弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第1 請求
1 第1事件被告静岡県知事が原告に対し,平成11年4月27日付けでした平成
8年2月6日付け産業廃棄物収集運搬業の許可及び同日付け産業廃棄物処分業の許
可並びに平成10年10月26日付け特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可及び同
日付け特別管理産業廃棄物処分業の許可を取消す旨の処分は,これを取消す(第1
事件)。
2 第2事件被告静岡県は,原告に対し,8億9297万5066円及びこれに対
する訴状送達日の翌日である平成13年4月26日から支払済みに至るまで年5分
の割合による金員を支払え(第2事件)。
第2 事案の概要
 本件は,被告静岡県知事が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成12年6月
2日法律105号による改正前のもの。以下「法」という。)に基づく産業廃棄物
収集運搬業及び同処分業並びに特別管理産業廃棄物収集運搬業及び同処分業の各許
可を受けた原告に対し,原告が①処理能力を無許可で変更したこと(法15条の2
の4第1項違反),②産業廃棄物を過剰に保管し,保管場所以外の場所に飛散・流
出させたこと(法14条8項違反)を理由に,法14条の3で準用する法7条の3
及び法14条の6に基づいて,上記各許可を取消す旨の処分をしたところ,同処分
には事実誤認及び法令の解釈適用を誤った違法があるとして,その取消しを求める
とともに(第1事件),同処分により損害を被ったとして,被告静岡県に対し,国
家賠償法1条2項に基づき,損害賠償を請求(第2事件)している事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告
 原告は,昭和61年1月17日,一般及び産業廃棄物の収集運搬業及び同処分業
を主たる目的として設立された会社であり,当初は有限会社であったが(有限会社
ワイティービジネス),平成8年7月1日,株式会社に組織変更した。
 原告は,被告静岡県知事(以下「被告知事」という。)から,平成3年2月6
日,産業廃棄物収集運搬業及び同処分業の新規許可を受け,その後,平成8年2月
6日,その更新許可を受けたほか,平成5年10月26日,特別管理産業廃棄物収
集運搬業及び同処分業の新規許可を受け,その後,平成10年10月26日,その
更新許可を受けた。また,原告は,被告知事から,平成6年5月30日,産業廃棄
物処理施設の設置許可を受け,その後,平成7年7月13日,同施設の変更許可を
受けた。
(2) 原告が許可を受けた産業廃棄物処理施設の概要
 原告が許可を受けた産業廃棄物処理施設(以下「本件施設」という。)の概要は
次のとおりである。
ア 施設の種類  廃油,廃プラスチック類及び産業廃棄物の焼却施設
イ 処理する産業廃棄物の種類  廃油・廃プラスチック類・木くず・紙くず・繊
維くず・動植物性残渣
ウ 設置場所  静岡県下田市A町B番
エ 1日当たりの処理能力  廃油 18.60立方メートル
 廃プラスチック類 4.98トン
 木くず 19.18トン
 紙くず 15.57トン
 繊維くず 15.76トン
 動植物性残渣 28.81トン
(3) 許可取消処分
 被告知事は,原告に対し,次の理由により,平成11年4月27日付けで,平成
8年2月6日付け産業廃棄物収集運搬業及び同処分業並びに平成10年10月26
日付け特別管理産業廃棄物収集運搬業及び同処分業の各許可(以下「本件各許可」
という。)を取消した(以下「本件処分」という。)。
ア 法15条の2の4第1項違反
 産業廃棄物処理施設の設置者は,許可を受けた施設の処理能力を10パーセント
以上変更するときは,都道府県知事の許可を受けなければならないところ(法15
条の2の4第1項,15条2項5号,法施行規則12条の8第1号),原告の焼却
施設の1日当たりの処理能力は稼働時間15時間の定格標準能力として許可された
ものであるのに,原告は,本件施設において,被告知事の変更許可を受けることな
く,平成10年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日のように処
理能力を大きく超える焼却処分を行った。
イ 法14条8項違反(平成9年12月10日政令353号による改正前の法施行
令(以下「改正前施行令」という。)6条1項2号ロ(1)において準用する同令
3条1号ニ違反)
 産業廃棄物処分業者は,産業廃棄物の処分に当たっては,保管場所から産業廃棄
物が飛散し,流出しないように必要な措置を講じなければならないところ(改正前
施行令6条1項2号ロ(1)において準用する改正前施行令3条1号ニ(2)),
原告は,平成10年12月16日,許可された保管量である131.36立方メー
トルの3倍以上の産業廃棄物を過剰に保管し,保管場所以外の場所に,飛散・流出
させた。
2 争点
(1) 原告は,法15条の2の4第1項に違反したか。すなわち,原告は,平成
10年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日のように処理能力を
大きく超える焼却処分を行ったか。
(2) 本件処分は,裁量権を逸脱・濫用したものといえるか。
(3) 本件処分は,行政手続法14条1項に違反するか。すなわち,本件処分に
は,理由不備・不十分の違法があるか。
(4) 損害(第2事件)
第3 争点に対する当事者の主張
1 争点(1)(原告は,法15条の2の4第1項に違反したか。すなわち,原告
は,平成10年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日のように処
理能力を大きく超える焼却処分を行ったか)について
(被告らの主張)
(1) 産業廃棄物処理施設の設置者は,許可を受けた施設の処理能力を10パー
セント以上変更するときは,都道府県知事の許可を受けなければならないところ,
ここでいう処理能力とは,同施設が1日24時間稼働の場合は24時間の定格標準
能力を,それ以外の場合は原則として1日当たりの実稼働時間における定格標準能
力を意味する。本件施設の処理能力は,第2,1(2)エのとおりであるが,これ
らはいずれも1日当たりの焼却時間を15時間として計算されたものである。した
がって,1日当たりの実稼働時間15時間における定格標準能力が本件施設の処理
能力ということができ,1日当たりの実稼働時間15時間を10パーセント以上変
更するとき,すなわち,16時間30分以上焼却処分を行うときは,被告知事の許
可を受けなければならない。
(2) ところが,原告は,被告知事の変更許可を受けることなく,平成10年9
月7日から同年12月16日までの101日中80日にわたって,16時間30分
以上の焼却処分を行った。
 したがって,原告は,法15条の2の4第1項に違反した。
(3) 原告は,午後9時以降の排煙は,いわゆる埋火(空気の供給を抑え,炉内
に火だねを残したまま,運転を停止すること)によるものであり,積極的に焼却処
分をしていたわけではない旨主張する。
 しかし,埋火が焼却処分であることは明らかである上,埋火そのものも法令上禁
止されている。このことについては,平成9年11月18日に事業者に対して開か
れた説明会で周知徹底を図っており,原告においても代表取締役らが出席してい
た。したがって,積極的な焼却処分と埋火を区別し,埋火は焼却処分に当たらない
との原告の主張は理由がない。
(原告の主張)
(1) 法15条の2の4第1項によれば,施設の処理能力を変更するには,都道
