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平成24年12月18日判決言渡
平成23年(行ウ)第712号延滞税納付債務不存在確認等請求事件(第1事件)
平成23年(行ウ)第723号延滞税納付債務不存在確認等請求事件(第2事件)
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1第1事件
(1)原告Aと被告との間で,原告Aの亡Bの遺産相続に係る相続税の延滞税
1万5800円の納税義務が存在しないことを確認する。
(2)被告は,原告Aに対し,5万円及びこれに対する平成23年12月28
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2事件
(1)原告Cと被告との間で,原告Cの亡Bの遺産相続に係る相続税の延滞税
1万6200円の納税義務が存在しないことを確認する。
(2)被告は,原告Cに対し,5万円及びこれに対する平成23年12月28
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
亡Bの相続人である原告らが,亡Bの相続について,法定申告期限内に市川
税務署長に対して各相続税の申告書の提出及び各相続税の納付を行った後,上
記各申告に係る相続税額が過大であるとして各更正の請求を行ったところ,市
川税務署長は,上記各更正の請求の一部を認めて各減額更正を行うとともに還
付加算金を加算して各過納金を還付したが,その後,改めて各増額更正を行う
とともに,上記各増額更正により新たに納付すべきこととなった各本税額,す
なわち上記各減額更正と上記各増額更正に係る各納付すべき税額の差額につい
て,国税通則法60条1項2号,同条2項及び同法61条1項1号に基づき,
法定納期限の翌日から完納の日までの期間(ただし,法定申告期限から1年を
経過する日の翌日から,上記各増額更正に係る各更正通知書が発せられた日ま
での期間を除く。)に係る各延滞税の納税義務が発生しているとして,原告ら
に対して上記各延滞税の納付を催告した。
本件は,原告らが,原告らは法定納期限までに上記各増額更正に係る納付す
べき税額より多額の相続税を納付していたから,相続税の未納はなく各延滞税
は発生していないなどと主張して,上記各延滞税の納税義務がないことの確認
を求める(行政事件訴訟法4条に規定する当事者訴訟)とともに,市川税務署
長が上記各延滞税の納付を催告したことなどが違法であり,これにより原告ら
が精神的苦痛を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,
慰謝料各5万円及びこれに対する違法行為後の日である平成23年12月28
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
事案である。
1関係法令の定め
本件に関係する法令の定めは,別紙1「関係法令の定め」記載のとおりであ
る(別紙中の略称は本文においても同様に用いる。以下同じ。)。
2争いのない事実
(1)当事者等
原告A,原告C及びDは,いずれも亡Bの子であり,亡Bが平成▲年▲月
▲日に死亡したことにより,亡Bの財産を相続した。
亡Bの相続に係る各相続税(以下「本件各相続税」という。)の法定申告
期限及び法定納期限は平成▲年▲月▲日である。
(2)相続税の申告及び納付
原告A,原告C及びDは,平成21年7月22日,市川税務署長に対し,
本件各相続税の申告書を提出した(以下「本件各相続税申告」という。)。
原告Aは,平成21年8月21日,本件各相続税申告により納付すべき税
額4185万1300円を納付し,原告Cは,同月12日,本件各相続税申
告により納付すべき税額4556万0600円を納付した。
(3)原告らによる各更正の請求及び各減額更正
原告らは,平成22年7月12日,市川税務署長に対し,本件各相続税申
告における相続財産(土地)の評価額が時価よりも高いことを理由として,
それぞれ更正の請求(以下「本件各更正請求」という。)をした。
これに対し,市川税務署長は,平成22年12月21日,本件各相続税申
告における相続財産(土地)の評価に誤りがあったとして,本件各更正請求
の一部を認め,原告Aについては,納付すべき税額を3035万5500円,
原告Cについては,納付すべき税額を3353万7100円とする各減額更
正(以下「本件各減額更正」という。)をした。
(4)原告らに対する各過納金の還付
市川税務署長は,平成23年1月26日,本件各減額更正により,原告ら
の本件各相続税に係る納付すべき税額が減少したことから,上記(2)記載の
原告らの納付すべき税額から,上記(3)記載の本件各減額更正により納付す
べき税額を控除した金額(以下「本件各過納金」という。)について,国税
通則法58条1項2号に基づき,本件各更正請求があった日の翌日から起算
して3月を経過する日の翌日(平成22年10月13日)から支払決定の日
(平成23年1月26日)までの期間の日数に年4.3パーセントの割合
(租税特別措置法95条に基づく特例基準割合)による還付加算金を加算し
た金額を支払決定し,原告らに対してそれぞれ以下のとおり還付した。
ア原告Aについて
(ア)本件各相続税申告により納付すべき税額4185万1300

(イ)本件各減額更正により納付すべき税額3035万5500

(ウ)本件各減額更正による本件各過納金((ア)-(イ))1149万58
00円
(エ)還付加算金額14万3400

(オ)本件各減額更正により還付した金額((ウ)+(エ))1163万92
00円
イ原告Cについて
(ア)本件各相続税申告により納付すべき税額4556万0600

(イ)本件各減額更正により納付すべき税額3353万7100

(ウ)本件各減額更正による本件各過納金((ア)-(イ))1202万35
00円
(エ)還付加算金額15万0100

(オ)本件各減額更正により還付した金額((ウ)+(エ))1217万360
0円
(5)本件各減額更正に対する各異議申立て及び各異議決定等
原告らは,平成23年2月1日,市川税務署長に対し,本件各減額更正に
ついて,相続財産(土地)の評価額がなお時価より高いとして,その取消し
を求める各異議申立てをした。
市川税務署長は,平成23年4月27日,本件各減額更正における相続財
産(土地)の評価額を是正した上で算出した原告らの納付すべき税額は,本
件各減額更正における原告らの納付すべき税額を上回るので,本件各減額更
