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平成17年7月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(ワ)第3905号 特許権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結の日 平成17年5月27日)
             判       決
原      告   アルゼ株式会社
訴訟代理人弁護士     美勢克彦
同            松本 司
同            岩坪 哲
被      告     株式会社SNKプレイモア
訴訟代理人弁護士     高橋悦夫
同            西島佳男
同            目方研次
同            駒井慶太
同            芦住敦史
同            妻鹿直人
同            辰巳和男
同            塩谷 雄
補佐人弁理士     辰巳忠宏
             主       文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙物件目録記載のパチンコ型スロットマシン(以下「被告製品」
という。)を製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。
2 被告は,被告製品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成16年3月1日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
 本件は,「遊技機」に関する後記の特許権を有する原告が,被告の製造販売
する被告製品は,原告の特許発明の技術的範囲に属するものであり,被告製品を製
造販売する行為が,原告の特許権を侵害する旨主張し,被告製品の製造,販売行為
の差止め及び被告製品の廃棄並びに損害賠償を求めている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び末尾に掲げた証拠により認
定される事実)
(1)原告の権利(甲1,2)
原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」という。)。
特許番号  第3056742号
発明の名称  遊技機
優 先 日平成9年12月5日
出 願 日  平成10年11月25日
登 録 日  平成12年4月14日
(2)特許請求の範囲の記載等
ア 本件特許権について,特許異議の申立てがあり,特許庁は,これを異議
2000-74578号事件として審理した。原告は,この審理の過程で,平成1
3年8月20日に,その出願に係る願書に添付された明細書の訂正を請求した(以
下,この訂正を「本件訂正」といい,本件訂正後の明細書を「本件明細書」とい
う。)。特許庁は,審理の結果,平成14年2月14日,「訂正を認める。特許第
3056742号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。」との決定をし
た。(甲3)
イ 本件明細書の【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載は,次のとおり
である(以下,この発明を「本件特許発明」という。)。
「複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記
確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当選フラ
グを成立させる入賞態様決定手段と,種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞
態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合せを前記各列に停止表示
する可変表示装置と,この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段
と,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに
応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,
前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止でき
る所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図
柄組み合わせを停止表示させない可変表示停止手段と,前記可変表示開始手段から
の信号に基づいて行われる,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現れる,
複数の効果音の中から選択された効果音による報知,および前記可変表示停止手段
からの信号に基づいて行われる,前記可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中
から選択された停止表示態様による報知により形成される演出態様組
合せを,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に基づいた報知情報として遊
技者に報知する報知手段とを備えて構成される遊技機。」
ウ なお,本件明細書の【特許請求の範囲】の【請求項3】の記載は次のと
おりである。
「前記報知手段は,前記可変表示の開始に伴って効果音を発生する音発
生手段と前記可変表示の停止に連動して演出表示する連動演出手段との各報知態様
の組合せ,前記音発生手段と前記可変表示が全て停止したときに演出する停止演出
手段との各報知態様の組合せ,前記連動演出手段と前記停止演出手段との各報知態
様の組合せ,または前記音発生手段と前記連動演出手段と前記停止演出手段との各
報知態様の組合せの中のいずれかの報知態様の組合せを選択する報知態様選択手段
を有し,選択した報知態様の組合せを前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様
に基づいた報知情報として報知することを特徴とする請求項1または請求項2に記
載の遊技機。」
(3) 本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下「構成要
件A」などという。)
A 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記
確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当選フラ
グを成立させる入賞態様決定手段と,
B 種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定され
た入賞態様に応じた図柄の組み合せを前記各列に停止表示する可変表示装置と,
C この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と,
D 遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,
E この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停
止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグ
に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されない
と,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない
可変表示停止手段と,
F-① 前記可変表示開始手段からの信号に基づいて行われる,配当のあ
る複数の異なる入賞態様に共通して現れる,複数の効果音の中から選択された効果
音による報知,
-② および前記可変表示停止手段からの信号に基づいて行われる,前
記可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中から選択された停止表示態様による
報知
-③ により形成される演出態様組合せを,前記入賞態様決定手段で決
定された入賞態様に基づいた報知情報として遊技者に報知する報知手段
G とを備えて構成される遊技機。
(4)被告の行為
 被告は,業として,被告製品を製造,販売している。