府県知事の許可を受けなければならないところ,処理能力という文言及び最終処分
場の場合,処理能力については,埋立場所の面積・埋立容量と規定されていること
(法15条2項5号)からして,施設の処理能力の変更とは,例えば焼却炉の容量
の変更など,施設そのものの規模等の物理的変更による処理能力の変更を意味する
ことは明らかである。本件において,原告は,施設には何ら手を加えておらず,施
設の処理能力を変更していない。
 また,仮に稼働時間の超過が処理能力の超過と評価されるとしても,それは処理
能力の遵守義務違反となるのみであり,処理能力の変更となるものではない。
 したがって,原告は,法15条の2の4第1項に違反していない。
(2) 原告が平成10年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日
のように処理能力を大きく超える焼却処分を行ったという事実はない。なお,乙1
0の1ないし8は東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が撮影したビデ
オ映像であるが,これは東京電力が平成10年8月12日に本件施設付近で発生し
た同社の送電線の断線事故の原因が本件施設にあることを証明するために撮影した
ものであって,東京電力は原告を相手方として上記断線事故につき損害賠償民事調
停事件を申し立て,現在もこれが係属中である。したがって,上記ビデオ映像の内
容の信用性には疑義がある上,断線事故の原因究明というその本来の目的以外に使
用することはできないというべきである。
 仮に,上記ビデオ映像の内容に信用性が認められるとしても,本件施設の煙突か
ら認められる午後9時以降の排煙は,埋火によるものであるから,この排煙をもっ
て原告が処理能力を10パーセント以上変更したと認めることはできない。
2 争点(2)(本件処分は,裁量権を逸脱・濫用したものといえるか)について
(原告の主張)
(1) 産業廃棄物処理業の許可取消処分に関する基準
 行政側が作成した「産業廃棄物処理業の許可の取消に関する行政処分申合わせ事
項」(甲17)によれば,同許可取消処分は,①違反者が違反行為を繰り返したこ
と,②違反行為が重大であること,③将来にわたっても業務内容の改善が期待でき
ないこと,④違反行為者自身に反省が認められないことの各要件をみたす場合に行
われるとされている。これを本件についてみると,次に述べるとおり,要件②につ
いては違反行為は重大でなく,要件③については将来的には業務内容の改善が十分
に期待でき,要件④については違反行為者である原告自身が真摯に違反行為を反省
しているのであるから,本件処分は,裁量権を逸脱・濫用したものとして取り消さ
れるべきである。
(2)ア まず,法15条の2の4第1項違反(処理能力を大きく超える焼却処
分)については,先に述べたとおり,午後9時以降の排煙は埋火によるものであっ
て,積極的に焼却処分を行ったものではない。そして,原告は,被告知事側の説明
不足のため,そもそも埋火が法令上禁止されていることを理解していなかったので
あるから,これをもって重大な違反行為ということはできない。
イ 次に,原告が,平成10年12月16日,許可された保管量である131.3
6立方メートルの3倍以上の約500立方メートルの産業廃棄物を過剰に保管し,
保管場所以外の場所にはみ出させたことは事実であるが,法14条8項違反(保管
場所以外の場所への産業廃棄物の飛散・流出)は,罰則規定もない軽微な違反であ
るし,また,本件では次のような事情があった。すなわち,原告は,平成10年8
月26日に行われた公害防止協定委員会において,原告の操業時間に関し,「日曜
日,祭日は操業できず,燃焼時間は午前6時から午後9時まで,それ以外の操業に
ついては事前に2週間前に市長の同意を得ること」との協定を遵守されたいとの申
入れを厳粛に受け止め,その後,日曜日及び祭日並びに操業時間以外の操業を取り
止めた。そこで,本来であれば日曜日及び祭日並びに操業時間以外の操業の取り止
めに応じ,取引先からの産業廃棄物の搬入量を減少させる必要があったが,取引先
側の都合もあり,搬入量を直ちに,かつ,一方的に減少させるわけにはいかなかっ
たこと,原告において焼却できない数量につき新たに産業廃棄物の搬出先を探し,
これと直ちに契約を締結することができなかったこと等の理由により,産業廃棄物
の保管量が一時的に増えてしまったものである。なお,原告は,平成10年12月
16日時点において本件施設内に存在した産業廃棄物約500立方メートルの搬出
計画について,同年12月23日付け弁明書をもって伊豆保健所に報告し,かつ,
平成11年1月12日までに,実際に搬出処分を実施した。
ウ 以上のような事情も斟酌すれば,上記各違反行為が,取消処分に相当するよう
な重大なものとはいえないことは明らかである。
(3) 原告は,これまで,できる限り事態を前向きに受け止めるとともに,問題
が生ずる度に行政側の指導・見解を仰ぎ,対処してきた。また,本件処分の主要な
理由と考えられる埋火での処理能力を超える焼却処分の改善のため,被告知事側の
指導にしたがい,約4億円を掛けて排ガス処理装置,集塵装置バグフィルター及び
焼却設備関係の設置及び改良工事を実施完成させ,かつ埋火の改善についても実施
している。したがって,将来的に原告の業務内容の改善は十分に期待できるもので
ある。
(4) 原告の代表者を始め,原告の従業員一同は,本件事態を重大に受止め,再
び,このような違反行為を繰り返さないよう真摯に反省している。
(被告らの主張)
(1) 産業廃棄物処理業の許可取消処分に関する基準
 本件処分は,国の定める「産業廃棄物処理業者に対する業の許可の取消し等の指
針」(乙15,以下「指針」という。)にしたがって適正に行われた。
 法に基づく知事の権限は,いわゆる国の機関委任事務であり,その執行にあたっ
て国の通知等があればそれに拘束されるところ,法の規定に基づく不利益処分につ
いては,行政手続法の規定が適用され,同法12条の規定により処分基準があれば
これにしたがって行うことになるが,処分基準そのものは示されていない。代わっ
て,国は同法の施行に合せて平成6年10月1日に「産業廃棄物処理業者に対する
業の許可の取消し等の指針について」を各都道府県に通知しており,本件処分もこ
の指針に基づいて判断した。
 そして,上記指針によれば,業の許可の取消し等に当たっては,①違反行為の態
様,②産業廃棄物処理業者の対応等を考慮して処分内容を決定すべきこと,また,
違反行為の態様については,違反行為にかかる違反条項の軽重,生活環境保全上の
支障の有無,その軽重が,そして,処理業者の対応については,過去に行政処分を
受けたことがあるか否か,また,その内容,原状回復等の有無を考慮するとしてお
り,「過去,別の違反行為について刑罰又は処分を受けたことがある場合は,業の
許可の取消し等の中でも重い処分をすることが可能である。」とされている。
(2) 本件処分の原因行為である法15条の2の4第1項違反は,「3年以下の
懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれを併科」(法25条5号)と同法の
中で最も重い罰則が定められている。原告は,午後9時以降の排煙は埋火によるも
のであって,積極的に焼却処分を行ったものではなく,また,被告知事側の説明不
足のため,そもそも埋火が法令上禁止されていることを理解していなかった旨主張
する。しかしながら,前記のとおり,埋火が焼却処分であることは明らかである
上,埋火そのものも法令上禁止されていて,このことについては,平成9年11月
