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平成26年2月7日判決言渡
平成24年(行ウ)第112号認証取消処分取消請求事件
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
東京都知事が平成23年8月30日付けで原告に対してした原告の設立の認
証を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)を取り消す。
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,特定非営利活動促進法(以下「法」という。)に基づく特定非営利
活動法人の設立の認証を受けていた原告が,所轄庁である東京都知事から,平
成23年8月30日付けで法43条1項(ただし,同年法律第70号による改
正前のもの。以下同じ。)に基づき特定非営利活動法人の設立の認証を取り消
す旨の処分(本件処分)を受けたことにつき,本件処分は,①法43条1項の
要件を満たさず,裁量権の範囲からの逸脱等もあり,②また,理由の提示に不
備があるなど違法なものである旨を主張して,本件処分の取消しを求める事案
である。
2関係法令等の定め
関係法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」に記載のとおりである(な
お,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
3前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者に
おいて争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)原告等
原告は,「広く一般市民を対象として,Aの活動を承継しバングラデシュ
国の恵まれない環境にいる子供とその家族を受益対象者に,これらの者に対
し,健康・経済・教育・環境保全・地域開発改善等に関する事業を行って生
活環境の向上に寄与すること」を目的とし,「バングラデシュ国の恵まれな
い環境にいる子供たち及びその家族への健康及びその事業のための雇用確保
の支援事業」等を行う特定非営利活動法人である。
所轄庁である東京都知事は,平成18年5月29日,原告の設立を認証し,
原告は,同年6月7日,設立の登記をすることにより成立した。
(2)配分金の交付とそれに基づく原告の事業等
ア原告及びその前身であり平成12年に設立されたAは,Aが平成16年
6月18日に公社から配分金の交付を受けたのを初めとして,同日以降の
各配分期間において,公社又は本件機構から,それぞれ配分金の交付を受
け,これをバングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)
における魚の養殖,学校運営等に係る事業に支出してきた(甲10の1・
2,11,19,乙1,17,24)。
イ(ア)原告は,平成19年6月27日,公社から,平成19年3月31日
から平成20年3月30日までの期間(以下「平成19年度」という。)
の上期(平成19年3月31日から同年9月29日までの期間。以下
「平成19年度上期」という。)を配分期間とする配分金1683万5
000円の交付を受け,また,平成20年3月13日,本件機構から,
平成19年度の下期(平成19年9月30日から平成20年3月30日
までの期間。以下「平成19年度下期」という。なお,平成19年度は,
平成19年10月1日に本件機構が配分金の交付に係る公社の権利義務
を承継した(承継につき独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構
法附則2条2項1号,承継した日につき同法附則1条,郵政民営化法附
則1条参照)ため,年度が上期と下期に分かれている。)を配分期間と
する配分金(1592万2000円。ただし,25万8315円は余剰
となり本件機構に返還済み。)の交付を受けた。平成19年度上期の配
分金の交付を受けるに当たり旧郵便貯金利子寄附委託法4条3項の規定
に基づき定められた配分団体が守らなければならない事項(乙25の1)
においては,偽りその他不正の手段により配分金の交付を受けた場合に
は,公社の指示するところにより,交付を受けた配分金を返還しなけれ
ばならない旨が定められていた。また,原告は,平成19年度下期の配
分金の交付を受けることを希望する旨の申請をした際,配分金を使用し
てバングラデシュにおいて職業訓練所となるべき2階建ての建物を建築
する旨の実施計画を提出していたところ,実際には,上記の配分金を使
用して3階建ての建物を建築したが,その交付を受けるに当たり,整備
法附則22条1項の規定に基づき定められた配分団体が守らなければな
らない事項(乙25の2)の定めるところに従わず,上記の実施計画を
そのように変更する旨の申請をあらかじめすることはなく,本件機構が
そのような変更を承認したこともなかった。(乙1,6,17,20の
1,25の1・2)
(イ)原告は,平成21年3月3日,本件機構から,平成20年3月31
日から平成21年3月30日までの期間(以下「平成20年度」とい
う。)を配分期間とする配分金(1734万8000円)の交付を受け
た。原告は,上記の配分金の交付を受けることを希望する旨の申請をし
た際,配分金を使用してバングラデシュにおいて学校となるべき建物を
建築する旨の実施計画を提出していたところ,予定の期日までに完了す
ることができなくなったにもかかわらず,整備法附則22条1項の規定
に基づき定められた配分団体が守らなければならない事項(乙25の3)
の定めるところに従わず,本件機構にその旨の届出を速やかに行うこと
はなく,本件機構がそれに対する指示をしたこともなかった。また,原
告は,同年5月25日,上記の配分金のうち1100万円を原告の前事
務局長(B。)の原告に対する貸付金の返済に充当する目的でB名義の
預金口座に送金したが,上記配分金の交付を受けることを希望する旨の
申請をした際,そのような使途に使用することを実施計画に記載した事
実はない。(乙3,5,6,11,18の1ないし3,19,20の2,
25の3)
(3)本件処分に至る経緯等
ア(ア)本件機構は,平成22年4月28日に原告の事務局において監
査をし,同年7月にバングラデシュにおいて原告の施設等につき監
査(以下「本件現地監査」という。)をした上で,原告が本件機構
から交付を受けた配分金を用いてバングラデシュにおいて実施して
いる事業に関し監査をしたところ不正の手段により配分金の交付を
受けた事実(①平成19年度上期及び平成19年度下期において,
現地雇用者日当の領収書を偽造していたこと,②平成19年度上期
から平成20年度にかけて,現地の業者の見積書,概要図及び領収
書を偽造していたこと)が判明し,平成19年度上期に不正があっ
たことから翌期以降は配分金の受給資格を喪失したこととなったと
して,平成22年10月27日付けで,原告に対し,平成19年度
上期を配分期間とする配分金の一部(1197万5000円)並び
に平成19年度下期及び平成20年度を配分期間とする各配分金の
全額の合計4498万6685円の返還の請求(以下「本件返還請
求」という。)をした(乙1,3,5,17,21,25の1ない
し3)。
(イ)東京都知事は,平成22年11月5日,法41条1項(ただし,
平成23年法律第70号による改正前のもの。)に基づき,原告に
対し,本件返還請求に関する経緯等の説明(これに関しては,「指
摘されているような不正がないという主張をする場合には,独立行
政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が指摘している事項につい
て,貴法人自らがそのすべてについて客観的な証拠を示した上で説
明すること。」とされていた。)並びに原告の平成19年1月1日
から同年12月31日までの事業年度(以下「平成19事業年度」
という。)及び平成20年1月1日から同年12月31日までの事
業年度(以下「平成20事業年度」という。)の各事業報告に関す
る書類の提出に係る事項について,その業務又は財産に関し報告を
すべき旨の命令(以下「本件業務等報告命令」という。)をし,原
告は,平成22年11月15日,東京都知事に対し,「業務等報告
命令に対する報告書」(乙3。以下「本件報告書」という。)を提
出した(乙2,3,19,24)。
イ(ア)東京都知事は,平成22年12月8日,原告に対し,①予定される
不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項を,法42条の規定による
改善命令とし,②不利益処分の原因となる事実を,(あ)本件報告書内に
記載されている内容間にそごがあること,同報告書と同報告書の提出時
に添付された各種資料間にそごがあること,また,同報告書の提出時に
添付された資料の内容と被告にこれまで提出された事業報告書等提出書
に記載されている内容間にそごがあることが認められるところ,これら
のそごは書類が作成された時期及び内容から鑑み単なる過失による不整
合ではあり得ず,また,そのそごについて全く説明がないこと,(い)本
件機構から平成19年度及び平成20年度に配分を受けた配分金につい
て,完成していない又は計画等事前に申請した内容とは異なった内容に
なっているにもかかわらず,あたかも計画どおり事業が行われたという
旨の完了報告書を作成し,本件機構に対し故意に不実の報告を行ってい
ること,(う)会計処理について,現地現金出納帳と原告の提出した他の
説明資料の内容が一致しないこと,また,土地建物及び設備等が他の関
係書類上は原告所有となっているにもかかわらず,被告に提出している
財産目録及び貸借対照表等に記載がなく,これらのことから原告が適正
な会計処理を行っているとはいえず,法27条1項3号に抵触すること,
(え)100万円を超える現金を税関に対し無申告で海外に持ち出してい
ることは関税法67条に違反することの各事実とし,③弁明書の提出期
限を平成22年12月20日とする弁明の機会の付与の通知をした(乙
4)。
(イ)原告は,平成22年12月20日,東京都知事に対し,弁明書(乙
6。以下「本件弁明書」という。)を提出した(乙6)。
ウ(ア)東京都知事は,平成23年3月24日,原告に対し,法42条に基
