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裁判例


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主文
1原判決を以下のとおり変更する。
(1)被控訴人は,控訴人に対し,5619万6600円を支払え。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,5619万6600円及びこれに対する平成1
9年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
本件は,東京都中央都税事務所長が控訴人に対してした平成3年8月1日か
ら同4年7月31日までの事業年度分の法人事業税及び法人都民税の減額更正
・決定処分により生じた過納金の還付に際し,東京都知事が,控訴人に対し,
還付加算金の算定の起算日について上記減額更正・決定処分の日の翌日から1
箇月を経過する日の翌日とし,還付加算金を過少申告加算金のみを対象として
算出した上,同18年11月13日付け還付金通知書を送付して還付決定をし
,,,たところ控訴人が還付加算金の起算日は納付の日の翌日と解すべきであり
過少申告加算金だけでなく,法人事業税本税及び法人都民税本税並びに各延滞
金についても還付加算金が支払われるべきであると主張して,その納付の日の
翌日から同18年11月13日までの未払の還付加算金の支払を求める事案で
ある。
1関係法令の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
は,原判決9頁9行目の「法人事業税」から同14行目の「基づく」までを削
り,11頁15行目の「17条の4第1項1号」を「17条の4第1項4号」
に改め,12頁2行目の次に「(4)本件修正申告に地方税法17条の4第1
,,項1号が適用され還付加算金の起算日を各納付の日の翌日として計算すると
各還付加算金額は,別表2から別表5までのとおりとなる。そして,被控訴人
において行われている本税とそれにかかわる延滞金に係る還付加算金を合算し
た後に100円未満を切り捨てるという端数処理の方法により計算すると,各
還付加算金額の合計金額は,別表6のとおり5619万6600円となる」。
を加え,同10行目から12行目までを「なお,以下,地方税法72条の33
第3項の規定又は同法53条28項若しくは321条の8第28項の規定によ
り,そのそれぞれに定められた期間内に提出された申告書に係る申告を「義務
修正申告」ということがある。また,法人税について税務官署から更正又は決
定を受けたことを契機としてなされたものであるが,上記期間経過後に提出さ
れた申告書に係る申告を「期限後修正申告」ということがある」に,同14。
頁9行目の「延滞金」を「過少申告加算金」にそれぞれ改め,同19頁2行目
から同8行目までを削り,同9行目の「(3)」を「(2)」に改め,2に当審にお
ける当事者の主張を付加補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第
2事案の概要」の1項ないし4項(原判決2頁13行目から同24頁14行目
まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2当審における当事者の主張
(1)控訴人
ア本件修正申告は,本件法人税等更正処分を受けたことを契機として,地
方税法(以下「法」という)の定めに従い同処分により確定した法人所。
得ないし法人税を課税標準として行われたものであり,控訴人が自らの計
算により所得額及び法人税額を算出したものではなかったのであるから,
本件修正申告により確定した法人事業税ないし法人都民税が過納となった
ことにつき,控訴人に帰責事由があるということはできない。また,この
場合に還付加算金の起算日を納付の日の翌日であると解さないとすると,
本件法人税等更正処分に従って法人事業税ないし法人都民税の申告納付を
した場合の方が,申告納付の措置を採らずに放置して法人事業税ないし法
人都民税について更正を受けた場合に比べ,還付加算金の算定において著
しい不利益を受けるという不合理な結果を生ずることになる。
イ法72条の33第3項,53条28項,321条の8第28項は,国の
法人税について納税者の計算で修正申告をした場合や,国の法人税につい
て更正,決定があった場合の地方税の申告について規定したものであり,
それ以外の場合の地方税の修正申告について規定したものが法72条の3
3第2項,53条27項,321条の8第27項である。したがって,法
人事業税に関し国の法人税の更正,決定を受けて法72条の33第3項に
違反して1箇月を過ぎて申告納付した場合でも,その申告行為が法72条
の33第2項の申告行為になるというものではなく,国の法人税について
の更正,決定に基づくものであるため,法72条の33第3項の申告行為
と解すべきである。また,法人都民税に関し国の法人税の更正,決定を受
けて法53条28項,321条の8第28項,国税通則法35条2項2号
に違反して1箇月を過ぎて申告納付した場合でも,その申告行為が法53
条27項,321条の8第27項の申告行為になるというものではなく,
国の法人税についての更正,決定に基づくものであるため,法53条28
項,321条の8第28項の申告行為と解すべきである。
ウ期限後修正申告であっても,法72条の33第3項,53条28項,3
21条の8第28項の申告であることに変わりがなく,法17条の4第1
項1号の適用が当然に認められるべきである。
(2)被控訴人
ア本件のように先行する税額確定行為が存在し,義務修正申告制度が用意
されている場合においては,納税者は,法定の期限内に申告する義務修正
申告と法定の期限を過ぎて申告する自主修正申告とを自由に選択できたの
であるから,自主修正申告の場合が申告納付の措置を採らずに放置して法
人事業税及び法人都民税について更正を受けた場合に比べ,還付加算金の
算定において著しい不利益があり,不合理な結果を生ずるとまでいうこと
はできない。
イ法72条の33第2項,53条27項及び321条の8第27項は,修
正申告をするに至った契機にはかかわらず,先行する税額確定行為による
税額に不足があることが判明した場合の修正申告一般について定めた規定
であり,法72条の33第3項,53条28項及び321条の8第28項
は,修正申告一般のうち,法人税に係る修正申告又は更正,決定を契機と
する法人事業税及び法人都民税の修正申告の時期に関する特則である。し
たがって,本件修正申告は,法72条の33第2項,53条27項及び3
21条の8第27項の申告にほかならない。
ウ還付加算金は,還付金につき生じる利息であると解されるから,これに
対して生じる遅延損害金は,民法405条の重利に該当するところ,本件
において,同条の規定に基づいて元本組入れがされた事実は認められない
から,控訴人の遅延損害金に係る請求は理由がない。
第3争点に対する判断
以下に摘示する法の各条項は,それぞれ別表1記載のものをいう。
1義務修正申告について
(1)法人都民税に係る法734条3項により準用される法53条28項及び
法321条の8第28項は,法人税に係る更正若しくは決定の通知により,
それまでに申告書を提出し,又は更正若しくは決定を受けたことにより確定
していた法人都民税の額に不足が生じたときは,当該法人は,当該更正若し
くは決定によって納付すべき法人税額を納付すべき日までにその不足額につ
いて申告納付をしなければならないと定める(義務修正申告。なお,これら
の規定は,上記各条の27項(申告書を提出した法人等は,先に提出した申
告書等に記載された都民税額に不足額がある場合には,遅滞なく修正申告書
を提出し,その申告により増加した都民税額を納付しなければならない旨を
定めるもの)の特則の意味を持つものと解される。そして,上記の「法。)
人税額を納付すべき日」は,更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌
日から起算して1箇月を経過する日と定められている(国税通則法35条2
項2号。。)
もっとも,申告制度の趣旨に照らすと,上記期限を徒過しても法53条
28項及び法321条の8第28項に基づく申告義務がなくなるものでは
ないと解される。法53条26項及び法321条の8第26項は,それぞ
れ各条の28項の規定によって申告書を提出すべき法人は,当該申告書の
提出期限後においても更正,決定の通知があるまでは,同項の規定によっ
て申告書を提出し,その申告した都民税を納付することができる旨定めて
いるが,これは,更正処分がされるまでは同条項の規定によって期限後修
正申告ができるし,それをすべきことを確認する趣旨のものであるという