正はいずれも適法であるとして,上記各異議申立てをいずれも棄却する各異
議決定をした。
(6)原告らに対する各増額更正等
市川税務署長は,平成▲年▲月▲日,上記各異議決定によれば,本件各減
額更正における相続財産(土地)の評価額が時価よりも低かったとして,原
告Aについて納付すべき税額3071万5800円,原告Cについて納付す
べき税額3391万1700円とする各増額更正(以下「本件各増額更正」
という。)をした。
本件各増額更正により新たに納付すべきこととなった本税額(本件各減額
更正と本件各増額更正に係る各納付すべき税額の差額。以下「本件各増差本
税額」という。)は,原告Aが36万0300円(3071万5800円-
3035万5500円),原告Cが37万4600円(3391万1700
円-3353万7100円)である。
原告らは,平成▲年▲月▲日,本件各増差本税額をそれぞれ納付した。
(7)原告らに対する延滞税の納付催告等
市川税務署長は,本件各増差本税額について,本件各相続税の法定納期限
(平成▲年▲月▲日)の翌日から本件各増差本税額の納付日(平成▲年▲月
▲日)までの期間(ただし,法定申告期限から1年を経過する日の翌日(平
成▲年▲月▲日)から,本件各増額更正に係る更正通知書が発せられた日
(平成▲年▲月▲日)までの期間(以下「本件控除期間」という。)を除
く。)に係る延滞税(以下「本件各延滞税」という。)として,原告Aにつ
いては1万5800円,原告Cについては1万6200円が発生しているこ
とを前提に,平成23年7月27日付け「延滞税等のおしらせ」(以下「本
件各延滞税催告書」という。)をそれぞれ送付し,本件各延滞税の納付を催
告した。
市川税務署長は,平成23年8月29日,原告らに対し,督促状をそれぞ
れ送付し,本件各延滞税の納付を督促した。
3争点
(1)本件各延滞税が発生しているといえるか否か。すなわち,本件各増差本
税額について,本件各相続税の法定納期限の翌日から完納日までの期間(た
だし,本件控除期間を除く。)に係る各延滞税が発生しているといえるか否
か。
(2)原告らに本件各延滞税を賦課することが信義則に反するか否か。
(3)市川税務署長が本件各延滞税催告書を原告らに送付したことなどが国家
賠償法上違法であるか否か。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件各延滞税が発生しているといえるか否か。)について
ア被告の主張
(ア)申告納税方式による国税については,納税者が期限内申告書の提出
により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないときだけでな
く,納税者が,期限後申告書若しくは修正申告書を提出し,又は更正若
しくは決定を受けた場合において,国税通則法35条2項の規定により
納付すべき国税があるときには,法定納期限の翌日からその国税を完納
する日までの期間の日数に応じ,その未納の税額に年14.6パーセン
トの割合を乗じて計算した延滞税を納付しなければならない(同法60
条1項1号及び2号,同条2項)。
そして,延滞税の趣旨・本質は,納税義務成立後の特定の期間を対象
として,納付すべき国税を納付している者と納付していない者との間の
公平を図るため,国税の納付されていない金額及び期間を基準として課
されるもの,すなわち納付すべき国税の履行遅滞に係る遅延利息に相当
するものであり,その成立について納税者の帰責事由は不要である。
(イ)また,国税通則法60条2項所定の「未納」とは,延滞税の額の計
算の基礎となる国税が法定納期限から完納までの間納付されていないこ
とを意味するが,同条1項2号は,納税者が初めて増額更正を受けた場
合に限らず,減額更正後に増額再更正を受け同法35条2項の規定によ
り納付すべき国税がある場合にも延滞税を納付しなければならないとし
ており,延滞税の額の計算の基礎となる国税が「未納」であるとして延
滞税の納税義務が成立する場合として様々なものが想定されている。
そうすると,国税通則法60条2項所定の「未納」とは,単に納付す
べき国税に対する納付がされた事実が全くない場合だけでなく,一旦納
付された事実があったとしても,その後の事情により納付がされていな
いこととなる場合も含むと解される。
そして,国税通則法は,増額更正又は減額更正による新たな納税義務
の確定に伴い,既に納付された税額に過不足が生じた場合には,その都
度清算することにしており,減額更正後の再増額更正がされた場合に,
過去においては新たに納付すべき税額について納税者から納付されてい
た事実があったとしても,減額更正により減少した税額に係る過納金が
還付加算金を加算して還付されているのであれば,法定納期限から還付
されるまでの期間についても増額再更正による新たに納付すべき税額に
対する納付がされていないこととなる。
(ウ)本件においては,市川税務署長が本件各増額更正を行ったことによ
り,法定申告期限後である平成▲年▲月▲日,原告らの本件各相続税に
係る納付すべき税額が新たに確定した。これは,法定申告期限後に納税
義務が確定したものであり,かつ,国税通則法35条2項の規定による
納付すべき国税があったのであるから,本件各増差本税額について,法
定納期限の翌日から完納する日までの期間,「未納」が生じている。
本件各増差本税額については,本件各相続税申告に基づき原告らから
納付されていた事実があったものの,還付加算金を付して本件各過納金
が還付されたことによって納付がされたことがないこととなるのであり,
原告らがこれに相当する税額を納付していた事実がある期間(法定納期
限の翌日から本件各減額更正までの期間)についても,原告らに「未
納」の税額があると認められる。
そうすると,本件各増差本税額については,国税通則法60条1項2
号,同条2項及び同法61条1項1号に基づき,法定納期限(平成▲年
▲月▲日)の翌日から法定納期限から1年を経過する日(平成▲年▲月
▲日)までの期間(以下「本件法定納期限後の当初1年間」という。),
及び本件各増額更正に係る更正通知書が発せられた日の翌日(平成▲年
▲月▲日)から本件各増差本税額の納付日(平成▲年▲月▲日)までの
期間について,延滞税が発生している。
そして,原告らが納付すべき本件各延滞税の額は,別紙2「延滞税額
計算表」記載のとおり,原告Aが1万5800円,原告Cが1万620
0円である。
イ原告らの主張
(ア)原告らは,法定納期限内に本件各増額更正による納付すべき税額
(原告Aは3071万5800円,原告Cは3391万1700円)よ