づき,次のaを法令若しくは定款に違反し,又はその運営が著しく適正
を欠くと認める事項とし,次のbを改善のために採るべき必要な措置と
することを内容とする改善命令(以下「本件改善命令」という。乙7)
をした。
a(a)本件報告書について,記載されている内容にそごがあること,
報告書と添付された各種資料にそごがあること,また,報告書に添
付された資料の内容と被告にこれまで提出された事業報告書等提出
書に記載されている内容にそごがあること。これらのそごは書類が
作成された時期及び内容から鑑み単なる過失による不整合ではあり
得ず,また,そのそごについて全く説明がなされていないこと。
(b)本件報告書によると,本件機構から平成19年度及び平成20
年度に受けた配分金について,事業が完成していない又は計画等事
前に申請した内容とは異なった内容になっているにもかかわらず,
あたかも計画どおり事業が行われたという旨の完了報告書を作成し,
本件機構に対し故意に不実の報告を行っていること。
(c)会計処理について,現地現金出納帳と原告の提出した他の説明
資料の内容が一致しないこと,また,土地建物及び設備等が他の関
係書類上は原告所有となっているにもかかわらず,被告に提出して
いる財産目録及び貸借対照表等の記載が正しくないこと。これらの
ことから原告が適正な会計処理を行っているとはいえず,法27条
1項3号に抵触すること。
(d)100万円を超える現金を税関に対し無申告で海外に持ち出し
ていることは関税法67条に違反すること。
b(a)原告が提出した報告書及び添付資料について大きなそごがある
ことから,真実が明らかになっていない。これらを明らかにするた
め,第三者委員会を立ち上げてこれらの報告書及び添付資料につい
て十分に審議し,法人運営の実態を明らかにした上で,改めて報告
書を提出すること。その際,現在までに法人運営に関与したことが
ない専門家を第三者委員会の委員とし,委員会名簿を事前に被告に
報告すること。
(b)本件返還請求について,解決までの期限,方法等を明らかにし,
速やかに対応すること。
(c)会計処理について,真実な内容を明りょうに表示できる方法に
改善すること。特に,財産目録については正しいものを提出するこ
と。
(d)関連法律を遵守した運営を行うこと。
(e)法人運営の改善計画を期日(平成23年4月6日水曜日)まで
に所轄庁に提出すること。なお,改善結果については同年5月2日
月曜日までに所轄庁に報告すること。
(イ)原告は,東京都知事に対し,①平成23年4月6日,「改善命令書
に対する報告書」(本件改善命令に応じての報告までの計画を示すもの。
乙8)を,②同月26日,「改善命令書に対する報告までの計画書」
(本件改善命令において報告することを命じられた第三者委員会の委員
会名簿を報告するもの。乙9)を,③同年5月2日,「改善報告書」
(乙10)及び原告が設置した第三者委員会(本件訴えにおける原告訴
訟代理人のうちの1名を委員に含む。)が作成した「報告書」(乙11)
をそれぞれ提出した(乙8ないし11)。
エ(ア)東京都知事は,平成23年6月15日,原告に対し,①予定される
不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項を,法43条1項に基づく
特定非営利活動法人の設立の認証の取消しとし,②不利益処分の原因と
なる事実を,本件改善命令に対して提出した「改善報告書」(乙10)
において改善結果を報告すべきところ,その内容において全てが改善計
画となっており改善が認められない上,本件改善命令の内容の一部につ
いては全く記載がなく,以上のことから判断して,上記報告書(乙10)
が法42条に基づく改善命令に対する報告書とは認められず,このこと
は,法43条1項にいう「法第42条の命令に違反した場合であって他
の方法により監督の目的を果たすことができない」事由に該当すること
とし,③聴聞の期日を同月29日とする聴聞の通知をした(乙12)。
(イ)被告は,平成23年6月29日,原告の理事長らが出頭した聴聞の
期日において,聴聞(以下「本件聴聞」という。)を行った。原告は,
本件聴聞の期日において,「改善計画実施報告書」(乙14)を提出し
た。本件聴聞の終結後,本件聴聞の主宰者は,同日,東京都知事に対し,
聴聞調書(乙13)のほか,前記(ア)②の不利益処分の原因となる事実
に対する当事者の主張に理由があるかどうかについて,本件聴聞の期日
において原告から提出された上記報告書(乙14)及び同期日における
出頭した者の陳述によっても,事実と異なる事項があり,また,改善内
容についても指摘された点に対する改善とは読み取れないことから,依
然として本件改善命令に従っていないことに相違なく,設立の認証の取
消しは妥当な措置と考える旨の意見を記載した「聴聞報告書」(乙15)
を提出した。(乙13ないし15)
オ東京都知事は,平成23年8月30日,原告に対し,本件処分をした。
なお,本件処分に係る書面(甲2)には,原告は,法「第42条に規定す
る改善命令に対し,提出された改善報告書において指摘事項に対する改善
が認められなかった。このことは,法第43条第1項に規定する「前条の
命令に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達することがで
きないとき」に該当する。よって,法第43条第1項に基づき設立の認証
を取り消す。」と記載されていた。
(4)本件訴えの提起
原告は,平成24年2月29日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な
事実)。
4争点(本件処分の適法性)及び争点に関する当事者の主張の要点
(被告の主張の要点)
(1)本件処分に至る経緯及び本件処分が適法であること
東京都知事は,次のアないしカのとおり,原告から提出された各種資料及
び本件聴聞の結果等を精査し,法令で求められる手続を履践した上で,法4
3条1項に該当する事由があると判断し,かつ,本件基準のうち同項に基づ
く設立の認証の取消しをする基準を適用して,本件処分を行ったものである
から,本件処分は適法である。
ア本件返還請求を受けた本件業務等報告命令の発出
本件機構が,平成22年10月27日,原告に対し,本件返還請求をし
たこと(乙1)を受けて,東京都知事は,同年11月5日,原告に対し,
本件業務等報告命令を発出し(乙2),同月15日,原告から本件報告書
(乙3)の提出を受けた。
被告は,本件報告書及び被告が収集した資料(乙1,16の1ないし
3,18の1ないし3)を審査したところ,次の(ア)ないし(エ)のような
「その他法令,法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反し,
又はその運営が著しく適正を欠く」ものとして法42条に定める改善命令
の対象となり得る事実が認められた。
(ア)①本件報告書に記載されている内容間のそご(本件報告書におい
て,「C(原告のこと。以下も同じ。)がバングラディッシュにおいて
展開しています事業は,配当金を適正に使用して,現地の関係者にも喜
んでいただいて行ってきていましたので,天地神明に誓って不正はして
おらないと断言できる」(乙3の1枚目)としつつも,(あ)「機構の調
査員をCバングラディッシュ事務局スタッフが工事現場担当者のD氏の
ところに案内しました。(中略)D氏に『Eの社長Fさんですか?』と
聞いたところ(中略)『はい。間違いありませんEの社長Fです。』
と回答した」(乙3の3枚目),(い)「1100万円は前事務局長が理
事長Gと(それぞれ結婚して家庭がある)先々結婚する予定で,理事長
Gに土地を購入するために出資したお金の一部です。(中略)その土地
にCが養魚場を拡張する計画そのための寄付だと思っていたにもかかわ
らず,前事務局長が辞任するあたり返還請求されました。(中略)11
00万円の出金に日本語の書けない理事長Gの立場を利用し前事務局長
が自身でお金を下ろす手続きをしました」(乙3の5ないし6枚目)等
といった原告が不正を行ったことを認める記載が見られること),②本
件報告書とその添付資料間のそご(本件報告書において,「Cがバング
ラディッシュにおいて展開しています事業は,配当金を適正に使用し
て,現地の関係者にも喜んでいただいて行ってきていましたので,天地
神明に誓って不正はしておらないと断言できる」(乙3の1枚目)とし
つつも,本件報告書の添付資料に「20年事業が完了期日までに中途半
端で終ってしまった経過」(乙19)や「Gが機構からの配分金の一部
を流用するはめになった時の領収書」(乙3の9枚目)等の原告が本件
機構からの配分金を適正に使用していなかったことを認める記載がみら
れる添付資料があること)及び③本件報告書の添付資料と被告にこれま
で提出された事業報告書等の提出書類に記載されている内容間のそご
(原告がバングラデシュにおいて所有,運営する学校,井戸及び職業訓
練所の建設に機構からの配分金が使用されたこととなっている(乙20
の1・2)にもかかわらず,原告提出の平成19事業年度及び平成20
事業年度の財産目録(乙16の2の2ないし3枚目,乙16の3の3枚
目)においては,固定資産が零円となっており,上記の学校,井戸及び
職業訓練所が資産として計上されていないこと)がそれぞれ存するとこ
ろ,これらのそごは書類が作成された時期及び内容に鑑みると単なる過
失による不整合とは考え難いものであるにもかかわらず,原告はこれら
のそごにつき全く説明をしていないこと
(イ)本件機構から平成19年度及び平成20年度に受けた配分金の使用
状況に関し,事実と異なる報告書を作成し,本件機構に対して故意に不
実の報告をしたこと
(ウ)法27条1項3号に抵触する会計処理を行っていること
(エ)関税法67条に違反して100万円を超える現金を税関に無申告で
海外に持ち出していること
イ本件改善命令の発出に先立つ弁明の機会の付与
東京都知事は,平成22年12月8日,原告に対し,予定される不利益
処分の内容及び根拠となる法令の条項を法42条の規定による命令,不利
益処分の原因となる事実を前記ア(ア)ないし(エ)の事実,弁明書の提出期
限を同月20日とする弁明の機会の付与を行うこととし,その旨を書面に
より原告に通知した(乙4)ところ,原告から,同月20日,本件弁明書
(乙6)が提出された。被告が,本件弁明書(乙6)の内容を検討したと
ころ,次の(ア)ないし(エ)のような内容であって,不利益処分の原因とな