ことができるのである。
(2)次に,法人事業税に係る法72条の33第3項は,申告書を提出した法
人は,当該申告に係る事業税の計算の基礎となった事業年度又は計算期間に
係る法人税の課税標準について税務官署の更正又は決定を受けたときは,当
該税務官署が当該更正又は決定の通知をした日から1箇月以内に,当該更正
又は決定に係る課税標準を基礎として,修正申告書を提出するとともに,そ
の修正により増加した事業税額を納付しなければならない旨定める(義務修
正申告。なお,この規定は,同条2項(申告書を提出した法人等は,当該申
告書に記載した課税標準額又は事業税額について不足額がある場合には,遅
滞なく修正申告書を提出するとともに,その修正により増加した事業税額を
納付しなければならない旨を定めるもの)の特則の意味を持つものと解され
る。なお,事業税については,法53条26項及び法321条の8第2。)
6項に当たる規定が置かれていないが(法72条の33第1項は,同条3項
の規定を引用していない,上記の期限後であっても,申告制度の趣旨に。)
照らせば,更正決定がされるまでは法72条の33第3項の規定によって修
正申告ができるのは当然のことで,上記期限後であっても同条項に基づき申
告義務があると解される。ただし,期限後にされると,後記(3)のように,
過少申告加算金が課されるという不利益を受ける。
(3)なお,期限後修正申告は,義務修正申告に比して延滞金の額が増大する
ことになる(法64条,326条,72条の45。また,法人事業税につ)
いては,義務修正申告の期限を徒過した場合には,修正申告書によって増加
した税額につき過少申告加算金が課されるが,上記期限を遵守した場合には
過少申告加算金を課されないとされている(法72条の46第1項。このよ
うな取扱いをすることで,期限内の申告を勧奨するものである。。)
2還付加算金について
(1)東京都知事は,過誤納に係る都の徴収金があるときは,遅滞なく過誤納
金を還付しなければならず,その場合には,後述する起算日から東京都知事
が還付のため支出を決定した日までの期間の日数に応じ,その金額に所定の
割合を乗じて計算した還付加算金をその還付すべき金額に加算しなければな
らない(法17条,17条の4第1項,1条2項。)
この還付加算金の算定の起算日は,法1条2項により準用される法17条
の4第1項1号によれば,①更正,決定若しくは賦課決定,②法53条2
8項若しくは法321条の8第28項の規定による申告書(法人税に係る更
正又は決定によって納付すべき法人税額を課税標準として算定した法人都民
税の法人税割額に係るものに限る。なお,法734条2項及び3項により,
東京都は,都の特別区の存する区域内において,道府県民税及び市町村民税
のうち,それぞれ法人等に対して課するものを法人都民税として課するもの
とされている,法72条の33第3項の規定(法人事業税に関するもの)。)
による申告書等の提出又は③過少申告加算金,不申告加算金若しくは重加算
金の決定により納付し又は納入すべき額が確定した都の徴収金に係る過納金
については,当該過納金に係る都の徴収金の納付又は納入があった日の翌日
とするものとされている。これに対し,法1条2項により準用される法17
条の4第1項4号及び地方税法施行令(以下「施行令」という)6条の1。
5第1項1号によれば,法17条の4第1項1号ないし3号に掲げる過納金
以外の都の徴収金に係る過誤納金のうち,申告書の提出により納付し又は納
入すべき額が確定した地方税に係る過納金でその納付し又は納入すべき額を
減少させる更正(更正の請求に基づく更正を除く)により生じたものにつ。
いては,その更正があった日の翌日から起算して1箇月を経過する日の翌日
を還付加算金の起算日とするものとされている。
(2)上記によると,法17条の4第1項及び施行令6条の15第1項は,不
当利得の法理を踏まえ,過納に係る地方税の額が地方団体の更正,決定等に
より確定したものである場合にはその納付又は納入があった日の翌日から,
納税者の申告によって確定したものである場合には,原則として,減額更正
があった日の翌日から起算して1箇月を経過する日の翌日から,それぞれ還
付加算金を加算することとしているが,過納に係る地方税の額が義務修正申
告により確定したものである場合,その還付加算金の起算日については,地
方団体の更正,決定等により確定した場合と同列に扱うこととしているので
ある。この部分は昭和50年改正に係るものであるが,この改正は,義務修
正申告が法人税の更正,決定に伴って義務的に行われるものであり,過納と
なったことにつき納税者に帰責事由があるとはいえないこと,この場合に,
税額の確定が申告によりされているとして,減額更正があった日の翌日から
起算して1箇月を経過する日の翌日からしか還付加算金を加算しないことと
すると,義務修正申告を怠ったために増額更正を受けた場合には納付又は納
入があった日の翌日から還付加算金が加算されることと比べて,不合理な結
果が生ずることを考慮してなされたものである(以上,最高裁平成20年1
0月24日第二小法廷判決・民集62巻9号2424頁参照。しかし,上)
記改正に,それ以上に,還付加算金の点で期限後の申告(期限後修正申告)
を不利に取り扱うことにして,期限内の申告(義務修正申告)を勧奨しよう
という趣旨までも含まれていたことはうかがわれない。
3以上を前提として,本件について検討する。
(1)前提事実によると,本件法人税等更正処分により,法人都民税の法人税
割の課税標準である法人税額ないし法人事業税の所得割の課税標準である当
該法人の所得が権限ある国税官署により一応有効に確定された状態にあった
ということができる。そして,上記2によれば,控訴人は,一定期間内に本
件法人税等更正処分の内容に沿って修正申告をすることが義務付けられてい
た。また,この期限を徒過した場合でも,控訴人は本件法人税等更正処分に
沿った修正申告することの義務がなくなるわけではなく,申告義務を負って
いたものである。
そして,処分庁である東京都中央都税事務所長は,控訴人が本件法人税等
更正処分の内容に沿って修正申告及び納付をすれば,これをそのまま是認す
ることになるが,これがされなかった場合には,本件法人税等更正処分の内
容に沿って法人都民税及び法人事業税の更正をすることになるのである(法
55条1項,321条の11第1項,72条の39第1項。)
(2)そうすると,本件修正申告は,法の定めた義務修正申告の期限を遵守し
ないものではあった(期限後修正申告)が,あくまで法(53条28項,3
21条の8第28項,72条の33第3項)により義務付けられたものであ
って,法の定めに従い本件法人税等更正処分により確定した法人税額又は所
得額を法人都民税又は法人事業税の課税標準として行われたものであり,控
訴人が自らの計算により課税標準を算出したものではなかったのであるか
ら,本件修正申告により確定した法人都民税額及び法人事業税額が過納とな
ったことについては,控訴人に帰責事由があるということはできないという
べきである。また,この場合に還付加算金の起算日を納付の日の翌日である
と解さないとすると,本件法人税等更正処分に従って法人都民税及び法人事
業税の申告納付をした場合の方が,申告納付の措置を採らずに放置して更正
を受けた場合に比べ,還付加算金の算定において著しい不利益を受けるとい
う不合理な結果を生ずることとなるのである。しかも,昭和50年改正は,
専ら義務修正申告が法人税の更正,決定に伴って義務的に行われるものであ
るという点等に着目してされたもので,そこに期限後修正申告を義務修正申
告より(過少申告加算金の点等のみならず)還付加算金の点でも不利に取り
扱うことにして,期限内の申告を勧奨しようという趣旨まで含まれていたこ
とはうかがわれないのである。
以上の点に照らすと,本件修正申告は法の定めた義務修正申告の期限を
遵守していないとしても,本件過納金の還付に際しては,法17条の4第
1項1号に基づき,納付の日の翌日から還付加算金を加算するべきものと
解するのが相当である(前掲最高裁判決参照。)
4(1)そうすると,還付加算金の額は合計5619万6600円となる(前提
事実(4)。)
(2)なお,控訴人は,還付加算金のほか,これに対する訴状送達の日の翌日
から年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。しかしながら,還付
加算金は,還付金につき生じる利息の性質を有するものであるから,これ
(,に対して生じる遅延損害金は民法405条の重利に該当するところなお
租税法律関係についても,それを排除する明文の規定あるいは特段の理由
がない限り,私法規定が適用ないし準用されると解される,本件におい。)
て,同条の規定に基づいて元本組入れがなされたことについての主張,立