りも多額の相続税(原告Aは4185万1300円,原告Cは4556
万0600円)を納付しており,本件法定納期限後の当初1年間(平成
▲年▲月▲日から平成▲年▲月▲日まで)についても,本件各増差本税
額に相当する相続税を事実として完納しているから,相続税の「未納」
(国税通則法60条2項)は存在しない。
そして,原告らに対して還付加算金を加算して本件各過納金が還付さ
れたとしても,原告らが本件各増差本税額に相当する相続税を完納して
いた事実が,本件各増差本税額に相当する相続税が未納だった事実に突
然遡って変化することはない。還付金及び還付加算金は,納税者との間
で過納金を金銭的に清算するための制度であって,納税者が税を納付し
ていた事実までも消滅させ,納付していない事実に遡って変化させるも
のではないし,本件においては,本件法定納期限後の当初1年間は還付
加算金額の算定対象となっていないから,同期間の過納状態は金銭的に
も清算されていない。
また,延滞税は履行遅滞に対する民事罰としての性質を有するところ,
原告らは,本件各増差本税額に相当する相続税を完納していたし,原告
らの責めに帰すべき事由はないから,原告らには履行遅滞は存在しない。
そうすると,本件法定納期限後の当初1年間について,本件各増差本
税額に対する延滞税が発生することはない。
(イ)本件各増額更正に係る更正通知書が発せられた日の翌日(平成▲年
▲月▲日)から本件各増差本税額の納付日(平成▲年▲月▲日)までの
期間については,原告Aの延滞税額が127円(36万円×4.3パー
セント÷365日×3日),原告Cの延滞税額が130円(37万円×
4.3パーセント÷365日×3日)であり,いずれも1000円未満
であるから,国税通則法119条4項に基づき全額が切り捨てられる。
(ウ)したがって,原告らは,本件各延滞税の納税義務を負っていない。
(2)争点(2)(原告らに本件各延滞税を賦課することが信義則に反するか否
か。)について
ア原告らの主張
(ア)市川税務署長は,公的見解の表示にとどまらず,本件各減額更正と
いう公権的判断を行い,原告らは,市川税務署長が原告らの更正請求の
一部の範囲では減額を認めて本件各減額更正及びそれに伴う還付を行っ
たものと信頼していた。
しかし,市川税務署長が本件各減額更正の基礎となっている相続財産
の評価額の一部に誤りがあったとして本件各増額更正を行ったため,原
告らは還付を受けた本件各過納金の一部を納税しなければならなくなっ
ただけでなく,本件各延滞税の納付という経済的不利益を受けることに
なった。
原告らには,本件各延滞税の発生を免れる方法・手段はなかったし,
本件各減額更正及び本件各過納金の還付は市川税務署長が一方的に行っ
たものであるから,これを信頼したことについて原告らに帰責事由はな
い。
したがって,原告らに本件各延滞税を賦課することは信義則に反する
というべきである。
(イ)また,国税通則法63条6項4号及び国税通則法施行令26条の2
第2号は「火薬類の爆発,交通事故その他の人為による異常な災害又は
事故により,納付すべき税額の全部若しくは一部につき申告をすること
ができず,又は国税を納付することができない場合(その災害又は事故
が生じたことにつき納税者の責めに帰すべき事由がある場合を除
く。)」に「その災害又は事故が生じた日からこれらが消滅した日以後
7日を経過した日までの期間」に対応する部分の金額を限度して延滞税
を免除することができるとしているところ,税務職員が納税者に対して
誤指導を行い,納税者がその誤指導を信じたことについて納税者の責め
に帰すべき事由がない場合も,「人為による異常な事故」に含まれると
解されている。
本件では,市川税務署長は,指導にとどまらず,本件各減額更正とい
う公権的判断を行ったが,その処分は相続財産の誤った価額評価に基づ
くものであった。その結果,原告らは,本件各増差本税額が未納となっ
てしまったものであり,そのことについて原告らの責めに帰すべき事由
はない。
したがって,国税通則法63条6項4号及び国税通則法施行令26条
の2第2号の趣旨からも,原告らに本件各延滞税を賦課することは信義
則に反するというべきである。
イ被告の主張
国税通則法26条は,税務署長が更正又は決定をした後において,その
更正又は決定に係る課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知
ったときに,その調査したところにより,当該更正又は決定に係る課税標
準等又は税額等を更に変更するために再更正をする旨規定しており,この
再更正は,更正の除斥期間を経過するまでは,何回でも繰り返して行うこ
とができる。そして,国税通則法26条の立法趣旨は,国民に対する課税
が常に法律にのっとり,同一の課税対象に対しては過不足なく厳正・公平
に実施されるべきことに鑑み,一旦課税決定がされた場合においても,そ
れが客観的に法律に反するものであればその是正を課税機関の裁量に委ね
ることなく,これを一律に行うべきこととした点にあると解される。
このような立法趣旨に照らせば,課税の基礎となる事実の認識に誤りが
あったことによるものか,これに対する法的な評価に誤りがあったことに
よるものか,又はその事実の認識や法的評価には誤りがなく,単に計算上
の誤りがあったことによるものかにかかわらず,結論的に課税標準等又は
税額等の算定結果に誤りのあることが判明した場合には,いずれも同様に
更正をすべきことになる。
そうすると,原告らに対して行った本件各減額更正は,今後,原告らに
対して増額更正をしないということを何ら意味するものではないのであり,
原告らに対して信頼の対象となる公的見解を表示したとはいえないし,国
税通則法63条6項4号及び国税通則法施行令26条の2第2号の「人為
による異常な事故」の一つとされている税務職員の誤指導にも該当しない。
したがって,原告らに本件各延滞税を賦課することが信義則に反すると
はいえない。
(3)争点(3)(市川税務署長が本件各延滞税催告書を原告らに送付したことな
どが国家賠償法上違法であるか否か。)について
ア原告らの主張
(ア)市川税務署長は,本件各減額更正により納付すべき税額を減額した
後,自らの相続財産評価の誤りにより,納付すべき税額を増額する本件
各増額更正を行ったのであるから,原告らには本件各延滞税の納税義務
がなく,その納付を求めることは国税通則法60条2項の解釈・適用を
誤った違法なものであることを認識し又は認識し得たはずであるにもか