る事実について,適切な弁明をするものとは認められなかった。
(ア)前記ア(ア)に関し,Bが辞任しているため資料を確認する時間がな
いなどの旨が記載されているのみで,被告が説明を求めた書類間の記載
のそご(本件報告書に記載されている内容間,本件報告書とその添付資
料間及び本件報告書の添付資料と被告にこれまで提出された事業報告書
等の提出書類に記載されている内容間にそれぞれ存するそご)について
回答していない。
(イ)前記ア(イ)に関し,本件機構から配分を受けた平成19年度の配分
金の使途である職業訓練所の建設について,配分の申請時は2階建てで
計画していたところ,着工後に3階建てに変更したものの,増築の申請
をしていなかったために助成金の減額の対象になるのではないかと考え
て本件機構に相談できなかった旨が記載されているのみで,事実と異な
る報告書を作成し,本件機構に対して故意に不実の報告を行ったことに
ついての合理的な理由を回答していない。
(ウ)前記ア(ウ)に関し,Bと原告の現在の事務局長との間で説明がない
ままの引継ぎであったので,定款も含む全てを見直している最中である
旨が記載されているのみで,法27条1項3号に抵触する会計処理につ
いて回答していない。
(エ)前記ア(エ)に関し,個人投資ではなく助成金ということで申告の必
要がないと思っていたところ,日本を出国するときもバングラデシュに
入国するときも特に問題なく普通に通過した旨が記載され,関税法に違
反した事実を認めながら反省の弁はなく,何ら改善策も示されていな
い。
ウ本件改善命令の発出とその結果
(ア)東京都知事は,平成23年3月24日,原告に対し,法42条に基
づき,本件改善命令(その内容は,前提事実(3)ウ(ア)のとおり。)を
発出した(乙7)。
(イ)被告が,平成23年4月6日から同年5月2日までに原告から順次
提出された文書(乙8ないし11)を検討したところ,同日までに改善
の結果を報告すべきであるにもかかわらずその内容が全て改善の計画に
とどまっており,具体的な改善が認められない(乙10の3頁参照)
上,本件改善命令の内容を成す一部の事項については全く報告がされて
いない(例えば,前記ア(ア)の1100万円の支払に関する本件報告書
に係るそごについては,何ら説明がされていなかった。)と認められ
た。
これを踏まえ,東京都知事は,原告が法42条に基づく本件改善命令
に対して「その改善のために必要な措置を採」ったとは認められず,特
定非営利活動法人の設立の認証の取消事由である同条の「命令に違反し
た場合であって他の方法により監督の目的を達することができないと
き」(法43条1項)に該当すると認められると判断し,同年6月15
日,原告に対し,行政手続法13条に基づく聴聞を同月29日に行う旨
を通知した(乙12)。
エ本件聴聞の実施等
被告は,平成23年6月29日,本件聴聞を行ったところ,原告の理事
長は,本件改善命令において定められた改善結果の報告期限までに改善結
果を報告できなかった理由について,「提出日までに総会を開催すること
ができなかったことによるもの」と釈明したが,その直後に,上記期限の
前日に臨時総会が開催された旨の発言が原告の副理事長からされた(乙1
3)ほか,原告が本件聴聞において提出した「改善計画実施報告書」(乙
14)に記載された改善結果も次の(ア)及び(イ)のような一般的,抽象的
なものがほとんどであり,従前原告が被告に対して提出した文書相互間の
記載のそごについての説明等に係る記載はなかった。
(ア)改善点を「運営規定の見直しを行い職員に理念等も含め周知徹底す
る」とし,改善結果を「職員で定款の見直しを行い理念等再確認した」
とするもの
(イ)改善点を「職員のみならず会員みんなの意見を聞き対応を公開す
る」とし,改善結果を「会員に発行しているCNEWSを一方向ではな
く相方向にし都内で行われたバングラデッシュのお祭りの参加を呼びか
けた」とするもの
オ本件処分
東京都知事は,本件聴聞の主宰者から原告の設立の認証の取消しは妥当
なものと考える旨の意見が付された(乙15)ほか,原告が提出した「改
善計画実施報告書」(乙14)の記載を精査しても,本件改善命令におい
て東京都知事が指摘した事項に対する改善結果が認められなかったことか
ら,法43条1項にいう「前条の命令に違反した場合であって他の方法に
より監督の目的を達することができないとき」に該当すると判断した。
また,本件基準(乙22)においては,東京都知事が,法43条1項前
段に基づく設立の取消しを行う場合の基準として,法42条に基づく改善
命令に従わなかった場合又は改善命令の期限内に回答がなかった場合であ
って,①当該法人の事業等において,ほかに所管庁がないとき,②法人が
実施した事業に関する個別業法等に基づき,当該事業所管庁が指導,監
督,処分を行うことができないとき,③法人の役員全員が欠けたとき,④
法人の役員全員の所在が不明であるときを挙げているところ,東京都知事
は,本件については,上記①に該当するものと認めた。
そこで,東京都知事は,平成23年8月30日,原告に対し,本件処分
をした(甲2)。
(2)原告の主張に対する反論等
ア本件処分が法43条1項の要件を欠く旨の原告の主張について
原告は,本件処分に至るまで誠実に対応し,本件改善命令に全て誠実に
従ったから「他の方法により監督の目的を達することができないとき」
(法43条1項)に該当しない旨主張する。
しかしながら,誠実に対応したか否かと他の方法により監督の目的を達
することができるか否かは全く関係がない。また,本件改善命令における
改善結果の報告期限は平成23年5月2日であり,本件業務等報告命令の
発出(平成22年11月5日)から約半年もの期間があったにもかかわら
ず,原告による本件改善命令に対する対応は極めて不十分なものであった
上,本件聴聞の結果を踏まえても,やはり原告についてはもはや他の方法
では監督の目的を達することは不可能であったことから,東京都知事は,
「他の方法により監督の目的を達することができないとき」(法43条1
項)に該当すると判断して本件処分をしたものである。なお,原告は,本
件機構から交付を受けた配分金の一部をBに支払った事実を認めた上で,
その責任が全てBにあるかのような主張をしているが,仮にそのような事
情があったとしても,それは単に原告の内部事情にすぎず,原告による不
適切な法人運営を正当化する理由にならないことはいうまでもない。
イ本件処分が行政手続法に違反する旨の原告の主張について
(ア)原告は,本件基準(乙22)のうち法43条1項前段に基づく設立
の認証の取消処分の要件を定めた部分については,形式的な要件にすぎ
ず,具体的にどのような事情を考慮して判断するのかが極めて不明確で
あって,行政手続法12条2項に違反する旨主張する。
しかしながら,本件基準(乙22)のうち法43条1項に基づく設立
の認証の取消しをする基準は,いかなる場合に上記取消しの処分が行わ
れるかは,その文言上明らかであって何ら不明確ではない。なお,原告
は,処分の性質に照らして「他の方法により監督の目的を達することが
できない」という要件を実質的に判断できる基準を設定しなければなら
ない旨も主張するが,本件基準(乙22)のうち法43条1項に基づく
設立の認証の取消しをする基準に該当する場合に,設立の認証の取消し
に至る以前の段階において所轄庁に与えられている監督手段は,報告及
び検査(法41条)並びに改善命令(法42条)のみであり,これらの
監督手段を経てもなお監督の目的を達することができない場合には,
「他の方法により監督の目的を達することができない」ものといわざる
を得ないから,本件基準(乙22)のうち法43条1項に基づく設立の
認証の取消しをする基準のように基準を設定することは,行政手続法1
2条2項に反するものではない。
(イ)a原告は,原告は,本件改善命令に係る改善命令書(乙7)に記載
された理由が不明確であって,行政手続法14条に違反する旨を主張
する。
しかしながら,本件改善命令に係る改善命令書(乙7)に記載され
た違反事項は,原告自身が被告に提出した書類を見比べれば容易に判
断し得る明らかなそご(前記ア(ア)①ないし③に記載したそご)が存
することを指摘するものとして十分なものであるから,本件改善命令
に係る改善命令書(乙7)に記載された理由の提示は行政手続法14
条に反しない。なお,仮に原告が被告の指摘したそごの内容を理解し
ていなかったとしても,それは原告が自ら作成し提出した書類の内容
についての理解が不十分であったことを示すにすぎず,その背景とし
て原告の内部事情による事務引継ぎの不備があったとしても,そのよ
うな事情は原告による不適切な法人運営を正当化する理由にならない
ことは明らかである。
b原告は,本件処分に係る決定書(甲2)に記載された理由が不明確
であって,行政手続法14条に違反する旨を主張する。
しかしながら,本件処分に係る決定書(甲2)に記載された「提出
された改善報告書において指摘事項に対する改善が認められなかっ
た」というのは,東京都知事が本件改善命令に係る改善命令書(乙
7)において「2改善命令の内容」として記載した事項について,
原告から提出された文書(乙8ないし11,14)によっては改善が
認められなかったことを指しており,そのことは,本件処分に至るま
でに原告が被告に提出した各文書や前記(1)に述べた原告と被告との
間で取り交わされたやり取りの経緯から明らかであるから,上記の記
載が行政手続法14条に違反するという原告の主張は理由がない。
ウ本件処分が違法であることに係るその余の原告の主張について
(ア)原告は,東京都知事が,原告が誠実に説明を繰り返してきたにもか
かわらず本件機構からの情報のみを信頼し,原告の説明と異なる本件機
構からの報告をうのみにして原告の説明にそごがあると決めつけた上,
判断等をするに際して使用した本件機構の資料を開示することも,これ
に対する弁解の機会を原告に与えることもしないなど,誠実に調査,審
査をしなかった違法がある旨主張する。
しかしながら,東京都知事は,本件機構からの情報のみを信用して本
件処分をしたものではなく,前記(1)に述べたとおり,原告から提出さ
れた各種資料及び本件聴聞の結果等を精査し,法令上求められる手続を
履践した上で法43条1項に該当する事由があると判断して本件処分を
したから,本件処分に原告が主張するような違法はない。
(イ)東京都知事は,本件報告書(乙3)の記載相互間に存するそご(前
記ア(ア)①に記載されたそご),本件報告書(乙3)とこれに添付され