18日に事業者に対して開かれた説明会で周知徹底を図っており,原告においても
代表取締役らが出席していた。したがって,原告の主張は理由がない。
(3) 過去の別の違反行為
 原告は,本件処分を受けるまで,被告知事から次のとおり4回の行政処分を受け
ている。まず,原告が静岡県御殿場市C町及び同県下田市A町において,産業廃棄
物の積替え保管を行ったことが,事業範囲の無許可変更に当たるとして,平成5年
8月4日,業務停止14日(同月16日から同月29日まで)の行政処分を受け
た。次に,原告は,平成8年9月13日,被告知事から過剰搬入により飛散・流出
している産業廃棄物の撤去,燃え殻の撤去を内容とする改善命令(履行期限は同年
10月31日)を受けた。さらに,原告は,平成9年2月12日,被告知事から過
剰産業廃棄物の撤去を内容とする改善命令(履行期限は同年11月27日)を受け
た。その上,原告は,平成10年6月15日,御殿場市C町の安定型産業廃棄物最
終処分場に管理型品目である燃え殻を埋立処分したことを理由に業務停止20日
(同月22日から同年7月11日まで)の行政処分を受けた。
(4) 本件処分に至る経緯
 本件施設における産業廃棄物の処理状況については,平成9年2月12日付けで
した改善命令に対し,その履行状況を確認するため,被告知事側は二十数回にわた
って立入検査したが,履行期限の同年11月27日に至っても改善されなかった。
このため,平成10年1月8日以降,下田保健所の環境衛生監視機動班(以下「機
動班」という。)が単独で,あるいは下田保健所と機動班の合同の立入検査で保管
量の適正化について,原告に対し4回にわたって口頭の指導をしたが改善が見られ
なかったため,同年4月15日,保健所,機動班,特別監視員の立入検査をし,①
処理能力に見合った産業廃棄物の受け入れ,②産業廃棄物の適正処理,適正保管,
③排水処理施設の適正管理を内容とする指導票を交付したほか,焼却炉で埋火が認
められたため口頭で「許可された焼却時間内に燃やし切るよう」指示し,その後
も,同年4月23日,同年6月10日,同年9月21日,同年10月19日,同年
11月25日,同年12月16日と6回にわたり指導票を交付し指導した。この
間,産業廃棄物の適正処理(時間内に燃やし切ること)については,口頭または指
導票により明確に改善を求め,同年10月15日には原告から,埋火の改善につい
て「操業は,午後7時前後には終了させ,午後9時以降は排煙がないようにしてい
く所存」との内容の改善計画書が提出された。しかし,原告は,度重なる指導及び
自ら改善計画書を提出したにもかかわらず,同年9月7日から同年12月16日ま
での101日中80日にわたって16時間30分以上の焼却処分を行った。
(5) 生活環境保全上の支障
 本件処分前,本件施設の周辺では,次のような生活環境保全上の問題があった。
ア A町森林枯損被害
 静岡県林業技術センターが作成した「下田市A町森林枯損被害調査報告書」(平
成9年9月29日付け林技第460号)には,①原告の焼却施設ほか1社の施設を
中心とする半径数百メ-トルの範囲の檜をはじめとした針葉樹や広葉樹の森林の一
部には,平成六,七年ころから森林枯損が発生している,②被害は施設に近い道路
脇の斜面と尾根部でそれぞれ顕著であった,③檜集団枯死木の山側は健全木の林と
なっており,その境界付近の木は,斜面下部側(施設側)の枝のみが枯れている木
が観察された,④枯損が発生している森林では煤のような黒灰色の物質が付着して
いたなどと記載され,「~自然要因で枯れたとは考えにくく,人為的な影響が考え
られ,産業廃棄物処理施設,特に焼却炉からの排煙が原因で周囲の森林に影響を及
ぼしている可能性が高いと推測される。」と結ばれている。
イ 下田市D町地区への飛灰
 本件施設の南西約2キロメ-トルに位置する下田市D町地区を中心として,飛灰
が降り,同地区の住民から,みかん等の農産物が汚され,沢水や井戸水に頼る生活
が脅かされているとの苦情が伊豆保健所に寄せられた。
ウ 名無川への黒い水の流出
 本件施設から,異臭を伴った白い泡が発生したり,大雨の直後には黒い水が流れ
たりしている。また,平成10年11月25日の現地調査の際にも,川底に黒い灰
のようなものがこびりついているのが確認されている。この原因については必ずし
も明確ではないが,本件施設において循環使用するとになっている排ガスの冷却水
が,循環機能が十分働かないため,大雨により一部の燃え殻とともに流出したと判
断された。
エ 東京電力株式会社の送電線の断線事故
 本件施設は,東京電力の送電線断線事故の原因と目されている。平成10年8月
12日,下田市A町地区で東京電力の送電線が断線し,賀茂郡E町の全域と下田市
F町地区の約1万世帯が停電し,折しも,お盆の行楽期で町内の旅館,民宿に多数
の観光客が宿泊しており,地域社会に多大な影響を与えた。東京電力は,事故原因
を「塩化水素」であると断定し,送電線の直下付近で産業廃棄物焼却施設を設置・
操業していた原告を相手方とし,沼津簡易裁判所に,損害賠償調停事件を申し立
て,現在係属中である。
オ ダイオキシンの問題
 原告は,ダイオキシンが最も発生しやすい低温での焼却,すなわち,埋火を行な
っていたと認められるが,ダイオキシンは,一旦,煙突から排出されるとその回収
は困難であり,周辺の大気や土壌,動植物等に蓄積されることが多いと言われてい
る。原告は,長期にわたって,ばい煙の飛散や過剰搬入について指導されており,
周辺の生活環境の保全にも支障を与えているものと思われる。
(6) 以上のように,法15条の2の4第1項違反は同法の中で最も重い罰則を
定めていること,過去に原告が別の違反行為について,4回の行政処分を受けてい
ること及びそれらへの対応が真摯になされていないことなどを考慮すれば,本件処
分は,裁量権を逸脱・濫用したものということはできない。
3 争点(3)(本件処分は,行政手続法14条1項に違反するか。すなわち,本
件処分には,理由不備・不十分の違法があるか)について
(原告の主張)
(1) 被告知事が原告に通知した「聴聞通知書」(甲4)の不利益処分の原因に
は,原告の焼却施設の1日当たりの処理能力は15時間であるが,原告は,平成1
0年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日のように処理能力を大
幅に超える焼却処分を行ってきたと記載され,その認定根拠として,東京電力撮影
のビデオ映像,2回にわたる夜間監視が挙げられている。このように被告知事は,
本件処分の理由について,焼却時間超過のみを指摘し,実際の焼却処分量について
は何ら触れていない。
(2) そもそも,本件施設の処理能力は,第2,1(2)エのとおり,産業廃棄
物の容量で示されており,焼却時間で示されていない。確かに,被告知事がいうよ
うに,この処理能力は,1日当たりの焼却時間を15時間として算出されているも
のであるが,15時間を超える焼却をしたからといって,本件施設の処理能力を超
える焼却処分を行ったことには到底ならない。定格標準能力が1時間当たりの処理
能力としても,それはあくまでも能力あって,必ずしも定格標準能力をフルに活用
して焼却を行っているとは限らない。したがって,被告知事は,処理能力の無許可
変更を理由に本件処分をするには,原告が実際に焼却した産業廃棄物の容量を示さ
なければならない。
(3) 原告の行った焼却処分量も示さず,容量で示されている本件施設の処理能
力を上回った焼却処分をしたというのは,明らかに処分理由が不備・不十分であ
る。したがって,本件処分は,行政手続法14条1項に違反する。
