弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小野清一郎、同竹内誠の上告趣意第一点について。
 所論中判例違反をいう点については、所論摘示の東京高等裁判所昭和二八年二月
二一日の判決は、所論のように刑法二三〇条ノ二の規定により事実の真否を判断す
るには、いわゆる「自由な証明」あるいは「証拠の優越」によつてすべきである旨
を判示したものではないから、所論判例違反の主張は、前提を欠き適法な上告理由
にあたらない。
 所論中違憲をいう点については、記録に徴するも、原判決が、本件告訴人らの名
誉の保護を偏重し、被告人らの報道の自由を軽視したものとは認められず、また、
原判決が第一審判示事実について名誉毀損罪の成立を是認したことが、憲法二一条
に違反するといえないことは、当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二四一号同
三一年七月四日大法廷判決・民集一〇巻七号七八五頁)の趣旨に照らし明らかであ
るから、所論違憲の主張は、理由がない。
 所論中その余の点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五
条の上告理由にあたらない。
 同第二点について。
 所論中判例違反をいう点については、原判決は、本件では、刑法二三〇条ノ二の
規定による事実の真実性の証明について、所論のような見解に立つても、なお、被
告人の罪責は免れえないとしているにとどまり、この点に関していかなる法解釈を
すべきかの判断は示していないのであるから、所論判例違反の主張は、前提を欠き
適法な上告理由にあたらない。
 所論中憲法二一条違反の主張が理由のないことは、前述のとおりであり、また、
憲法一四条違反をいう点については、原判決は、所論のように被害者の社会的身分
により名誉の保護を差別すべきであるとしているものではなく、同じ名誉毀損の行
為であつても、社会的身分によりその蒙る被害の程度に差異のあることを指摘して
いるに過ぎないことが判文上明らかであるから、所論違憲の主張は、結局、原判決
を正解しないことに基づくものであつて、適法な上告理由にあたらない。
 所論中その余の点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五
条の上告理由にあたらない。
 弁護人近藤航一郎、同土屋公献の上告趣意について。
 所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、同四〇五条の上告理由にあ
たらない。
 また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和四二年一〇月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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