弁護士法人ITJ法律事務所

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○ 主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
○ 事実及び理由
第一 請求
株式会社スーパー大安の別表一記載の滞納国税を徴収するため、被告が原告に対
し、平成二年六月一日付けの納税通知書でした一億四五四〇万三二九七円を限度額
とする第二次納税義務の告知を取り消す。
第二 事案の概要
一 争いのない事実
1 原告は、株式会社スーパー大安(以下「大安」という。)の代表取締役であっ
た。
2 被告は、原告に対し、大安の別表一記載の滞納国税を徴収するため、平成二年
六月一日付けの納税通知書によって、一億四五四〇万三二九七円を限度額とする第
二次納税義務の告知をした(以下「本件処分」という。)。
3 原告は、本件処分に対し、平成二年八月二日、異議申立てをしたが、これは、
同年一二月一〇日付けで棄却され、さらに、原告は、平成三年一月一〇日、審査請
求をしたが、平成四年一月三一日、これを棄却する旨の裁決がなされ、同裁決は、
同年二月一二日より後に、原告に送達された。
二 本件処分の要件に関する被告の主張
本件処分は、国税徴収法(以下「徴収法」という。)三九条に基づくもので、次の
とおり、その要件を備えている。
1 滞納国税の存在
別表二記載のとおり、大安に係る滞納国税が存した。
2 徴収不足
大安は、別紙目録記載の不動産(以下「本件物件」という。)を、てんぐや食品株
式会社(以下「てんぐや食品」という。)に貸し付けることを唯一の業としていた
ところ、大安は、後記3のとおり本件物件を売却して、無資力となった。したがっ
て、大安の「財産につき滞納処分を執行しても、なお徴収すべき額に不足する」状
況にあった。
3 無償譲渡等の処分
(一) 大安は、昭和五四年一二月一八日、本件物件のうち<地名略>の物件を、
Aに、代金一億五五〇〇万円で売却し、同日、二〇〇〇万円を、同月二六日、一億
三五〇〇万円を、それぞれ受領した。また、大安は、昭和五六年二月一二日、本件
物件のうち<地名略>の物件を、京栄不動産株式会社に、代金二八九一万二五〇〇
円で売却し、同日、三〇〇万円を、同月二一日、二五九一万二五〇〇円を、それぞ
れ受領した。
(二) 大安は、右代金のうち、一三九一万二五〇〇円については手持現金とし
て、一億七〇〇〇万円について銀行預金としてそれぞれ所持していたが、右銀行預
金については、昭和五四年一二月二〇日から昭和五六年六月一五日までの間に、預
金利息を含む一億七〇七三万一三〇九円のうち、一億七〇七一万三六九三円を引き
出した。右経過の詳細は、別表三、四記載のとおりである。
(三) 大安は、昭和五六年二月当時、水野商会に対して三〇〇万円、Bに対して
一七〇〇万円、てんぐや食品に対して一七七〇万四九六円、法人税一五二万二四〇
〇円の各債務を有しており、右(二)の代金の一部を、右各債務の返済にあてた。
(四) その余の売却代金一億四五四〇万三二九七円(右(二)の一三九一万二五
〇〇円と一億七〇七一万三六九三円の合計一億八四六二万六一九三円から、右
(三)の合計額三九二二万二八九六円を差し引いた金額)は、原告が大安から取得
したうえ、てんぐや食品に貸し付けられ、昭和五四年九月から昭和五六年九月にか
けて行われたてんぐや食品の店舗開設・改修等の資金等にあてられた。
(五) 以上のとおり、原告が大安の本件物件の売買代金を取得したことは、大安
が「その財産につき行った無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除そ
の他第三者に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)であるということができ
る。
4 無償譲渡等の処分が滞納国税の法定納期限の一年前の日以後に行われたこと
右1の滞納国税の法定納期限は、別表二記載のとおりであり、原告の売買代金の取
得は、昭和五四年一二月一八日から昭和五六年六月一五日にかけてであるから、無
償譲渡等の処分は滞納国税の法定納期限の一年前の日以後に行われたということが
できる。
5 徴収不足が無償譲渡等の処分に基因すること