(5)被告製品の構成と動作
被告製品の構成と動作については,別紙被告製品説明書に記載の限りにお
いて,当事者間に争いがない。
(6)本件特許発明の構成要件AないしEの充足性
別紙被告製品説明書のアに記載の被告製品の構成①ないし⑤は,本件特許
発明の構成要件AないしEを充足する。
2 本件の争点
(1)被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するか-構成要件Fの充足性
ア 構成要件F-①における「効果音」の意義(争点1)
イ 構成要件F-②における「停止表示態様」の意義(争点2)
(2)本件特許権は無効審判により無効にされるべきものであるか
ア 特許法29条2項の進歩性の有無(争点3)
イ 特許法36条6項2号違反の有無(争点4)
(3)原告の被った損害(争点5)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(構成要件F-①における「効果音」の意義)について
(1)原告の主張
ア 被告製品においては,遊技者は,遊技開始時(スタートレバー押下によ
る当該信号の受付時)に,配当のある複数の入賞役に共通して現れる,複数種類の
効果音の中から選択される効果音によって,当該ゲームにおいて成立している内部
当選役をある程度予測することが可能となる。また,被告製品においては,「遊技
開始時サウンド処理」のルーチン(サブ基板に搭載されたチップに格納されている
プログラム)とは別のルーチン(液晶制御基板に搭載されたチップに格納されてい
るプログラム)から,液晶画面上のアニメーションの進行に従って発生する効果音
(以下「液晶演出音」という。)との合成音がスピーカから発せられる。遊技者
は,この液晶演出音に注意を払い,ゲームを行う傾向にあるから,この液晶演出音
も,「サウンド出力04H」の処理音などと共に発せられ,役に対応するものであ
って,構成要件F-①における「効果音」といえる。
イ 被告の主張に対する反論
a) 被告製品の「サウンド出力04H」の処理音について
① 被告製品の遊技開始時サウンド処理における「サウンド出力04
H」による処理音は,「サウンド出力04H」に代わって,「サウンド出力05
H」,「サウンド出力B8H」,「サウンド出力B9H」の処理音が現れること
や,遊戯開始音が発生しない場合もあることからすると,パチスロ機一般にいうス
タート音や通常音とはいえない。
また,本件明細書の請求項1においては,被告が主張しているよう
に「効果音」を「遊技開始時に最初に発せられる音」などとは限定していない。
② 被告は,被告製品の「サウンド出力04H」の処理音は,「ハズ
レ」や「リプレイ」に共通して現れるから,本件特許発明の「効果音」には当たら
ない,と主張する。しかし,構成要件F-①の「配当のある複数の異なる入賞態様
に共通して現われる・・・効果音」が,「ハズレ」にも共通して発生することは,
構成要件F-①における文言とは矛盾せず,本件明細書の実施例にも示されている
のであって,被告の主張は失当である。なお,「リプレイ」は,次のゲームにメダ
ルを投入しなくてもゲームを続行できるものであるから,実質的に3枚の配当利益
を遊戯者に与えるもので,配当のある入賞役に該当する。
③ 被告製品においては,「サウンド出力04H」が現れない場合に
は,特定の入賞態様の当選フラグ成立を遊技者が認識できるようになっていること
は,逆にいえば,「04H」の処理音に基づいて当該ゲームにおける入賞態様当選
状態についてある程度の予測が可能となっているものというべきである。
b) 被告製品の「サウンド出力B8H」,「サウンド出力B9H」の処理
音について
被告は,被告製品の「サウンド出力B8H」,「サウンド出力B9
H」は,ボーナス確定時にボーナスの確定を予測させることを目的として現れるに
すぎないなどと主張する。
しかし,被告製品の「サウンド出力B8H」,「サウンド出力B9
H」は,「中チェリー(2枚役)」,「上下チェリー(4枚役)」,「ボーナス」
が内部当選した場合に発せられるものである以上,当該報知音によって,各入賞態
様の当選フラグ成立が報知されていることに変わりない。
c) 被告製品の「液晶演出音」について
被告は,被告製品の液晶演出音は,遊技開始時に最初に報知される効
果音ではなく,また,液晶演出の一部であって,構成要件F-①の「効果音」では
ない,と主張する。しかし,被告製品の液晶演出音も複数の配当のある入賞態様に
共通して発せられる効果音であるから,構成要件F-①を充足する。
液晶部における画面表示との連動の有無に関わらず,被告製品の落下
音,飛行音等の演出音が遊技者の耳から感得される効果音であることは自明であっ
て,これを構成要件F-①における「効果音」に当たらないとすべき理由はない。
(2)被告の主張
ア 本件明細書の段落【0038】,【0124】の記載などからすれば,
構成要件F-①における「効果音」は,遊技開始時における「遊技開始音」といえ
る。
また,本件明細書の段落【0114】,【0116】の記載からすれ
ば,構成要件F-①における「効果音」とは,遊技者に対し,その聴覚効果によ
り,入賞態様をある程度予測させる効果を持つ音であると解することができる。
イ 被告製品における「サウンド出力04H」は,いわゆるスタート音又は
通常音に該当するものであり,構成要件F-①の「効果音」に該当しないことは明
らかである。すなわち,被告製品の「サウンド出力04H」は,「ハズレ」や配当
のない「リプレイ」の場合にも現れ,役に内部当選しているかどうかに関係なく現
れる音であるから,構成要件F-①の「配当のある複数の異なる入賞態様に共通し
て現れる」効果音ではなく,すべての場合に現れることがある音であるため,成立
役を「ある程度予測」させるといった効果のある音でもない。
ウ 被告製品における「サウンド出力B8H」は,ボーナス確定時にしか現
れない音であるため,構成要件F-①の「配当のある複数の入賞役に共通して現れ
る・・・効果音」ではなく,ボーナス確定を報知する音であるから,当該ゲームに
おいて成立している役をある程度予測させる音ではない。
エ 被告製品における「サウンド出力B9H」は,一般遊戯中は,特定の小
役(上下チェリー(4枚役))の場合にしか現れず,ボーナス確定後は,「ハズ
レ」及び「中チェリー(2枚役)」,「上下チェリー(4枚役)」,「ボーナス」
に共通して現れることがあるが,その場合は,ボーナス確定を予測させることを目
的としたものであって,成立している内部当選役をある程度予測させることを目的
としていないものであるから,構成要件F-①の「配当のある複数の異なる入賞態
様に共通して現れる・・・効果音」ではない。
オ 原告が主張する液晶演出音は,構成要件F-①における「効果音」には
当たらない。液晶演出音だけが独立して入賞態様を報知する目的で音を発すること
はないし,液晶演出音は,スタートレバー押し下げから,相当時間経過後に徐々に
発生するものであり,遊技開始時に最初に報知される音ではない。
また,被告製品の液晶演出音は,箱が上から地面に落ちるなどという液
晶部の表示を,よりリアルに遊技者に感知させるための補助をしている音にすぎな
い。被告製品の液晶演出とこれに付随する液晶演出音は,技術的には視覚的効果を
もたらすもので,聴覚的効果をもたらすものではない。本件明細書においても,バ
ックランプ消灯・点灯による連動表示態様は,視覚的効果をもたらすものとされて
おり(【0114】ないし【0116】),これに代わるものとして,液晶表示部
に登場させたキャラクタの4種類の動作パターンによって4種類の連動表示態様を
演出すると記載されているのであって(【0212】,【0213】),液晶表示
部の表示は,視覚的効果をもたらす技術として分類されるものである。
カ 被告製品には,以上のほかに,「配当のある複数の異なる入賞態様に共
通して現れる,複数の効果音の中から選択された効果音」は存在しないから,構成
要件F-①を充足しない。
2 争点2(構成要件F-②における「停止表示態様」の意義)について
(1)原告の主張
ア 被告製品は,別紙4の「消灯演出態様」に各記載の停止表示態様による
報知が行われているから,構成要件F-②を充足する。
イ 被告は,構成要件F-②の「可変表示装置の複数種類の停止表示態様」
とは,3リール全停止時におけるリールランプの点滅などによって演出される表示
態様に限られると主張する。しかし,構成要件F-②を,このように限定解釈すべ
き理由はない。
a) すなわち,本件明細書における段落【0050】ないし【0053】
の記載からは,可変表示手段の全停止時におけるバックランプ等を使用した第1な