かわらず,原告らに本件各延滞税催告書を送付したものである。
また,市川税務署長は,少なくとも原告らから本件各延滞税の納税義
務の不存在を訴える平成23年9月2日付けの上申書を受理した時点で
は,本件各延滞税催告書が違法なものであることを認識し又は認識し得
たはずであるにもかかわらず,本件各延滞税催告書の撤回や本件各延滞
税の納税義務がないことの説明をしなかった。
(イ)市川税務署長が本件各延滞税催告書を送付し,その後も本件各延滞
税催告書の撤回等をしないことにより,原告らは,自らには何ら非がな
いにもかかわらず,違法な扱いをされ続けているとともに,財産が差し
押さえられるのではないかという不安に襲われており,著しい精神的苦
痛を受けている。
原告らの精神的苦痛に対する慰謝料としては,それぞれ5万円が相当
である。
イ被告の主張
本件各延滞税の納税義務は適法に成立・確定しているから,市川税務署
長が原告らに対して本件各延滞税の納付を催告したことに何ら違法はない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件各延滞税が発生しているといえるか否か。)について
(1)本件において,原告らが納付すべき本件各相続税については,法定申告
期限前に本件各相続税申告がされ,その後,一旦は本件各減額更正及び本件
各過納金の還付がされたが,改めて本件各増額更正がされたという経過をた
どっていることから,原告らについて本件各延滞税が発生しているといえる
か否かを検討する前提として,まず,国税の納税義務の成立,税務署長によ
る更正及び再更正,過納金の還付等に関する国税通則法の規定についてみて
おくこととする。
ア国税の納税義務は,各税法に定める課税要件を充足することにより抽象
的,客観的に発生し,特別のものを除いては,その後所定の確定のための
手続を経て初めて具体化される(国税通則法15条参照)。相続税につい
ても,抽象的納税義務は相続による財産の取得時,すなわち相続の開始時
に成立し,原則として納税者の申告により,申告がない場合等には税務署
長の決定又は更正により,納付すべき税額が具体的に確定する(国税通則
法15条2項4号,同法16条1項1号,24条,25条,民法896条
参照)。
ここで,納付すべき税額の確定という場合の「確定」は,納付すべき税
額を一切変更することができないことを意味するのではなく,一旦確定し
た税額であっても,課税要件の充足によって抽象的,客観的に発生した納
税義務の内容と相違すれば,税務署長による更正及び再更正により,繰り
返し変更されて確定することがあり得るものである(国税通則法16条1
項1号,24条,26条参照)。
イこのように税務署長による更正は繰り返し行われることがあり得るとこ
ろ,国税通則法29条2項は,既に確定した納付すべき税額を減少させる
更正(再更正を含む。)は,その更正により減少した税額に係る部分以外
の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさないと規定しており,減
額更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税については,減額
更正後も依然として申告又は更正によって確定した具体的納税義務が存続
することになる。
これに対し,減額更正により減少した税額に係る部分の国税については,
課税要件の充足によって抽象的,客観的に発生した納税義務の内容と一致
せず,本来納税義務はなかったものであるから,減額更正により,申告又
は更正によって確定した具体的納税義務は遡及的に消滅するものと解され
る。そして,減額更正により減少した税額に係る納付は,その納付の時に
は法律上の原因はあったが,減額更正により遡及的に法律上の原因を欠く
に至ったため,その納付税額は過納金となり,税務署長等は,これを遅滞
なく金銭で還付しなければならない(国税通則法56条1項参照)。
ただし,減額更正によって具体的納税義務が遡及的に消滅したとしても,
当該減額更正における納付すべき税額等が課税要件の充足により抽象的,
客観的に発生している納税義務より過小であった場合には,税務署長によ
る増額再更正がされ,具体的納税義務が再度確定することになる(国税通
則法26条参照)。
ウまた,税務署長は,過納金を還付するに当たっては,還付加算金を加算
しなければならないところ,過納の原因が税務署長の側にあると考えられ
る過納金については,過納に係る国税の納付があった日に遡って還付加算
金を加算することとされ,その他の過納金については,税務署長が過納の
事実を知り,これを還付するのに通常必要と考えられる期間が経過した日
の翌日から還付加算金を加算することとされている(国税通則法58条1
項参照)が,これは,過納金が民法上の不当利得と同様の性格を有してお
り,不当利得においては,悪意の受益者は利息を付して利得を返還しなけ
ればならない(民法704条参照)とされていることを勘案したものと解
される。
エ以上のように,国税通則法においては,国税の納税義務は各税法に定め
る課税要件を充足することにより抽象的,客観的に発生し,特別のものを
除いては,納税者の申告又は税務署長による更正等によって具体的納税義
務が確定するが,具体的納税義務が確定した後に減額更正がされた場合に
は,減少した税額に係る部分の具体的納税義務が遡及的に消滅して,既に
納付された税額は過納金となり,同税額の納付があった日から又は還付に
必要な期間経過後からの還付加算金を加算して過納金が還付されるが,減
額更正によって具体的納税義務が遡及的に消滅したとしても,当該減額更
正における納付すべき税額等が課税要件の充足により抽象的,客観的に発
生している納税義務より過小であった場合には,税務署長による増額再更
正がされ,具体的納税義務が再度確定することになるということができる。
(2)次に,延滞税に関する国税通則法の規定をみると,同法60条1項2号
は,更正を受けた場合において,更正により納付すべき国税があるときは延
滞税を納付しなければならないことを規定し,延滞税の発生要件について定
めている。なお,延滞税は履行遅滞に対する損害賠償としての性格を有して
いるところ,租税債務も金銭債務であり,金銭債務の履行遅滞の成立につい
ては債務者の帰責事由は不要であること(民法419条3項参照)から,国
税通則法60条1項は,延滞税の成立について納税者の帰責事由を要件とし
ていない。
そして,上記(1)のとおり,国税の納税義務は各税法に定める課税要件を