(被告らの主張)
 本件処分には,理由不備・不十分の違法はなく,本件処分は,行政手続法14条
1項に違反しない。
4 争点(4)(損害)について
(原告の主張)
 被告知事の違法な本件処分によって,原告は,以下の損害を被った。
(1) 逸失利益 8億3297万5066円
 本件処分によって,原告は産業廃棄物の収集運搬及び処分の業をなすことが不可
能となり,その結果,原告は,本件処分がなかったならば得られるであろう利益に
相当する損害を,本件処分が行われた日である平成11年4月27日以降,日ごと
に被っているところ,本件各許可の有効期限は平成13年2月5日までであったか
ら,原告は少なくとも本件処分の翌日である平成11年4月28日から平成13年
2月5日までの21か月間の予想売上総利益である上記金額を失った。
(2) 信用毀損・慰謝料 1000万円
 本件処分は権力による人権侵害そのものであり,これにより原告が受けた信用毀
損及び精神的苦痛は甚大で,その損害は金銭に見積もると,少なくとも1000万
円を下らない。
(3) 弁護士費用 5000万円
 本件訴訟の審理経過等に照らすと,被告知事の違法行為と相当因果関係のある弁
護士費用の額は,少なくとも5000万円を下らない。
(被告県の主張)
 本件処分は適法であり,被告県は国家賠償責任を負わない。
第4 争点に対する判断
1 前記第2,1の争いのない事実,証拠(各事実の末尾等に掲記)及び弁論の全
趣旨によれば,原告の産業廃棄物収集運搬業及び同処分業の新規許可(平成3年2
月6日)から本件処分に至る経緯等については,以下のとおりであったと認められ
る。
(1) 原告の過去の行政処分歴
 原告は,本件処分を受けるまで,被告知事から次のとおり4回の行政処分を受け
た。
ア 第1回行政処分
 平成4年1月30日,御殿場保健所の立入検査により,御殿場市C町において,
原告が許可されていない産業廃棄物の選別及び積替え保管を行っていることが判明
し,同保健所が指導したところ,同年2月13日,原告から事実申立書が提出され
るとともに,保管物の撤去を確認した。また,原告から同年4月15日付けで御殿
場保健所に対し「積替え保管を行っていたとの指摘を受け,以来,同行為は行って
いない。今後,当地において指導に従う」旨の報告書(乙29)の提出があった。
ところが,同年8月7日,下田保健所及び機動班が本件施設のある原告の下田事業
所に立入検査をしたところ,原告が産業廃棄物の積替え保管を行っていたため,積
替えは行わないようにとの指導票を交付した。その後,数回の立入検査及び指導票
(選別,積替えの禁止等)の交付を踏まえて,同年11月26日に立入検査をした
ところ,依然として産業廃棄物の積替え保管が行われていたことを確認し,同年1
2月から翌年1月にかけて,下田保健所及び御殿場保健所において立入検査をし,
原告に対し,過剰搬入した埋立物の処分方法その他につき報告書を提出するよう指
導票を交付した。そして,平成5年3月4日,原告取締役G事務長が事実申立書を
提出し,平成4年1月1日から同年12月31日までの間に御殿場市C町地先に,
合計665立方メートルの積替え保管をしたこと(うち,282.5立方メートル
は自主排出)を認めた。これらにより,被告知事は,平成5年8月4日,原告が法
14条の2第1項に違反(事業範囲の変更許可無許可)したとして,法14条の3
で準用する法7条の3に基づき,14日の業務停止(同月16日から同月29日ま
で)を命ずる行政処分を行った(甲17,27,乙14,16,23,27の1,
2,乙29,証人H)。
イ 第2回行政処分
 平成8年5月7日,下田事業所において,原告自己処分場としては2度目の火災
が発生したため,同年5月13日,火災の処理等全般的な処理状況を調査するた
め,下田保健所が立入検査を行い,自己最終処分場に産業廃棄物の搬入が過剰とな
っているので改善するようにとの指導票を交付したところ,同年5月31日付け
で,原告から同年8月31日を期限とする火災処理等に関する処理計画書が提出さ
れた。その後,下田保健所が,同年9月2日,処理計画書の履行状況を確認するた
め立入検査をしたところ,過剰搬入が全く改善されていなかったことから,被告知
事は,原告に対し,同年9月13日,法19条の3第2号に基づき,過剰搬入によ
り飛散・流出している産業廃棄物の撤去,燃え殻の撤去などを内容とする改善命令
(期限は同年10月31日)を出した(甲17,乙14,17,前掲証人)。
ウ 第3回行政処分
 上記改善命令に対し,原告から同年10月23日付けで提出された改善計画書の
履行状況を確認するため,下田保健所が,同月31日,立入検査をしたところ,一
部は履行されていたが,大部分は不履行であった。その後,平成9年1月14日,
被告県廃棄物対策課が,再度,履行状況の確認を行ったが,同様の状況であった。
原告は,同月23日,「産業廃棄物の撤去処分について」の報告書を提出したが,
未改善の状態が続いたため,被告知事は,同年2月12日,法19条の3第2号に
基づき,再度,「最終処分されている過剰の産業廃棄物について,平成9年11月
27日までに撤去し,覆土,整地する」ことを内容とする改善命令を出し,履行状
況確認のための立入検査を逐次行い,同年12月12日,「改善命令の報告につい
て」と題する報告書が原告から被告県廃棄物対策課に提出された(甲17,乙9,
14,前掲証人)。
エ 第4回行政処分
 平成8年11月5日,原告が御殿場市C町地内において,焼却灰等の埋立処分を
行っているとの投書があったため,同日及び翌日に御殿場保健所が責任者立ち会い
の下に現地調査を行ったところ,焼却灰,がれき類等が発見された。同保健所は,
平成8年11月22日付けで,原告に対し,法18条に基づく報告を求めたとこ
ろ,平成8年12月17日付け及び平成9年1月24日付けにて,原告から報告書
(乙21の1)の提出があった。その内容は,駐車場造成を目的として使用貸借で
借りていた土地である御殿場市C町I番及びJ番(埋立面積2885.41平方メ
ートル)に,本件施設から排出された管理型品目である燃え殻等合計9199.8
1立方メートルを埋立処分したというものであった。この間,埋立処分された産業
廃棄物の撤去を指導するとともに,行政処分の取扱いについて,内部協議を重ね,
被告知事は,平成10年6月15日,法14条の3で準用する法7条の3及び法1
4条の6に基づき,原告に対し,20日間の業務停止(同月22日から翌7月11
日まで)を命じる行政処分を行った(甲17,乙14,18,21の1,2,前掲
証人)。
(2) 原告に対する指導及び原告の対応等
ア 焼却に関する指導等
 被告知事側は,原告に対し,平成5年5月24日,平成6年1月14日など数回
にわたり,焼却炉の能力の範囲で焼却すること,焼却能力に応じた投入量とするこ
となどの指導を繰り返してきた。平成9年11月8日,法施行令等改正に関する説
明会が開かれ,原告代表者も出席した。この席で,被告知事側から原告に対し,
「法改正に伴う焼却施設の取扱いについて」と題するパンフレット(乙8)が配付
され,野焼きの禁止とともに埋火が禁止されたことについても説明がされた。平成
10年4月15日,伊豆保健所(下田保健所が平成10年4月1日に組織変更),
機動班,特別監視員が合同で本件施設に立入検査を行い,原告に対し,指導票(処
理能力以上の焼却処分の禁止)を交付するとともに,時間内に燃やし切るよう口頭
で指導した。同月23日,被告県廃棄物対策課,伊豆保健所,機動班,下田市が合
同で本件施設に立入検査を行い,原告に対し,処理能力以上の焼却処分をしないよ
う口頭で指導した。同年6月10日,機動班,特別監視員が合同で本件施設に立入
