弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を罰金弐千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金弐百円を壱日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。
     押収にかかる昭和三十年七月九日Aリーグ選手権試合内野席券二十四枚
(東京高等裁判所昭和三一年押第一〇八五号の一)はこれを没収する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、大森検察庁検察官副検事三島徳右衛門提出の控訴趣意書に記
載してあるとおりであるから、これを、ここに引用する。
 よつて次のとおり考察をする。
 物価統制令が、昭和二十七年法律第八十八号により同年四月二十八日以降特に法
律としての効力を有するに至つたのは、わが国が平和条約の発効によつて独立国家
として完全な主権を恢復するに至りたるに当り、新たなる観点から、同令は、その
各所定事項の本質に照らし、国の社会経済秩序の維持ひいては国民生活の安定保持
の上から、なお将来その有効な適用の必要を認めたからにほかならない。従つて同
令第九条ノ二には、価格等は、不当に高価なる額をもつてこれを契約し又は受領す
ることを得ずとあり、苟くもこれが規定に違反して取引する目的をもつて物品を所
持するにおいては、同令第十三条の二第一項に違反するものとして、同令第三十五
条所定の罪責を免がれないものと言わなければならない。
 而して、右第九条ノ二にいわゆる「不当に高価なる額」であるかどうかは、取引
当時若しくはその前後における同種物資又は類似物資に対する同令第三条所定の如
き統制額又は公正な普通一般の取引として社会経済秩序維持の上から適正と認めら
れる価格を基準として決せらるべきものと解するを相当とする。(昭和二五年
(れ)第九七八号、同年一〇月二六日第一小法廷判決―最高裁判所判例集第四巻第
一〇号二一八九頁―参照)。
 今日娯楽の利用は、国民日常の文化生活における実際として無視さるべきでない
ものがあり、その機会は、すべての者に均等でなければならない社会的必要の下に
在るものと言わなければならない。すなわち、給与の尠い一介の勤労者と雖も金銭
収支の計画に基き僅かな支出を覚悟して適切と思料する時刻に娯楽場の窓口に立つ
ときは安易に入場券が買えて野球競技等の見物を満喫するの機会を万人と共に等し
く持つということは、そうした人達のまことに多い而してまたそうした快的な娯楽
利用の機会があつて然るべき今日の社会において欠くべからざる重要な生活秩序た
ることを失わず、従つてまた、給与の尠い者の喜びが安易にそして快的に獲得され
るがためには、右窓口における入場券本来の価格こそは斯うした娯楽利用に伴う社
会生活全般の問題として維持されなければならない一連の経済秩序における適正に
して而も不当ないしは没義道な手段により、より以上にたやすく釣り上げられては
ならない価格であると言わなければならない。
 <要旨>いわゆるダフ屋なる者は、本件記録によつても窺われるように、演劇、映
画、運動競技等の切符ないしは入場券を予かじめ買い占めておいて、その窓
口販売の売切による観客の困窮に乗じ、切符ないしは入場券本来の価格を不当に釣
り上げて高く売りつける一種の闇屋であつて、こうしたダフ屋の所為は、恰も戦時
中或いは戦後において米麦、酒類、木炭等物資の不足、消費者の困窮に乗じて行わ
れた営利飽くなき取引においてその統制額にかかわらず価格を無暗に釣り上げ、も
つて物価の安定に大なる支障を醸すに至つた闇取引とその本質において殆んど異る
ものなく、ダフ屋の右の如き価格の釣上取引は、それ自体物価統制令第九条ノ二に
いわゆる「不当に高価なる額」をもつて取引したものというべく、これが取引をも
つて、私的自治ないしは契約自由の原則に従つた自由にして適法な契約であるとし
てこれをたやすく看過すべき筋合ではない。
 記録によれば、
 被告人は、いわゆるダフ屋であるところ、ダフ屋の商売として昭和三十年七月九
日東京都文京区a町B野球場前電車通附近路上において窓口における正規の販売価
格一枚二百円の同球場の右同目附A、リーグ選手権野球試合内野席券二十四枚を一
枚二百五十円ないしは三百円位の価格で売り渡そうとして所持していたものである
 ことが明白であるから、その所為が、物価統制令第九条ノ二にいわゆる「不当に
高価なる額」をもつて取引する目的で物品を所持していたものであることに該当す
ることは上来説明するところに照らし自ずから明らかである。されば、被告人の右
所為は、物価統制令第十三条ノ二の規定に違反するものとして同令第三十五条所定
の罪責を免がれないところ、原審は、右事実と同一趣旨の内容を有する本件公訴事
実を認めながら、被告人の意図した本件観覧券の取引価格は、物価統制令第九条ノ
二の不当に高価な額に該らないとして被告人の本件所為につき被告人を無罪とした
ことは、同令第九条ノ二及び第十三条ノ二の各規定の解釈を誤まりたるの結果、判
決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤を冒したものというのほかはないか
ら検察官の論旨は、結局において理由あるに帰する。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