証はされていないから,控訴人の遅延損害金に係る請求は理由がないとい
うべきである。
5結論
以上によれば,控訴人の請求は5619万6600円の支払を求める限度で
理由があるからこれを認容し,その余は理由がないことになる。よって,これ
と結論を異にする原判決を異なる限度で変更し,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官大坪丘
裁判官宇田川基
裁判官足立哲
(原裁判等の表示)
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,金5619万6600円及びこれに対する平成19年
1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,東京都中央都税事務所長が原告に対してした平成3年8月1日から
同4年7月31日までの事業年度分の法人事業税及び法人都民税の減額更正・
決定処分により生じた過納金の還付に際し,東京都知事が,原告に対し,還付
加算金の算定の起算日について上記減額更正・決定処分の日の翌日から1箇月
を経過する日の翌日とし,還付加算金を過少申告加算金のみを対象として算出
した上同18年11月13日付け還付金通知書を送付して還付決定以下本,(「
件還付決定」という)をしたところ,原告が,還付加算金の起算日は納付の。
日の翌日と解すべきであり,過少申告加算金だけでなく,法人事業税本税及び
法人都民税本税並びに各延滞金についても還付加算金が支払われるべきである
と主張して,その納付の日の翌日から同18年11月13日までの未払の還付
加算金の支払を求める事案である。
1関係法令の定め
本件還付決定時に施行されていた地方税法及び地方税法施行令等の関係規定
は以下のとおりである。
(1)事業税
地方税法72条の33
2項第72条の25から第72条の31まで…(中略)…の規定によっ
て申告書…(中略)…を提出した法人…(中略)…は,当該申告書…
(中略)…に記載した,…(中略)…付加価値額,資本金等の額,所
得,清算所得若しくは収入金額(以下この節において「課税標準額」
と総称する)又は事業税額について不足額がある場合…(中略)…。
においては,遅滞なく,総務省令で定める様式による修正申告書を提
出するとともに,その修正により増加した事業税額を納付しなければ
ならない。
3項第72条の25から第72条の31まで…(中略)…の規定によっ
て申告書を提出した法人…(中略)…は,前項の規定によるほか,当
該申告に係る事業税の計算の基礎となった事業年度…(中略)…又は
計算期間に係る法人税の課税標準について税務官署の更正又は決定を
受けたとき…(中略)…は,当該税務官署が当該更正又は決定の通知
をした日から1月以内に,当該更正又は決定に係る課税標準を基礎と
して,総務省令で定める様式による修正申告書を提出するとともに,
その修正により増加した事業税額を納付しなければならない。
(2)都民税
ア地方税法53条
(ア)27項
第1項,第2項,第4項,第5項,第24項,前項若しくはこの項の
規定によって申告書を提出した法人…(中略)…は,次の各号のいずれ
かに該当する場合には,次項に該当する場合を除くほか,遅滞なく,総
務省令で定める様式によって,当該申告書を提出し…(中略)…た道府
県知事に,当該申告書に記載し…(中略)…た第20条の9の3第5項
に規定する課税標準等又は税額等を修正する申告書を提出し,及びその
申告により増加した道府県民税額を納付しなければならない。
1号先の申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載し…
(中略)…た道府県民税額に不足額があるとき。
2号,3号(省略)
(イ)28項
第1項,第2項,第4項又は第5項の法人が…(中略)…法人税に係
る更正若しくは決定の通知を受けたこと…(中略)…により,当該法人
が前項各号のいずれかに該当することとなった場合においては,当該法
人は,…(中略)…当該更正若しくは決定によって納付すべき法人税額
…(中略)…を納付すべき日までに,同項の規定によって申告納付しな
ければならない。
イ地方税法321条の8
(ア)27項
第1項,第2項,第4項,第5項,第24項,前項若しくはこの項の
規定によって申告書を提出した法人…(中略)…は,次の各号のいずれ
かに該当する場合には,次項に該当する場合を除くほか,遅滞なく,総
務省令で定める様式によって,当該申告書を提出し…(中略)…た市町
村長に,当該申告書に記載し…(中略)…た第20条の9の3第5項に
規定する課税標準等又は税額等を修正する申告書を提出し,及びその申
告により増加した市町村民税額を納付しなければならない。
(イ)28項
第1項,第2項,第4項又は第5項の法人が…(中略)…法人税に係
る更正若しくは決定の通知を受けたこと…(中略)…により,当該法人
が前項各号のいずれかに該当することとなった場合においては,当該法
人は,…(中略)…当該更正若しくは決定によって納付すべき法人税額
…(中略)…を納付すべき日までに,同項の規定によって申告納付しな
ければならない。
(ウ)国税通則法35条2項
次の各号に掲げる金額に相当する国税の納税者は,その国税を当該各
号に掲げる日(延納に係る国税その他国税に関する法律に別段の納期限
の定めがある国税については,当該法律に定める納期限)までに国に納
付しなければならない。
1号(省略)
2号更正通知書に記載された第28条第2項第3号イからハまで(更
正により納付すべき税額)に掲げる金額(その更正により納付すべ
き税額が新たにあることとなった場合には,当該納付すべき税額)
又は決定通知書に記載された納付すべき税額その更正通知書又は
決定通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日
(3)還付加算金
ア地方税法17条の4第1項
地方団体の長は,過誤納金を第17条又は第17条の2第1項から第3
項までの規定により還付し,又は充当する場合には,次の各号に掲げる過
誤納金の区分に従い当該各号に掲げる日の翌日から地方団体の長が還付の
ため支出を決定した日又は充当をした日(同日前に充当をするに適するこ
ととなった日があるときは,その日)までの期間の日数に応じ,その金額
に年7.3パーセントの割合を乗じて計算した金額(以下「還付加算金」
という)をその還付又は充当をすべき金額に加算しなければならない。。
1号…(中略)…第53条第28項若しくは第321条の8第28項の
規定による申告書(法人税に係る更正若しくは決定によって納付すべ
き法人税額…(中略)…に係る個別帰属法人税額を課税標準として算
出した道府県民税又は市町村民税の法人税割額に係るものに限る,。)
第72条の33第3項の規定による修正申告書…(中略)…の提出又
は過少申告加算金,不申告加算金若しくは重加算金(以下本章におい
て「加算金」という)の決定により納付し又は納入すべき額が確定。
した地方団体の徴収金(当該地方団体の徴収金に係る地方税に係る延
滞金を含む)に係る過納金(次号及び第3号に掲げるものを除く)。。
当該過納金に係る地方団体の徴収金の納付又は納入があった日
2号,3号省略
4号前3号に掲げる過納金以外の地方団体の徴収金に係る過誤納金そ
の過誤納となった日として政令で定める日の翌日から起算して1月を
経過する日
イ地方税法施行令6条の15第1項
法17条の4第1項4号に規定する政令で定める日は,次の各号に掲げ
る過誤納金の区分に応じ,当該各号に掲げる日とする。
1号申告書の提出により納付し又は納入すべき額が確定した地方税(当
該地方税に係る延滞金を含む)に係る過納金でその納付し又は納入。
すべき額を減少させる更正…(中略)…により生じたものその更正
があった日
2号法17条の4第1項4号に掲げる過誤納金のうち,前号に掲げる過
納金以外のものその納付又は納入があった日
(4)権限の委任
ア地方税法3条の2
地方団体の長は,この法律で定めるその権限の一部を,当該地方団体の
条例の定めるところによって,…(中略)…同法(地方自治法のことを指
す)156条1項の規定によって条例で設ける税務に関する事務所の長。
に委任することができる。
イ東京都都税事務所設置条例
(ア)1条
地方自治法156条1項の規定に基づき,東京都都税を賦課徴収する
ため,必要の地に東京都都税事務所(以下「都税事務所」という)を。
置く。
(イ)2条
都税事務所の名称,位置及び所管区域は別表第一の…(中略)…とお
りとする。
(ウ)別表第一
都税事務所の名称,位置及び所管区域
名称位置所管区域
東京都中央都税事務所中央区中央区の区域
(エ)4条の3第1項
知事は,徴収金の賦課徴収に関する事務…(中略)…を都税の納税地