検査を行い,原告に対し,指導票(処理能力以上の焼却処分の禁止)を交付すると
ともに,時間内に燃やし切るよう口頭で指導した。同年9月7日から翌8日にかけ
て,伊豆保健所,機動班が合同で本件施設の夜間監視(以下「第1回夜間監視」と
いう。)を行い,後記の公害防止協定で定められた終業時間である7日の午後9時
から翌8日の午前7時15分まで本件施設の煙突から継続的に排煙している状況が
確認されたことから,同日午前7時15分ころ,本件施設に立入検査を行い,原告
に対し,口頭で「埋火でない状態が焼却終了であること。煙が出ていれば焼却終了
にならないこと。埋火を中止すること。時間内に燃やし切ること。」を指導した。
同年9月21日,伊豆保健所,機動班,特別監視員が合同で本件施設に立入検査を
行い,原告に対し,指導票(処理能力以上の焼却処分の禁止)を交付した。同年1
0月19日,伊豆保健所,機動班が合同で本件施設に立入検査を行い,原告に対
し,指導票(処理能力以上の焼却処分の禁止)を交付した。同年11月25日,被
告県廃棄物対策課など関係機関が本件施設に合同調査を行い,原告に対し,指導票
(処理能力以上の焼却処分の禁止,埋火の禁止)を交付した。同年12月15日午
前6時から翌16日午前0時にかけて,被告県廃棄物対策課,伊豆保健所,機動班
が合同で本件施設の監視(以下「第2回夜間監視」という。)を行い,15日午前
6時5分から翌16日午前0時まで断続的に排煙を確認したことから,同日午前0
時30分ころ,本件施設に立入検査を行い,原告に対し,指導票(12月15日午
前6時より翌16日午前0時10分まで,15時間を大きく超えた焼却処分を行っ
ていると認められるので,焼却を中止すること)を交付した。その際,伊豆保健所
の職員のHらが焼却炉内を点検したところ,炉内は容量の3分の2くらいの産業廃
棄物ないし灰で埋まっており,炎を上げて燃えている状況であった(甲17,乙
8,12,14,23,前掲証人,原告代表者)。
イ 保管に関する指導
 被告知事側は,原告に対し,平成4年10月1日,平成6年7月18日など数回
にわたり,能力にあった産業廃棄物の搬入をすること,処理能力以上の産業廃棄物
を保管しないことなどの指導を繰り返してきた。平成10年4月15日,伊豆保健
所,機動班,特別監視員が合同で本件施設に立入検査を行い,原告に対し,指導票
(処理能力に見合った受入量とするとともに受入れした産業廃棄物について適正処
理,保管管理すること)を交付した。その後,同月23日,同年6月10日,同年
9月21日,同年10月19日にも,被告知事側は本件施設に立入検査を行い,原
告に対し,同内容の指導票を交付した(ただし,同年4月23日には指導票の交付
はされていない)。同年11月9日,伊豆保健所,機動班は合同で本件施設に立入
検査を行い,原告に対し,指導票(場内に搬入した産業廃棄物について飛散・流出
せぬよう保管するとともに,過剰搬入,過剰保管とならぬよう適正に処理するこ
と)を交付した。同年11月25日,被告県廃棄物対策課など関係機関が本件施設
に合同調査を行い,原告に対し,指導票(保管基準を厳守し,過剰に産業廃棄物を
保管しないこと)を交付した。同年12月2日,伊豆保健所,機動班が合同で本件
施設に立入検査を行い,原告に対し,指導票(処分場内に産業廃棄物が過剰に保管
されているので,新たな産業廃棄物の搬入については見合わせること)を交付し
た。第2回夜間監視後の同年12月16日午前11時ころ,伊豆保健所は原告に対
し,指導票(許可された保管量を超えて過剰に保管しないこと)を交付した。原告
は,その後,本件施設の改修工事を行ったが,同工事終了後の,平成11年3月3
日,同月16日,同月24日と3回にわたり,口頭で,圧縮梱包処理後の産業廃棄
物については早急に適正処理するように指導を受けた(甲17,乙14,23,前
掲証人,原告代表者)。
ウ 原告の対応等
 原告は平成8年2月1日,下田市らと公害防止協定を締結し,本件施設の操業時
間について,「事業場の操業は,日曜日及び祝祭日は休業とし,平日の操業時間は
午前6時から午後9時までとする。それ以外の操業については事前に2週間前に市
長の同意を得る。」旨合意した。また,原告は,伊豆保健所の指導にしたがい,排
水についての責任の所在を明確にするため,平成10年7月13日,有限会社大伴
産業(以下「大伴産業」という。)の排水路と別経路の排水路を完成させた。同年
8月26日,原告と下田市らとの公害防止協定委員会において,原告は,上記協定
を遵守されたいとの申入れを受けた。同年9月8日,原告代表者が被告県廃棄物対
策課を訪れたが,同課から「埋火の改善について報告書を提出すること。焼却炉の
ダイオキシン対策,排水処理の改善についても記載すること。」との指示を受け
た。これをに対し,原告は,排ガス集塵処理装置を従来のものから高性能バグフィ
ルターに変更するなどの本件施設の改修計画(改修計画の一部は,法施行規則(以
下「施行規則」という。)の改正に伴い義務づけられたものである)があることを
伝え,同年10月9日に排ガス装置の変更とそれに付帯する工事について,被告知
事に対し,大気汚染防止法8条1項に基づく届出をし,併せて工事の実施制限期間
の短縮願いを提出し,被告知事は,同年10月30日,同届出を受理するととも
に,実施制限期間を24日短縮し,同年11月15日から実施することを承認し
た。また,原告は,被告知事に対し,同年10月15日,「下田事業所焼却炉改善
計画について」と題する報告書(甲10)を提出し,埋火の改善について,できる
だけ燃えやすい廃棄物(木くず,紙くず)を処理するようにし,操業は午後7時前
後までには終了させ,午後9時以降は排煙がないようにしていく所存であることを
報告した。そして,原告は,同年11月から本件施設の改良工事を実施し,平成1
1年2月19日には伊豆保健所による現地確認が行われ,同月26日から試験運転
を開始した。その後,原告から上記改修工事に伴う産業廃棄物処理施設軽微変更等
届出書(甲24,以下「軽微変更届出」という。)が提出され,同年3月16日,
被告知事に受理された。原告が上記改修工事に要した費用は総額約4億円であっ
た。(甲6ないし10,13,22,24,26,32,乙14,23,44,前
掲証人,原告代表者)
(3) 本件施設における16時間30分以上の焼却処分
ア 埋火の禁止
 産業廃棄物処理施設の設置者は,施行規則12条の6及び12条の7で定められ
た維持管理の技術上の基準にしたがって,同施設の維持管理をしなければならない
ところ(法15条の2の2),同規則12条の7第5項の規定で「例による」とさ
れる同規則4条の5第1項2号ヘによれば,「運転を停止する場合には助燃装置を
作動させる等により,炉温を高温に保ち,ごみを燃焼し尽くすこと」とされてい
る。これは,ダイオキシン類が,ごみ焼却炉において,不完全燃焼に伴う未燃有機
物が比較的低い温度域(300度程度)で飛灰表面において,塩化銅などの触媒作
用により反応することによって生成されるといわれていること(乙4)から,低温
域での焼却処分を防ぐため,ダイオキシン類の削減対策として,平成9年8月29
日の施行規則の一部改正で規定されたものである(乙2,3)。同条項が,埋火の
禁止を意味することは,埋火の定義(空気の供給を抑え,炉内に火だねを残したま
ま,運転を停止すること)及び厚生省生活衛生局水道環境部長から各都道府県知事
にあてた通知である「ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について」(乙
2)に「埋火の廃止 燃し切り停止を行うこと」(1062頁)と記載されている
