弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人門真市教育委員会が平成10年4月18日付けで控訴人に対してした
放課後児童健全育成事業への参加申請の拒否処分は,これを取り消す。
3 被控訴人門真市は,控訴人に対し,100万円及びこれに対する平成10年1
0月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は,第一審,二審とも被控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の概要は,2に控訴人の当審における主張を付加するほかは,原判決の
「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引
用する(ただし,原判決7頁7行目の「原告訴訟代理人」の前に「申立代理人であ
る」を加える。)。
2 控訴人の当審における付加主張
(1) 本件参加拒否処分の処分性について
 本件活動は,児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業として実施されている
ものであり,本件参加拒否処分は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。すなわ
ち,本件活動は,平成6年から門真市立速見小学校で開始されたが,その実施要項
(甲35)によると,事業の趣旨の記載は「児童の帰宅後の実態を見ると」で始ま
り,事業の名称が「放課後児童健全育成事業」であったことからして,被控訴人教
育委員会では,本件活動をいわゆる学童保育事業として位置づけていたということ
ができる。そして,被控訴人教育委員会は,児童福祉法の平成9年改正により放課
後児童健全育成事業が法制化されたことに伴い,本件活動の実施要項を改正し,対
象児童として昼間保護者のいない家庭の児童を明記したこと,門真市議会定例会に
おいて,被控訴人教育委員会教育長等が,本件活動につき,昼間保護者のいない家
庭の小学校低学年の児童の健全育成を図る趣旨も含まれている旨を答弁しているこ
となどからしても,本件活動が児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業として
位置づけられるものであることは明らかである。なお,平成10年度において,厚
生省により本件活動が児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業に該当しないと
して,国庫補助の対象とはならなかったが,本件活動が国庫補助の対象としてふさ
わしいか否かの判断に基づくものであり,本件活動が放課後児童健全育成事業とは
異なる内容の事業で
あることを示すものではない。
(2) 本件参加拒否の適法性について
ア 被控訴人教育委員会による本件参加拒否の理由は,「毎日活動時間終了時まで
参加できることを原則とする」との基準に合致しないというものであるが,そもそ
もこの基準は,被控訴人教育委員会が定めた本件要項(甲6)には規定がない。被
控訴人教育委員会の事務担当者が募集要項(甲1)を作成するにあたり,上記基準
を権限なく付加したものと考えられ,その基準自体効力を生じていない。
 また,本件参加希望票(甲2)には,「毎日,活動時間終了時まで参加すること
を原則としておりますが,塾・習いごと・その他の理由で,どうしても午後5時以
前に帰宅しなければならない場合は,右欄に記入してください。」との記載があ
り,早退を認めるような募集の仕方をしておきながら,実際にはそれに反して一切
の例外を認めないという被控訴人教育委員会の取扱いは,運用において権限を濫用
した違法がある。
イ 本件活動につき,児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業と地域の一般児
童の健全育成事業の複合的性格を有すると考えると,同じ放課後児童対策を目的と
しながら,両事業への参加条件に本質的な差異を設けることは,住民が地方自治体
から等しく役務の提供を受ける権利を保障する地方自治法10条2項に違反する不
合理な差別に当たり,憲法14条にも反する。すなわち,被控訴人市においては,
児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業と目的及び対象児童を同じくする少年
健全育成事業(留守家庭児童会)を実施する小学校と,本件活動を実施する小学校
とに分かれており(両方とも実施されていない小学校もある。),同じ小学校で両
事業を並列して実施することはしておらず,本件活動が実施されている小学校区の
児童は別の小学校区の少年健全育成事業(留守家庭児童会)には参加できないもの
とされている。このように,居住する小学校校区の違いにより地方自治体が提供す
る役務を受けることができなくなるのは,合理的な理由がなく,憲法14条,地方
自治法10条2項に違反する。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,控訴人の本件請求のうち,被控訴人教育委員会に対する訴えは,本
件参加拒否処分が抗告訴訟の対象となる行政処分であるということはできず,却下
すべきものであり,被控訴人市に対する請求は理由がなく棄却すべきものと判断す
る。その理由は,次のとおり補正,
付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」に記載
のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正
(1) 原判決29頁4行目の「生活実像」を「生活実態」と改める。
(2) 同35頁8行目の「右差異が」から同頁9行目末尾までを,「平成10年
度の本件活動の国庫補助金の交付については,厚生省において,本件活動が,昼間
保護者のいない家庭の児童のほか,「本事業の主旨に賛同し,参加を希望する児
童」をも対象にしていることから,児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業と
は認められないとして,「実施要綱の不備」を理由に,国庫補助金の交付を認めな
かったこと(甲37,当審における調査嘱託の結果)」と改める。
2 控訴人の当審における付加主張に対する判断
(1) 控訴人は,平成6年に門真市立速見小学校で始まった本件活動につき,い
わゆる学童保育としての位置づけで開始され,児童福祉法の平成9年改正により放
課後児童健全育成事業が法制化されたことに伴い,本件活動が児童福祉法に基づく
放課後児童健全育成事業として位置づけられることになったと主張する。