た資料との間に存するそご(前記ア(ア)②に記載されたそご)及び本件
報告書に添付された資料(乙20の1・2)と被告に従前提出された事
業報告書(乙16の2・3)等に記載された内容との間に存するそご
(前記ア(ア)③に記載されたそご)につき,これらのそごが極めて明白
なものであったことから,原告に対して弁明の機会を付与した際に逐一
その内容を指摘していないが,原告が所轄庁に対して提出した書類にお
ける極めて明白なそごについて具体的に指摘されなければ把握できない
というのであれば,その事実自体が特定非営利活動法人の認証を受ける
団体としての適性に問題があることを示すものであるといわざるを得な
い。
(ウ)原告は,本件基準(乙22)のうち法43条1項前段に基づく設立
の認証の取消処分の要件を定めた部分については,法及び行政手続法の
趣旨に反する違法な基準設定であるから,千葉県が定めた「千葉県特定
非営利活動促進法に係る処分基準」(甲17)を参考に本件処分の可否
を判断すべきである旨主張する。
しかしながら,本件基準(乙22)のうち法43条1項前段に基づく
設立の認証の取消処分の要件を定めた部分が違法なものではないことは
前記イ(ア)に述べたとおりであるし,東京都知事が特定非営利活動法人
の所轄庁として監督事務を行うに際して他の道府県の基準によるべき義
務はないから,原告の主張は失当である。
(エ)原告は,公益法人の設立許可が取り消された事案と本件とを比較し
て本件処分が違法である旨主張する。
しかしながら,法に基づく特定非営利活動法人と平成18年法律第5
0号による改正前の民法に基づく公益法人とは,その制度も適用される
法令も全く異なるものであり,これらを比較すること自体に意味がな
く,原告の主張は理由がない。なお,原告の引用する裁判例(甲18)
は,公益法人の設立許可の取消しが適法と判断された事案であり,この
点においても,当該事案と本件とを比較して論ずることに意味はない。
(原告の主張の要点)
(1)法の趣旨等
法1条は,特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営
組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の
認定に係る制度を設けること等により,ボランティア活動を始めとする市民
が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し,
もって公益の増進に寄与することを目的とする旨を定めているところ,上記
の「自由」の意味には,特定非営利活動を行う者が,所轄庁による法人の設
立の認証,監督等の際に,最低限の規制しか受けず,また,その活動を行う
に当たっては,最大限その自由意思を発揮されるべきものであることを含む
ものとされている。このような法の趣旨,目的を踏まえ,所轄庁による監督
規定についても,所轄庁の恣意的な権限行使がされないよう,また,監督を
受ける法人の自主性や権利保護に配慮される(法41条)とともに,法42
条の「運営が著しく適正を欠くとき」とは,特定非営利活動法人の運営が著
しく公共の福祉を害すると認められる場合をいうものの,営利を目的としな
い団体の自主性や自立性を尊重して判断しなければならないものと解されて
いる。
このように,法は,営利を目的としない団体の自主性,自立性を保護する
ため,できる限り行政庁の関与を排除し,監督権の発動が厳しく制限される
体系を有するものとされている。
(2)原告が法42条の命令に違反していないこと
原告は,次に述べるように,本件改善命令等に忠実に従い,構成員,運営
方法,会計等全ての面において改善策を講じてきたから,法令等に違反し,
又はその運営が著しく適正を欠くとは認められず,改善命令にも違反してい
ないから,法43条1項にいう「前条の命令に違反した場合」に当たらな
い。また,そもそも,法42条の定める「その運営が著しく適正を欠くと認
めるとき」にも該当しないものというべきである。
ア原告が本件業務等報告命令に誠実に対応したこと
(ア)本件業務等報告命令は,本件機構が不正と指摘したバングラデシ
ュにおける領収書の偽造等(乙1参照)について説明を求めるものであ
るところ,原告は,本件報告書(乙3)において,本件返還請求があっ
た事実を正直に認め,返還請求を受けた配分金の使途,本件返還請求を
受けた経緯及び事業内容について,報告書等の資料を添付し,具体的か
つ詳細に説明した。その上で,バングラデシュにおける工事関係書類等
を偽造した事実を明確に否定した。また,原告は,新聞記事(甲5)に
より,原告が配分金を流用した旨が報道されたため,Bによる金銭の引
出しについても正直に説明した。
これらによれば,被告が指摘するようなそごはなく,原告が,本件業
務等報告命令に誠実に対応したものといえる。なお,被告は,平成22
年11月24日,本件報告書を市民へ説明するよう原告に求めたため
(甲3),原告は,原告が運営するホームページ上にリンクをはり,本
件報告書のデータを掲載して報告内容を公開して説明しており(甲
4),この点においても,被告の指示に忠実に従っている。
(イ)東京都知事が,平成22年12月8日,原告に対し,弁明の機会
の付与を行い,その不利益処分の原因となる事実の中には,本件報告書
(乙3)に記載されている内容についてそごがあることが含まれていた
ところ,どの部分にそごがあるのかについての具体的な指摘は一切なか
った。そこで,原告は,本件弁明書(乙6)において,本件報告書(乙
3)に記載されている内容にあるとされるそごについては,これを具体
的に指摘するよう東京都知事に求めるとともに,本件機構に不実の報告
をしたことや法に抵触する会計処理をしたことについては,自己に不利
な事実も正直に認めながら,資料を添付した上で詳細かつ具体的に弁明
をしており,被告が列挙した事実への弁明としては適切なものであっ
た。
イ原告が本件改善命令に誠実に対応したこと
(ア)本件改善命令においては,第三者委員会を立ち上げて報告を行う
こと,本件返還請求に速やかに対応すること,会計処理の方法を改善し
て正しい財産目録を提出すること,関係法律を遵守した運営を行うこと
が挙げられ,改善計画の策定及び改善結果の報告が原告に求められてい
たが,違反事項として指摘された事項においては,本件報告書(乙3)
のそごにつき,その具体的な内容については全く指摘がなかった。
原告は,報告書(乙8)において,今後の計画として,第三者委員会
の立上げ,第三者委員会による報告書の作成及び提出,原告における総
会の開催,組織改革等について報告し,実際に,第三者委員会を立ち上
げ,第三者委員会による報告書(乙11)も提出された。改善結果につ
いては,第三者委員会の構成委員の選定に時間がかかり,提出期限の前
日に総会を開催して決定したため,報告が遅くなったが,このような事
情については,改善報告書(乙10)において正直に説明し,改善結果
の報告をする期限と方法についても申告しているほか,会計財産目録を
作成して同報告書(乙10)に添付している。
このように,原告は,本件改善命令に対して誠実に対応していた。
(イ)被告は,本件改善命令において,①本件返還請求について,解決
までの期限,方法等を明らかにして速やかに対応すること,②関連法律
を遵守した運営を行うことを求めている。
しかしながら,本件機構は,原告が書類を偽造して当初から計画的に
配分金詐取を企図していたという認識に基づいて配分金の返還請求をし
ており,原告と本件機構との間で本件返還請求の根拠となる事実につい
て争いがあるから,解決のためには一定の期間が必要となり,解決まで
の期限,方法を具体的に明らかにすることは不可能である。したがっ
て,上記①は原告に不可能を強いるものであり,本件機構の認識を前提
として本件返還請求に応じるよう求める不当なものでもあったところ,
原告は,本件機構との間で解決に向けて全力で取り組む姿勢を示すな
ど,不当な内容の命令にも真摯に従っている。また,上記②について
は,被告の指摘を受ける原因を作ったバングラデシュの元スタッフを組
織から排除し,理事も交代させて運営体制を抜本的に改善したものであ
る。
(ウ)原告は,本件聴聞の期日に,原告の理事長等が出頭し,改善計画
実施報告書(乙14)を持参するとともに,意見を述べた。そして,同
報告書(乙14)には,平成23年5月29日に理事長の交代等原告の
運営体制を大幅に変更した事実,会計処理においてアラビア数字による
記入の強制等の改善策を実施した事実,関税法違反の点を正直に述べて
反省している事実,バングラデシュのスタッフにも日本法に基づいた指
導を行うなどの改善策を実施している事実等が記載されており,被告の
要求に誠実に対応している。
ウ本件改善命令において法令及び定款の規定に違反し又は著しく適正を
欠く運営が認められたとする事項については,原告がこれを改善したもの
であるか又はそもそも違反等が認められないものであること
(ア)被告が主張するそごは訂正にすぎないこと
被告がそごと主張する事実は,次に述べるとおり,原告が過去の問題
について包み隠さず正直に報告した結果生じた食い違いにすぎず,原告
が過去の教訓等から事業を改善,是正したことや本件処分当時には正常
な運営がされていたことを示すものである。
a被告は,本件報告書(乙3)にバングラデシュにおいて展開して
いる事業に不正はない旨記載しながら,①バングラデシュの工事現場
担当者であるDが名前を偽ったことや②Bによる金銭の引出しという
不正も認めており,本件報告書(乙3)に記載されている内容間にそ
ごがある旨主張する。
しかしながら,上記①については,Dは,原告が発注した会社
(E)から委託を受けて仕事をしていたために,その委託元の社長で
あるFの名前を答えたにすぎないのであり,自らが委託元の社長であ
る旨を偽ったわけではなく,原告が不正を行ったことを認める趣旨の
記載があるともいえない。また,これらの問題は,原告が解雇した元
現地スタッフとBが結託して原告を陥れるために仕組んだもの(後記
(オ)参照)であり,原告が,同元現地スタッフを組織から追放し,B
が音信不通となったことにより正常な組織運営を回復している。
上記②については,被告が指摘するような事実を記載したのは,原
告が問題発生後すぐに財政状況を元どおりにし,その原因となったB
を事務局長から退任させたことを示すためであり,被告の指摘に誠実
に対応した結果であって,本件報告書(乙3)の提出時点で是正され
