弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人の本件控及び検察官の本件控訴中強盗(公訴事実第二)に関する
部分はいずれもこれを棄却する。
     原判決中強盗(公訴事実第二)の点について無罪を言渡した部分を除く
その余の部分を破棄する。 被告人を懲役五年に処する。
     原審における未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入する
     原審及び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、記録に綴つてある被告人本人及び弁護人市原庄八作成名義
の各控訴趣意書並びに高知地方検察庁検察官検事斎藤正雄作成名義の控訴趣意書に
記載のとおりであり、右検察官の控訴趣意に対する被告人の答弁は、被告人本人作
成名義の昭和四〇年一一月二六日付上申書記載のとおりであるから、ここにこれを
引用する。
 弁護人の控訴趣意第一点及び被告人の控訴趣意について。
 所論は、縷々述べているが要するに、原判示第一の事実誤認を主張し、被告人
は、原判示のAを強姦する意思もなく、また、同女を強姦しようとした事実もない
のにかかわらず、原判決が同女に対する強姦致傷の事実を認定したのは事実誤認で
あるというのである。
 よつて、所論に鑑み、記録を精査し、原判決挙示の関係各証拠及び当審における
事実取調の結果を総合すると、被告人は、原判示の昭和三九年一二月二日午後一〇
時頃、高知市ab丁目附近において、いわゆる白タク営業をしているのにかかわら
ず、被告人から話しかけて、一面識もない年若い女性(当時二三歳)であるAを無
料で自己の運転する乗用自動車の助手席に乗車させ、国道三三号線を国鉄土讃線伊
野駅の方に向つて西進したのであるが、同駅前附近で同女が停車してくれというの
に取り合わず、同線日下駅附近でも同女が停車するよう懇請したのにかかわらず、
そのまま西進を続け、原判示のB隧道を通過直後には急に進路を変えて旧国道に入
り、夜間人通りのない淋しい右隧道西入口上方の旧国道上まで自動車を運転して同
女を連行したものであること、右旧国道をそのまま進行すれば再び右隧道の遥か東
方で右国道三三号線に出会うのであつて、被告人らの進行していたc町方向とは全
く逆の方向に向つて自動車を乗り入れていること、同所において自動車を停車した
後、車内で矢庭に、左手を同女の首に巻きつけ同女の身体を引寄せるようにしたう
え、両手で同女の首を締めつけたり、同女の口を塞いだりし、同女が声を出すと、
「声を出しても誰もおらん」といい、隙を見て転び落ちるようにして車外に逃れ出
た同女に迫り、再び首を締めつけ、「声を出しても人は来んぞ、言うことを聞け」
と申し向けて暴行脅迫を加えていること、被告人は検察官から取調を受けた際Aを
強姦する意思であつた旨自白していること、がそれぞれ認められるのであつて、右
各事実に徴すると、被告人は同女を強いて姦淫する目的で原判示の所為に及んだと
認めるのが相当である。
 さらに、論旨は、被告人の検察官に対する供述調書は、被告人が司法警察員から
精神的圧迫を加えられ供述を強要せられた結果作成せられた供述調書に基づき作成
されたものであつて、事実に反する供述が記載せられているから証拠として採用す
ることはできないものであるというのであるが、しかし、被告人の検察官に対する
昭和四〇年三月四日付供述調書によると、司法警察員の面前でなした供述を訂正し
て検察官に供述している部分も存することが窺われるから、被告人の検察官に対す
る各供述調書が、すべて被告人の司法警察員に対する供述調書に基づいて作成され
たという事実は到底これを認めることはできない。なお、被告人が任意性がないと
縷々主張する被告人の司法警察員に対する供述調書は、原審において証拠調すら行
なわれていないのである。
 これを要するに、原判決挙示の関係各証拠を綜合すると、原判示第一事実は優に
肯認できるのであつて、この点に関する限り原判決には毫も事実誤認の違法はな
い。論旨は理由がない。
 検察官の控訴趣意第一点の一(起訴状第二の公訴事実)について。
 所論は、原判決が、起訴状記載の第二の強盗の公訴事実について、無罪の言渡を
したのは、証拠の価値判断を誤り、ひいて事実を誤認した結果であるというのであ
る。
 原判決が、所論の強盗の公訴事実について、被告人が、被害者Aから同女所携の
紙袋を取り上げた際、被告人には右紙袋に対する不法領得の意思がなかつたとし
て、無罪の言渡をしたことは所論のとおりである。
 まず、論旨は、被告人は、Aより紙袋を奪取したとき、これを同女に返還するつ
もりはなかつたというのである。よつて、記録を精査し、当審における事実取調の
結果をも斟酌して検討するに、被告人が原判示第一の犯行現場で佇立していたAか
ら同女所携の紙袋(現金二、五〇〇円位在中の墓口外約五点在中)をひつたくるよ
うにして取上げたことが認められるのであるが、しかし、被告人は、原判決が第一
事実として説示するように、同女に対して暴行脅迫を加えて強姦しようとしたが、
同女の強い抵抗にあつて姦淫することを断念し、同女に対し、「送つてやる」とい
つたが、同女が直ちに乗車することをためらい、「車の方向を変えてくれれば乗
る」と申し出たため、被告人が自動車の方向転換をする間に同女をして被告人の傍