大安は、本件物件を売却したために無資力となり、徴収不足が生じた。
三 原告は、右二について、本件物件の売却代金は、大安の借入金の返済にあてら
れたと主張するほか、次のとおり主張する。
1 第二次納税義務は、主たる納税義務が滞納となり、徴収不足が生じることが客
観的に認識可能となった時期に成立すると解するべきであり、本件では、本件物件
が売却され、別表一のすべての納期限が到来した昭和五七年九月二日には、第二次
納税義務が成立したというべきである。そして、その時点から、国税通則法(以下
「通則法」という。)七〇条により、除斥期間が進行し、遅くとも七年後には、原
告の第二次納税義務は消滅したというべきである。
2 本件の主たる納税義務についての時効は、昭和六三年六月二四日、大安が有し
ていた預金が差し押えられたことにより中断しているとしても、その時点で具体的
な義務として存在しない原告の第二次納税義務についての時効まで中断させるもの
ではない。したがって、原告の第二次納税義務は、すでに時効によって消滅したと
いうべきである。
四 被告は、右三1、2の各主張を争う。
第三 判断
一 徴収法三九条の要件の存在について
1 滞納国税の存在
別表二記載のとおり、大安に係る滞納国税が存したことについては、被告は、明ら
かに争わないので、自白したものとみなす。
2 徴収不足、無償譲渡等の処分及びそれらの関係
(一) 乙第一、第二号証、第三号証の一ないし四、第四号証の一、二、第五号証
の一ないし三、第六号証の一ないし一七、第七号証の一ないし六、第八号証、第九
号証の一ないし三、第一〇号証の一ないし一四、第一一号証の一ないし一八、第一
二号証、第一三号証の一ないし三、第一四号証、第一五号証の一ないし三、第一
七、第一八号証及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる(争いのな
い事実及び被告が明らかに争わない事実を含む。)
(1) 大安は、本件物件を、てんぐや食品に貸し付けることを唯一の業としてい
た。原告は、大安及びてんぐや食品の代表者であり、これらの会社を経営してい
た。
(2) 大安は、昭和五四年一二月一八日、本件物件のうち納屋町の物件を、A
に、代金一億五五〇〇万円で売却し、同日、二〇〇〇万円を、同月二六日、一億三
五〇〇万円を、それぞれ受領した。また、大安は、昭和五六年二月一二日、本件物
件のうち平野町の物件を、京栄不動産株式会社に、代金二八九一万二五〇〇円で売
却し、同日、三〇〇万円を、同月二一日、二五九一万二五〇〇円を、それぞれ受領
した。
(3) 大安は、右代金のうち、二三九一万二五〇〇円については手持現金とし
て、一億六〇〇〇万円について銀行預金としてそれぞれ所持していたが、右銀行預
金については、昭和五四年一二月二〇日から昭和五六年六月一五日までの間に、預
金利息を含む一億六〇七一万三六九三円を引き出した。右経過の詳細は、別表五記
載のとおりである。
(4) 大安は、昭和五六年二月当時、水野商会に対して三〇〇万円、Bに対して
一七〇〇万円、てんぐや食品に対して一七七〇万四九六円、法人税一五二万二四〇
〇円の各債務を有しており、右(2)の代金の一部を、右各債務の返済にあてた。
(5) 大安は、右(2)の譲渡ののちは、無資産となり、実体を失って、事実上
解散状態となった。
(6) 原告は、昭和五四年一一月、京都市<地名略>に店舗を新築し、同店舗
は、てんぐや食品の竹田店として使用されてきた。また、原告は、昭和五五年九月
ころ、Cから、京都市<地名略>所在の土地建物を代金二六〇〇万円で買い受け、
同年一二月から昭和五六年三月にかけて、右代金を支払った。右建物は、てんぐや
食品の木津屋橋店として使用されてきた。さらに、てんぐや食品は、昭和五三年一
二月一八日、京都ステーションセンター株式会社から、京都駅前広場下に所在する
店舗を借り受け、同店舗は、てんぐや食品のポルタ店として使用されてきた。
(7) てんぐや食品の昭和五六年三月期の確定申告書には、同社は原告から一億
六八一〇万九七〇三円借り受けている旨の記載がある。
(二) 右認定の事実からすると、本件物件の売却代金一億四五四〇万三二九七円
(右(一)(3)の二三九一万二五〇〇円と一億六〇七一万三六九三円の合計一億