ことから明らかである。また,埋火においては,産業廃棄物の低温域での焼却が行
われるのであるから,埋火は焼却処分に当たる。したがって,埋火を含めて焼却処
分を行っていた時間が焼却時間ということになり,積極的な焼却処分と埋火を区別
し,埋火は焼却処分に当たらないとの原告の主張は理由がない。
イ 平成10年9月7日から同年12月16日までの本件施設における焼却処分の
状況
(ア) 原告は平成10年9月7日から同年12月16日までの101日のうち,
少なくとも以下の71日,本件施設において,16時間30分以上の焼却処分を行
った。同年9月については,7日ないし14日,20日,26日,29日,30日
の12日間,同年10月については,2日,3日,5日ないし10日,12日ない
し14日,17日,18日,20日,22日,24日,28日,29日,31日の
19日間,同年11月については,2日ないし9日,12日ないし29日の26日
間,同年12月については,2日ないし11日,13日ないし16日の14日間で
ある。このうち,同年9月8日をはじめ,24時間焼却処分した日も,10日以上
に及んでいる(甲32,乙10の1ないし8,乙11,12,23,39,前掲証
人,原告代表者)。
 なお,東京電力が撮影したビデオ映像(乙10の1ないし8)に写っている午後
9時から翌日の午前6時までの排煙が,通常の焼却処分によるものなのか,埋火に
よるものなのかは必ずしも判然としないが,午後9時以降,埋火を行っていたこと
は原告代表者自身も認めており(甲32,原告代表者),埋火が焼却処分に当たる
ことは上記アのとおりであること,また,煙の排出状況からして,単なる水蒸気で
あるとは認められないことから,埋火を含めて16時間30分以上の焼却処分をし
た日は上記のとおりとなる。
(イ) 原告は,東京電力が撮影したビデオ映像(乙10の1ないし8)の内容の
信用性には疑義がある上,断線事故の原因究明というその本来の目的以外に使用す
ることはできないと主張する。
 しかし,上記ビデオ映像を断線事故の原因究明以外の目的に使用してはならない
との理由はなく,また,被告知事側による同ビデオの入手の方法に問題があるとも
認められない。さらに,上記ビデオ映像は,専門業者により正確に複製されたもの
であり(乙10の9),その内容も現地の地形と一致し(検証の結果),第1回,
第2回の夜間監視の結果とも一致しており,その信用性は高いと認められる。
 したがって,原告の主張は理由がない。
(4) 原告の法14条8項違反(改正前施行令6条1項2号ロ(1)において準
用する同令3条1号ニ違反)
ア 産業廃棄物処理基準
 産業廃棄物処分業者は,産業廃棄物の処分に当たっては,保管場所から産業廃棄
物が飛散し,流出しないように必要な措置を講じなければならないところ(改正前
施行令6条1項2号ロ(1)において準用する同令3条1号ニ(2)),原告は,
(2)イのとおり,度々,処理能力に見合った受入量とするとともに受入れした産
業廃棄物について適正処理,保管管理するようにとの指導を受けてきた。
イ 平成10年12月16日の違反事実
 原告は,平成10年12月16日,許可された保管量である131.36立方メ
ートルの3倍以上の約500立方メートルの産業廃棄物を過剰に保管し,保管場所
以外の場所にはみ出させた(争いのない事実)。また,原告は,産業廃棄物をシー
トで覆うなどの飛散・流出防止のための措置は講じておらず,産業廃棄物を保管場
所以外の場所に,飛散・流出させと認められ,法14条8項に違反した(乙12,
23,前掲証人)。
 その後,原告は,平成10年12月16日において本件施設内に存在した産業廃
棄物約500立方メートルの搬出計画について,同年12月23日付け弁明書(甲
15)をもって伊豆保健所に報告し,平成11年1月12日までに,実際に搬出処
分を実施した(甲16)。
ウ 平成10年12月16日以外の過剰保管
 原告は,同日以外にも,平成9年8月6日,平成10年1月8日,同月28日,
同年4月23日,同年5月14日,同年6月10日,同月24日,同年7月10
日,同年9月21日,同年10月7日にも産業廃棄物を過剰に保管し,保管場所以
外の場所に飛散・流出させたことが認められる(乙30)。また,同年10月22
日には,約800立方メートルもの産業廃棄物を過剰に保管し(乙41),同年1
2月2日には産業廃棄物を過剰に保管し,保管場所以外の場所に飛散・流出させた
ことが認められる(乙42)。さらに,本件施設の改修工事が終了し,かつ,本件
処分についての聴聞が開かれた後の平成11年4月9日にも産業廃棄物を過剰に保
管し,保管場所以外の場所に飛散・流出させたことが認められる(乙43)。この
ように,原告は,恒常的に,産業廃棄物の過剰保管を行っていたことが認められ
る。
(5) 生活環境保全上の支障
 本件処分前,本件施設の周辺では,次のような生活環境保全上の問題があった。
ア A町森林枯損被害
 本件施設を中心とする半径数百メ-トルの範囲の檜をはじめとした針葉樹や広葉
樹の森林の一部には,平成六,七年ころから森林枯損が発生していることが認めら
れるが,本件施設と森林との位置関係,枯損の状況,本件施設における焼却状況及
び排煙状況から,本件施設からの排煙が森林枯損に影響を及ぼしている可能性が高
いと認められる(甲17,乙19,31,32,前掲証人)。
イ 東京電力株式会社の送電線の断線事故
 平成10年8月12日,下田市A町地区で東京電力の送電線が断線し,賀茂郡E
町の全域と下田市F町地区の約1万世帯が停電した。折しも,お盆の行楽期で町内
の旅館,民宿には多数の観光客が宿泊しており,この停電は地域社会に多大な影響
を与えた。ところで,東京電力は,断線事故の原因物質を産業廃棄物を焼却する際
に排出される塩化水素であると断定し,送電線の直下付近で本件施設を設置・操業
していた原告を相手方とし,損害賠償調停事件を申し立て,現在係属中であって
(乙20,前掲証人),本件施設からの排煙が断線事故に何らかの影響を与えてい
る可能性は高いものと考えられる。
ウ 名無川への黒い水の流出
 平成10年11月25日,本件施設の近くを流れる名無川の川底に黒い灰のよう
なものがこびりついているのが確認されたが(甲17),本件施設の排水管の中に
黒い燃え殻状のものが詰まっていたことから,本件施設からの排水が原因の一部に
なっている可能性が高いと認められる(甲17,乙36,前掲証人)。
(6) 本件処分に至る経過
 被告知事は,原告が法15条の2の4第1項及び法14条8項に違反したことを
理由に,平成11年1月中旬ころから,本件処分についての具体的な検討を開始
し,指針(乙15)に基づく厚生省との協議を経て,同年2月2日には同省との間
で,本件各許可を取消す旨の処分が相当であるとの協議が整った。その後,被告知
事は,同月16日,原告に対し,聴聞通知書(甲4)を送り,予定されている不利
益処分の内容,不利益処分の原因を告知した。そして,同年3月19日に原告に対
する聴聞が開かれ,平成11年4月27日付けで,本件処分が行われた(甲4,1
7,乙14,24,証人K)。
2 争点(1)(原告は,法15条の2の4第1項に違反したか。すなわち,原告
は,平成10年9月7日から同年12月16日にかけて,ほとんど毎日のように処
理能力を大きく超える焼却処分を行ったか)について
(1) 原告が平成10年9月7日から同年12月16日までの101日のうち,
少なくとも71日,本件施設において,16時間30分以上の焼却処分を行ったこ
とは前認定のとおりである。ところで,産業廃棄物処理施設を設置しようとする者