充足することにより抽象的,客観的に発生しており,相続税を含む申告納税
方式による国税については,法定申告期限までに適正な期限内申告書を提出
して納付すべき税額を確定させ,当該申告期限と原則として同一である法定
納期限までに同税額を納付することが義務付けられていることからすれば,
更正により納税義務が確定した国税についても,その法定納期限が経過した
時点から履行遅滞に陥っていたものと評価することができるから,延滞税の
額の計算方法について,国税通則法60条2項は,法定納期限の翌日からそ
の国税を完納する日までの期間の日数に応じて延滞税の額を計算することを
規定している。
ただし,期限内申告書が提出されてから1年以上も経過した後に更正がさ
れた場合には,法定納期限にまで遡って多額の延滞税の納税義務を負わせる
ことが酷であること及び税務官署の事務配分上更正等の時期が納税者ごとに
区々であることにより納税者の負担に差異が生じるのは相当ではないことか
ら,国税通則法61条1項1号は,延滞税の計算期間の特例を設けて,法定
申告期限から1年を経過する日の翌日から更正に係る更正通知書が発せられ
た日までの期間については延滞税の額を計算する期間から控除することによ
って,納税者の負担を軽減することとしている。
(3)上記(1)及び(2)で述べたところによれば,国税通則法においては,本件
のように,国税の申告及び納税がされた後に減額更正がされると,減少した
税額に係る部分の具体的納税義務は遡及的に消滅し,これに伴い,減額更正
により減少した税額に係る納付については,これに対応する具体的納税義務
が存在しなくなるので,所定の還付加算金を加算して過納金を還付すること
による不当利得の清算関係のみが残ることになり,その後改めて増額更正が
された場合には,増額した税額に係る部分の具体的納税義務が新たに確定す
ることになるのであるから,同法60条1項2号に基づき,更正により納付
すべき国税があるとして,増額した税額に係る部分について,延滞税の納税
義務が発生するものというべきである。
また,この場合に発生する延滞税の金額については,国税通則法60条2
項及び同法61条1項1号に基づき,法定納期限の翌日からその国税を完納
する日までの期間から,法定申告期限から1年を経過する日の翌日から更正
に係る更正通知書が発せられた日までの期間を控除した期間の日数に応じて
計算されることになる。
そして,本件においては,前記争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば,
原告らについて発生した本件各延滞税の額は,別紙2「延滞税額計算表」記
載のとおり,原告Aが1万5800円,原告Cが1万6200円であると認
められる。
(4)これに対し,原告らは,本件法定納期限後の当初1年間についても本件
各増差本税額に相当する相続税を事実として完納しているから,相続税の
「未納」(国税通則法60条2項)は存在しない旨主張する。
しかしながら,原告らが本件各相続税申告を行い,本件各増差本税額に相
当する相続税を事実として納付していたとしても,上記(3)で述べたとおり,
本件各減額更正がされたことにより,本件各増差本税額に相当する部分の税
額の具体的納税義務は遡及的に消滅し,当該部分について納付されていた相
続税については,不当利得としての清算関係が残るのみであり,その後,本
件各増額更正がされたことによって,新たに本件各増差本税額の具体的納税
義務が確定し,この具体的納税義務に対応する税額の納付がされていないの
であるから,国税通則法60条1項2号に基づき,本件各増差本税額に対す
る延滞税の納税義務も発生しているものというべきである。
そして,本件各増差本税額に相当する税額が事実として納付されていたと
しても,上記のとおり,国税通則法60条1項2号に基づき,本件各増差本
税額に対する延滞税の納税義務は発生することには何ら変わりがないものと
解されるし,同条2項は,納税義務が発生している延滞税の額の計算方法を
規定するものであって,延滞税の発生要件を規定しているわけではないから,
上記納付の事実があったことをもって本件各延滞税が発生していないとする
原告らの主張は採用することができない。
(5)また,原告らは,原告らの責めに帰すべき事由はないから,原告らには
本件各増差本税額の履行遅滞は存在しないと主張するが,延滞税の成立につ
いて納税者の帰責事由は要件とならないことは上記(2)で述べたとおりであ
るから,原告らの上記主張は採用することができない。
さらに,原告らは,本件法定納期限後の当初1年間について,還付加算金
の算定対象となっていないにもかかわらず本件各延滞税の算定基礎となって
いることを指摘する。しかし,上記(1)及び(2)で述べたとおり,延滞税は履
行遅滞に対する損害賠償としての性格を有し,還付加算金は不当利得に対す
る利息と同様の性格を有しており,両者の性格が異なる以上,延滞税と還付
加算金とでは発生する期間が異なり得るものであって,現に延滞税に関する
国税通則法60条2項,同法61条1項と,還付加算金に関する同法58条
1項では,延滞税又は還付加算金を計算する期間の定めが異なっているので
あるから,本件法定納期限後の当初1年間について還付加算金の算定対象と
なっていないからといって,同期間について延滞税が発生していると解する
ことに問題はないというべきである。
(6)以上によれば,本件各増差本税額については,本件各相続税の法定納期
限の翌日から本件各増差本税額の納付日までの期間(ただし,本件控除期間
を除く。)に係る本件各延滞税(その額は原告Aが1万5800円,原告C
が1万6200円)が発生していると認められるから,原告らは本件各延滞
税の納税義務を負っているものというべきである。
2争点(2)(原告らに本件各延滞税を賦課することが信義則に反するか否
か。)について
(1)原告らは,市川税務署長が行った本件各減額更正という公権的判断を信
頼したことにより経済的不利益を被り,そのことについて原告らに帰責事由
はないから,国税通則法63条6項4号及び国税通則法施行令26条の2第
2号の趣旨に照らしても,原告らに本件各延滞税を賦課することは信義則に
反する旨主張する。
しかしながら,延滞税は,納税義務の成立と同時に,納税者の申告や税務
署長等による処分を要しないで納付すべき税額が確定する国税であって(国
税通則法15条3項6号),本件各延滞税は,市川税務署長が原告らに対し
て本件各増額更正を行ったのと同時に,市川税務署長による何らの処分も経
ずに納付すべき税額が確定したものであるから,信義則に反する行政行為と
