弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Eに対する部分を破棄し同被告人に対する殺人幇助並び
に銃砲等所持禁止令違反被告事件を仙台高等裁判所に差し戻す。
     爾余の被告人の本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Fの弁護人星野忠治の上告趣意について。
 しかし、被告人Gに対する原判示第三の事実は、原判決挙示の証拠によつてこれ
を肯認することができる。されば、所論は証拠の取捨判断を非難し惹いて事実の誤
認を主張するものであるから採るを得ない。
 同被告人の弁護人稲本錠之助の上告趣意について。
 記録を精査するに、原審第三、四回公判調書に被告人の表示としてHと記載して
あることは、正に所論のとおりである。しかし、右の「H」なる記載は「F」の誤
記であること全記録における被告人F竝びに爾余の被告人の表示に照し明白である
から調書上同被告人の同一性を特定するに妨げはなく、また、かゝる瑕疵は原判決
に影響を及ぼさないことも明白である。されば所論は採るを得ない。
 爾余の各被告人の弁護人堂野達也の上告趣意第一点について。
 しかし、銃砲等所持禁止令第二条所定の犯罪は、銃砲等を所持するによりて直ち
に成立するもので、積極的に法定の除外事由あることは、その犯罪の成立を阻却す
る事由たるに過ぎないものである。されば同条の積極的犯罪要件たる罪となるべき
事実は単に銃砲等を所持する事実に過ぎないものといわねばならぬ。従つて原判決
が判示拳銃及び刀剣の携行をA、Bを殺害する目的に出でたる所持なりと判示した
だけで特に法定の除外事由なくしてと判示しなかつたからといつて所論のように罪
となるべき事実を判断しない違法ありということはできない。そして前述のごとく
法定の除外事由たる所論銃砲等所持禁止令第一条第一項の除外例は、法律上犯罪の
成立を阻却すべき事由と解すべきであるから原審においてかゝる事由ある旨の主張
のない本件においては、原判決がこれにつき特に判断を示さなかつたからといつて
所論の違法ありといえない。論旨はその理由がない。
 同第二点について。
 原判決が被告人Eに対する判示第四の(イ)及び(ロ)の事実認定の証拠として
Cに対する司法警察官の聴取書を採用したこと並びに原審において同被告人の弁護
人より右Cを証人として申請したにかかわらずこれを却下して取調をしなかつたこ
とはいずれも所論のとおりである。そして刑訴応急措置法第一二条第一項によれば
かかる聴取書につき被告人の請求があるときは、その供述者を公判期日において訊
問する機会を被告人に与えなければ、但書の場合の外これを証拠とすることができ
ないものである。しかるに、原審においては、右Cの聴取書につき同被告人に対し
特にかかる請求を為し得べき旨の告知を為すことなく、また、同被告人においても
特にかゝる請求を為さざる旨の意思表示をしなかつたのであり、しかも前記弁護人
の証人申請理由につきては原審公判調書その他一件記録上何等知ることができない
のであるから、反証のない本件においては前記弁護人の証人申請は、聴取書の供述
者たる同証人の訊問を請求したものと認めざるを得ない。そして本件においては、
前記但書の場合に該当することも認められないから原判決が同証人に対する聴取書
を証拠としたのは右措置法の規定に違反したものといわねばならぬ。しかも原判決
は右証人の聴取書を他の証拠と綜合して被告人Eの判示第四の事実を認定したので
あるから右違法は同事実全部の認定に影響を及ぼすこと明白であり、従つて本論旨
はその理由があつて同被告人に対する原判決の部分は破棄を免れない。
 同第三点について。
 しかし、原判決は所論(一)乃至(一二)の各証拠をそれぞれ所論のような独立
個別的の趣旨において証拠としたものではなく、これを綜合して判示第一の事実を
認定したものであること明白である。それ故綜合された右各証拠を分解して個別的
に観察すれば犯罪事実の一部のみを証明し得るに過ぎなくとも、これを綜合考覈し
て犯罪事実全部を証明し得るにおいては、証拠を欠如するものとはいえないこと勿
論である。そして拘禁中になされた自白であるとの一事を以て証拠の能力又は価値