は,都道府県知事の許可を受けなければならず(法15条1項),また,産業廃棄
物処理施設の設置者が,許可を受けた施設の処理能力などを変更するときも,原則
として都道府県知事の許可を受けなければならないとされている(法15条の2の
4第1項)。この趣旨は,産業廃棄物処理施設においては,産業廃棄物の中間処
理,最終処分が行われるので,施設の構造上の安全性,維持管理の確実性等が確保
されていなければ,産業廃棄物が安定化・無害化されず,また,施設そのものが生
活環境保全上の支障を生じさせるおそれもあることから,産業廃棄物処理施設の安
全性・信頼性の確保を図るために,設置について許可制を採るとともに,処理する
産業廃棄物の種類(法15条2項4号),処理能力(同項5号),設置計画(同項
6号),維持管理計画(同項7号)については,施設の構造上の安全性,維持管理
の確実性,生活環境などへ大きな影響を与えるため,その変更についても許可を要
するというものである。ここでいう処理能力とは,産業廃棄物処理施設が1日24
時間稼働の場合は24時間の定格標準能力を,それ以外の場合は原則として1日当
たりの実稼働時間における定格標準能力を意味するところ,上記法の趣旨から,処
理能力を10パーセント以上変更するときは,都道府県知事の許可を受けなければ
ならないとされている(法15条の2の4第1項,15条2項5号,施行規則12
条の8第1号)。
 ところで,焼却施設の処理能力の変更の方法としては,①焼却施設の構造の変更
による方法,②稼働時間の延長による方法,③実際の焼却処分量の増大による方法
(例えば,稼働時間は延長せずに,火力を強めるなどして1時間当たりの焼却処分
量を増大させる方法)などがあり得るが,上記法の趣旨からして,いずれの場合
も,変更許可を要するというべきである。このうち②の方法による場合について
は,当該焼却施設においては,稼働時間を延長した分,より多くの産業廃棄物の焼
却が可能となるのであり(例えば,稼働時間15時間・処理能力30トンの焼却施
設の場合,稼働時間を18時間に延長すれば,36トンの処理が可能になる),処
理能力の変更に当たることは明らかであるし,もし,②の方法による場合は処理能
力の変更に当たらないとすると,実際の焼却処分量を行政側が把握するのは困難で
あるから,上記法の趣旨を損なうことになりかねず適当でない。したがって,処理
能力算定の基礎となった稼働時間を10パーセント以上延長するときは,都道府県
知事の許可を受けなければならないということができる。なお,平成9年の法施行
令及び施行規則の改正に伴う施行通達(乙3)によれば,焼却施設の設置許可証の
処理能力の欄には,「1時間当たりの焼却能力,稼働時間,それらを掛け合わせた
1日当たりの処理能力」を記載することとされており,②の稼働時間の延長による
方法も処理能力の変更に当たることがより一層明確にされている。
(2) 本件施設の処理能力は第2,1(2)エのとおりであるが,これは,1日
当たりの稼働時間を15時間として算定されたものである(乙7の3頁,18
頁)。したがって,原告が本件施設の稼働時間15時間を10パーセント以上変更
するとき,すなわち,16時間30分以上焼却処分を行うときは,被告知事の許可
を受けなければいけない。ところが,原告は,被告知事の変更許可を受けることな
く,平成10年9月7日から同年12月16日までの101日のうち,少なくとも
71日,本件施設において,16時間30分以上の焼却処分を行ったものであり,
その頻度に照らせば,原告は,15時間という稼働時間を遵守する気はなかったと
考えざるを得ないのであって,稼働時間を延長したことによって,本件施設の処理
能力を変更したものと評価されてもやむを得ない。
 以上によれば,原告は法15条の2の4第1項に違反したということができる。
(3) 原告は,処理能力という文言及び最終処分場の場合,処理能力について
は,埋立場所の面積・埋立容量と規定されていること(法15条2項5号)からし
て,施設の処理能力の変更とは,施設そのものの規模等の物理的変更による処理能
力の変更を意味するところ,原告は,施設には何ら手を加えておらず,施設の処理
能力を変更していないと主張する。
 しかし,処理能力の変更が,焼却施設の物理的変更のみを意味するものではない
ことは(1)のとおりであって,原告の主張はその前提において採用できない。な
お,この点に関しては,焼却施設の物理的変更により処理能力を変更する場合は,
通常,燃焼室を変更するものと考えられるが,燃焼室の変更は,設置計画の変更に
も当たり,変更許可を要するものとされているところ(法15条の2の4第1項,
15条2項6号,施行規則11条2項3号,12条の8第3号ハ),処理能力の変
更を原告のように解すると,法が設置計画の変更とは別に処理能力の変更を許可に
係らしめた意味が失われることになり不合理であることも,上記(1)の解釈の裏
付けとなる。
 原告は,最終処分場に関する規定の仕方をその根拠とするが,最終処分場の場合
は,焼却施設と異なり1日当たりの処理能力を観念することができないため,埋立
場所の面積・埋立容量と規定されているのであって,同列に論じることはできず,
このことをもって,焼却施設の処理能力の変更が,焼却施設そのものの物理的変更
のみを意味すると解することはできない。さらに,原告は,法15条の2の4は,
物理的な意味での「施設」の変更許可に関する規定であると主張するが,変更許可
を要する事項の中には,処理する産業廃棄物の種類(法15条2項4号)など,
「施設」とは直接関係ない事項も含まれている。したがって,原告の主張は理由が
ない。
3 争点(2)(本件処分は,裁量権を逸脱・濫用したものといえるか。)につい

(1) 産業廃棄物処理業の許可取消処分に関する基準
 被告知事は,行政手続法の施行に合わせて各都道府県に通知された指針(乙1
5)に基づいて本件処分を行ったと認められる(乙24,証人K)。そして,同指
針によれば,業の許可の取消し等に当たっては,①違反行為の態様,②産業廃棄物
処理業者の対応等を考慮して処分内容を決定すべきこと,また,違反行為の態様に
ついては,違反行為にかかる違反条項の軽重,生活環境保全上の支障の有無,その
軽重が,そして,処理業者の対応については,過去に行政処分を受けたことがある
か否か,また,その内容,原状回復等の有無を考慮するとしており,「過去,別の
違反行為について刑罰又は処分を受けたことがある場合は,業の許可の取消し等の
中でも重い処分をすることが可能である。」とされているところ,同指針はその内
容に照らし,具体的判断基準として合理性を有するものと認められる。そこで,こ
れを本件にあてはめて検討してみる。
(2)ア 原告は,前記のとおり許可なく処理能力を変更し,その結果,法15条
の2の4第1項に違反したが,これに対しては,「3年以下の懲役若しくは100
0万円以下の罰金又はこれを併科」(法25条5号)と法の中で最も重い罰則が定
められている。この点で,まず,違反行為の態様が悪質であるといえる。
 原告は,午後9時以降の排煙は埋火によるものであって,積極的に焼却処分を行
ったものではなく,また,被告知事側の説明不足のため,そもそも埋火が法令上禁
止されていることを理解していなかった旨主張する。
 しかし,前記認定の第2回夜間監視の際の立入検査の状況から考えても,午後9
時以降の排煙のすべてが埋火によるものであったとは考えられないが,仮に,原告
主張のとおり,これが埋火によるものであったとしても,埋火が焼却処分であり,
埋火そのものも法令上禁止されていることは第4,1(3)アのとおりであるし,