ていた問題であるから,本件報告書(乙3)の提出後には被告の主張
する不正は存しない。
b被告は,本件報告書(乙3)の添付資料において,①「20年事
業が完了期日までに中途半端で終ってしまった経過」と題する書面
(乙19)があること,②「Gが機構からの配分金の一部を流用する
はめになった時の領収書」(乙3の9枚目)があることを指摘し,本
件報告書とその添付資料との間にそごがあり,原告が本件機構からの
配分金を適正に使用していなかったことを認めたものである旨主張す
る。
しかしながら,上記①については,工事に計画と多少の変更がある
ことや計画していた時期から実際の工事完成時期が遅延して年度内に
終わらなかったことを認める内容であるものの,工事自体は最終的に
完成し,配分金も予定どおり全額使用された上,計画を変更したこと
について報告書を提出しようとしたところ,Bが必要書類を全て持ち
出したために報告することができなかったものであるから,何ら不正
はなく,これをもって配分金を適正に使用していなかったものを認め
る記載であるとはいえず,そごも存在しない。また,上記②について
は,配分金をBが引き出したことを認めるものであるものの,原告が
客観的証拠を添付資料として提出し,金銭を引き出した事実を正直に
認めて積極的に申告し,詳細に説明していたことを裏付けるものであ
る。
c被告は,本件報告書(乙3)に添付されていた資料において,原
告がバングラデシュで建設した学校,井戸及び職業訓練所に本件機構
からの配分金が使用されたとする記載がある(乙20の1・2)一方
で,本件報告書が提出される前に提出された原告の平成19事業年度
及び平成20事業年度に係る各財産目録に記載されるはずの施設が資
産として計上されておらず,固定資産が0円と記載されている(乙1
6の2・3)ことをもって,これらの間にそごがある旨主張する。
しかしながら,平成19事業年度及び平成20事業年度の原告の財
産目録に固定資産が0円と記載され,建設した建物等が計上されてい
ない理由については,作成者であるBから聴取できないため不明であ
る。また,平成21年1月1日から同年12月31日までの事業年度
の原告の財産目録(甲6)に同じような記載があるのは,平成19事
業年度及び平成20事業年度の原告の財産目録について,提出直後に
は被告から何の指摘もなかったために,同様の記載をしていたにすぎ
ないものである。他方,指摘を受けた平成22年1月1日から同年1
2月31日までの事業年度以降は,固定資産を計上して是正されてお
り(甲7の1・2,乙10),本件処分がされた時点においては,原
告の会計状況も是正され,適正に運営されていたから,被告が指摘す
るようなそごがあるとはいえない。
(イ)本件機構に対し故意に不実の報告を行っていないこと
本件改善命令(乙7)においては,原告が本件機構から平成19年度
及び平成20年度に受けた配分金について,内容が変更されているにも
かかわらず,計画どおりに実行したという虚偽の完了報告書を提出した
とされている。
しかしながら,職業訓練校,学校及び井戸の建設は当初の予定から多
少の変更があるものの,本件機構からの配分金を適正に利用して完成さ
せている。本件機構から平成19年度及び平成20年度の完了報告書に
ついて指摘を受け,配分金の返還請求がされたのは平成22年度になっ
てからであるところ,平成19年度及び平成20年度に本件機構に提出
すべき書類は全てBが処理していたため,原告の理事及び会員は,指摘
を受けるまで計画変更の届出等をしていなかったことは知らなかったも
のであり,その後に計画の変更について報告書を作成して提出しようと
したものの,Bが必要な書類を全て持ち出した上で音信不通になってお
り,提出することができなかったものである。
したがって,「故意に不実に報告した」事実はなく,原告の団体とし
ての自主性,自立性を尊重する観点に照らし,運営が著しく公共の福祉
を害するとは認められないから,法42条にいう「その運営が著しく適
正を欠くと認めるとき」には当たらないというべきである。
(ウ)原告の会計処理が法27条1項3号に抵触しないこと
本件改善命令(乙7)においては,現地現金出納帳と他の説明資料の
内容が一致しないことや財産目録,貸借対照表等の記載が正しくないこ
とが指摘されている。
しかしながら,これらの点も全てBが処理していたことに起因するも
のである上,現地で建設した建物,設置した設備,取得した土地等の財
産について,財産目録及び貸借対照表に記載しなかったことも,Bが資
料を持ち出して原告の現在の事務局長に引き継ぎを全くしなかったこと
などにより原告の理事及び会員はその事実を知らず,原因の究明が困難
であったから,原告の自主性,自立性を尊重する観点に照らすと,被告
が指摘するようなそごはなく,法令に基づいてする行政庁の処分に違反
するものでもないというべきである。
(エ)原告が関税法67条に違反したとはいえないこと
被告は,原告が100万円を超える現金を税関に対して申告すること
なく海外に持ち出したことを関税法67条に違反するものである旨主張
する。
しかしながら,原告は,バングラデシュに原告名義の口座を作って必
要な資金を送金する方法をとると,当時の現地のスタッフが現地での権
限を利用して不正に同資金を引き出すおそれがあったため,日本から直
接現金を持参する方法を選択したのであり,現金を持ち出す理由が個人
投資ではなく助成金であるために申告をする必要がないものと認識して
いたのである(乙6参照)。原告は,現在は無申告で多額の現金を持ち
出すことはしておらず,また,上記の現地のスタッフも解雇したため,
関税法に違反するおそれもなくなったから,原告の自主性,自立性を尊
重する観点からは,関税法67条違反の事実は消滅したものといえる。
(オ)本件機構が誤った事実認識を有するに至った背景事情等
本件機構は,平成22年5月22日以降,原告において配分金の「個
人的流用」があったとの新聞記事が掲載されたこと(甲5)を受けて,
同年7月12日ないし同月14日,バングラデシュにおいて本件現地監
査を実施したところ,これは,原告を嫌悪したBからの一方的な情報や
原告を平成21年6月頃に解雇されたバングラデシュの元スタッフ等の
言葉を信用し,原告側の者の供述等を全く信用しなかった片手落ちのも
のであった。すなわち,Bは,同年5月25日に原告に対する寄附金を
貸付金であったと主張して一方的に配分金が入金されていた原告名義の
銀行預金口座から返済金として1100万円を引き出して原告の事務局
長を辞任した上,報道機関に対して本件機構からの配分金である110
0万円を引き出したことを自ら情報提供したものである。また,Bは,
原告により解雇されたことによって原告を嫌悪していた上記の現地の元
スタッフを利用し,同人が,原告の発注先である「E」社の社長である
Fに対し,原告の仕事を全て行ってきたことを本件機構に明かさないよ
うに命令し,その旨を力ずくで白紙に署名させた(甲13)ため,F
は,本件機構による本件現地監査の際に,原告からの工事を受注したこ
とはない旨を答えたものである。
(3)本件が法43条1項の「他の方法により監督の目的を達することができ
ないとき」に該当しないこと
ア前記(2)ア及びイに述べたとおり,原告は,東京都知事から説明を求め
られた事項について,原告に不利な部分については正直に認めて反省し,
改善の方法も示しており,説明を求められている以上の事項についてもあ
らかじめ申告するなど,最初の段階から本件処分に至るまで常に誠実に対
応してきたのであり,本件改善命令に全て誠実に従ったから,法43条1
項の「他の方法により監督の目的を達することができない」という要件に
該当しない。
イ本件処分がされるきっかけとなったのは,本件返還請求がされたこと
であり,本件処分の主な理由も本件機構からの配分金の使用方法等に関わ
る問題である。そこで,本件機構からの配分金を適正に使用しているか否
かを他の方法により被告が把握することができれば監督の目的を達するこ
とができるところ,原告は,過去に生じた金銭の引出し等配分金の使用に
関わる問題について,被告から追及される前の段階で資料を提出し,積極
的に報告しており,被告の指示に誠実に従ってきたから,被告が原告に対
して配分金の適正使用をさせる方法を新たに設けたとしても,原告は被告
の指示に従うことが保証され,実効性がある。また,本件機構からの配分
金を適正に使用させるために,設立の認証の取消処分という最終手段以外
にも,原告に対する監督を強化する方法は多々存するのであり,現に,原
告は,本件処分を受ける前に,本件改善命令,弁明の機会の付与,本件聴
聞等において,必要な措置は全て講じてきたものである。
したがって,他の方法により監督の目的を達することができるから,本
件は,法43条1項の要件に該当しない。
(4)仮に原告が法43条1項の定める場合に該当するとしても,本件におい
ては被告の有する裁量権の逸脱濫用があるといえること
ア法43条1項の解釈
本件において仮に法43条1項に該当する事実があるとしても,所轄庁
は必ずしも認証の取消しをする必要はなく,設立の認証の取消しは,法人
の解散原因であり法人格を消滅させる行為であるから,その必要性の有無
を慎重に考慮しなければならない。
被告が平成18年から平成25年に至るまで特定非営利活動法人の設立
の認証を取り消した事例(本件処分以外の事例)のほとんどは,3年以上
にわたって事業報告書等を提出しなかったこと(同項後段)を理由とする
ものであるから,同項前段(法42条の命令に違反した場合であって他の
方法により監督の目的を達することができないとき)も同項後段との均衡
を考慮して処分を選択すべきであるところ,何らかの書類が提出されてい
たり,活動していないとの内容の事業報告書が提出されていたりする場合
には,法43条1項後段に基づく認証の取消しができないことにも照らし,
同項後段は,法人としての実態(存在)が全くなく,法人格を消滅させて
も全く支障がないことを意味することになるから,同項前段の解釈に当た
っても,同項後段と同程度の違法性がある場合に限り認証取消処分を選択
すべきであり,同項後段との均衡を欠く処分は比例原則違反となるものと
いうべきである。
イ被告は本件訴えに至るまで本件報告書に係るそごの具体的な内容を指
摘していなかったこと
(ア)被告は,本件処分に至る過程において本件報告書にそごがあること
を強調していた際,どの記載がどのようにそごしているのかについて具
