弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人B弁護人野町康正上告趣意第一点について。
 原判決が被告人Bに対する判示第一の(一)の事実を認定する証拠として同被告
人の司法警察官に対する所論の供述を挙示してをること、及び同被告人が原審公判
廷において、右供述は警察官の拷問又は強制によるものである旨主張し、且つ所論
の上申書を提出したことは所論のとおりである。併し原審は、被告人の右の如き主
張と、弁護人野町康正、同天野亮一の申請に基いて、その第七回公判期日に、被告
人の取調にあたつた麻布警察署勤務、警視庁巡査C及び同Dを証人として喚問し、
被告人の右主張が真実であるかどうかの取調をした事も記録上明かである。して見
れば原判決が同被告人の司法警察官に対する供述を証拠としたのは、右供述が任意
になされたものであつて被告人の主張するが如く、拷問又は強制によるものでない
と判断したからであることを十分に肯認することが出来る。その他、記録を精査し
ても、所論のような拷問又は強制の事実を認めるべき証跡もない。従つて、論旨は
結局事実審たる原審の自由裁量に属する証拠の取捨判断を非難するに帰するから所
論の憲法問題につき判断するまでもなく、上告適法の理由を欠くものである。(昭
和二三年(れ)第二六四号、同年八月一一日大法廷判決参照)。
 同第二点、第三点について。
 論旨は、いづれも原審の専権に属する証拠の取捨判断を攻撃するものであるから
上告適法の理由とならない。
 被告人A弁護人是川礼介上告趣意第一点について。
 しかし、直接審理主義や口頭弁論主義の建前をとることは、必ず被告人の公判廷
における供述のみに措信しなければならぬという結論を生むものではない。被告人
の公判廷における供述と所論の如き公判外における供述とが異なる場合に、そのい
づれを採用するかは、事実審裁判所が審理の手続を適法に履践する以上自由に取捨
判断することが出来ることは当裁判所の屡々判例とするところである。従つて本件
において被告人Aの環境並びに心境に所論のような変化があつたとしても、必ずし
も所論のように公判廷における供述を措信しなければならぬものではない。論旨は
結局、原審の採用しなかつた証拠に基いて原審の専権に属する事実の認定を非難す
るものであるから上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 原判決が、被告人Aに対する判示第二の事実を認定するのに被害者Eに対する司
法警察官の聴取書中の同人の供述記載を証拠としたこと、及び原審第三回公判廷に
おいて、同被告人の弁護人是川礼介より右Eを証人として喚問されたいとの申請が
なされたのにかかわらず、原審がこれを却下したことは所論のとおりである。併し
原審は其の後共同被告人Bの弁護人からの申請を採用し、同第五回公判期日に前記
Eを証人として公判廷に喚問したことは論旨も自認するところであるのみならず、
同第五回公判調書を精査すると、同証人に対しては被告人Aに対する身分関係につ
いても旧刑事訴訟法第一九五条第一項所定の問査がなされたものと認められるし、
その訊問内容も、各共同被告人に対する公訴事実に関係しているから、同証人は、
被告人Bのみならず他の共同被告人全員に対する公訴事実に関して、証人として喚
問されたものであることが明かであり、然かも同公判期日には被告人A及び弁護人
是川礼介も出頭し、同証人の訊問に立会つて居り、右訊問終了に際しては被告人等
は裁判長から同証人に対し訊問することがあるかどうかを問はれたのに対し、各被
告人はいづれも無之旨答えていることがわかる。
 以上のような次第であるから、原審は被告人Aの弁護人よりの所論の申請を一応
は却下したけれども、結局、公判期日において同証人に対する訊問の機会を被告人
Aに与えたのであるから、同証人の供述を録取した所論の聴取書を前記判示事実認
定の証拠としても、何ら刑訴応急措置法第一二条第一項に違反するものではない。
従つて論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原審第五回公判調書には裁判官及び訴訟関係人の列席する同公判廷において、証
人Eが宣誓をなした上、証言した旨の記載があり、且つ右Eの所論宣誓書が同公判
調書の一部として、その末尾に編綴されている。従つて、右宣誓書の署名捺印が、
偶々同公判廷に同時に喚問された証人Fの宣誓書のそれと、筆跡印影において酷似
していても、前者の署名捺印が右Fによつて代筆代捺されたものと即断することは