しての「本件各延滞税の賦課」を観念することができず,原告らの主張はそ
の前提が欠けるものといわざるを得ない。
(2)仮に,原告らの主張について,市川税務署長が,本件各延滞税が発生す
る根拠となった本件各増額更正をしたことが信義則に反する旨の主張である
と解したとしても,国税通則法26条は,税務署長が更正をした後,その更
正をした課税標準等又は税額等が過大又は過小であることを知ったときは,
その調査により当該更正に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定して
おり,税務署長は,所定の除斥期間内であれば,納付すべき税額等の確定手
続として,何回でも繰り返して再更正をすることができるから,市川税務署
長が本件各減額更正をしたからといって,もはやこれと異なる増額再更正を
しないという公的見解を表示したとはいえないし,仮に原告らがそのような
信頼をしていたとしても,信頼に基づく何らかの行動をしたとは認められな
いから,市川税務署長が本件増額再更正をしたことが信義則に反するという
余地はない。
また,税務署長は,当初した更正における事実認識,法的評価又は計算に
誤りがあった場合であっても,国税通則法26条に基づき再更正をすること
ができると解されるから,市川税務署長が本件各減額更正において相続財産
(土地)の評価を誤ったことにより本件各増額更正が必要となったとしても,
市川税務署長が本件各増額更正をしたことが直ちに信義則に反するものとな
るわけではないというべきである。
(3)したがって,原告らに本件各延滞税を賦課することが信義則に反する旨
の原告らの主張は採用することができない。
3争点(3)(市川税務署長が本件各延滞税催告書を原告らに送付したことなど
が国家賠償法上違法であるか否か。)について
原告らは,市川税務署長が原告らに本件各延滞税催告書を送付したこと,及
び本件各延滞税催告書の撤回や本件各延滞税の納税義務がないことの説明をし
なかったことが国家賠償法上違法である旨主張する。
しかし,上記1で述べたとおり,原告らは本件各延滞税の納税義務を負って
いるのであるから,市川税務署長が原告らに本件各延滞税催告書を送付して本
件各延滞税の納付を催告したことは何ら違法ではないし,市川税務署長が本件
各延滞税催告書の撤回等をすべき義務を負っていないことは明らかである。
したがって,原告らの国家賠償請求には理由がない。
第4結論
よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,
訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項
本文を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官定塚誠
裁判官竹林俊憲
裁判官馬場俊宏
別紙1
関係法令の定め
第1国税通則法
115条(納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定)
(1)1項
国税を納付する義務(源泉徴収による国税については,これを徴収して国
に納付する義務。以下「納税義務」という。)が成立する場合には,その成
立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き,
国税に関する法律の定める手続により,その国税についての納付すべき税額
が確定されるものとする。
(2)2項
納税義務は,次の各号に掲げる国税(第1号から第12号までにおいて,
附帯税を除く。)については,当該各号に定める時(・・・(略)・・・)に成立
する。
一から三まで・・・(略)・・・
四相続税相続又は遺贈(・・・(略)・・・)による財産の取得の時
五以下・・・(略)・・・
(3)3項
納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定す
る国税は,次に掲げる国税とする。
一から五まで・・・(略)・・・
六延滞税及び利子税
216条(国税についての納付すべき税額の確定の方式)1項
国税についての納付すべき税額の確定の手続については,次の各号に掲げる
いずれかの方式によるものとし,これらの方式の内容は,当該各号に掲げると
ころによる。
一申告納税方式納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを
原則とし,その申告がない場合又はその申告に係る税額の計
算が国税に関する法律の規定に従つていなかった場合その他
当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場
合に限り,税務署長又は税関長の処分により確定する方式を
いう。
二・・・(略)・・・
326条(再更正)
税務署長は,前2条又はこの条の規定による更正又は決定をした後,その更
正又は決定をした課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったと
きは,その調査により,当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正
する。
429条(更正等の効力)
(1)1項
第24条(更正)又は第26条(再更正)の規定による更正(以下「更
正」という。)で既に確定した納付すべき税額を増加させるものは,既に確
定した納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさ
ない。
(2)2項
既に確定した納付すべき税額を減少させる更正は,その更正により減少し
た税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。
535条(申告納税方式による国税等の納付)2項
次の各号に掲げる金額に相当する国税の納税者は,その国税を当該各号に掲
げる日(・・・(略)・・・)までに国に納付しなければならない。
一・・・(略)・・・
二更正通知書に記載された第28条第2項第3号イからハまで(更正により
納付すべき税額)に掲げる金額(その更正により納付すべき税額が新たにあ
ることとなった場合には,当該納付すべき税額)又は決定通知書に記載され
た納付すべき税額その更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌日か
ら起算して1月を経過する日
656条(還付)1項