いし第4の演出表示態様が単なる実施例であることが導かれるだけなのである。
かえって,本件明細書における実施例の説明には,「各停止ボタン1
6~18の操作によって各リール3~5の回転が停止されるのに連動し,4種類の
表示態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を順次演出する連動演出手
段」(【0040】)との記載と,「各リール3~5の回転表示のすべてが停止し
たときに,4種類の表示態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を演出
する停止演出手段」(【0048】)との記載があり,いずれも,回転の「停止」
の際に遊技者に示される演出「表示態様」を明示していることから,構成要件F-
②における「停止表示態様」は,可変表示装置すなわち「リール」の「停止」時に
おける演出「表示態様」であることは,当業者であれば容易に理解できるものであ
る。
b) リールの全停止時においては,遊技者のストップボタンスイッチ操作
は既に終了しており,その時点における演出表示態様が,本件明細書の【課題を解
決するための手段】における「遊技が進行していくのに伴」(【0012】)う報
知,あるいは,「遊技者が操作を進めて行くに連れて」(【0012】)の報知と
して作用することはないこと,及び,【発明の効果】の「本発明によれば,・・・
入賞態様が遊技の一連の流れの中で遊技者に報知される。」(【0262】)こと
もないことからすれば,構成要件F-②における「停止表示態様」をリールの全停
止時における演出との意味でのみ解釈することは不合理である。
c) 本件明細書の請求項3においては,「可変表示の停止に連動して演出
表示する連動演出手段」による報知情報,すなわち,リールの回転停止と連動する
演出表示態様と,「可変表示がすべて停止したときに演出する停止演出手段」によ
る報知情報,すなわち,リールの全停止時に実行される演出表示態様とが,それぞ
れ別の演出態様として併記されている。複数の下位概念を記した請求項3との関係
において,請求項1における「停止表示態様」がこれらの下位概念を包含する上位
概念であることは疑いがなく,そうであれば,請求項1における「停止表示態様」
には,「前記可変表示の停止に連動して演出表示する連動演出手段」を含み得るこ
とは,本件明細書に接した当業者であれば,直ちに理解できる事項である。
d) 本件訂正と同時に提出された意見書(乙4)(以下「本件意見書」と
いう。)には,本件特許発明が,リールバックライトによる各リールの停止時にお
ける演出表示態様も,全停止時における演出表示態様も,いずれも含むものである
ことが説明されている。
(2)被告の主張
ア 本件特許発明の構成要件F-②における「可変表示停止手段からの信号
に基づいて行われる,前記可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中から選択さ
れた停止表示態様による報知」との記載は,当該特許発明を具体化した遊技機が具
体的にどのような構成を有するものかを特定した記載となっていない。
このような機能的・抽象的な記載となっている構成要件F-②の解釈に
当たっては,①明細書中にその概念的説明があるかどうか,②概念的説明がなく,
また,技術常識によりその意味内容を確定できない場合,明細書及び図面により示
されている具体的な技術的思想を把握して意味を確定すべきである。また,特許請
求の範囲に記載された用語について発明の詳細な説明等にその意味するところや定
義が記載されているときは,それらを考慮して特許発明の技術的範囲の認定を行う
べきである。
そこで,本件明細書の記載に基づき,構成要件F-②の「停止表示態
様」の意義を解釈する。
本件明細書の段落【0048】,【0049】及び図12ないし図1
5,段落【0060】,【0061】,【0137】,【0138】,【015
1】及び図39ないし図52からすれば,「停止表示態様」とは,実施例1及び同
2のいずれにおいても,各リール3ないし5の回転表示のすべてが停止したとき
に,数種類の表示態様(リールランプ点滅パターン)の中の一つの表示態様で各リ
ール3ないし5の表示を演出する停止演出手段によって演出される表示態様であ
る,と解することができ,かつ,当業者においてこれ以外の解釈が生ずる余地はな
い。
これに対し,「連動表示態様」については,本件明細書の段落【004
0】ないし【0045】によれば,各リールの回転表示が停止されるのに連動し
(すなわち,1つずつのリールが停止するごとに,その停止したリールについ
て),リールランプの消灯等によって演出される表示態様(各リールの各段に配置
されたバックランプがリール帯ごとに一斉に消灯するかしないかにより演出するも
の)である,と解すべきである。
本件明細書においては,「停止表示態様」と「連動表示態様」との用語
は,明確に区別された別の技術概念として用いられており,別の技術用語として本
件特許発明の実施例を構成しているのである。
イ 被告製品のバックライト消灯演出は,各リールが停止するごとに,その
停止したリールに関して,リール帯ごとにリールランプを一斉に消灯することによ
って行う演出であって,三つのリールの回転が全部停止したときに,リールランプ
点滅などにより演出される表示態様ではない。
したがって,被告製品におけるバックライト消灯演出は,構成要件F-
②における「停止表示態様」を充足しない。
ウ 原告が主張するように,構成要件F-②における「停止表示態様」の解
釈として,「連動演出手段」と「停止演出手段」による両表示態様を含み得るとす
れば,本件明細書においては,特許請求の範囲における「停止表示態様」と発明の
詳細な説明における「停止表示態様」とは,用語の意義が不統一となり,本件明細
書は,特許法36条6項2号に適合しないことになる。構成要件F-②における
「停止表示態様」の意義は,発明の詳細な説明中の「停止表示態様」の用語と同一
のものと解してのみ,本件特許発明は有効といえる。
エ 多項制の下では,必ず特定の請求項に基づき,特許発明の技術的範囲を
確定せねばならず,複数の請求項を総合した解釈により,その技術的範囲が確定さ
れるべきでない(ただし,技術的範囲の解釈資料として,請求原因となっている特
定の請求項以外の請求項の記載を参酌することが許容される場合があることは否定
しない。)。原告は,請求項3との関係において,請求項1における「停止表示態
様」が,請求項3に記載された下位概念を包含する上位概念であることは疑いない
と当然のように断定するが,請求項1の「停止表示態様」が請求項3の「停止演出
手段」及び「連動演出手段」による表示態様の上位概念であると解釈することはで
きない。
仮に,請求項3が,請求項1の実施態様項的記載として,下位概念を含
む記載をしているとしても,請求項3に記載されているのは,報知手段の実施態様
であるから,停止表示態様に,連動演出手段と停止演出手段とによる両表示態様が
含まれるとはいえない。
オ 出願経過を参酌することが許されるのは,特許請求の範囲が不明確であ
る場合に,明細書の発明の詳細な説明及びその図面の記載に基づいても解釈でき
ず,かつ,出願人の客観的意図を解釈資料とする場合だけであって,出願人の主観
に基づく拡張解釈が許されるものではない。出願経過において出願人が述べたこと
と矛盾することを,侵害訴訟において主張することは,訴訟上の信義則又は禁反言
の法則により許されない(包袋禁反言)として,当該特許請求の範囲を限定して解
釈する方向で出願経過が参酌されることは多い。しかし,本件では,特許請求の範
囲は本件明細書の記載からその用語の意義が確定できるのであるから,原告の本件
意見書や訂正請求書の記載は,参酌すべきではない。
3 争点3(特許法29条2項の進歩性の有無)について
(1)被告の主張
ア 特開平8-117390号公報(以下「刊行物1」という。)には,複
数種類の内部的当選役の種類に応じて複数種類のバックランプの点灯パターンによ
り,内部的当選役を報知すること,複数種類の内部的当選役の種類に応じて複数の
適当な音で内部的当選役を報知すること,このバックランプの点灯パターンと適当
な音による報知を組み合わせて内部的当選役を報知することが開示されている。た
だし,この報知のタイミングは,スタートスイッチからの信号に応じて内部抽選が
なされた後に報知するとの例示があるだけで,特に限定されていない(以下,この
発明を「引用発明1」という。)。
また,特開平6-114143号公報(以下「刊行物2」という。)に
は,スタートレバー押下後に,音によりボーナス当選を報知するとの発明が記載さ
