と込物長を略等しくした場合の作用効果を認めることはできないか
ら、原告の主張は採用することができない。
  (7) このように、本願発明1は、引用例発明(甲第2号証)に基づいて当業者
が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2について判断するま
でもなく、本件特許は拒絶されるべきものである。
 2 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決
を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
   よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用
の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判
決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官   篠   原   勝   美
            裁判官   岡   本       岳
            裁判官   長   沢   幸   男

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