所管の都税事務所長…(中略)…に委任する(以下略)。
2前提事実
本件の前提となる事実は,以下のとおりであり,いずれの事実も当事者間に
争いがない。
(1)原告の法人事業税及び法人都民税等の納付に至る経緯
ア原告は,平成4年10月30日,京橋税務署長に対し,同3年8月1日
から同4年7月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という)。
の法人税及び法人特別税について確定申告をした。
イ原告は,平成4年10月30日,東京都中央都税事務所長に対し,本件
事業年度の法人事業税,法人都民税(税割)及び法人都民税(均等割)に
ついて地方税法72条の28第1項,53条1項及び321条の8第1項
に基づく期限内確定申告をした。当該申告により納付すべき税額は,法人
事業税2043万4600円,法人都民税(税割)1100万7600円
及び法人都民税(均等割)29万5000円であった。
ウ原告は,平成4年12月11日から同5年3月30日までの期間に,上
記イの法人事業税,法人都民税(税割)及び法人都民税(均等割)並びに
法人事業税延滞金92万4300円及び法人都民税延滞金67万5800
円を分割納付した。
エ京橋税務署長は,平成7年7月31日,原告に対し,本件事業年度の法
(「」。)人税及び法人特別税の更正処分以下本件法人税等更正処分という
及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
オ原告は,平成7年9月28日,東京都中央都税事務所長に対し,本件事
業年度について,法人事業税に係る地方税法72条の33第2項並びに法
人都民税に係る平成7年法律第49号による改正前の地方税法(以下「旧
地方税法」という)53条7項(なお,本件還付決定時においては地方。
税法53条27項)及び旧地方税法321条の8第7項(なお,本件還付
決定時においては地方税法321条の8第27項)に基づく修正申告(以
下「本件修正申告」という)をした。本件修正申告により納付すべき税。
額は,法人事業税7405万8200円及び法人都民税(税割)4728
万7700円であった。
カ東京都中央都税事務所長は,平成7年10月24日,原告に対し,地方
税法72条の46第1項に基づき過少申告加算金1008万6900円の
賦課決定処分をした。
キ原告は,平成8年1月31日から同16年8月2日までの期間に,上記
オの法人事業税及び法人都民税(税割)並びに法人事業税延滞金2741
万4100円及び法人都民税延滞金1603万5600円を分割納付し
た。
,,,また原告は平成11年5月31日から同年8月31日までの期間に
上記カの過少申告加算金を分割納付した。
(2)本件法人税等更正処分に対する不服申立て等の経緯
,,,ア原告は国税不服審判所長に対し本件法人税等更正処分を不服として
審査請求をした。
これに対し,国税不服審判所長は,平成10年7月6日,上記審査請求
を棄却する旨の裁決をした。
イ原告は,京橋税務署長を被告として,本件法人税等更正処分のうち,法
人税の更正処分については所得金額1億6589万8112円を超える部
分の,法人特別税の更正処分については課税標準法人税額5434万30
00円を超える部分の各取消しを求めて訴えを提起し(東京地方裁判所平
),,成▲年(行ウ)第▲号法人税等更正処分取消請求事件東京地方裁判所は
平成15年7月17日,法人税の更正処分については所得金額7億434
1万3032円を超える部分を,法人特別税の更正処分については課税標
準法人税額2億7091万1000円を超える部分をそれぞれ取消し,そ
の余の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。
ウ原告は,東京高等裁判所に対し,上記イの判決を全部不服として控訴し
たところ(同裁判所平成▲年(行コ)第▲号,同裁判所は,平成18年)
4月12日,原判決を変更し,法人税の更正処分については所得金額2億
2063万5112円を超える部分を,法人特別税の更正処分については
課税標準法人税額7486万9000円を超える部分をそれぞれ取り消
し,その余の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡し,同月27日,
同判決は確定した。
(3)本件還付決定に至る経緯
ア京橋税務署長は,平成18年5月1日,原告に対し,本件事業年度に係
る法人税及び法人特別税について減額更正をした。
イ東京都中央都税事務所長は,平成18年10月26日,原告に対し,地
方税法72条の39第1項,55条1項及び321条の11第1項に基づ
(「」。)き本件事業年度に係る減額更正・決定処分以下本件減額更正という
をした。減額金額は,法人事業税6716万1400円,法人都民税(税
割)4303万8800円及び過少申告加算金939万7300円であっ
た。
ウ東京都知事は,平成18年11月13日,原告に対し,地方税法17条
及び17条の4第1項1号に基づき,本件減額更正に基づき発生した以下
の過納金及び過少申告加算金に対する還付加算金の合計1億6435万9
500円を還付する旨の本件還付決定をし,同日,金員を原告名義の銀行
口座に振り込む手続を執った。
法人事業税6716万1400円
法人事業税延滞金2653万2200円
法人都民税(税割)4303万8800円
法人都民税延滞金1518万5900円
過少申告加算金939万7300円
過少申告加算金に対する還付加算金304万3900円
3争点
本件修正申告に係る申告書は,法人事業税に関しては,地方税法72条の3
3第3項の規定による修正申告書に当たり,法人都民税(税割(以下,単に)
「法人都民税」という)に関しては,同法53条28項又は321条の8第。
28項の規定による申告書に当たり,したがって,本件の過納金の還付加算金
の起算日は,同法17条の4第1項1号を適用して,納付の日の翌日と解すべ
きか否か。
なお,以下,地方税法72条の33第3項の規定による修正申告書又は同法
53条28項若しくは321条の8第28項の規定による申告書の提出に係
る申告を「義務修正申告」ということがある。
4争点に関する当事者の主張の要旨
(原告の主張)
(1)本件修正申告に係る申告書は,法人事業税に関しては,地方税法72条
の33第3項の規定による修正申告書に準じる修正申告書に当たり,法人都
民税に関しては,同法53条28項又は321条の8第28項の規定による
申告書に準じる修正申告書に当たるというべきであるから,同法17条の4
第1項1号が適用され,過少申告加算金のみならず,法人事業税本税及び法
人都民税本税並びに各延滞金という還付金のすべてに対して納付の日の翌日
から起算して還付加算金が付加されるべきである。具体的理由は,以下のと
おりである。
ア(ア)まず,地方税法17条の4の改正経緯から明らかである。
すなわち,昭和44年の改正前において,還付加算金の始期は,すべ
。,,て過納金の納付があった日の翌日とされていたしかし同年の改正で
「,,納税者が100の申告納付をしたところ自分の計算に誤りがあって
70に減額更正された場合と,地方団体が100の賦課決定をしたので
そのとおりに納付したところ,計算に誤りが発見されて70に賦課決定
がされた場合とを同列に扱うことは公平に反するのではないか」という
意見が唱えられたことから,前者の場合は,納税者自らの計算の誤りに
より過大申告した場合のように,納税者の責に帰すべき事由により過納
金が発生したのに対し,後者の場合には,地方団体の方に帰責事由があ
り,しかも行政行為の公定力から,納税者は,その賦課決定が違法であ
ると知っていても従わなければならない立場にあることにかんがみ,後
者の場合のみ,過納金の納付があった日の翌日から還付加算金が起算さ
。,,,れることとなったこれは民法上の不当利得において悪意の受益者
すなわち不当利得に帰責事由がある場合については利息を付して返還す
べきである(民法704条)という理屈とパラレルに考えるものという
ことができる。
その後,昭和50年に改正があり,納税者の申告により地方税の額が
確定する場合であっても,国税の更正又は決定により納税者が義務的に
事業税及び都民税等を申告納付した場合には,納税者には,帰責事由は
なく,自主的に申告納付した場合と同様に扱うのは不合理であることか
ら,税額の確定について地方団体に責任がある場合と同列に扱うことと
なり,義務修正申告により税額が確定した場合の還付加算金は,その納
付の日の翌日を起算日とすることとなった。法人税の増額更正により納
,,付税額が増加する場合地方税法では義務修正申告の制度を設ける一方
法人税の更正がされた場合には,地方団体にその旨の通知を速やかにす
る旨の規定を設けている。特に事業税では,1箇月以内に修正申告をし