出来ない。然も被告人Aには、前段説示のとおり右証人Eを同公判廷で直接訊問す
る機会が与えられたにも拘らず、同被告人及びその弁護人からは、何らの訊問がな
されなかつたことも、同公判調書によつて明かなところであり、且つ右証人の証言
によれば原判決が証拠に援用したEの司法警察官に対する供述は、同証人と同一人
の供述であると認め得るから、原判決が同証人に対する所論の聴取書を証拠とした
ことには何ら所論のような違法はない。
 被告人G弁護人広田晋一上告趣意第一点について。
 しかし憲法第三六条にいわゆる「残虐な刑罰」とは人道上残酷と認められる刑罰
という意味であつて、事実審の裁判官が普通の刑を法律で許された範囲内において
量定した場合には、それが被告人の側から見て「過酷」と思はれるものがあつても、
これにあたらないことは既に当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)
第三二三号昭和二三年六月二三日大法廷判決参照)。原審は判示の如く強盗教唆並
びに拳銃不法所持の事実を認定し、被告人に対して法定刑の範囲内において懲役六
年の実刑を言渡したのであるから、憲法第三六条にいわゆる「残虐の刑罰」を科し
たものでないことは多言を要しない。論旨は独自の見解に出たものであつて理由が
ない。
 同第二点について。
 前科の事実は量刑資料として重要な事項の一であり、従つて原審も第三回公判に
おいて、被告人に対し、前科調書を読聞け被告人が曩に詐欺罪により懲役一年に処
せられ且つ三年間右刑の執行を猶予された事実の有無につき取調をなし、被告人が
右の事実は間違いない旨供述したことは同公判調書に明かなことであるから、原審
が右の事実につき審理をしなかつたという論旨は当らない。又右の事実と本件犯罪
とは刑法第五六条以下に規定する累犯の関係にはないし、旧刑事訴訟法第三六〇条
所定の事項にも該当しないのであるから、原判決がこの点について何らの判断も示
さなかつたことは固より当然のことであつて、所論のような理由不備とか判断遺脱
の違法はない。
 同第三点について。
 裁判所が裁判を行うにあたつては、弁護人の弁論を尊重し、よく之を検討すべき
ことは所論のとおりである。しかし、判決において、いかなる程度に、弁護人の意
見に対する判断を説示すべきかは、旧刑事訴訟法第三六〇条の明定するところであ
つて、弁護人の弁論であるからとて、軽重を問はず悉くこれに対する判断を明示し
なければならぬものでばない。原審公判調書及び所論の弁論要旨に基いて原審弁護
人の主張を検討するに所論の主張は結局、事実の認定、証拠の取捨、判断並びに量
刑に関する意見及び犯情に関する事実の開陳に帰着するのであつて、原判決はその
認定した事実、該事実認定の資料として採用した証拠及び科刑を判示することによ
つて、弁護人の前記意見に対してはその判断を示してをり、証拠取捨の理由、量刑
の理由及び犯情に関する事実の有無は前示法条所定の事項に該当しないのであるか
ら、原判決がこの点につき特に判断を明示しなかつたのは当然のことであつて、こ
の点に関する弁護人の主張を排斥した理由を判示しなかつたからとて直ちに所論の
ようにこれを無視したものと即断することは出来ない。従つて原判決には所論のよ
うな判断遺脱の違法はない。
 なお、論旨は、原判決が弁護人の弁論中にある主張について審理判断を示さなか
つたことは憲法第一三条等に違反する旨主張するのであるが、旧刑事訴訟法第三六
〇条所定の事項については、原判決書にその判断が示されていること前述のとおり
であるから、この点については所論の違憲問題を判断するまでもないことであり、
同条所定の事項以外の点については、特に判断を示さずとも、違憲の問題などを生
ずるものでないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一
七一号昭和二三年五月五日大法廷判決参照)から、大法廷の判断を俟つまでもなく
論旨は認容することが出来ない。
 以上の理由により刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四四六条に従ひ、主文
のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二四年三月五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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