を否定するを得ないのはいうを俟たないことであり、また、供述記載中に括弧を施
し(殺して仕舞う)又は(殺す)とあるのは、反証のない限り供述者自身が特に釈
明陳述したものと認むべきもので、これを以て警察官が恣に記入したものとはいえ
ないから、所論(二)の供述記載に関する論難はこれを採ることができない。また、
所論(七)のIに対する聴取書については、本件記録中に同氏名の者が存在しない
ことは所論のとおりである。しかし、原判決が証拠として引用したIに対する司法
警察官の聴取書(昭和二十二年六月十四目附)と同一日附の司法警察官のJに対す
る聴取書が記録第一冊三五八丁以下に存在し、その聴取書中に原判決が右Iの供述
記載として具体的に摘示した供述記載と同一内容の供述記載が存在するから、原判
決が具体的に引用した司法警察官に対する供述記載の表目をIとしたのはJの誤り
であるといわねばならぬ。そして原判決が記録中に存在する同一日附の同一作成者
の同一内容の聴取書の供述記載を具体的に摘示して証拠として引用した以上その供
述者の表示を誤つたからといつて実存しない虚無の証拠を証拠とした違法又は証拠
の内容を具体的に示さなかつた違法があるとはいえないから此の点に対する論難も
当らない。そして所論原判決挙示の証拠を綜合すれば原判示第一の事実を肯認する
ことができるからその余の所論もすべて採るを得ない。
 同第四点について。
 しかし、原判決は、その第二事実の判示として、被告人Kが刃渡五寸位のバンド
ナイフ一挺(証第十号)を所持しと判示し、同被告人の判示同旨の供述の外回号証
の存在を綜合してこれを認定している。そして、その判示竝びに就中その現存する
証拠を見るに所論バンドナイフは刃渡り優に十五糎を突破する銃剣のような兇器で
あること明らかであるから、右ナイフは、所論禁止令施行規則第一条第三号所定の
剣に該当するものというべく、従つて、これを原判決が前記のごとく判示したに過
ぎないのは、その判示稍正確を欠く嫌なしとはいえないが毫も所論の違法ありとい
うことができない。本論旨もその理由がない。
 同第五点について。
 しかし、記録を精査するに、被告人L、同M、同N、同Oに対する本件公判請求
書には、殺人銃砲等所持禁止令違反事件と表示して論旨第一点で説明したような原
判決の第一事実と同趣旨の犯罪事実が記載されてあり、第一審判決も同一趣旨の犯
罪事実を判示してこれに殺人並びに銃砲等所持禁止令の罰条を適用し、そして原審
においては検事は所論のごとく第一審判決に摘示した通りの公訴事実を陳述したも
のであること明らかであるから、原判決には毫も所論の違法はない。所論は、既に
論旨第一点で排斥した法律見解に基く独自の主張たるに過ぎないから採るを得ない。
 同第六点について。
 しかし、一件記録を見るに、第一審検事は被告人P治に対し少年法を適用すべき
ものとして懲役四年以上七年以下の求刑を為し第一審判決もその見解を容れ同被告
人を同一刑に処したのであるが附帯控訴権を有する原審検事は同被告人に対し単に
懲役五年を求刑し原判決もその検察官の求刑通り懲役五年の判決をしたものである
こと明白である。そして控訴審における検察官の附帯控訴は弁論の終結に至るまで
自由にこれを為し得るものであり、しかもその方式については何等の制限規定も存
しないのであるから前記のごとき経緯の原審検事の求刑は附帯控訴をしたものとも
見ることができる。されば同一被告人に対し言渡された少年法による不定期刑と成
年に達した後の宣告刑との軽重を比較する場合において、仮りに所論のように不定
期刑の短期を標準とすべきものとしても本件における原判決には旧刑訴第四〇三条
に違反する不法はないものといわねばならぬ。本論旨もその理由がない。
 よつて被告人Eに対しては旧刑訴第四四七条第四四八条の二に従い爾余の各被告
人に対しては旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二四年三月一〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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