前記(2)ア認定のとおり,平成9年11月8日の法施行令等改正についての説明
会において,被告知事側から,出席した原告代表者らに対し,「法改正に伴う焼却
施設の取扱いについて」と題するパンフレット(乙8)が配付され,野焼きの禁止
とともに埋火が禁止されたこと,平成10年6月10日の本件施設への立入検査の
際にも「時間内に燃やし切るよう」指導がされたこと,同年9月8日の立入検査に
おいても「埋火でない状態が焼却終了であること。煙が出ていれば焼却終了になら
ないこと。埋火を中止すること。時間内に燃やし切ること。」との指導がされたこ
とは前認定のとおりである。
 したがって,原告の主張は理由がない。
イ 次に,原告は,許可された保管量を大幅に超える量の産業廃棄物を保管し,こ
れを飛散・流出させて,法14条8項に違反した。
 確かに,原告が違反した法14条8項に対しては罰則が定められていないが,同
項に違反した場合は,改善命令(法19条の3第2号)の対象になり,さらに改善
命令に違反した場合は,「1年以下の懲役又は300万円以下の罰金」(法26条
2号)と罰則が適用される。したがって,罰則が定められていないことの一事をも
って,軽微な違反であるということはできない。
 また,前認定のとおり,原告は,恒常的に産業廃棄物の過剰保管を行っていた
上,産業廃棄物を飛散・流出させたことにより,2度の行政処分(改善命令)を受
けたほか,保管に関する指導もしばしば受けている。したがって,原告の法14条
8項違反の行為の態様もまた悪質である。
 原告は,公害防止協定を遵守すべく,平成10年8月26日以降,日曜日,祭
日,操業時間以外の操業を取り止めたため,産業廃棄物の保管量が一時的に増えて
しまったものであると主張する。
 しかし,原告は,平成10年8月26日から同年12月16日までの間の全ての
日曜日,祭日に操業しており(乙10の1ないし8,乙11),前認定のとおり,
操業時間以外の操業も行っていた。また,原告による産業廃棄物の過剰保管は,同
年8月26日以前から,恒常的に行われていたものであり,保管量が一時的に増え
てしまったというものではない。
 したがって,原告の主張は理由がない。
(3) 原告は,埋火での処理能力を超える焼却処分の改善のため,被告知事側の
指導にしたがい,約4億円を掛けて排ガス処理装置,集塵装置バグフィルター及び
焼却設備関係の設置及び改良工事を実施完成させ,かつ埋火の改善についても実施
しているので,将来的に原告の業務内容の改善は十分に期待できるものであると主
張する。
 確かに,前認定のとおり,原告は平成10年11月から翌11年2月にかけて,
約4億円かけて本件施設の改修工事を行ったが,本件処分は,施設の構造基準違反
を理由にされたものではなく,稼働時間の延長による処理能力の無許可変更及び産
業廃棄物処理基準違反を理由にされたものである。したがって,本件施設の改修が
直接的に原告の業務内容の改善に結びつくものではない上,過去の行政処分歴,指
導の経過等に照らすと,原告の業務内容の改善が十分に期待できるとはいい難い。
 したがって,原告の主張は理由がない。
(4) 原告は,被告知事が本件施設の改修工事を指導し,軽微変更届出を受理し
ておきながら,その約1月後に本件処分を行ったのは,行政手続の一貫性を欠くも
のである上,投下した資本が無駄になるので不当であると主張する。
 しかし,本件処分は産業廃棄物処理「業」及び特別管理産業廃棄物処理「業」に
関するものであるところ,軽微変更届出は産業廃棄物処理「施設」に関するもので
あり,両者は別の規制に係るものである上,改修工事が始まったのは平成10年1
1月であり,前記認定のとおり,当時,被告知事は本件処分を具体的に検討してい
なかったのである。また,改修工事の中には,助燃装置の設置(施行規則4条1項
7号ロ(4))など施行規則の改正により平成10年12月1日から義務づけられ
たものも含まれていた上,軽微変更届出は,届出の内容が法所定の要件を満たせば
受理せざるを得ない性質のものである。さらに,原告代表者においても,平成10
年12月24日に伊豆保健所を訪れ,行政処分がされるか否かを確認しに行ってい
る(乙14)から,平成11年2月16日の聴聞の通知まで,全く行政処分を予想
していなかったとは考えられない。
 したがって,原告の主張は理由がない。
(5) 原告は,原告代表者を始め,原告の従業員一同は,本件事態を重大に受止
め,再び,このような違反行為を繰り返さないよう真摯に反省していると主張す
る。
 しかしながら,過去の行政処分歴や指導の経過,さらに前認定のとおり,原告は
本件処分についての聴聞が開かれた後の平成11年4月9日にも産業廃棄物を過剰
に保管し,保管場所以外の場所に飛散・流出させていること等からして,原告が再
びこのような違反行為を繰り返すおそれがないかどうかは疑問である。
 したがって,原告の主張は理由がない。
(6) 過去の取消事例
 広島市において,原告と同様に,産業廃棄物を飛散・流出させたこと及び改善命
令にしたがわなかったことを理由に,産業廃棄物処理業の許可が取消されており,
また,被告県においても,産業廃棄物処理基準違反及び事業範囲の無許可変更(罰
則は,法15条の2の4第1項違反と同じ)を理由に産業廃棄物処理業の許可が取
消された例が1件,変更届無届出及び事業範囲の無許可変更を理由に産業廃棄物処
理業の許可が取消された例が1件認められる(甲17)。さらに,本件施設に隣接
する大伴産業も,本件処分と同じ日に,産業廃棄物処理業の許可を取消されたこと
が認められる(甲28)。
(7) 以上のとおり,原告の違反行為の悪質性,違反条項の重さ,過去4回にわ
たり行政処分を受けていること(うち2回は業務停止という重いものである),指
導の経過,指導に対する原告の対応,前認定の生活環境保全上の支障の発生及び過
去の取消事例等に照らすと,本件処分に裁量権を逸脱・濫用した違法があるとは認
められない。
4 争点(3)(本件処分は,行政手続法14条1項に違反するか。すなわち,本
件処分には,理由不備・不十分の違法があるか)について
 被告知事は,前記2(1)(2)のとおり,原告が,無許可で稼働時間を延長す
る方法によって,処理能力の変更をしたことを理由に本件処分をしたのであり,実
際の焼却処分量が処理能力を越えたことを理由に本件処分をしたものではない。し
たがって,被告知事が,本件処分の理由において,原告が実際に焼却処分した産業
廃棄物の量を示さなかったことは何ら違法ではない。
 また,確かに,本件施設の処理能力は,第2,1(2)エのとおり,産業廃棄物
の容量で示されているが,これは,稼働時間を15時間として計算されたものであ
り,稼働時間を延長すれば,処理できる産業廃棄物の容量(処理能力)もそれに比
例して増大することは自明のことである。したがって,被告知事が,本件処分の理
由において,焼却時間超過のみを指摘し,変更後の処理能力(容量)を示さなかっ
たことも違法ではない。
 したがって,本件処分に,理由不備・不十分の違法はなく,本件処分は行政手続
法14条1項に違反しない。
5 以上によれば,本件処分に事実誤認及び法令の解釈適用を誤った違法はなく,
本件処分は適法である。
第5 結論
 よって,原告の本訴請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文の
とおり判決する。
静岡地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 佃浩一
裁判官 三輪恭子
裁判官 宮本聡

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