れている(以下「引用発明2」という。)。
イ 刊行物1及び刊行物2には,複数種類の内部的当選役の種類に応じて複
数種類のバックランプの点灯パターンにより,内部的当選役を報知すること,複数
種類の内部的当選役の種類に応じて複数の適当な音で内部的当選役を報知するこ
と,このバックランプの点灯パターンと適当な音による報知を組み合わせて内部的
当選役を報知すること,その点灯パターンと適当な音による報知のタイミングとし
ては,スタートレバー押し下げ後のタイミングとストップボタン押下げ後のタイミ
ングが例示されていることは明らかである。したがって,引用発明1に引用発明2
を組み合わせることにより,複数種類の内部的当選役の種類に応じて複数種類のバ
ックランプの点灯パターンにより,内部的当選役を報知すること,複数種類の内部
的当選役の種類に応じて複数の適当な音で内部的当選役を報知すること,このバッ
クランプの点灯パターンと適当な音による報知を組み合わせて内部的当選役を報知
すること,その点灯パターンと適当な音による報知のタイミングとして,まず,ス
タートレバー押下後のタイミングで第1の報知をし,この第1の報知を「適当な
音」によること,次いでストップボタン押下後のタイミングで第2の報知
をし,この第2の報知をバックランプの点消灯パターンによるとの構成に想到する
ことは,当業者であれば容易である。
ウ 引用発明1と引用発明2とを組み合わせたものと本件特許発明とで異な
る点は,「適当な音」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現れ
る・・・効果音」とする点のみである。
刊行物1において,バックランプ点消灯に加え,適当な音を用いる場
合,内部的当選役に応じた複数種類の音を用いることが示唆されているが,その適
当な音は,内部的当選役の種類ごとにすべて異なる音を用いると限定されているわ
けではない。また,刊行物2においては,ビックボーナス,ボーナスを所定の音で
報知し,それ以外の入賞態様についてはリール回転音を対応させていることが開示
されている。
仮に,引用発明2のリール回転音は,内部的当選役を報知する目的の音
ではないとしても,結果として所定の音と対比されるリール回転音をそのような目
的で利用することは当業者であれば容易に想到し得る。
以上からすれば,効果音を配当のある複数の異なる入賞態様に共通して
現れるものとすることにより,何らかの当選・非当選を遊技者に報知するとの本件
特許発明の構成は,当業者が容易に想到し得るものである。
(2)原告の主張
ア ボーナスフラグの成立を遊技者に認識させる演出手段を講じることは公
知であっても,複数種類の停止表示態様により小役も含めた成立フラグの告知を行
うとの発想は,刊行物1からは得られない。
また,引用発明1と引用発明2から適当な音と何らかの演出表示による
報知とを組み合わせて本件特許発明に想到することはなく,この組合せにより,遊
技の進行に伴い,徐々に入賞態様の内部的当選が報知され遊技者が熱くなるとの効
果が予想されるものでもない。
イ 引用発明2の「リール回転音」は,単にボーナスフラグが成立していな
い状態であることを遊技者に認識させるに止まる音であって,配当のある入賞態様
に内部当選していることを遊技者に認識させるべく遊技の進行に応じて報知を行
う,本件特許発明の「効果音」に相当する構成を開示するものではない。
ウ 以上によれば,引用発明1に引用発明2を組み合わせても,本件特許発
明の構成に想到することは容易ではない。
4 争点4(特許法36条6項2号違反の有無)について
(1)被告の主張
構成要件F-②における「停止表示態様」について,本件明細書の記載に
よっては,各リールの回転表示のすべてが停止したときに,バックランプにより各
リールの表示を演出する停止演出手段によって演出される表示態様を指すのか,本
件明細書における「連動表示態様」と「停止表示態様」の両方を含むものか,いず
れか不明であり,本件特許発明の技術的範囲は不明確である。
したがって,本件特許発明は,特許法36条6項2号に違反して,特許さ
れたものである。
(2)原告の主張
構成要件F-②における「停止表示態様」とは,字義どおり,複数列のリ
ールの「停止」時において,遊技者に「表示」される演出「態様」を意味するもの
であり,発明の詳細な説明がなくとも理解できる事項であるから,何ら不明瞭な記
載ではない。
5 争点5(原告の被った損害)について
(1)原告の主張
原告は,本件特許発明の実施品を1台当たり33万円で販売し,1台当た
り10万円の利益を得ることができた。
被告は,少なくとも被告製品を1万台販売した。
よって,原告は,被告に対し,被告の本件特許権侵害行為により,10万
円×1万=10億円の損害賠償請求権を有する。
(2)被告の主張
被告が,被告製品を少なくとも1万台販売したことについては認め,その
余は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点2(構成要件F-②における「停止表示態様」の意義)について
(1)本件特許発明の技術的範囲の解釈
平成14年法律第100号による改正前の特許法70条(以下では,同条
1項及び2項について,特に断らなくても,改正前のものを指すこととする。)1
項には,「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記
載に基づいて定め」ること,同条2項には,「前項の場合においては,願書に添付
した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して,特許請求の範
囲に記載された用語の意義を解釈する」と定められている。
構成要件F-②における「停止表示態様」という用語については,請求項
1の記載自体から,その意味が明確であるとはいえない。
そこで,本件明細書の発明の詳細な説明及び図面を参酌してこれを解釈す
る。
(2)本件明細書の発明の詳細な説明における記載(甲2,3)
ア 本件明細書には,段落【0011】【課題を解決するための手段】とし
て,「本発明は,・・・複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された
乱数が確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当
選フラグを成立させる入賞態様決定手段と,種々の図柄を複数列に可変表示し,入
賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合わせを各列に停止表示
する可変表示装置と,この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段
と,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに
応じて可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,停止
ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タ
イミングで操作されないと,有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせ
を停止表示させない可変表示停止手段と,可変表示開始手段からの信号に基づいて
行われる,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現れる,複数の効果音の中
から選択された効果音による報知,および可変表示停止手段からの信号に基づいて
行われる,可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中から選択され
た停止表示態様による報知により形成される演出態様組合せを,入賞態様決定手段
で決定された入賞態様に基づいた報知情報として遊技者に報知する報知手段とを備
えて遊技機を構成した(請求項1)。」と記載されている。
また,段落【0012】には,「本構成によれば,内部抽選によって決
定された入賞態様が遊技が進行して行くのに伴い,その入賞態様に対応した報知情
報によって遊技者に報知される。従って,遊技者は,遊技の進行に伴い報知される
報知態様により,入賞態様を予測できる。すなわち,遊技者が操作を進めて行くに
連れて内部抽選によってどのような入賞態様が決定された(か)が徐々に報知され
ることになり,内部抽選結果を単に報知するのとは異なり,操作を進めれば進める
ほど判明して行く入賞態様に起因して遊技者は熱くなる。」と記載されている。