国税局長,税務署長又は税関長は,還付金又は国税に係る過誤納金(以下
「還付金等」という。)があるときは,遅滞なく,金銭で還付しなければなら
ない。
758条(還付加算金)1項
国税局長,税務署長又は税関長は,還付金等を還付し,又は充当する場合に
は,次の各号に掲げる還付金等の区分に従い当該各号に定める日の翌日からそ
の還付のための支払決定の日又はその充当の日(・・・(略)・・・)までの期間
(・・・(略)・・・)の日数に応じ,その金額に年7.3パーセントの割合を乗じ
て計算した金額(以下「還付加算金」という。)をその還付し,又は充当すべ
き金額に加算しなければならない。
一還付金及び次に掲げる過納金当該還付金又は過納金に係る国税の納付が
あった日(その日が当該国税の法定納期限前である場合には,当該法定納期
限)
イ更正若しくは第25条(決定)の規定による決定又は賦課決定(・・・
(略)・・・)により納付すべき税額が確定した国税(・・・(略)・・・)に係
る過納金(次号に掲げるものを除く。)
ロ納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定
する国税で納税の告知があったもの(・・・(略)・・・)に係る過納金
ハイ又はロに掲げる過納金に類する国税に係る過納金として政令で定める
もの
二更正の請求に基づく更正(・・・(略)・・・)により納付すべき税額が減少し
た国税(・・(略)・・・)に係る過納金その更正の請求があった日の翌日か
ら起算して3月を経過する日と当該更正があった日の翌日から起算して1月
を経過する日とのいずれか早い日(その日が当該国税の法定納期限前である
場合には,当該法定納期限)
三・・・(略)・・・
860条(延滞税)
(1)1項
納税者は,次の各号の一に該当するときは,延滞税を納付しなければなら
ない。
一・・・(略)・・・
二・・・(略)・・・更正・・・(略)・・・を受けた場合において,第35条第2項
(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき国税があるとき。
三以下・・・(略)・・・
(2)2項
延滞税の額は,前項各号に規定する国税の法定納期限(・・・(略)・・・)の
翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ,その未納の税額に
年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額とする。ただし,納期限
(・・・(略)・・・)までの期間又は納期限の翌日から2月を経過する日までの
期間については,その未納の税額に年7.3パーセントの割合を乗じて計算
した額とする。
961条(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)1項
修正申告書(・・・(略)・・・)の提出又は更正(・・・(略)・・・)があった場合
において,次の各号の一に該当するときは,当該申告書の提出又は更正により
納付すべき国税については,前条第2項に規定する期間から当該各号に掲げる
期間を控除して,同項の規定を適用する。
一その申告又は更正に係る国税について期限内申告書が提出されている場合
において,その法定申告期限から1年を経過する日後に当該修正申告書が提
出され,又は当該更正に係る更正通知書が発せられたとき。その法定申告
期限から1年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され,又は当該
更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間
二・・・(略)・・・
1063条(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)6項
国税局長,税務署長又は税関長は,次の各号の一に該当する場合には,当該
各号に規定する国税に係る延滞税(・・・(略)・・・)につき,当該各号に掲げる
期間に対応する部分の金額を限度として,免除することができる。
一から三まで・・・(略)・・・
四前各号の一に該当する事実に類する事実が生じた場合で政令で定める場合
政令で定める期間
11118条3項(国税の課税標準の端数計算等)
附帯税の額を計算する場合において,その計算の基礎となる税額に1万円未
満の端数があるとき・・・(略)・・・は,その端数金額又はその全額を切り捨てる。
12119条4項(国税の確定金額の端数計算等)
附帯税の確定金額に100円未満の端数があるとき,又はその全額が100
0円未満(加算税に係るものについては,5000円未満)であるときは,そ
の端数金額又はその全額を切り捨てる。
第2国税通則法施行令26条の2(延滞税の免除ができる場合)
法第63条第6項第4号(延滞税の免除ができる場合)に掲げる政令で定め
る場合は,次の各号に掲げる場合とし,同号に掲げる政令で定める期間は,そ
れぞれ当該各号に掲げる期間とする。
一・・・(略)・・・
二火薬類の爆発,交通事故その他の人為による異常な災害又は事故により,
納付すべき税額の全部若しくは一部につき申告をすることができず,又は国
税を納付することができない場合(その災害又は事故が生じたことにつき納
税者の責めに帰すべき事由がある場合を除く。)その災害又は事故が生じ
た日からこれらが消滅した日以後7日を経過した日までの期間
第3相続税法
127条(相続税の申告書)1項
相続又は遺贈(・・・(略)・・・)により財産を取得した者及び当該被相続人に
係る相続時精算課税適用者は,当該被相続人からこれらの事由により財産を取
得したすべての者に係る相続税の課税価格(・・・(略)・・・)の合計額がその遺
産に係る基礎控除額を超える場合において,その者に係る相続税の課税価格
(・・・(略)・・・)に係る第15条から第19条まで,第19条の3から第20
条の2まで及び第21条の14から第21条の18までの規定による相続税額
があるときは,その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内
(・・・(略)・・・)に課税価格,相続税額その他財務省令で定める事項を記載し
た申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
233条(納付)
期限内申告書又は第31条第2項の規定による修正申告書を提出した者は,
これらの申告書の提出期限までに,これらの申告書に記載した相続税額又は贈