なければならないと明示する一方で,1箇月以内に修正申告をすれば,
,。,延滞金を賦課しないという利点を与えそれを推奨しているしかるに
,,義務修正により納付した税額が後に過誤納であることが分かった場合
従来の規定では,条文上還付加算金を付けられない可能性があるのに,
義務修正を怠り増額更正を受け,その後減額更正を受けた場合には,納
付の日にさかのぼって還付加算金が付くのでは,余りにも矛盾するとい
うことから,義務修正については,明文をもって同列に扱うこととされ
たものである。
(イ)このような改正経緯からすると,本件修正申告は,義務修正申告の
期限を約1箇月過ぎたものではあるが,原告が本件法人税等更正処分の
内容に拘束されて申告したという意味において,義務的に修正申告をし
たことと変わりがないということができる。すなわち,本件法人税等更
正処分により,平成4年10月の申告により確定していた法人事業税及
び法人都民税の額に不足を生じることになったものであるところ,原告
は,期限内に義務修正申告をしなかったが,本件法人税等更正処分に基
づいて算出された所得を新たな課税標準として法人事業税の修正申告を
し,法人都民税についても本件法人税等更正処分による法人税を課税標
準にして修正申告をしたのであるから,原告としては,正に,本件法人
税等更正処分にき束されて,法人事業税及び法人都民税について本件修
正申告をしたということができる。仮に,原告が上記のとおり本件修正
申告をしなかった場合には,処分庁がしかるべき時期に本件法人税等更
正処分による所得基準及び法人税基準に基づいて,法人事業税及び法人
都民税の更正処分を行うことが当然に予測される状況にあり,当該更正
処分が行われたときには,原告は納付が遅延したことによる相当の延滞
金を別途負担しなければならないことになるのであるから,その意味で
も,原告は,本件法人税等更正処分の時点において,その新たな所得金
額及び法人税額に従った法人事業税及び法人都民税の納付を事実上余儀
なくされていたということができ,本件修正申告には,申告者である原
告の任意の判断が介在する余地はなかったのである。
このような状況において,原告が法人事業税及び法人都民税を申告納
,,,付しそれが結果的に誤りであったという場合にはその誤りの原因は
専ら納税者にあるということはできず,むしろ,課税庁・課税主体側に
あるというべきである。
また,期限後の義務修正申告に関して,道府県民税については,地方
税法53条26項に,地方団体の更正の通知があるまで,同条28項の
規定により申告書を提出し,その申告した道府県民税額を納付すること
ができると規定されていること,事業税についても,同法72条の33
第1項に,地方団体の更正の通知があるまでは,同条3項の規定により
申告書を提出し,その申告した事業税を納付することができると規定さ
れていること,市町村税についても,同法321条の8第26項により
同条28項の規定によって申告納付することが認められていることから
すると,期限後の義務修正申告も義務修正申告の1つであることが認め
られていると解することができる。
そうすると,本件修正申告は,義務修正申告の期限を徒過したもので
はあっても,還付加算金の起算日に関しては,期限内の義務修正申告と
同じ取扱いをすべきものであり,地方税法17条の4第1項1号の義務
修正申告に当たるというべきである。
(ウ)被告は,還付加算金の起算日は,地方税の確定が課税庁側によって
されたか,納税者側によってされたかによって決定されるものとして区
別されているものであり,納付した日の翌日から還付加算金が付く場合
は,確定が課税庁側によってされた場合に限られ,義務修正申告を地方
団体の更正と同列に処したのは例外的措置であって,地方税法17条の
4第1項1号の解釈は厳格にしなければならないと主張する。
しかし,地方税法の改正経緯にかんがみると,過誤納金については,
納付した翌日から還付加算金が付くのが原則であったが,例外的に納税
者の責任で過誤納が生じた場合には,過誤納が確定した段階から還付加
算金が発生するとしたのが昭和44年改正であるから,地方税法17条
の4第1項1号の適用場面を広く解釈することこそが改正の経緯に合致
した解釈であるということができる。そして,昭和50年改正は,義務
修正申告を地方団体による更正と同列に規定したが,これは納税者の責
任で過誤納が生じた場合でないことの例示として位置付けるべきであ
る。したがって,地方税法17条の4第1項1号の解釈を厳格にすべき
であるとする被告の上記主張は,失当である。
イ義務修正申告と期限を徒過した修正申告を比較すると,期限を徒過した
修正申告の場合に,過少申告加算金や延滞金等が予定されているのはやむ
を得ないとしても,還付加算金の扱いにおいて,納税者にとって不利益に
なるのは,還付加算金の制度趣旨,すなわち,過納金の発生原因が専ら課
税庁・課税主体側にあるときには,不当利得法理に準じて,保有期間の使
用利益に当たる利息を返還させようというものに反し,不合理である。な
ぜならば,本件の場合,申告期限内に修正申告をしなかったとはいえ,過
納金の発生原因が課税庁・課税主体側にあることに変わりないからであ
る。それにもかかわらず,期限後に申告した場合に納付の日の翌日から還
付加算金が発生しないとすることは,期限内に申告をしなかったことに対
する制裁として還付加算金制度を考えようとするものである。しかし,期
限を経過した後も修正申告すらしなかった者が後記ウのとおり還付加算金
の恩典を受けることとの対比においても,上記のような制裁という理屈そ
のものが破綻するばかりではなく,不公平を著しく助長することになるこ
とは明らかである。
ウ国税の更正を受けた後,期限後ではあっても自主的に申告をした者の方
が,期限後に申告もしないまま放置し,事業税及び都民税について更正を
受けた者よりも,還付加算金に関して不利な取扱いを受けることは,行政
に非協力的な者が優遇され,協力的な者が逆に全く保護されず,不利な扱
いを受けるということであって,明らかに不公平で不合理であり,申告納
税制度を採っている地方税体系に逆行するものというべきである。
前記ア(ア)の昭和50年改正の背景事情,すなわち,義務修正申告を怠
ったため,増額更正を受け,その後に減額更正を受けた場合には,納付の
日にさかのぼって還付加算金を加算されるのに,国税の更正の内容に従っ
て,自主的に申告した納税者が不利に扱われるのは相当性を欠くというこ
とから,義務修正申告をした場合が地方税法17条の4第1項1号に加え
られたということを踏まえると,法人事業税に関し,1箇月以内の義務修
正申告の期限は徒過したが,地方団体からの増額更正を受ける前に国の増
額更正どおりの内容の申告納付をした原告には,義務修正申告を怠り何の
努力も行政協力もしないで地方団体から増額更正を受けて納付した者以上
の保護を与えてしかるべきである。そのように解することこそ,租税正義
に合致し,昭和50年の改正の趣旨にも沿うということができる。
(2)本件修正申告に地方税法17条の4第1項1号が適用され,還付加算金
の起算日を各納付の日の翌日として計算すると,各還付加算金額は,別紙1
から別紙4までのとおりとなる。そして,被告において行われている本税と
それにかかわる延滞税に係る還付加算金を合算した後に100円未満を切り
捨てるという端数処理の方法により計算すると,各還付加算金額の合計金額
は,別紙5のとおり5619万6600円となる。
(3)仮に,本件修正申告が義務修正申告に当たらず,地方税法17条の4第
1項1号の適用がないとしても,本件の過納金は,いずれも同項4号の過誤
納金であるところ,本件修正申告は,前記(1)ア(イ)のとおり,納税者であ
る原告自身の判断によりその課税標準が決定された申告ではなく,本件法人
税等更正処分にき束されたものというべきであるので,地方税法施行令6条
の15第1項1号にいう「申告書の提出により納付し,又は納入すべき額が
確定した地方税(当該地方税に係る延滞金を含む)に係る過誤納金」には。
当たらないと解すべきであるから,同項2号が適用され,納付の日の翌日か
ら起算して1箇月を経過する日から起算されると解すべきである。
(被告の主張)
(1)義務修正申告制度が税務行政の便宜を考慮した特例的な措置であること
について
還付加算金の起算日は,地方税法の規定により定められており,民法の不
当利得の規定の適用はない。しかし,両者は,類似の性格を有するので,不
当利得の趣旨を取り入れて税法の規定を整備することとし,以下のとおりの
改正が行われた。
ア地方税法17条の4においては,昭和44年改正前は,すべての過納金
について,一律に納付があった日の翌日を起算日として還付加算金を算定
していたところ,昭和44年改正において,民法の不当利得制度の趣旨を