イ 本件明細書の段落【0262】【発明の効果】には,「以上説明したよ
うに本発明によれば,内部抽選によって決定された入賞態様が遊技の一連の流れの
中で遊技者に報知される。従って,演技の面白味が増し,また,リーチ目の出目を
判断できない遊技の初心者であっても,遊技の一連の流れの中でこの報知によって
ある程度入賞態様の予測をすることが可能となる。また,この報知は所定確率で行
われるため,報知があった場合にはその喜びも増し,一層面白味を増すことが出
来,また,報知は各入賞態様に対して行われるため,例えば,停止ボタンの操作等
が容易に行えるようになる。」と記載され,段落【0263】には,「また,遊技
者は,特定入賞態様発生の内部抽選結果が告知手段によって告知されていない場合
にも,報知手段の報知情報によって特定入賞態様発生の内部抽選結果を知ることが
出来る。このため,報知手段の報知情報から特定入賞態様の発生を探す喜びが遊技
に生じる。」と記載されている。
ウ 本件明細書における,停止表示態様と連動表示態様についての記載内容
a) 第1の実施形態における連動表示態様について
① 本件特許発明による遊技機をスロットマシンに適用した第1の実施
例についての説明において,段落【0040】には,「また,ランプ駆動回路4
8,バックランプ57a~57cおよびマイコン30は,各停止ボタン16~18
の操作によって各リール3~5の回転表示が停止されるのに連動し,4種類の表示
態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を順次演出する連動演出手段を
構成している。この連動演出手段によって演出される表示態様は,入賞態様の種類
に応じて後述するように選択される。」と記載されている。
② また,段落【0041】には,「図7,図8,図9および図10は
連動演出手段が演出する第1,第2,第3および第4の連動表示態様を示してい
る。・・・」と記載され,これに続く段落【0042】ないし【0045】には,
図7ないし図10に対応して,第1ないし第4の連動表示態様の説明がなされてい
る。すなわち,第1の連動表示態様は,図7に示されており,各リール3ないし5
が,順次停止されても,各リールのバックランプ57aないし57cは点灯したま
まの状態にすると説明され(【0042】参照),第2の連動表示態様は,図8に
示されており,第1のリール3が停止された場合,同リールの各バックランプ57
aないし57cを消灯させ,第2のリール4,第3のリールが順次停止された場合
には,第2のリール4,第3のリール5の各バックランプ57aないし57cは点
灯したままの状態にするなどと説明されている(【0043】参照)。
b) 第1の実施形態における停止表示態様について
① 段落【0048】には,「また,ランプ駆動回路48,バックラン
プ57a~57cおよびマイコン30は,各リール3~5の回転表示の全てが停止
したときに,4種類の表示態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を演
出する停止演出手段をも構成している。この停止演出手段によって演出される表示
態様は,入賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」と記載されてい
る。
②段落【0049】には,「図12,図13,図14および図15は
停止演出手段が演出する第1,第2,第3および第4の停止表示態様を示してい
る。・・・」と記載され,これに続く段落【0050】ないし【0053】には,
図12ないし図15に対応して,第1ないし第4の停止表示態様の説明がなされて
いる。すなわち,段落【0050】には,「図12に示す第1の停止表示態様は
『リールランプ点滅なし』の表示態様であり,停止演出手段は,各リール3~5の
全停止時に,各リール3~5の全てのバックランプ57a~57cを点灯したまま
の状態とし,点滅制御はしない。」と,段落【0051】には,「図13に示す第
2の停止表示態様は『リールランプ点滅A』の表示態様であり,停止演出手段は,
各リール3~5の全停止時に,まず,同図(a)に示すように各リール3~5の上
段の各バックランプ57aだけを点灯させ,続いて同図(b)に示すように各リー
ル3~5の中段の各バックランプ57bだけを点灯させる。最後に,同図(c)に
示すように各リール3~5の下段の各バックランプ57cだけを点灯させる。同図
(a)~同図(c)に示す一連の点灯制御によって各バックランプ57a
~57cは停止表示態様Aで点滅する。」と,段落【0052】には,「図14に
示す第3の停止表示態様は『リールランプ点滅B』の表示態様であり,停止演出手
段は,各リール3~5の全停止時に,まず,同図(a)に示すように各リール3~
5の全バックランプ57a~57cを点灯したままの状態にし,引き続き,同図
(b)に示すように第1リール3の中段のバックランプ57bだけを消灯させる。
続いて同図(c)に示すように第2リール4の中段のバックランプ57bだけを消
灯させ,その後,同図(d)に示すように第3リール5の中段のバックランプ57
bだけを消灯させる。最後に,同図(e)に示すように各リール3~5の全バック
ランプ57cを点灯させる。同図(a)~同図(e)に示す一連の点灯制御によっ
て各バックランプ57a~57cは停止表示態様Bで点滅する。」と記載され,ま
た,段落【0053】には,「図15に示す第4の停止表示態様は『リールランプ
点滅C』の表示態様であり,停止演出手段は,各リール3~5の全停止時に,ま
ず,同図(a)に示すように第2リール4の上段のバックランプ57aだけを点灯
させ,引き続き,同図(b)に示すように同じ第2リール4の中段のバッ
クランプ57bだけを点灯させる。次に,同図(c)に示すように第2リール4の
下段のバックランプ57cだけを点灯させ,その後,同図(d)に示すように第1
リール3および第3リール5の各下段のバックランプ57cを点灯させる。次に,
同図(e)に示すように第1リール3および第3リール5の各中段のバックランプ
57bを点灯させ,最後に,同図(f)に示すように,第1リール3および第3リ
ール5の各上段のバックランプ57aを点灯させる。同図(a)~同図(f)に示
す一連の点灯制御によって各バックランプ57a~57cは停止表示態様Cで点滅
する。」と記載され,いずれも各リール3ないし5における回転表示がすべて停止
したときに表示される表示態様が記載されている。
c) 第1の実施形態におけるその他の記載
① 段落【0060】には,「また,入賞態様報知選択抽選確率テーブ
ルは,上記の入賞態様決定手段で決定された8入賞態様の中の1入賞態様に応じ
て,遊技開始音の種類,連動表示態様の種類および停止表示態様の種類を組み合わ
せて得られる8組合せの中から1つの組合せを選択する報知態様選択手段を構成し
ている。また,この報知態様選択手段,音発生手段,連動演出手段および停止演出
手段は,スロットマシン遊技の一連の流れを通じて入賞態様を所定確率で遊技者に
報知する報知手段を構成している。」との記載があり,入賞態様に応じて,「遊技
開始音」,「連動表示態様」,「停止表示態様」の組み合わせにより,報知するこ
とが示され,「連動表示態様」と「停止表示態様」とはそれぞれ別の種類の態様と
して,区別して記載されている。
② 段落【0061】には,「本実施形態では図18に示すように8種
類の各演出態様の組合せが8種類の各入賞態様に割り当てられている。」と記載さ
れ,図18には,次の表が掲げられている。
  
③ そして,上記組合せ①を説明した段落【0062】には,「組合せ
①は,遊技開始時に遊技開始音1が鳴り,各リール3~5の停止最中に『リールラ
ンプ消灯なし』の連動表示態様が現れ,各リール3~5の停止後に『リールランプ
点滅なし』の停止表示態様が現れる組合せである。報知手段によるこの組合せ①の
演出により,機械内部の抽選によって『ハズレ』当選フラグが立っていることが遊
技者に報知される。」と記載されており,以下,同様にして,上記組合せ②ないし
組合せ⑧の説明が段落【0063】ないし【0066】に記され,各入賞態様の報
知は,「遊技開始音」,「連動表示態様」,「停止表示態様」の順に報知されるこ
とが認められる。
④ 段落【0067】ないし【0069】においては,各演出態様を選
択した組合せについて,次のとおり記載されている。すなわち,段落【0067】
には,「遊技開始音の種類は図19(a)に示す考え方で選択される。つまり,音
1は,一般遊技の際に高い頻度で出音され,「RB」当選フラグや「BB」当選フ
ラグといったボーナスフラグが立って行われるボーナスフラグ成立ゲームの際には