体的な指摘をせず,そごがあることのみを指摘し,その基礎となる事実
は一切指摘していなかった。被告は,本件訴えにおいて初めてそごの具
体的事実を指摘したものである。
(イ)被告は,本件報告書のそごの内容を指摘されなければ把握できない
のは,原告が特定非営利法人としての適性に問題があることを示す旨主
張する。
しかしながら,原告は,被告から指摘を受ける前に原告にとって不利
と考えられる情報も積極的に報告し,説明を尽くしてきた上,被告から
指摘された点や指導を受けた点についても,誠実に対応してきたから,
それを踏まえてもなお疑問点や改善点があるというのであれば,被告は,
本件処分をする前に原告の提出した文書のどこにどのようなそごがある
のかを具体的に指摘すべきであって,被告にとって原告の改善が不十分
であるとしても,これは,被告が改善を可能にするだけの具体的な指摘
や指導をしてこなかったことに原因があるのであり,原告に特定非営利
活動法人としての適性に欠けるところはない。むしろ,被告は,本件返
還請求がされていることのみをもって原告を不利益に扱う姿勢であり,
原告の誠実な姿勢や努力を一切考慮しようともしなかったものである。
ウ原告の設立の認証を取り消すことの影響が大きいこと
原告は,その設立当初から今日に至るまで一貫してバングラデシュの貧
困地域において子ども達への教育支援,地域の経済発展に大きく貢献する
活動を持続,継続的に行ってきた。こうした活動に対し,子ども達の教育
環境が整っただけでなく,現地住民等は養殖事業をして経済的に自立等し
て地域経済も振興した。住民はこれを歓迎して原告及びその創設者であり
当時の理事長であったGを尊敬しているし,同地域選出の国会議員及び地
方議会議員も原告及びGの行為に敬意をもって評価している。このような
原告が不正行為を行うことは到底あり得ず,また,原告が法人として活動
できないことにより最も被害を受けるのはバングラデシュの貧しい村人や
子ども達であるし,バングラデシュにとっても,国民が就学や就労の機会
を失い,技術革新や経済発展の土台を失うという大きな不利益を生じてい
る。
このような原告の活動実態に加え,前記(2)及び(3)に述べたように原告
が被告から指摘を受けた事実に真摯に向き合うなどの対応をしていること
からして,法43条1項前段に該当するとしても,同項後段と同等の違法
性はなく,法人格を消滅させる必要性は全くないから,原告に対する設立
の認証の取消処分を選択すべきではないのであって,本件処分はこれまで
被告が認証の取消処分をしてきた他の事例との均衡を欠き,比例原則に違
反する違法なものというべきである。
エ本件処分までの期間が不適切であること
本件処分は,本件改善命令の発出から半年もたたないうち(本件業務等
報告命令の発出から計算しても1年も満たないうち)にされたものであり,
手続にかける期間の異常な短さは慎重な判断を欠いていることを裏付ける
ものであり,最低3年という期間を設けている法43条1項後段との均衡
も欠くものである。また,本件処分に至る一連の被告の手続の発端が,本
件返還請求にあるところ,被告の指摘が本件返還請求の根拠として本件機
構が挙げるものと同じであることや本件改善命令においても本件返還請求
に対する対応が対象となっていることに照らすと,被告は,本件機構の認
識や主張をうのみにして,原告が配分金を詐取したという誤った事実を前
提に,原告に本件返還請求に応じさせることを目的としていることが強く
疑われるのであって,本件処分には他事考慮の違法があるというべきもの
である。
オその他の事情
(ア)本件では,違法行為等により市民が深刻な被害を被る現実的かつ
客観的な可能性は全くなく,役員等を補充等して適法な運営が担保され
る体勢が整っていた上,本件返還請求を受けた根拠も原告として一定の
説明をしており,何より問題となった事態は,Bが主導して行われたも
のであって,残っている役員等が原告の運営の改善に意欲を持って取り
組んでいる。
(イ)本件基準(乙22)のうち法43条1項に基づく設立の認証の取
消しをする基準は,行政手続法及び法の趣旨に反する違法な基準である
から,これらの法の趣旨に沿う千葉県の定めた「千葉県特定非営利活動
促進法に係る処分基準」(甲17)を参考に本件処分の適否を判断すべ
きであるところ,同基準(甲17)に沿って検討すれば,原告の設立の
認証を取り消すべき場合に該当するとはいえず,本件処分は違法な処分
であって取り消されるべきものといえる。
(ウ)公益法人の設立許可取消処分の違法性が争点となった裁判例の事
案(甲18)と比較しても,本件処分は,極めて不十分な判断過程,手
続の上でされた違法な処分であるといえるから,取り消されるべきもの
である。
(5)本件処分には行政手続法違反及び手続的瑕疵があること
ア本件基準(乙22)が行政手続法12条に違反すること
法43条1項に基づく特定非営利法人の設立の認証の取消しの処分に係
る処分基準については,その処分の性質に照らして同項にいう「他の方法
により監督の目的を達することができない」という要件を実質的に判断で
きる基準を設定しなければならないところ,本件基準(乙22)のうち法
43条1項に基づく設立の認証の取消しをする基準は,形式的な要件を挙
げるにすぎず,具体的にどのような事実を考慮して判断するのかが極めて
不明確であるから,本件基準(乙22)には,行政手続法12条に反する
重大な違法がある。そして,被告が,実質的に具体的な判断基準を設定し,
その基準に基づいて判断していれば,本件処分をすることはなかったから,
上記の手続的瑕疵は,本件処分の取消事由になるものである。
イ理由の提示(行政手続法14条1項本文)に違反すること
(ア)法42条に定める改善命令に従わなければ設立の認証の取消処分
を受けるという重大な不利益が生ずる上,本件においては,本件改善
命令の原因となる事実関係として多数の点が指摘されているから,1
つずつ具体的に特定されなければ,改善命令に従おうにも正確にこれ
に従って改善することができなくなるおそれがある。
したがって,本件改善命令において,本件報告書等の修正を求めるの
であれば,修正を求める具体的事実を特定して改善点を指摘すべきで
あるところ,本件改善命令に提示されている理由(乙7)においては,
それにいうそごの中身が具体的に特定されておらず,原告は,上記の
そごの具体的内容が不明確であるため,被告の判断に対して1つ1つ
の事実をもって効果的に主張することができず,設立の認証の取消処
分にまで至ってしまったものである。
したがって,本件改善命令の理由の提示は,行政手続法14条1項本
文に反しているところ,上記のそごの具体的内容が特定されていれば,
原告は十分な防御をすることができ,本件処分を受けるに至らなかっ
たから,その違法性は重大であり,本件改善命令は取消しを免れない
ものであり,これを前提とする本件処分も違法な処分として,取消し
を免れないものである。
(イ)法43条に基づく設立の認証を取り消す旨の処分は,対象となる
特定非営利活動法人の法人格を失わせ,当該法人の活動を大きく制限
するものであるから,同処分については,改善命令におけるどの指摘
にどのようにどの程度従わなかったのか,改善命令に従わなかったこ
とがなぜ「他の方法により監督の目的を達することができないとき」
に該当するのかということについて,具体的に指摘すべきものという
ことができる。
しかしながら,本件処分については,「指摘事項に対する改善が認め
られなかった」と抽象的な理由のみが提示されているのみである(甲
2参照)から,行政手続法14条1項本文に反するものというべきで
ある。
ウ被告の調査方法には手続上の重大な瑕疵があること
被告は,原告が誠実に説明を繰り返してきたにもかかわらず,本件機構
からの情報のみを信頼し,原告の説明と異なる本件機構からの報告をうの
みにして,原告の説明にそごがあると決めつけた上,判断等をするに際し
て使用した本件機構の資料を開示することも,これに対する弁解の機会を
原告に与えることもしないなど,誠実に調査,審査をしなかった。
このような被告の調査方法には,公正,公平さに欠けるという手続上の
重大な瑕疵があり,それに基づく被告の判断にも瑕疵があるというべきで
ある。
第3当裁判所の判断
1所轄庁が特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができる要件
法43条1項の定めは,別紙の第1の2に述べたとおりであるところ,これ
によれば,所轄庁が特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すためには,①
(a)特定非営利活動法人が法42条の命令に違反した場合であって,(b)他の方
法により監督の目的を達することができないとき又は②3年以上にわたって法
29条1項の定める事業報告書等,役員名簿又は定款等を提出しなかったこと
の2つの要件のいずれかを満たすことが必要であると解される。
2原告につき法42条の命令に違反した場合に該当するか否か(前記1の①
(a))について
(1)ア本件処分の約5か月前である平成23年3月24日にされた本件改善命
令の内容は,前提事実(3)ウ(ア)に述べたとおりであり,改善のために採
るべき必要な措置として,①本件報告書の記載の内容等におけるそごにつ
き真実を明らかにするために第三者委員会における十分な審議により原告
の「法人運営の実態を明らかにした」上で改めて報告書を提出すること,
②本件機構による本件返還請求について「解決までの期限,方法などを明
らかにし,速やかに対応すること」及び③法人運営の「改善結果」を同年
5月2日までに報告することが含まれていたものである。
イしかしながら,前記のア①については,原告による第三者委員会の設置
は,改善結果の報告の期限とされた日の13日前の同年4月20日にさ
れ,そのため,本件返還請求がされるに至る直接の原因となった原告の平
成19年度の事業については,必要最小限度での調査等で審議されること
となったものである(乙10,11)。
そして,本件訴えにおいて被告が本件報告書に記載されている内容間の
そごの一つとして主張する配分金を適正に使用した旨の記載と本件現地監
査の際の工事現場担当者であるDにおける対応に係る記載との関係(第2
の4(被告の主張の要点)(1)ア(ア)①(あ)参照。なお,本件報告書に被
告の主張するような記載及びそれの直前の部分に「Eの現場担当者D氏は