一部取り入れて,過納金にかかる不当利得の発生原因が専ら納税者の行為
に起因したのか,課税庁又は課税主体に起因したのかによって,還付加算
金の起算日に区別が設けられた。
すなわち,更正,決定等は,課税庁の行為に起因することから,還付加
,,算金の起算日は納付の日の翌日として納税者の利益を保護することとし
他方,申告は,納税者の行為に起因することから,納付の日の翌日という
基準を採らず,更正の日の翌日から1箇月を経過する日の翌日を還付加算
金の起算日とすることとし,民法の不当利得制度の趣旨を還付加算金の算
定にも反映させるとともに,それによって適正な公金の支出をも担保した
ものである。
イ昭和50年改正においては,義務修正申告が17条の4第1項1号に追
加された。
,,,,本来申告は納税者の行為によるものであり不当利得の発生原因は
納税者の申告行為に起因することになるから,その不利益は納税者に帰す
べきものであるところ,申告のうち義務修正申告に限って還付加算金の起
算日を納付の日の翌日とすることとし,地方税法17条の4第1項1号に
追加された。
義務修正申告の制度は,税務官署が更正又は決定をした日から1箇月内
という期限を設定して,当該更正又は決定に係る課税標準を基準とした申
告に限って,特に納税義務者を法的に拘束し,一方で過少申告加算金を免
除したり,還付加算金の起算日を納付の日の翌日とするなど,納税者に有
利な措置を執って納税義務者自身の手による申告納付を促し,円滑かつ迅
速な税務行政を執行させ,納税秩序を保持する手法として採られた制度で
ある。
地方税法が限定して規定している義務修正申告に当たらない修正申告
(以下,義務修正申告と対比させるときは「自主修正申告」という場合,
がある)については,特例的な措置は採られていない。。
(2)ア法人事業税に係る本件修正申告について
(ア)申告書を提出した法人は,当該申告に係る事業税の計算の基礎とな
った事業年度又は計算期間に係る法人税の標準について税務官署の更正
又は決定を受けたときは,当該税務官署が当該更正又は決定の通知をし
,,た日から1箇月以内に当該更正又は決定に係る課税標準を基礎として
修正申告書を提出するとともに,その修正により増加した事業税額を納
付しなければならない(地方税法72条の33第3項。一方,税務官)
署が更正又は決定の通知をした日から1箇月を経過した後に修正申告書
を提出した場合,同申告は,地方税法72条の33第3項に規定する義
務修正申告の要件を満たさないことから,地方税法72条の33第2項
の規定する自主修正申告に当たることになる。このような解釈は「地,
方税法の施行に関する取扱について(昭和29年5月13日自乙府発」
第109号自治庁次長通達(道府県税関係第3章事業税57(平成7)
年自治府第35号通達による改正前のもの。本件還付決定当時において
は同第3章事業税6の23)が,過少申告加算金及び不申告加算金の)
取扱いについて「国の税務官署の更正又は決定に係る課税標準を基準,
として修正申告書を提出する場合においても,その修正申告書が国の税
務官署において当該更正又は決定の通知をした日から1箇月以内に提出
されないときは,地方税法72条の33第2項の規定によって修正申告
書(自主修正申告)として取り扱われることとなるのであって,過少申
告加算金及び不申告加算金の取扱いが異なるものであるから留意するこ
と」と規定していることとも平仄が合っている。。
ひょうそく
(イ)これを本件に当てはめると,原告は,平成7年7月31日,京橋税
務署長から,本件法人税等更正処分を受けたところ,それから1箇月以
上経過した後の同年9月28日に法人事業税に係る本件修正申告を行っ
たのであるから,法人事業税に係る本件修正申告は,地方税法72条の
33第3項の規定する義務修正申告ではなく,同条2項の規定する自主
修正申告に該当するというべきである。
イ法人都民税に係る本件修正申告について
(ア)法人が法人税に係る更正又は決定の通知を受けたことにより,当該
法人が地方税法53条27項各号のいずれかに該当することとなった場
合においては,当該法人は,当該更正又は決定によって納付すべき法人
税額を納付すべき日までに,同項の規定によって申告納付しなければな
らない(地方税法53条28項,321条の8第28項。一方,当該)
更正又は決定によって納付すべき法人税額を納付すべき日を経過して,
都民税に係る修正申告書を提出した場合,その申告は,地方税法53条
27項及び321条の8第27項の規定する自主修正申告に当たること
になる。
(イ)これを本件に当てはめると,地方税法53条28項及び321条の
8第28項に規定する「法人税額を納付すべき日」とは,国税通則法3
5条2項2号により,更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌日
から起算して1箇月を経過する日と定められているので,本件において
「法人税額を納付すべき日」とは,平成7年8月31日となるところ,
原告は,同日を経過した後の同年9月28日に法人都民税に係る本件修
正申告をしたのであるから,法人都民税に係る本件修正申告は,地方税
法53条28項及び321条の8第28項の規定する義務修正申告では
なく,同法53条27項及び321条の8第27項の規定する自主修正
申告に該当するというべきである。
ウ還付加算金の起算日について
納付の日の翌日から還付加算金を計算すべき旨を定めた地方税法17条
の4第1項1号は,同法72条の33第2項,53条27項及び321条
の8第27項によるものを対象としていない。したがって,本件還付決定
においては,法人事業税本税,法人都民税本税及び各延滞金について,地
方税法17条の4第1項1号は適用されず,同項4号が適用される。そし
て,上記の過納金は,本件修正申告によって納付すべき額が確定した過納
金であり,事後的に納付すべき額を減少させる本件減額更正により生じた
ものであるから,地方税法施行令6条の15第1項1号が適用される。
したがって,還付加算金の起算日は,本件減額更正があった日の翌日か
ら起算して1箇月を経過する日の翌日となる。
(3)以上のとおりであり,本件において,東京都中央都税事務所長は,平成
18年10月26日に本件減額更正をしたため,還付加算金の起算日は,同
年11月26日を経過する日の翌日となるところ,東京都知事は,同月13
日に本件還付決定をして還付をしたのであるから,還付加算金は発生しない
ことになる。
第3争点に対する判断
1地方税法の規定の内容
(1)地方税法17条は,地方団体の長は,過誤納に係る地方団体の徴収金が
あるときは,遅滞なく過誤納金を還付すべき旨を定め,同法17条の4は,
。,過誤納金を還付する場合の加算金について起算日等を規定しているそして
同条及び地方税法施行令6条の15第1項は,過納に係る地方税の額が地方
団体の更正,決定等により確定した場合については,還付加算金の起算日を
納付の日の翌日とし,過納に係る地方税の額が納税者の申告によって確定し
た場合については,還付加算金の起算日を更正の日の翌日から起算して1月
を経過する日の翌日とすることを基本とし,過誤納金の発生原因となった地
方税の額の確定原因に応じて還付加算金の起算日を明確に区分して規定して
いる。
(2)ア具体的には,地方税法17条の4第1項1号は,①更正,決定又は賦
課決定,②53条28項若しくは321条の8第28項の規定による道府
県民税ないし市町村民税(734条2項及び3項により,東京都は,都の
特別区の存する区域内において,道府県民税及び市町村民税のうち,それ
。)ぞれ法人等に対して課するものを都民税として課するものとされている
の申告書(法人税に係る更正又は決定によって納付すべき法人税額を課税
標準として算定した道府県民税及び市町村民税の法人税割額に係るものに
。),限る又は72条の33第3項の規定による事業税の修正申告書の提出
③不申告加算金等の決定,の3つの事由により納付額が確定した地方団体
の徴収金に係る過納金について,還付加算金の起算日を当該過納金に係る
地方団体の徴収金の納付日の翌日と規定している。
このうち,①の更正,決定又は賦課決定及び③の不申告加算金等の決定
については,地方団体の長が具体的な納付額を確定したことから,還付加
算金の起算日を納付日の翌日と定めているものと解される。そして,②に
関しては,法人に係る道府県民税及び市町村民税について,申告書を期限
内に提出し,又は更正若しくは決定を受けたことによって額が確定してい
,,た場合においてその後法人税に係る更正又は決定を受けたこと等により
既に確定していた道府県民税又は市町村民税の額に不足額があるときは,
これを申告納付すべきものとされ(地方税法53条28項,321条の8
第28項,事業税について,申告書を期限内に提出したことによって額)