低い頻度で出音される。また,音2は,一般遊技の際に低い頻度で出音され,ボー
ナスフラグ成立ゲームの際に高い頻度で出音される。遊技者は遊技開始音2を聞く
聴覚効果により,内部抽選によってボーナスフラグが立った可能性があることを知
ることが出来,ボーナスゲームへの期待感は高まる。」と,段落【0068】に
は,「また,連動表示態様の種類は同図(b)に示す考え方で選択される。つま
り,消灯リールが少ない連動表示態様は一般遊技の際に高い頻度で出現し,逆に消
灯リールが多い連動表示態様はボーナスフラグ成立ゲームの際に高い頻度で出現す
る。遊技者は,リールバックランプ57a~57cの消灯が第何リールまで起こる
かという事象を視覚的に把握することにより,ボーナスフラグが立った可
能性が高いかどうかということを知ることが出来る。『リールランプ消灯なし』,
『リールランプ消灯パターン1(第1停止リール消灯)』,『リールランプ消灯パ
ターン2(第1,第2停止リール消灯)』,『リールランプ消灯パターン3(全停
止リール消灯)』という順番で,ボーナスゲームへの期待感はリール停止毎に高ま
る。」と記載され,段落【0069】には,「また,停止表示態様の種類は同図
(c)に示す考え方で選択される。つまり,リールランプ点滅時間が短く,消灯ラ
ンプが少ない停止表示態様は一般遊技の際に高い頻度で出現し,逆にリールランプ
点滅時間が長く,消灯リールが多い停止表示態様はボーナスフラグ成立ゲームの際
に高い頻度で出現する。遊技者は,全リール停止後に各リール3~5の各バックラ
ンプ57a~57cの点滅状態を視覚的に把握することにより,ボーナスフラグが
立った可能性が高いかどうかということを知ることが出来,ボーナスゲームへの期
待感が高いか低いかを感じる。」と記載され,いずれも連動表示態様と停止表示態
様の選択がそれぞれ異なった形で定義されている。
⑤ そして,段落【0112】には,「このような本実施形態によれ
ば,内部抽選によって決定された入賞態様がスロットマシン遊技の一連の流れを通
じて遊技者に報知される。すなわち,各リール3~5の回転が開始されるときに音
発生手段によって発生される遊技開始音の種類,各リール3~5が停止されるのに
連動して連動演出手段によって順次演出される各バックランプ57a~57cの表
示態様の種類,および各リール3~5の全てが停止したときに停止演出手段によっ
て演出される各バックランプ57a~57cの表示態様の種類の組合せにより,入
賞態様が遊技者に報知される。」と記載され,連動演出手段による表示態様と停止
演出手段による表示態様が明確に区別されて記載されている。
d) 本件特許発明による遊技機をスロットマシンに適用した第2の実施形
態については,段落【0121】以降に説明されており,第2の実施形態において
も,4種類の連動表示態様と10種類の停止表示態様とが区別して記載されてい
る。すなわち,連動表示態様について,段落【0125】において,「また,ラン
プ駆動回路48,バックランプ57a~57cおよびマイコン30は,各停止ボタ
ン16~18の操作によって各リール3~5の回転表示が停止されるのに連動し,
4種類の表示態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を順次演出する連
動演出手段を構成している。この連動演出手段によって演出される表示態様は,入
賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」と記載された後,段落【01
26】以降の記載に具体的に示されているように,各リール3ないし5の回転表示
が順次停止されるのに応じて,予め定められた種類または長さの効果音を発生させ
るとしている。そして,停止表示態様については,段落【0137】において,
「また,ランプ駆動回路48,バックランプ57a~57cおよびマイコン30
は,各リール3~5の回転表示のすべてが停止したときに,10種類の表示
態様の中の1つの表示態様で各リール3~5の表示を演出する停止演出手段をも構
成している。この停止演出手段によって演出される表示態様は,入賞態様の種類に
応じて後述するように選択される。」と記載され,段落【0138】以降に,各リ
ール3ないし5の全停止時に表れる10種類の停止表示態様について,具体的に記
載されている。
e) その他の実施形態においても,段落【0203】には,「このような
本実施形態によっても,内部抽選によって決定された入賞態様がスロットマシン遊
技の一連の流れを通じて遊技者に報知される。すなわち,各リール3~5の回転が
開始されるときに音発生手段によって発生される遊技開始音の種類,各リール3~
5が停止されるのに連動して連動演出手段によって順次演出される各バックランプ
57a~57cの表示態様(リールランプ消灯パターン)の種類,および各リール
3~5の全てが停止したときに停止演出手段によって演出される各バックランプ5
7a~57cの表示態様(リールランプ点滅パターン)の種類の組合せにより,入
賞態様が遊技者に報知される。」と記載されており,各リール3ないし5の回転が
開始されるときに音発生手段によって発生される遊技開始音の種類,各リール3な
いし5が停止されるのに連動して連動演出手段によって順次演出される表示態様の
種類と,各リール3ないし5のすべてが停止したときに停止演出手段によって演出
される表示態様の種類の組合せにより,入賞態様が遊技者に報知されることが記載
されている。
f) 報知手段について
段落【0257】には,「また,上述した各実施形態では,報知手段
は,可変表示開始手段(スタートレバー15)によって各リール3~5の可変表示
が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段と,可変
表示停止手段(停止ボタン16~18)によって各列の可変表示が停止されるのに
連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で各列の可変表示を演出する連動演
出手段と,各列の可変表示のすべてが停止したときに複数の表示態様の中の1つの
表示態様で可変表示装置(リール3~5)の表示を演出する停止演出手段とから構
成された。」と記載され,この構成については,段落【0258】には「しかし,
この報知手段は,上記の音発生手段と連動演出手段とだけによって構成するように
してもよい。また,この報知手段は,上記の音発生手段と停止演出手段とだけによ
って構成するようにしてもよい。また,この報知手段は,上記の連動演出手段と停
止演出手段とだけによって構成するようにしてもよい。」と記載され,段落【02
59】には,「報知手段がこのようないずれの構成によって構成されても,必要と
される報知情報の種類を満たす数だけ,各構成手段の演出の組合せを
用意することにより,上述した各実施形態と同様な作用・効果が奏される。」と記
載されている。
(3) 小括
 ア 本件明細書の以上の記載を前提として,本件特許発明の構成要件F-②
における「停止表示態様」の意義について判断する。
上記(2)の本件明細書における発明の詳細な説明の各記載によれば,本件
特許発明は,遊技の初心者であっても,遊技を進めていくに従って,内部抽選によ
って決定された入賞態様が遊技の一連の流れの中で遊技者に報知されることによ
り,ある程度の入賞態様の予測をすることができ,遊技の面白みが増すなどの効果
が得られるものである。そして,この遊技の一連の流れの中で報知される報知情報
は,可変表示開始手段(本件特許発明の実施形態の図1におけるスタートレバー1
5)により,可変表示装置(同・各リール3ないし5)の可変表示が開始されると
きに複数の効果音の中の一つの音を発生させる効果音の手段と,可変表示停止手段
(同・停止ボタン16ないし18)により,各列の可変表示が停止されるのに連動
して,複数の表示態様の中から選択された一つの表示態様で各列の可変表示を演出
する連動演出手段と,各列の可変表示のすべてが停止したときに複数の表示態様の
中から選択された一つの表示態様で可変表示装置の表示を演出する停止演出手段,
との三つの手段により構成される報知手段により報知されるものである。本件明細
書において,上記連動演出手段による表示態様を連動表示態様といい,
上記停止演出手段による表示態様を停止表示態様ということにより,両者を明確に
区別して使用していることは明らかである。
そうすると,構成要件F-②における「可変表示装置の複数種類の停止
表示態様」における「停止表示態様」とは,可変表示装置(3リール)がすべて停
止したときにおけるリールランプの点滅などによって演出される表示態様であると