Eの見積書,概要書,領収書を使用し提出しました。その際に(中略)サ
インをE社長のF氏の名前で署名しました。(中略)これは,バングラデ
ッシュでは,普通のことで行われているので決して偽造ではありませ
ん。」との記載があることは,証拠(乙3)により認められる。)につい
ては,a「法人運営の実態を明らかに」すべき対象に係るそごとされる上
記の事由は,本件機構において本件返還請求をするに際して「不正と認め
られた事項」として挙げた理由のうちの「平成19年度上期から平成20
年度にかけて,現地の業者の見積書,概要図及び領収書を偽造していまし
た。」(乙1)に係るものであって,そのことを原告としても認識してい
たことは,上記のような本件報告書の記載に照らして明らかであるとこ
ろ,b本件報告書の上記のような記載の内容については,本件機構が平成
22年12月10日付けで作成して東京都知事に提出した文書(乙5)に
おいて,Fが本件機構宛ての書簡中で「自分はC理事長から工事を受注し
たことは一切ない」としていたことのほか,Dが原告の発注に係る工事の
内容に関する本件現地監査の際の本件機構の担当者による質問に明確な回
答をすることができなかったことや,本件機構が本件現地監査につき原告
に対してFとの面会を設定するよう要請していたにもかかわらず,原告の
現地スタッフはDとの面会を設定し,その際にDは自らがFであると称
し,その後に本件機構を訪れた当時の原告の理事長であったGも複数回に
わたりDをもってFであると述べていたこと等を挙げて,Dが現場担当者
でFの名義で署名する立場にあったとの原告の主張には疑義があるとの指
摘がされていたものであり,c本件機構の上記のbの文書(乙5)におけ
る指摘については,原告が本件弁明書(乙6)においてそれに関して反論
をしており,本件返還請求に係る重要な争点であることを原告においても
十分に認識していたものである(ただし,原告の本件弁明書(乙6)にお
ける反論は,専ら本件現地監査の際の現地での対応及びその後のGの本件
機構に対する対応に係るもので,Fが原告による原告の現地の従業員に対
する人事上の措置を不満として本件現地監査における原告への協力を断っ
たことから,Dが「E社長として自分が責任をもって説明するから」と引
き受け,Gも本件現地監査の際にDがE社長のFであると名乗ったと思い
込み,本件機構に対してそのような対応をしたというものにとどまり,D
が現場担当者としてFの名義で各種の文書に署名をする権限を有していた
ことを的確に裏付ける内容のものとはなっていなかった。)。さらに,d
本件改善命令に応じての報告書の作成の仕方等につき平成23年4月11
日に原告の理事が被告の職員に指導を受けた際にも,被告の職員から「今
まで都庁に提出してある申請書・報告書・弁明書や添付された資料で出さ
れたものが,あっちこっちくいちがっていて,どれがほんとうでどれが嘘
なのかがわからないから,第三者に入ってもらって審査してもらいはっき
りして報告して下さい」との説明があり,その際に,本件現地監査に係る
Gの対応が問題のあるものとして具体的に挙げられていた(乙11。な
お,その後の本件聴聞の期日において,原告の理事長は,「当法人がこれ
までに齟齬のある報告書を提出していたことは事実です。」と陳述してい
る。乙13)にもかかわらず,e第三者委員会の作成した報告書(乙1
1)においては,本件改善命令において問題とされた本件報告書に係るそ
ごの内容を特定する資料として本件機構の上記のbの文書(乙5)を基礎
にG等から事実関係の聴取をしたとされる一方で,上記のaないしdに述
べた点については,原告の現地における業務の遂行等の運営の実態につい
て,それを的確に裏付ける資料を挙げるなどした上で具体的に明らかにす
るような記述は存在せず,fこのことは,原告が本件改善命令に応ずるも
のとして提出した報告書(乙10)についても同様である。
以上のような経緯等を踏まえて上記のe及びfの報告書(乙10,1
1)の内容を客観的に評価すると,これらをもって,本件改善命令におい
て原告が提出を命じられた原告の「法人運営の実態を明らかにした」報告
書に当たるとは認め難いというほかはない(なお,本件処分後に作成され
原告が本件訴えにおいて提出した証拠(甲9,13ないし16)をもっ
て,本件改善命令に係る報告の期限とされた日を基準とする上記の認定判
断が左右されるものではなく,いずれにせよ,これらの証拠の信用性につ
いては疑義を差し挟む余地が残るというほかはない。)。
ウまた,前記のア②については,本件機構が平成19年度の事業における
問題を直接の原因として本件返還請求をするに際して「不正と認められた
事項」として挙げた理由の一つとされる事由に係る原告及びその設置した
第三者委員会の調査及び検討の内容が前記のイにおいて前記のア①につい
て述べたような不十分なものであったにもかかわらず,第三者委員会の作
成した報告書(乙11)においては,主に平成20年度の事業の調査等の
結果として,配分金の交付の申請書と事業の完了報告書との間にそごがあ
り,この点についてGが本件機構に虚偽の説明をしたとしながら,「機構
が推測しているような学校やポンプ室等の建築工事が全く架空であるとは
到底考えられない。こうした事情を考慮すれば,Cとしては国際ボランテ
ィア貯金配分金の返還義務はないと考えていることは,必ずしも不当とは
いえないと第三者委員会も考える。」とされており,原告が被告に提出し
た報告書(乙10)においても,本件返還請求でかけられている「偽造に
より当初から計画的に配分金詐取を企図していた」とされる疑いについて
「汚名をはらすべく全力で解決に向け取り組んでいます」と述べられてい
るのみで,本件返還請求について「解決までの期限,方法などを明らかに
し,速やかに対応すること」に係る具体的な記述は存在しなかったもので
ある。以上のような各報告書(乙10,11)の内容に照らし,これらを
もって,本件改善命令において原告が提出を命じられた本件返還請求につ
いて「解決までの期限,方法などを明らかにし,速やかに対応すること」
を明らかにした報告書に当たるとは認め難いというほかはない。
エ加えて,前記のア③については,原告が提出した報告書(乙10)は,
その提出の前日に原告の臨時総会において可決されたとされる改善計画
(いずれの項目も開始時期は上記の報告書の提出の翌月である平成23年
6月とされている。)を掲げるにとどまっていたものである(なお,上記
の報告書が改善計画を掲げるのみのものであることは,原告が本件聴聞の
期日において提出した「改善計画実施報告書」(乙14)にも記載され,
同期日に出頭した原告の理事長もこれを認める陳述をしていたものである
(乙13)。)。
オこれらの事情からすると,原告については,その余の点について論ずる
までもなく,本件改善命令に従わなかったものと認めるのが相当であり,
本件に関しては,法43条1項にいう法42条の「命令に違反した場合」
に該当するというべきものである。
原告は,①本件業務等報告命令及び本件改善命令に誠実に対応した,②
従前はBが全て原告の書類を作成していたものである上,Bが必要書類を
全て持ち出して音信不通となってしまったために対応が困難であった,③
被告がそごと主張する事実は,原告が過去の問題について包み隠さず正直
に報告した結果生じた食い違いであって過去の事実を訂正するものであ
り,原告が過去の教訓等から事業を改善,是正したことや本件処分当時に
は正常な運営がされていたことを示すものである,④原告が本件機構に不
実の報告をしたとはいえないなどの旨をそれぞれ主張するが,いずれもそ
のような事情を認めるに足りる証拠がないものであるか又は客観的にみて
前記イないしオの認定判断を左右するものとはいい難いものというべきで
あって,全て採用することができない。
(2)なお,原告は,本件改善命令についてその取消しの訴えを提起していない
ところ,本件において原告がその違法をいうところ(行政手続法に違反する
とする点及び調査の方法に瑕疵があるとする点を含む。)については,本件
改善命令は無効であるとして,原告においてそれに違反したとはいい難いと
する趣旨のものと解する余地がないではないが,上記の(1)に述べたところ
を踏まえると,本件全証拠によっても,本件改善命令に重大かつ明白な瑕疵
があるとは認められず,それが無効であるとはいい難い。
3他の方法により監督の目的を達することができないとき(前記1の①(b))
に該当するか否かについて
(1)本件改善命令に応ずるものとして原告が同命令により改善結果の報告の期
限とされた平成23年5月22日において改善計画を示すことしかできなか
ったことは,前記2(1)において述べたとおりであるところ,その約2か月
弱後である同年6月29日の本件聴聞の期日において原告が提出した「改善
計画実施報告書」(乙14)においても,上記の改善計画中でいずれも開始
時期が同月とされていた「すぐできること」の項目について,「職員で定款
の見直しを行い理念等再確認した」,「会員に発行しているCNEWSを一
方向でなく相方向にし都内で行われたバングラデッシュのお祭りの参加を呼
びかけた」,「現地の隣の地域で活動しているNGO団体(H)と情報交換
した」,「日本国内にいるバングラデッシュ出身者を正会員に迎え理事及び
理事長を再度選任した」等とされている程度であったほか,本件機構との間
における本件返還請求に係る協議についても,平成22年11月以来の本件
機構との交渉の経過の説明が追加されているのみで,本件改善命令により命
じられた「解決までの期限,方法などを明らかにし,速やかに対応すること」
に応じたものと合理的に認め得る記述は存在せず,以上に述べたところは,
本件聴聞の期日に出頭した原告の理事長等の陳述においても同様である(乙
13)。
そして,原告又はその行う事業については,被告のほかに所管庁があると
認めるに足りる証拠はないことを考慮すると,本件に関して法43条1項に
いう「他の方法により監督の目的を達することができないとき」に該当する
ものと認めた東京都知事の判断は,首肯するに足りるものというべきである。
原告は,①原告に不利な部分も正直に認めて反省して改善の方法を示したほ
か,説明を求められている以上の事項についてもあらかじめ申告するなど,
本件処分に至るまで常に誠実に対応してきた,②本件機構からの配分金を適
正に使用させるために原告に対する監督を強化する方法は他にも存するなど
と主張するが,上記に述べたとおりであっていずれも採用することができな