が確定していた場合において,その後,事業税の計算の基礎となった法人
税の課税標準(所得)についての更正又は決定を受けたときは,当該更正
又は決定後の課税標準を基礎として法定の期限内に修正申告すべきものと
されていること(72条の33第3項)を受けて,これらの要件を充足す
る申告ないし修正申告(これらを義務修正申告ということがあるのは,前
記のとおりである)によって申告納付されたときは,法律的には課税庁。
が納付額を確定したということができることから,①及び③と同様に還付
加算金の起算日を納付の日の翌日と定めているものと解される。
イこれに対し,地方税法17条の4第1項2号並びに同項4号及び地方税
法施行令6条の15第1項1号は,申告書,修正申告書等の提出により納
付額が確定した地方税に係る過納金でその納付額を減少させる更正により
生じたものは,納付者の申告により確定した税額に係るものであることか
ら,その還付加算金について,減額更正が納税者の更正の請求に基づく場
合は更正の請求日の翌日から起算して3月を経過する日と当該更正があっ
た日の翌日から起算して1月を経過する日とのいずれか早い日の翌日を起
算日とし(同法17条の4第1項2号,減額更正が更正の請求に基づか)
ない場合は,更正があった日の翌日から起算して1月を経過する日の翌日
を起算日としているものである(同法17条の4第1項4号,地方税法施
行令6条の15第1項1号。)
ウまた,地方税法17条の4第1項3号は,所得税の更正(申告書又は修
正申告書の提出により納付すべき額が確定した所得税額につき行われた更
正に限る)に基因してされた賦課決定により納付額が減少した地方税に。
係る過納金については,所得税の申告により確定した税額に係るものであ
ることから,当該賦課決定の基因となった所得税の更正の通知日の翌日か
ら起算して1月を経過する日の翌日を起算日としているものである。
(3)地方税に係る過誤納金の還付加算金の起算日については,従来一律に納
付又は納入の日の翌日とされていたが,地方税法の昭和44年法律第16号
による改正によって,更正の請求の期間が延長されて税の納付又は納入の時
から遅れて更正の請求がされることが予想されること,及び,民法の不当利
得の規定によれば,善意の受益者は利益の存する限度で利得を返還すれば足
り,利得について利息を付して返還する必要がないとされていること等を勘
案して,原則として,税額の確定が課税庁により行われた場合(上記(2)ア
の①及び③の場合)には納付又は納入の日の翌日を起算日とし,それ以外の
場合には,更正があった日,更正の請求がされた日等を基準として起算日と
することになった。さらに,昭和50年改正によって,上記(2)アの②の場
合について,これらの申告が法人税の更正又は決定に伴って義務的に行われ
るものであって,法律的には課税庁が税額の確定をした場合と変わらないと
いう理由から,納付の日の翌日を起算日とすることとされたものである。
2本件について
(1)本件は,京橋税務署長が本件法人税等更正処分を行い,原告がそれを受
けて,当該更正の通知を受けた日から1箇月以上経過した後に法人事業税及
び法人都民税につき本件修正申告をしたところ,後に京橋税務署長が法人税
等について減額更正をしたのを受けて,東京都中央都税事務所長がこの法人
税額を課税標準とする計算をして法人都民税の減額更正をし,法人事業税に
ついても減額更正をした(本件減額更正)という事案であり,その還付加算
金の起算日について,地方税法17条の4第1項1号によるべきか,又は同
項4号及び地方税法施行令6条の15第1項1号によるべきかが争点となっ
ている。
(2)そこで検討するに,本件が,地方税法17条の4第1項1号のうち,上
記1(2)ア①の更正,決定又は賦課決定や同③の不申告加算金等の決定によ
り納付額が確定した場合に当たらないことは明らかである。そして,上記1
(2)ア②の義務修正申告との関係については,この要件を満たすためには,
事業税や都民税の申告をそれぞれ所定の期間内にしたか,又は事業税や都民
税の更正若しくは決定を受けた法人であることが必要である。
本件についてこれをみるに,原告は,平成7年7月31日に京橋税務署長
から本件法人税等更正処分を受けたところ,それから1箇月以上経過した後
,,の同年9月28日に本件修正申告をしたものであるところ本件修正申告は
法人事業税に関していえば,地方税法72条の33第3項の規定する修正申
告の期限を経過してされたものであり,また,同法53条28項及び321
条の8第28項に規定する「法人税額を納付すべき日」とは,国税通則法3
5条2項2号により,更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌日から
起算して1箇月を経過する日と定められているので,本件において「法人税
額を納付すべき日」は同年8月31日となるから,本件修正申告は,法人都
民税に関しても,地方税法53条28項及び321条の8第28項の規定す
る申告の期限を経過してされたものである(以上の各点に関し,当事者間に
争いはない。)
そうすると,本件において,法人事業税及び法人都民税が,申告書をそれ
ぞれ所定の期限内に提出したこと,又は更正若しくは決定を受けたことによ
って確定していたということはできず,本件法人税等更正処分を受け,所定
の申告書の提出期限後に,原告が旧地方税法53条7項(本件還付決定時に
おいては地方税法53条27項)及び旧地方税法321条の8第7項(本件
還付決定時においては地方税法321条の8第27項)の規定に従い法人事
業税及び法人都民税の申告書を提出して本件修正申告を行ったというもので
あるから,本件修正申告をもって,同法53条28項若しくは321条の8
第28項又は72条の33第3項に定める申告又は修正申告ということはで
きないというべきである。
したがって,本件の法人事業税及び法人都民税に係る過納金は,地方税法
17条の4第1項1号には該当せず,同項1号から3号までに掲げる過納金
以外の過誤納金であるから,同項4号の定める場合に該当し,また,上記1
(2)イの申告書,修正申告書等の提出により納付額が確定した地方税に係る
過納金でその納付額を減少させる更正により生じたもののうち,減額更正が
更正の請求に基づかずにされた場合であり,地方税法施行令6条の15第1
項1号の定める場合に該当するから,還付加算金の起算日は,本件減額更正
があった日の翌日から起算して1箇月を経過する日の翌日というべきであ
る。
(3)原告の主張について
ア原告は,①過納金の性質が課税主体と納税者との間における不当利得に
類するものであり,納税者に還付する場合には,課税主体が利子に相当す
るものを納税者に支払うのが衡平にかなうことから還付加算金が定められ
たこと,民法上の不当利得にあっては受益者が悪意である場合にのみ利得
に利息を付して返還の義務を負うものとされていること(民法704条)
の2点を踏まえて,過納が生じた原因が専ら納税者の行為に起因するもの
であるか,課税庁の行為に起因するものであるかによって区別し,基本的
には,後者の場合において,かつ,過納が生じたことにつき,課税庁・課
税主体に帰責事由を認めることができる期間に限って,還付加算金が発生
すると解されるとした上,②法人事業税に関しては,京橋税務署長は,本
件法人税等更正処分において収入金額を認定し,それに基づいて所得を算
定して法人税を確定したものであり,原告は,京橋税務署長から収入金額
を示されたことから,本件修正申告において,その収入金額を基に法人事
業税を申告したのであるが,原告が申告納付しなければ,しかるべき時期
に処分庁がこの収入金額に従った法人事業税の更正を行うことが当然予想
される状況にあったから,原告がみずからの判断で収入金額を確定したと
はいえず,国が確定した金額に従って申告納付せざるを得なかった,③法
,,人都民税に関しては京橋税務署長が本件法人税等更正処分を行ったため
都民税の法人税割の課税標準である法人税額が国税官署により一応有効に
確定され,原告が申告納付しなければ,しかるべき時期に処分庁がこの法
人税額に従った法人都民税の更正を行うことが当然予想される状況にあ
り,法人事業税と同様,原告は京橋税務署長が本件法人税等更正処分を行
った時点で,この法人税額に従った法人都民税の申告納付を事実上余儀な
くされていた,④上記①から③を理由に,法人事業税及び法人都民税の修
正申告書の提出(本件修正申告)は,地方税法17条の4第1項1号のう
ち,地方税法53条28項,321条の8第28項及び72条の33第3
()項の規定により申告書又は修正申告書を提出した場合上記1(2)アの②
と同視するのが相当であり,同号を適用して還付加算金の起算日は納付の
日の翌日と解すべきであると主張する。
確かに,還付加算金に関する地方税法17条の4及び地方税法施行令6