解すべきであり,可変表示装置のいずれかが停止したときに連動して表示される連
動表示態様はこれに含まれないと解すべきである。
イa)原告は,本件明細書の発明の詳細な説明のうち,段落【0050】ない
し【0053】の記載においては,実施例としての演出表示態様だけであって,段
落【0040】や【0048】の記載からすれば,構成要件F-②の「停止表示態
様」は,リールの「停止」時における演出「表示態様」であることは,当業者であ
れば容易に理解できる,と主張する。
しかし,段落【0040】における「・・・この連動演出手段によっ
て演出される表示態様は,入賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」
とされ,これに続く段落【0041】には,「図7・・・図10は,連動演出手段
が演出する第1・・・および第4の連動表示態様を示している。・・」との記載が
あること,また,段落【0048】における「・・・この停止演出手段によって演
出される表示態様は,入賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」との
記載に続き,段落【0049】には,「図12・・・図15は,停止演出手段が演
出する第1・・・および第4の停止表示態様を示している。・・・」と記載されて
いることからすると,構成要件F-②の「停止表示態様」とは,本件明細書の段落
【0048】以降に記載されている表示態様のみを示すものと解するのが相当であ
る。原告の主張は採用することができない。
b)原告は,「リールの全停止時においては,遊技者のストップボタンス
イッチ操作は既に終了しており,その時点における演出表示態様が,本件明細書の
【課題を解決するための手段】における『遊技が進行していくのに伴』(【001
2】)う報知,あるいは,『遊技者が操作を進めて行くに連れて』(【001
2】)の報知として作用することはないこと,及び,【発明の効果】の『本発明に
よれば,・・・入賞態様が遊技の一連の流れの中で遊技者に報知される。』(【0
262】)こともないことからすれば,構成要件F-②における『停止表示態様』
をリールの全停止時における演出との意味でのみ解釈することは不合理である。」
と主張する。
しかし,本件特許発明の効果は,入賞態様の報知を受けた遊技者が,
遊技中に各リールの停止ボタンの操作等が容易に行えるようになるだけでなく
(【0262】参照),「報知手段の報知情報から特定の入賞態様の発生を探す喜
びが生じる」(【0263】参照)とも記載されていること,本件明細書において
は,上記のとおり,各リールがすべて停止した状態での表示態様の具体例も種々掲
げられている上,その入賞態様の報知が,効果音の選択,連動表示手段による表示
態様,停止表示態様による表示態様の各手段の組合せによりなされるとの技術思想
も開示されていることからみても,3リールすべて停止したときに表示される停止
表示態様が,上記の本件特許発明の効果を奏しないとは解し得ない。本件明細書に
おける「停止表示態様」との用語の意味からして,上記三つの手段から二つの手段
を組み合わせたものを,請求項1において発明特定事項として記載したものが本件
特許発明であると解すべきである。
c)原告は,請求項3における記載内容に照らすと,請求項1が請求項3
の上位概念を規定しているものであるから,本件特許発明における「停止表示態
様」には,「可変表示の停止に連動して演出表示する連動演出手段」を含むことは
明らかであると主張する。しかし,請求項3は,報知手段の種類とその組合せを規
定しているものであって,それぞれの報知手段による表示態様をどのように定義し
ているかについては,何ら触れられていない。むしろ,前述のとおり,本件明細書
の発明の詳細な説明における記載によれば,連動演出手段による表示態様を「連動
表示態様」といい,停止演出手段による表示態様を「停止表示態様」として明らか
に区別して使用しているのであるから,本件特許発明(請求項1)の「停止表示態
様」に「連動表示態様」も含めて解することはできない。
d) 原告は,本件訂正と同時に提出された本件意見書には,各リールの停
止時における演出表示態様も,本件特許発明に含むものと説明されているとも主張
する。
確かに,本件意見書(乙4)には,「本発明は,報知手段の上記した
特有の構成,つまり,可変表示開始手段からの信号に基づいて行われる,配当のあ
る複数の異なる入賞態様に共通して現れる,複数の効果音の中から選択された効果
音による報知,および可変表示停止手段からの信号に基づいて行われる,可変表示
装置の複数種類の停止表示態様の中から選択停止表示態様による報知により形成さ
れる演出態様組合せを,入賞態様決定手段で決定された入賞態様に基づいた報知情
報として遊技者に報知する報知手段の構成により,本発明特有の次の効果が得られ
ます。つまり,入賞態様に基づいた報知情報は,遊技者の可変表示開始手段の操作
に応じて発せられる効果音と,遊技者の可変表示停止手段の操作に応じて可変表示
装置に表示される停止表示態様との組合せにより報知されますが,遊技開始時に遊
技者に最初に報知される効果音は,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現
れるものであります。」(同3頁),「本件発明では,可変表示開始手段の操作時
に発せられる音と,可変表示停止手段の操作時に表示される停止表示態様との演出
の組み合わせにより報知が行われるのに対し,刊行物1に記載の発明
では,可変表示停止手段の操作時に発せられる停止音のみの演出により,報知が行
われる点においても相違しています。」(同5頁)などの記載があり,「停止表示
態様」の意義として,各リールの停止時における表示態様か,すべてのリールの停
止時における表示態様かを特に区別していないことを前提としたとも解し得る記載
が見られる。
しかし,本件意見書の上記内容は,特許法29条2項の規定に違反し
て特許されたものであることを内容とする取消理由通知に対して述べられたもの
で,同通知書に掲げられた刊行物との相違点やそれらの刊行物の組み合わせによっ
て容易に本件特許発明に想到し得ないことを中心に記載されているものであり,本
件特許発明の「停止表示態様」が「連動表示態様」を含むものであるかどうかにつ
いて述べたものではない。また,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載
に基づいて,明細書における発明の詳細な説明の記載を参酌した上でなされるべき
であるから,仮に,出願経過等において出願人が提出した意見書等における記載
と,明細書における記載内容との間に齟齬がみられる場合があるとしても,明細書
の記載を優先して解釈すべきことは当然である。
本件明細書においては,上記のとおり,「連動表示態様」と「停止表
示態様」とを明確に区別して記載しており,「停止表示態様」の意義は,すべての
リールが停止した場合の表示態様を示していることが明らかである以上,仮に,原
告が,本件訂正の手続の際に提出された本件意見書において,「停止表示態様」と
の用語を,各リールが停止するごとの表示態様か,すべてのリールが停止した場合
の表示態様かを明りょうに区別することなく使用していたとしても,このことをも
って,本件特許発明の構成要件F-②の「停止表示態様」についての上記解釈を変
更することはできない。
(4)被告製品の充足性
前記前提となる事実に記載のとおり,被告製品の動作については,少な
くとも,別紙被告製品説明書に記載の限りで当事者間に争いがなく,入賞役と報知
の関係の具体例については,別紙4に記載のとおりであるから,被告製品は,各リ
ールが停止するごとに報知する表示態様のみを取っており,すべてのリールが停止
した場合に,何らかの入賞役を報知する機能を有していない。
したがって,被告製品は,構成要件F-②の「可変表示装置の複数種類
の停止表示態様の中から選択された停止表示態様による報知」の手段を備えていな
いことが明らかであり,本件特許発明の技術的範囲に属しないというべきである。
2 弁論再開の申立てについて
原告は,平成17年6月16日付け弁論再開申立書において,同月15日付
け審判請求書により,本件明細書の発明の詳細な説明について,「停止表示態様」
の用語を巡る不明りょうさを解消することを目的として,訂正請求を申し立てたか
ら,弁論を再開すべき旨の上申をしている。
しかし,上記弁論再開申立書に添付された審判請求書の内容によれば,上記
訂正請求は,訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を