与税額に相当する相続税又は贈与税を国に納付しなければならない。
第4租税特別措置法
193条(利子税の割合の特例)1項
次の各号に掲げる規定に規定する利子税の年7.3パーセントの割合は,当
該各号に掲げる規定にかかわらず,各年の特例基準割合(各年の前年の11月
30日を経過する時における日本銀行法(平成9年法律第89号)第15条第
1項第1号の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4パーセントの
割合を加算した割合をいう。以下第95条までにおいて同じ。)が年7.3パ
ーセントの割合に満たない場合には,その年中においては,当該特例基準割合
(当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り
捨てる。)とする。
一以下・・・(略)・・・
294条(延滞税の割合の特例)1項
国税通則法第60条第2項及び相続税法第51条の2第1項第3号に規定す
る延滞税の年7.3パーセントの割合は,これらの規定にかかわらず,各年の
特例基準割合が年7.3パーセントの割合に満たない場合には,その年(・・・
(略)・・・)中においては,当該特例基準割合(当該特例基準割合に0.1パ
ーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)とする。
395条(還付加算金の割合の特例)
各年の特例基準割合が年7.3パーセントの割合に満たない場合には,国税
通則法第58条第1項に規定する還付加算金(以下この条及び次条において
「還付加算金」という。)の計算の基礎となる期間であってその年に含まれる
期間に対応する還付加算金についての同項の規定の適用については,同項中
「年7.3パーセントの割合」とあるのは,「租税特別措置法(昭和32年法
律第26号)第93条第1項(利子税の割合の特例)に規定する特例基準割合
(当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り
捨てる。)」とする。
496条(利子税等の額の計算)
前3条のいずれかの規定の適用がある場合における利子税等(利子税,延滞
税及び還付加算金をいう。)の額の計算において,その計算の過程における
金額に1円未満の端数が生じたときは,これを切り捨てる。
別紙2
延滞税額計算表
1原告Aの納付すべき延滞税
(1)法定申告期限及び法定納期限平成▲年▲月▲日
(相続税法27条1項,33条)
(2)本件各増額更正
ア更正通知年月日平成▲年▲月▲日
イ増差税額36万0300円
ウイを完納した日平成▲年▲月▲日
(3)延滞税額の計算期間及び日数
ア計算の起算日平成▲年▲月▲日(国税通則法60条2項)
イ計算の満了日平成▲年▲月▲日(国税通則法60条2項)
ウ除算される期間平成▲年▲月▲日から平成▲年▲月▲日まで
(国税通則法61条1項1号)
エ期間における日数647日(アからイまでの期間)-279日(ウの
期間)=368日
(4)延滞税の計算
ア計算方法
(ア)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税36万円(国税通則法118条3項)×年4.5パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×128日÷365日=5681円
(租税特別措置法96条)
(イ)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税36万円(国税通則法118条3項)×年4.3パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×237日÷365日=1万0051
円(租税特別措置法96条)
(ウ)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税36万円(国税通則法118条3項)×年4.3パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×3日÷365日=127円(租税特
別措置法96条)
(エ)合計((ア)+(イ)+(ウ))
5681円+1万0051円+127円=1万5859円
イ延滞税額
1万5800円(国税通則法119条4項)
2原告Cの納付すべき延滞税
(1)法定申告期限及び法定納期限平成▲年▲月▲日
(相続税法27条1項,33条)
(2)本件各増額更正
ア更正通知年月日平成▲年▲月▲日
イ増差税額37万4600円
ウイを完納した日平成▲年▲月▲日
(3)延滞税額の計算期間及び日数
ア計算の起算日平成▲年▲月▲日(国税通則法60条2項)
イ計算の満了日平成▲年▲月▲日(国税通則法60条2項)
ウ除算される期間平成▲年▲月▲日から平成▲年▲月▲日まで
(国税通則法61条1項1号)
エ期間における日数647日(アからイまでの期間)-279日(ウの
期間)=368日
(4)延滞税の計算
ア計算方法
(ア)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税37万円(国税通則法118条3項)×年4.5パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×128日÷365日=5838円
(租税特別措置法96条)
(イ)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税37万円(国税通則法118条3項)×年4.3パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×237日÷365日=1万0330
円(租税特別措置法96条)
(ウ)平成▲年▲月▲日から同年▲月▲日まで
納付すべき国税37万円(国税通則法118条3項)×年4.3パーセ
ント(租税特別措置法94条1項)×3日÷365日=130円(租税特
別措置法96条)
(エ)合計((ア)+(イ)+(ウ))
5838円+1万0330円+130円=1万6298円
イ延滞税額
1万6200円(国税通則法119条4項)

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弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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