 そこで,平成6年に速見小学校で開始された本件活動の開始時における実施要項
(甲35)と本件要項(甲6)を比べると,本件活動は,開始当初から,児童の保
護者が昼間家庭にいるかいないかにかかわらず,全学年の児童を対象に,異なった
学年による児童の集団活動を推進することにより,少子化等に伴う友だち同士の触
れ合いや体験的な学習の不足による人間形成への悪影響に対する対策を施すことを
目的としたものであると認められるのに対し,児童福祉法に基づく放課後児童健全
育成事業は,昼間保護者のいない家庭の小学校低学年の児童につき,適切な遊び及
び生活の場を与えて,その健全な育成を図ることを目的とするもの(児童福祉法6
条の2第6項)であり,両者は本質的に異なるというべきである。
 もちろん,本件活動においても,昼間保護者のいない家庭の小学校低学年の児童
については,その児童が保護者以外の成人によって指導・監督されながら,他の児
童と遊び等をして過ごし,健全育成が図られるという意味では,放課後児童健全育
成事業とほぼ同様の効果が生じていることは確かである。しかし,原判決も説示す
るとおり,児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業と本件活動との間に,その
対象,目的,内容において差異
があることからすると,本件活動が児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業に
該当する,あるいはこれを包含すると解することはできない。
 (なお,本件活動について,平成10年度の国庫補助金の交付が受けられなかっ
たのは,上記認定のとおり,厚生省において,児童福祉法に基づく放課後児童健全
育成事業が予定している対象児童と,本件活動の対象児童とが異なるため,本件活
動が児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業とは認められないと判断したため
である。)
(2) 控訴人は,本件活動における「毎日活動時間終了時まで参加できることを
原則とする」との基準につき,被控訴人教育委員会が定めた本件要項(甲6)には
その旨の規定がなく,被控訴人教育委員会の事務担当者が募集要項(甲1)を作成
するにあたり,権限なく付加したものと考えられ,その基準自体効力を生じていな
い旨を主張する。
 確かに,本件要項には,上記の基準は明文では規定されていない。しかし,本件
要項において,活動時間につき,「月曜日~金曜日・授業終了時~午後5時,長期
休業中・午前9時~午後5時」と明記されていること,本件活動は,前記のとお
り,異なった学年による児童の集団活動を推進することにより,少子化等に伴う友
だち同士の触れ合いや体験的な学習の不足による人間形成への悪影響に対する対策
を施すことを目的としたものであり,対象児童は,昼間保護者のいない家庭の児童
のほか,「本事業の主旨に賛同し,参加を希望する児童」とされていることなどか
らすると,「毎日活動時間終了時まで参加できることを原則とする」との基準は,
本件要項が予定しているものということができるのであって,被控訴人教育委員会
の事務担当者が募集要項を作成するにあたり上記基準を権限なく付加したものでは
ない。
 また,控訴人は,本件参加希望票(甲2)に,塾,習いごとその他の理由で午後
5時以前に帰宅しなければならない児童についても例外的に対象となるような記載
をしておきながら,一切の例外を認めないという被控訴人教育委員会の取扱いは,
運用において権限を濫用した違法があると主張する。
 確かに,本件参加希望票には,「毎日,活動時間終了時まで参加することを原則
としておりますが,塾・習いごと・その他の理由で,どうしても午後5時以前に帰
宅しなければならない場合は,右欄に記入してください。」との記載があり,毎日
活動時間終了時ま
で参加できなくとも,本件活動に参加することが認められる場合もあるかのような
記載がされているところ,前記認定のとおり,四宮小学校での本件活動において同
小学校の校庭で実施される門真スポーツクラブ主催のサッカー教室に参加する児童
を除いては,塾通い等のために早退するのに参加が認められた児童は皆無なのであ
るから,上記の記載が適切なものといえるかは問題とする余地があろう。しかし,
毎日活動時間終了時まで参加できる児童を対象とすること自体,一定の合理性を有
することは前記判示のとおりであり,例外を認めないことも被控訴人教育委員会の
裁量権の範囲内であって,募集要項に上記の記載をしたことから早退者にも参加す
ることを認めないと権限の濫用により違法になるとは到底解することができない。
(3) また,控訴人は,居住する小学校区の違いにより,地方自治体が提供する
役務を受けることができなくなるのは,合理的な理由がなく,憲法14条,地方自
治法10条2項に違反する旨を主張する。
 前記認定のとおり,被控訴人市には,同市立の小学校が17校あるが,児童福祉
法に基づく放課後児童健全育成事業と目的及び対象児童を同じくする少年健全育成
事業(留守家庭児童会)を実施するものが7校,本件活動を実施するものが6校,
いずれも実施していないものが4校であり,居住する小学校区とは別の校区の小学
校が実施している事業には参加できないことになっている。この結果,居住する小
学校区の違いにより,これらの事業に参加できたり参加できなかったりすること
は,控訴人が指摘するとおりである。
 しかし,本件活動や少年健全育成事業(留守家庭児童会)を実施するためには,
担当指導員の確保等の受け入れ態勢の整備や財政的手当てが必要であり,全小学校
で同時に一斉に実施できるものではない。また,実施する事業の内容や参加対象者
の基準も,参加希望者数や保護者の要望等を踏まえて,政策的に判断すべき事項で
あり(被控訴人市においては平成6年から本件活動を実施する小学校の数が漸増し
ていることは,前述のとおりである。),居住する小学校区によって,実施する事
業により参加の基準等が異なることもやむを得ないということができる。したがっ
て,本件において,控訴人の児童が本件活動に参加できないことにつき,差別的な
取扱いがされているわけではなく,憲法14条や地方自治法10条2項に違反する
もので
はない。
3 控訴人の原審及び当審における主張に照らして,改めて本件全証拠を検討して
も,上記認定,判断を左右するに足りる証拠は認められない。
第4 結論
 以上のとおり,原判決は正当であって,本件控訴はすべて理由がないからこれを
棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官 太田幸夫
裁判官 川谷道郎
裁判官 大島眞一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