図るための明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正にとどまらず,実
質上,特許請求の範囲(請求項1)を拡張して解釈することができるように発明の
詳細な説明の記載を訂正するものであると認められる。したがって,当該訂正は認
められないものと解されるため,弁論を再開する必要性はないものといわざるを得
ない。
第5 結論
以上によれば,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するものとはい
えず,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官    設樂隆一
裁判官   杉浦正典
裁判官    鈴木千帆

(別紙)
物件目録
下記名称を有するパチンコ型スロットマシン
「メタルスラッグ(METAL SLUG)」

(別紙)
被告製品説明書
ア 被告製品の構成
① 通常のゲーム下では,6種類(図柄の組合せは7種類)の入賞役ごと
にそれぞれ所定の数値領域をもって区分された確率テーブルを有し,ゲーム開始時
にサンプリングされた乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞役の数値領域に属
したとき,その属した入賞役を内部当選とし,当該当選役に対応する当選フラグを
成立させる入賞役決定手段を有する。
② 1リール当たり21コマ(図柄の種類としては7種類)の図柄を3列
に可変表示し,前記入賞役決定手段で決定された入賞役に応じた図柄の組合せを各
列に停止表示する,図柄の可変表示を行うリールを有する。
③ 上記リールによる図柄の可変表示は,遊技者のスタートレバーの操作
によって開始される。
④ リールの図柄表示は,遊技者のストップボタンスイッチの操作によっ
て停止する。
⑤ 上記ストップボタンの操作タイミングに応じて前記リールによる図柄
の可変表示を三つの列毎に停止させるようになっている。しかし,前記当選フラグ
が成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化され
た5本の入賞ライン上に停止できる所定タイミング,すなわち,ストップボタンが
操作されたタイミングにおける表示位置から4コマ以内に当該図柄が存在するタイ
ミングで操作されない場合には,前記有効化された入賞ライン上に入賞役となる図
柄の組合せを停止表示させないようになっている。ストップボタンが操作されたタ
イミングにおける表示位置から4コマ以内に当該図柄が存在するタイミングで操作
された場合には,入賞ライン上に入賞役となる図柄の組合せを停止表示させるよう
にリールの回転停止を制御する回転停止制御手段を有する。
イ被告製品の動作
a) 被告製品のメイン遊技の動作に関するメインフローチャートは,別紙
1「メタルスラッグメイン部遊技概略フローチャート」(以下,単に「フローチャ
ート」という。)に記載のとおりである。
① 被告製品の動作制御を司る基板は,メイン遊技及びこれに関連する
プログラムを格納するROM,当該プログラムを実行するCPU等を搭載したメイ
ン基板,音,光,液晶画面の映像,及びこれらの組み合わせによってゲームの進行
に応じて種々の演出を行うプログラムを格納するROM,当該プログラムを実行す
るCPUを搭載した演出用のサブ基板(その他液晶部を制御する基板等)から構成
されている。
② フローチャートの「図柄抽選処理」の部分が,レバーの押し下げに
よって実行される当該ゲームにおける内部当選役を決定する「内部抽選処理」に該
当する部分である。
③ フローチャートの「図柄抽選処理」に続く「停止制御選択処理」に
おいて,内部当選した役に該当する図柄を有効ライン上に停止させるための図柄テ
ーブル(この段階では複数テーブルよりなるテーブル群)の選択処理がなされる。
ここでは,スタートレバーの受付によるリールの回転始動処理がなされるが,スト
ップボタン(停止ボタン)の操作に応じたリール(可変表示)の停止動作には至ら
ない。
④ フローチャートの「停止制御選択処理」に続く「状態コマンド送信
処理」において,メイン基板において決定した内部当選役,すなわち,当選フラグ
に係る情報が,光,音,映像等の演出を司るサブ基板側に送信される。
⑤ フローチャートの「リール停止禁止か?」の判定で,「NO」の場
合,すなわち,リールが回転中でかつストップボタンにより停止可能な場合,「停
止制御処理」に移行することになるが,当該処理においては,ストップボタンが押
された場合,停止リール図柄情報コマンドをサブ基板側に送信する処理がなされ
る。
⑥ 上記④の「状態コマンド送信処理」によって,サブ基板側に送信さ
れたスタートスイッチ押し下げのタイミングで発生する信号を契機として,あるい
は,参照して,サブ側において,ROMアドレスEE699EHを端緒とする別紙
2の「遊技開始時サウンド処理」が実行される(なお,「遊技開始時サウンド処
理」は,上記アドレスを端緒とするものに限られない。)。
⑦ 遊技開始時サウンド処理においては,まず,当該ゲームの遊技状態
が「0」であるか否かを判別する識別子<領域01H=00H?>の判定により,
その結果が「Yes」であれば,「サウンド出力04H」の処理が行われる。一
方,これが「No」であれば,さらに,機械内部で行われる一時抽選結果(00H
~FFHの中から選ばれる1バイトデータ,別紙3「サウンド出力選択」参照。)
に基づき「領域02H」の値が何であるかの判定(識別子<領域02H?>)が行
われ,その結果により,次の処理が実行される。
ⅰ 抽選の結果得られた値が,03H,C9Hであれば,「サウ
ンド出力05H」の処理
ⅱ 同上値が,04H,CAHであれば,「サウンド出力B8
H」の処理
ⅲ 同上値が,05H,CBHであれば,「サウンド出力B9
H」の処理
ⅳ 同上値が,06H,CCH,DAH,DBH,DCHであれ
ば,ROMアドレスEE699EHを端緒とする処理においてはサウンド出力の選
択処理はなされない。
ⅴ 領域02Hに格納される値が,上記ⅰないしⅳ以外の場合,
<領域02H?>の判定において「ほか」と判定され,「サウンド出力04H」の
処理が実行される。
b) 遊技開始時のサウンド選択処理による報知について
遊技開始時における入賞役とこれに対応する音との関係の具体例は,
別紙4に記載のとおりである(ただし,被告は,同表の演出表示態様における,液
晶部のヒュー・ドン(落下音)等の各演出音は,液晶演出音というべきものであっ
て,遊技開始音として分類すべきではないと主張し,また,同表の甲8の枠に×印
を付した構成は,被告製品において,内部当選の際に出現しないと主張しているた
め,これらの点は除く。以下,別紙4については同様とする。)。
なお,被告製品全体の当選役と効果音の関係は,別紙4に挙げられて
いるものに限られない。
c) バックライト等による停止表示態様に基づく報知について
① 被告製品において,上記a)の③の「停止制御選択処理」中で発せ
られるリールの回転停止制御手段からの停止制御信号に応じて,バックライト等の
別紙4に記載されているような点消灯演出処理が行われる。
② 別紙4の演出は,被告製品における点消灯演出の一例であるが,同
表に基づき,被告製品の演出態様を説明すると,次のとおりとなる。
(i)第1リール停止に伴う第1リールバックライト消灯の場合には,
「JAC」(リプレイ),「バナナ」(9枚役),「スイカ」(6枚役)の当選フ
ラグがセットされていることがある。
(ii)第1,第2リール停止に伴う第1,第2リールバックライト消灯
の場合は,「バナナ」(9枚役),「スイカ」(6枚役)などの当選フラグがセッ
トされていることがある。
(iii)第1,第2,第3リール停止に伴う第1,第2,第3リールバ
ックライトの消灯の場合は「スイカ」(6枚役)の当選フラグがセットされてい
る。(甲9,10)
③ なお,原告は,被告製品のバックライト等による停止表示態様につ
いて,「別紙4『演出態様構成表』における消灯演出態様は,3枚掛け・・・左か
ら順押しの場合における,表示窓全体(3リール×3段)のバックライト等の点消
灯の態様を示すものである。・・・各ストップボタン操作(リール停止)時におけ
る停止表示態様を示している。」(原告準備書面(2)4頁ないし5頁)と主張し
ており,被告製品における点消灯演出態様は,上記②に記載のとおり,各リールが
停止する毎に表示されるものであることについては,当事者間に争いがない。
別紙1別紙2別紙3別紙4

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