条の15第1項は,過納金が不当利得に類するものであり,民法上の不当
利得においては,受益者が悪意の場合にのみ利息を付して利得を返還する
義務を負っていることを勘案して定められたものと解される。しかし,そ
の内容は,過納が生じた原因が専ら納税者の行為に起因するのか,課税庁
の行為に起因するのかという実質に着目して還付加算金の起算日を定めた
ものとはいえず,むしろ,過納に係る地方税の額の確定が課税庁により行
われたのか,納税者により行われたのかという形式面に着目し,所要の修
正を加えた上で,地方税等の額の確定原因に応じて還付加算金の起算日を
明確に区分して画一的形式的に規定したものということができる。このよ
うな基準を地方税法に明記したことは,数字による正確な処理を要する課
税業務を大量に扱う必要がある上,特に高い公平性が求められる租税行政
の特質を考慮すると,相応の合理性を有するものということができる。仮
に,このような地方税等の額の確定原因という明確な基準ではなく,課税
庁の善意悪意や,過納が生じた原因が専ら課税庁にあるのか納税者にある
のかといった具体的な適用につき判断の分かれ得る基準をもって定めれ
ば,大量の業務を画一的に処理することは困難となり,また,結果として
租税行政を公平に行うことができなくなるおそれがあることは明らかであ
る。なお,昭和50年改正によって,地方税法17条の4第1項1号にお
いて,同法53条28項,321条の8第28項,72条の33第3項に
定める義務修正申告があった場合について,決定,更正等があった場合と
同じ扱いをすることとされたのは,形式的にはこれらの義務修正申告によ
って地方税が確定しているとはいうものの,その申告内容,時期等が課税
庁によって定められることが法定されていることに着目してのことであっ
て,実質的衡平を考慮しつつも,形式的画一性を重視する上記の立法の基
本方針に沿った改正であるということができる。
そして,上記のような立法の基本方針を踏まえると,地方税法17条の
4の規定の解釈適用に当たっては,これを厳格に適用することが要請され
ているというべきである。とりわけ,同条1項1号のうち義務修正申告に
係る部分は,上記のとおり,昭和50年改正において特に付加された部分
で,しかも,具体的な根拠となる条項を摘記しているもので,このような
改正経過及び規定の文言に照らすと,上記の規定により申告書又は修正申
告書の提出を義務付けられていない場合についてまで,課税庁が税額を確
定した場合と同視したり,類推適用を認めたりすることはできないと解す
るべきである。
よって,京橋税務署長が本件法人税等更正処分を行ったことにより,京
橋税務署長から示された収入金額を基に法人事業税を申告納付せざるを得
ず,また,この法人税額に従った法人都民税の申告納付を事実上余儀なく
されたことから,原告による申告書の提出(本件修正申告)が,地方税法
53条28項,321条の8第28項又は72条の33第3項の規定によ
り申告書又は修正申告書を提出した場合と同視すべきであるとの原告の主
張は採用することができない。
イ原告は,本件修正申告を所定の期限内にしなかったものではあるが,本
件法人税等更正処分に従って法人事業税及び法人都民税を申告納付したの
であるから,過納金の発生原因は,専ら課税庁・課税主体側にあるという
ことができるにもかかわらず,所定の期限内にした義務修正申告と比較し
たときに,還付加算金の点において不利益に扱うのは,過納金の発生原因
が専ら課税庁・課税主体側にあるときには,不当利得法理に準じて,保有
期間の使用利益に当たる利息を返還させようという還付加算金の制度趣旨
に反し不合理である,また,このような不利益な取扱いは,還付加算金制
度を所定の期限内に修正申告をしなかったことに対する制裁にほかならな
いが,これでは,修正申告すらしなかった者が還付加算金の恩典を受ける
こととの対比においても,不公平を著しく助長することになって妥当でな
いと主張する。
しかし,還付加算金の起算日は,前記のとおり,地方税の確定原因によ
り区分して定められているものであり,原告の主張するように過納が生じ
た原因が専ら課税庁にあるのか納税者にあるのかといった事情により区分
しているものではなく,また,期限を徒過した修正申告について,納税義
務者が還付加算金の扱いで義務修正申告よりも不利益に扱われるのは,速
やかな修正申告を促す意図で創設された義務修正申告の還付加算金に係る
特例が適用されないという当然の結果にすぎず,原告としては,期間内に
申告することができたにもかかわらず,その義務を怠ったことから,この
ような結果を招来したのであるから,それをもって不合理とまでいうこと
はできないのであって,原告の上記主張は,失当である。
ウ原告は,法人税等の更正を受け,その更正に従って法人事業税及び法人
都民税の申告納付をした場合に,還付加算金の起算日を減額更正のあった
日の翌日から起算して1箇月を経過する日の翌日とすると,法人税等の更
正を受けても法人事業税及び法人都民税の申告納付をせずに放置し,法人
事業税及び法人都民税について決定を受けてから納付をした場合に,還付
加算金の起算日が納付の日の翌日となるのと比べて不公平又は不合理であ
ると主張する。
確かに,原告は,本件法人税等更正処分を受けたことを契機に,東京都
中央都税事務所長に対し,法人事業税及び法人都民税について本件法人税
等更正処分を基礎として税額を算定して,期限後ではあっても,みずから
進んで申告納付したにもかかわらず,還付加算金の起算日を一般の申告の
場合と同様に扱われ,本件減額更正のあった日の翌日から起算して1箇月
を経過する日の翌日とされたのであるから,申告納付をせずに放置した者
との比較において不公平又は不合理であるとする心情は,理解することが
できないではない。
,,しかし地方税法17条の4の上記の立法趣旨及びその文言に照らすと
同条の解釈適用に当たって原告の主張を採用することができないことは既
に説示したとおりである。前記のとおり,還付加算金に関する地方税法1
7条の4及び地方税法施行令6条の15第1項の規定は,税額の確定が課
税庁により行われたのか納税者により行われたのかという形式面に着目
し,所要の修正を加えた上で,具体的な税額の確定原因に応じて還付加算
,,金の起算日を明確に区分して画一的形式的に規定したものでありこれは
租税行政を公平に行うべきであるとの要請等に照らして相当の合理性を有
するものであるから,法人税等の更正を受けた後に法人事業税及び法人都
民税の申告納付をした場合と,申告をせず,法人事業税及び法人都民税の
決定を受けた後に納付した場合とで,後者の方が還付加算金の起算日につ
いて有利な取扱いを受けることとなるとしても,それは,税額の確定原因
が異なるために生じた合理的な区別というべきであり,このような差異が
あるからといって,公平の実現を阻害するとはいえず,還付加算金の起算
日についての前記判断は,何ら左右されるものではない。
エなお,原告は,本件修正申告が地方税法17条の4第1項1号のうち,
地方税法53条28項,321条の8第28項又は72条の33第3項の
規定により申告書又は修正申告書を提出した場合と同視することができな
いとしても,地方税法施行令6条の15第1項1号に規定する「申告書」
とは,納税者が自主的に作成し,提出した場合を指し,本件修正申告のよ
うな,本件法人税等更正処分がされたために作成し,提出した場合を含ま
,,ないと解すべきであるから本件修正申告については同項2号が適用され
還付加算金は,その「納付の日の翌日から起算して1か月を経過する日の
翌日」を起算日として計算されるべきであると主張する。
しかし,地方税法施行令6条の15第1項1号に規定する申告書につい
て,納税者が自主的に作成し,提出したものに限るべきであるとの原告の
主張は,形式的にも実質的にも何ら根拠のないものであって採用すること
ができないことは明らかであり,本件の過納金について,同号が適用され
ることは,既に説示したとおりである。
(4)以上のとおりであり,本件の法人事業税及び法人都民税の還付加算金の
起算日は,本件減額更正があった日の翌日から起算して1箇月を経過する日
の翌日である平成18年11月26日を経過する日の翌日というべきである
から,これと異なる起算日を前提として未払の還付加算金の支払を求める原
告の請求は,理由がない。
第4結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担に
,,,。つき行政事件訴訟法7条民訴法61条を適用して主文のとおり判決する
東京地方裁判所民事第38部
杉原則彦裁判長裁判官
小田靖子裁判官
島村典男裁判官

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