弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取消す。
     本件を松山地方裁判所へ差戻す。
         理    由
 抗告人代理人は、「原決定を破棄する。本件を松山地方裁判所大洲支部へ差戻
す」との決定を求め、抗告の理由として、要旨次のとおり主張した。
 一 原決定の事実の認定は左の点に誤りがある。
 (一) 原決定は、「申立人は被申立人から受託者として手数料一枚につき金
二、六〇〇円(但し内金六〇〇円は割戻す約束)を取得し、一方仲買人等に対して
は委託者として一枚につき金七五〇円の手数料を支払つていた」旨認定している
が、申立人(本件抗告人)は取次をしていた者で、被申立人(本件相手方)のため
その計算において申立人の名で清算取引の委託をしていたわけであるから、その委
託手数料の額は神戸生糸取引所理事会の決定するところで、申立人の左右できると
ころでないのである。ただ商慣習としていわゆる割戻しが行なわれるのであり、そ
の割戻し金額について本来ならば各仲買人から各取引に応じて割戻されたとおりに
計算すべきなのであるが、取次に直接必要な経費を捻出するためおよび計算の便宜
のため、仲買人の如何ならびに長期短期の別にかかわりなく一枚につき金六〇〇円
の割戻しとして計算すべきことを特に約していたにすぎないのである。
 (二) また原決定は、「昭和三八年七月頃に至つて被申立人は申立人会社のA
問屋部長と清算取引の打切りを話し合つたがその後も被申立人の強い抗議もなく黙
認の形で清算取引が行なわれて来た」旨認定しているが、被申立人は昭和三八年七
月末日以後も建玉の注文をなしあるいは現物を清算に売りつなぐことを指示し、申
立人が右時期以前の建玉をも含めて速やかな手仕舞を促したに拘らず強気一本の相
場観に終始し、大引まで放置していたもので、前記のような清算取引の打切りの話
などは全くなかつたものである。
 (三) また原決定は、「申立人は被申立人に対し約束手形(金額一七万二、〇
〇〇円、満期昭和四〇年七月六日、振出人被申立人、名宛人申立人)債権金一七万
二、〇〇〇円を有するが、反面被申立人は申立人に対し生糸売買代金債権金一六万
七、五五一円を有し、申立人が右債権を支払うことを条件に右約束手形金を支払う
約束であるところ、申立人が右生糸代金の支払をしなかつたので、被申立人も右約
束手形金を支払わなかつた」旨認定しているが、右約束手形振出の原因は為替切れ
代金等の支払のためであり、従つて被申立人の生糸売買代金債権なるものは存在し
なかつたものである。
 二、 原決定が申立人と被申立人との取引を取次であると判断したことは相当で
あるが、その取次行為を私法上無効と判断したことは失当である。
 (一) 原決定は商品取引所法(昭和四二年法律第九七号による改正前のもの)
第九三条違反をいうけれども、「業として」なる要件を無視して判断している。申
立人の如き営業を営む商人が顧客の依頼により「業として」でなく取次行為をする
場合は少なくなく、そのような場合を規整する法令はない筈である。
 (二) 仮に本件の取引が「業として」した取次にあたり、右法律第九三条に違
反するとしても、その私法上の効力が否定さるべきいわれはない。同条は強行法規
でなくして取締法規であり、これに違反した行為であつても私法上の効力には影響
がない。なお抗告人のこの点に関する法律上の見解の詳細は別紙一の「抗告人の法
律上の見解」のとおりでる。
 以上のとおり主張し、疎明として、疎甲第八八号証ないし第九〇号証を提出し
た。
 相手方代理人は、「本件抗告を却下する。抗告審の訴訟費用は抗告人の負担とす
る」旨の決定を求め、抗告人の抗告理由に対する答弁として、別紙二の「相手方の
答弁」のとおり主張した。
 これに対して当裁判所は次のとおり判断する。
 原決定は、申立人(本件の抗告人)と被申立人(本件の相手方)との間に昭和三
六年頃から昭和三九年一月頃まで継続して生糸の清算取引が行なわれたこと、申立
人は神戸生糸取引所の仲買人の資格を有しなかつたので、被申立人の注文を仲買人
資格を有する申立外株式会社銭商店その他に自己の名で取次いでいたこと、申立人
と右仲買人等との清算取引上の債権債務は被申立人とは関係なく決済されていた
が、申立人と被申立人との間では右の取引による利益又は損失をすべて被申立人に
帰属させていたこと、申立人は被申立人よりは受託者として一定の手数料を取得
し、一方前記仲買人等に対しては一定の手数料を支払つていたこと、昭和三八年七
月頃より損金が多くなり、結局申立人主張の如き債権が生じたことを認定したもの
であつて、その認定は挙示の疎明資料によりこれを是認することができる。
 ところで原決定は、右申立人の行為は商品取引所法(昭和四二年法律第九七号に
よる改正前のもの)第九三条に違反するとした上、同条を強行規定(効力規定)で
あると解し、申立人の被申立人に対する本件債権は法律上申立人に対し主張し得な
いものであるとした。
 案ずるに、申立人が取次行為を「業として」行なつたことは前認定の申立人の行
為の態様自体よりしてこれを認めることができ、従つて申立人の行為は右改正前の
商品取引所法第九三条に違反するというべきである。しかし、同条が強行規定(効
力規定)であつて、これに違反する法律行為は無効であるとの原裁判所の判断はに
わかに首肯することができない。
 原決定は、法律上一定の資格を有する者のみに取引行為を認められた場合、それ
に違反する無資格者の取引行為は原則としてその効力を有しないとし、右商品取引
所法第九三条に違反する行為も私法上無効であるとしているのであるけれども、法
律が一定の資格を有する者に取引行為を認め他の者にこれを認めないとしている場
合にも、その趣旨は各法律によつて一様ではなく、法律上の資格を有しない者の取
引であるという理由だけで当該取引が無効とならねばならぬものではない。
 <要旨>そして、右商品取引所法第九三条は仲買人資格を有しない者が業として取
次等の行為をなすことを禁止しその違反には体刑を含む刑罰を以て臨んでい
る(同法第一五五条)けれども、そもそも取次等の行為自体はほんらい通常の商行
為であつて公序良俗に違反せず、また無資格者の取次等は投資家の保護上好ましく
なく商品市場の健全公正な運営の妨げとなるとはいえ、社会共同生活の基本的な秩
序に影響を及ぼす程のものでなく、その行為の私法上の効力まで否定しなければ法
の所期する目的を達成できないとは考えられないから、右商品取引所法第九三条は
強行規定(効力規定)ではなくして取締規定であり、同条違反の行為は私法上無効
でないものと解するを相当とする。
 そうすると、原裁判所の解釈は失当であるから原決定を取消し、本破産申立の当
否を更に審理させるため、本事件を松山地方裁判所へ差戻すこととする。
 (裁判長裁判官 橘盛行 裁判官 今中道信 裁判官 藤原弘道)

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