い。
(2)なお,原告は,被告において行政手続法12条の規定の処分基準として定
められた本件基準のうち法43条1項に係る部分が行政手続法12条に違反
する旨を主張するが,行政庁が同条1項の規定による努力義務に応じたとこ
ろとして処分基準を定める行為と,行政庁が個別の法令の規定に基づき処分
をすることとは,別個の事柄であって,前者の行為の内容のいかんにより個
別の法令の規定に基づいてされた処分が当然に違法と評価されるべきものと
解すべき根拠は格別見当たらず,このことについて,本件において異なった
結論を採るべき事情の存在をうかがわせる証拠ないし事情は見当たらない。
原告の上記の主張は,採用することができない。
4本件処分につき東京都知事の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があった
といえるか否かについて
これまでに述べたように,本件処分については,それがされた当時において,
法43条1項に規定する特定非営利活動法人の設立の認証の取消しをすること
ができる場合に係る前記1の①(a)及び(b)の要件を満たす事情が存在したもの
というべきところ,原告は,前記1の①の場合に関する同項の規定については,
法人としての実態(存在)が全くなく法人格を消滅させても全く支障がない事
案に係る前記1の②の場合におけると同程度の違法性があるときに限って設立
の認証の取消しを許す趣旨のものと解すべきであるとして,本件処分の違法を
いうが,前記1の①の場合と②の場合とは,その前提とする事情を異にするこ
とは明らかというべきであり,原告が同項の規定の解釈における一般論として
主張するところは,にわかには採用し難いものというべきである。
その上で,原告が本件処分につき東京都知事の裁量権の範囲からの逸脱又は
その濫用があったと主張するところについては,前記2及び3に述べたところ
に照らし,本件全証拠によっても,これを認め難いものというべきである。
5本件処分が行政手続法14条1項本文の規定に違反する旨の原告の主張につ
いて
原告は,本件処分をするに当たり示された理由について,本件改善命令のど
の指摘にどのようにどの程度従わなかったのか,また,なぜそのことが「他の
方法により監督の目的を達することができないとき」に該当するといえるのか
について具体的な指摘がないなどとして,本件処分に係る理由の提示(行政手
続法14条1項本文)に不備がある旨主張する。
しかしながら,同項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛
人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はそ
の権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理
性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不
服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解され,同項本文に基づいてどの
程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処
分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表
の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を
総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同
23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)ところ,本
件においては,これまで述べてきたところを踏まえると,本件処分に係る理由
の提示(甲2。前提事実(3)オ)は,同項本文の要求する理由の提示として少
なくとも必要最小限度は満たしているといえ,これらに不備があるものとはい
い難いというべきである。
したがって,原告の主張は採用することができない。
6まとめ
以上に述べたところによれば,本件処分は適法なものというべきである。
第4結論
よって,原告の請求は,理由がないからこれを棄却することとして,主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官福渡裕貴
(別紙)
関係法令等の定め
第1法の定め
1法42条(改善命令)は,所轄庁(特定非営利活動法人の主たる事務所が所
在する都道府県の知事。以下同じ。)は,特定非営利活動法人が法12条1項
2号,3号又は4号に規定する要件を欠くに至ったと認めるときその他法令,
法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反し,又はその運営が著し
く適正を欠くと認めるときは,当該特定非営利活動法人に対し,期限を定め
て,その改善のために必要な措置を採るべきことを命ずることができる旨を定
めている。
2法43条(設立の認証の取消し)1項は,所轄庁は,特定非営利活動法人
が,法42条の命令に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達す
ることができないとき又は3年以上にわたって法29条1項の規定による事業
報告書等,役員名簿又は定款等の提出を行わないときは,当該特定非営利活動
法人の設立の認証を取り消すことができる旨を定めている。
第2行政手続法の定め
1行政手続法12条(処分の基準)1項は,行政庁は,処分基準(同法2条8
号ハ)を定め,かつ,これを公にしておくよう努めなければならない旨を定め
ている。
2行政手続法14条(不利益処分の理由の提示)1項本文は,行政庁は,不利
益処分をする場合には,その名宛人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を
示さなければならない旨を定めている。
第3「東京都における特定非営利活動促進法に基づく改善命令及び設立の認証の
取消し処分に関する適用基準」(平成18年4月14日付け18生都管法第63
号。乙22。以下「本件基準」という。)のうち法43条1項に基づく設立の認
証の取消しをする基準の定め
本件基準のうち「第4設立の認証の取消し処分の要件」は,法人に対して,
法43条の規定に基づき,設立の認証の取消しを行う場合の要件は,次のいずれ
かに該当した場合とする旨を定めている。
1改善命令に違反した場合であって,他の方法により監督の目的を達すること
ができないとき
法42条に基づく改善命令に従わなかった場合又は改善命令の期限内に回答
がなかった場合であって,次のいずれかに該当した場合に適用する。
(1)当該法人の事業等において,ほかに所管庁がないとき
(2)法人が実施した事業に関する個別業法等に基づき,当該事業所管庁が指
導・監督・処分を行うことができない場合又は行ってもその改善が見込まれ
ないとき
(3)法人の役員全員が欠けたとき(死亡若しくは生存していても欠格事由に該
当したとき又は事実上若しくは法律上の原因から職務活動をすることができ
ないとき)
(4)法人の役員全員の所在が不明であるとき
2・3(略)
第4郵便貯金の利子の民間海外援助事業に対する寄附の委託に関する法律(ただ
し,平成17年法律第102号(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等
に関する法律。以下「整備法」という。)による廃止前のもの。以下「旧郵便貯
金利子寄附委託法」という。)の定め
1旧郵便貯金利子寄附委託法4条(寄附金の処理)2項は,整備法による廃止
前の郵便貯金法7条1項1号に規定する通常郵便貯金のうち日本郵政公社(以
下「公社」という。)が定める種類のものについて旧郵便貯金利子寄附委託法
4条1項の規定による控除を行った日以後最初に到来する同項の規定による控
除を行う日の前日までの期間(以下「配分期間」という。)ごとに,同法2条
1項の委託があった通常郵便貯金につき同法4条1項の規定により控除した利
子を合計した金額(同法2条2項の規定により返還した利子を除く。)とその
配分期間に係る同法5条及び6条2項の金額の合計額(以下「寄附金」とい
う。)について,民間海外援助事業の実施に必要な費用に充てるため寄附金の
配分を希望する民間海外援助団体を公募し,その申請を受けた上,同法1条に
規定する同法の目的に適合するよう,当該寄附金を配分すべき団体(以下「配
分団体」という。)及び当該団体ごとの配分すべき額を決定し,その内容を公
表するものとし,この場合において,公社は,当該寄附金の額から,当該寄附
金に係る寄附の委託の勧奨等のため公社において特に要した費用の額並びに当
該寄附金の額(同法5条の規定により寄附金に充てられた額を除く。)の10
0分の1.5に相当する額を限度として寄附金の管理並びに配分に係る寄附金
(以下「配分金」という。)の交付及び配分金の使途の監査のため公社におい
て特に要する費用の額を差し引くことができる旨を定めている。なお,整備法
附則21条1項は,旧郵便貯金利子寄附委託法の廃止に伴う経過措置として,
その主体を公社から独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(以下「本
件機構」という。)に変更しているほかは,上記と同旨の内容を定めている。
2旧郵便貯金利子寄附委託法4条3項は,配分金の使途の適正を確保するため
必要があると認めるときは,配分団体が守らなければならない事項を定めるこ
とができる旨を定めている。なお,整備法附則22条1項は,旧郵便貯金利子
寄附委託法の廃止に伴う経過措置として,その主体を公社から本件機構に変更
しているほかは,上記と同旨の内容を定めている。
3旧郵便貯金利子寄附委託法4条5項は,公社は,配分団体が同条2項の決定
に係る事業の全部又は一部を行わないとき又は同条3項に規定する配分団体が
守らなければならない事項に違反したときは,交付した配分金の全部又は一部
の返還を求めるものとする旨を定めている。なお,整備法附則22条3項は,
旧郵便貯金利子寄附委託法の廃止に伴う経過措置として,その主体を公社から
本件機構に変更しているほかは,上記と同旨の内容を定めている。以上

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