八四六二万六一九三円から、右(一)(4)の合計額三九二二万二八九六円を差し
引いた金額)は、大安において使用されたとは認められず、(1)原告は、大安及
びてんぐや食品を経営していたこと、(2)てんぐや食品は、本件物件の売却がな
されたころに店舗を開設するなど事業を拡張していること、(3)確定申告書によ
ると、てんぐや食品は原告から一億六八一〇万九七〇三円を借り受けていること、
(4)原告の昭和五四年の収入金額は六六〇万円にすぎず(乙第一六号証)、本件
物件の売却代金以外にてんぐや食品に貸し付ける資金があったとは認められないこ
と、(5)大安は、本件の主たる納税義務に関する審査請求において、本件物件の
売却代金はてんぐや食品の店舗の開設資金等にあてられたと主張していること(乙
第一七号証)、(6)原告は、本訴において、本件物件の売却代金は、大安の債務
の弁済にあてられたと主張するのみで、それ以上の主張立証を何ら行わないことを
総合すると、右一億四五四〇万三二九七円は、原告が昭和五四年一二月一八日から
昭和五六年六月一五日にかけて大安から取得したうえ、てんぐや食品に貸し付ける
などし、てんぐや食品の店舗開設等の資金等にあてられたと認められる。
(三) 右(一)(二)で述べたところを総合すると、(1)大安は「財産につき
滞納処分を執行しても、なお徴収すべき額に不足する」状況にあったこと(徴収不
足)、(2)原告は大安の本件物件の売買代金を取得し、それは、大安が「その財
産につき行った無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者
に利益を与える処分」(無償譲渡等の処分)にあたること、(3)右徴収不足は右
無償譲渡等の処分に基因することが認められる。
3 無償譲渡等の処分が滞納国税の法定納期限の一年前の日以後に行われたこと右
1の滞納国税の法定納期限は、別表二記載のとおりであり、原告の売買代金の取得
は、昭和五四年一二月一八日から昭和五六年六月一五日にかけてであるから、無償
譲渡等の処分は滞納国税の法定納期限の一年前の日以後に行われたということがで
きる。
4 以上の次第で、徴収法三九条の要件の存在が認められる。
二 除斥期間について
第二次納税義務は、主たる納税義務が申告又は決定もしくは更正等により具体的に
確定したことを前提として、その確定した税額につき本来の納付義務者の財産に対
して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に、租税
徴収の確保を図るため、本来の納税義務者と同一の納税上の責任を負わせても公平
を失しないような特別の関係にある第三者に対して補充的に課される義務であっ
て、その納付告知は、形式的には独立の課税処分ではあるけれども、実質的には、
右第三者を本来の納税義務者に準ずるものとみてこれに主たる納税義務についての
履行責任を負わせるものである。この意味において、第二次納税義務の納付告知
は、主たる課税処分等により確定した主たる納税義務の徴収手続上の一処分として
の性格を有しており、租税を賦課する処分の期間制限について定める通則法七〇条
は、同条に規定のない第二次納税義務の納付告知に適用されることはないというべ
きであって、通則法七〇条の適用があるとの原告の主張を採用することはできな
い。
三 時効について
乙第一八号証に弁論の全趣旨を総合すると、本件の主たる納税義務についての時効
は、昭和六三年六月二四日、大安が有していた預金が差し押さえられたことにより
中断したと認められる。そして、右二で述べたとおり、第二次納税義務の納付告知
は、主たる納税義務についての履行責任を負わせるものであることからすると、主
たる納税義務についての時効が完成せず、主たる納税義務が存続している以上、第
二次納税義務の納付告知をして、第二次納税義務者から租税を徴収することができ
るというべきであって、第二次納税義務が時効によって消滅したとの原告の主張を
採用することはできない。
四 結論
以上の次第で、本訴請求は理由がない。
(裁判官 福富昌昭 森義之 古閑裕二)
別紙目録及び別表一ないし五(省略)

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