から立去らしめないで方向転換が終れば直ちに再び乗車させるため、同女の手にし
ていた紙袋をひつたくるようにして取上げ、これを自動車の座席に置いたうえ、同
女を路傍に佇立させたまま、被告人のみ自動車に乗り込み、その方向転換をしたこ
とが認められるのであつて、右各事実に徴すると、被告人が同女から紙袋を取上げ
たのは、同女を再び自動車に乗せるためであつて、同女から紙袋を奪取してこれを
自己の物として領得する意思ではなかつたと認めるのが相当である。この点につい
て、論旨は、被告人は、たとえ同女が乗車するといつたとしても、それが真意に出
たものではないことを十分察知し得た筈であり、また、察知していたものと認める
べきであるというのであるが、しかし、同女自身、再び被告人の自動車に乗車する
ことは恐ろしいし、さりとて、深夜人里離れた山中で一人取り残されても不安であ
るので、乗車しようかどうしようかとためらいつつ路傍に佇んで被告人が方向転換
するのを見ていたのであるし、被告人としても、再び同女が乗車する意思がないこ
とを察知しており、乗車させる意思もなかつたとするならば、わざわざ方向転換を
する必要はなく、そのまま旧道を東進すれば新道である国道三三号線に出て高知市
に帰れる筈であるのにかかわらず、同女の面前で方向転換をしたのは、同女の真意
はともかくとして、被告人としては、再び同女を乗車せしめる意思であり、乗車す
れば前記紙袋を同女に返還する意思であつたと認めるのが相当である。
 さらに、論旨は、被害者Aが乗車すれば前記紙袋を返還するつもりであつたとす
れば、被告人としては、たまたまCの運転するタクシーが現場に来合せたにしろ、
現場を発車するに際し、直ちに紙袋を車外に投げる等返還の措置をとる筈であるの
に、これらの措置を全く講じていないし、その後右紙袋が同女に返還されていない
のであるから、尠なくとも、同女の乗車しないことが判明した後発車する際には、
被告人は右紙袋に対する不法領得の意思を有したと認めるのが相当であるというの
である。よつて、記録を精査し、当審における事実取調の結果をも参酌して検討す
るに、被告人が自己の操縦する自動車の方向転換をしているとき、東方から運転手
Cの運転するタクシーが現場に差しかかり、被告人が方向転換のため道を塞いでい
たので停車したのであるが、被告人が方向転換を終つた頃旧国道の西側空地に立つ
ていた被害者Aが右タクシーに駈け寄つて救助を求めたため、被告人は、前記紙袋
を自己の自動車内に置いたまま現場から西方へ逃走したことが認められるのであ
る。しかし、被告人が、同女の紙袋を取上げたのは前記のような事情によるのであ
り、被告人が現場から走り去つたのは、自己の自動車に再び乗車させようとしてい
た同女がCの運転するタクシーの傍に赴き救助を求めたので、強姦未遂の事実で逮
捕されることを虞れるの余り、慌てて自動車を発進させたことが窺われるから、そ
の際、右紙袋を現場に投げ棄てる等の措置をとる余裕がなかつたということも必ず
しも首肯できないことではないし、さらに、被告人は、逃走中、警察官から職務質
問を受けた際、女の持物があると不審に思われることを虞れて、高知県高岡郡c町
de番地のD医院前附近路上に右紙袋を投棄したと供述していることが認められる
のであつて、右各事実に徴すると、被告人が現場から逃げ去るに際しては、従前と
は異なり、右紙袋に対する不法領得の意思が生じていたというのは早計であるとい
うべく、その他記録を精査し、当審における事実取調の結果に照しても、被告人が
前記現場から自動車を発進する際、前記紙袋について不法領得の意思を有したとの
事実を認めるに足る資料はない。
 また、論旨は、本件の暴行、脅迫は、その直前における被告人の強姦行為の際の
暴行、脅迫が継統したものであるが、かりに、その暴行が一応終了していたとして
も、これに基づき被害者Aが反抗を抑圧せられている状態を利用して前期紙袋を奪
取したものである、というのである。よつて、按ずるに、およそ、窃盗及び強盗罪
等の如き盗罪の成立するためには、犯人にその財物に対する不法領得の意思が存す
ることが必要とされるところ、被告人に本件紙袋に対する不法領得の意思の認めら
れないこと前記説示のとおりであり、また、原判決も不法領得の意思のなかつたこ
とを理由として、本件強盗罪の成立を否定したのであるから、被告人が本件紙袋を
奪い取つた行為の態様がいかなるものであろうとも、本件を強盗罪と認定すること
はできない筋合であるというべく、論旨は採用の限りでない。
 以上説示のとおりであつて、原判決が起訴状記載第二の強盗の公訴事実について
は、被告人に不法領得の意思を認めるに足る証拠がないとして、犯罪の証明がない
と判断したのは正当であつて、原判決には証拠の価値判断を誤つた違法もなく、事
実を誤認した廉もないというべきである。論旨は理由がない。
 同二(起訴状第三の公訴事実)について。
 所論は、原判決が、被告人の本件所為は、被害者Eに対する強姦の準備行為には
該当しても、未だ強姦罪の実行行為に着手したとは認められないとして、無罪であ
ると判断したのは事実誤認であるというのである。
 よつて、記録を精査し、当審における事実取調の結果をも勘酌して検討するに、
原審第一回公判調書中の被告人の供述記載、司法警察員作成の昭和四〇年二月二三
日付及び同年同月二四日付各実況見分調書、原審証人E同F同Gの各供述記載、当
審における昭和四一年四月一五日付検証調書、当審証人Eの尋問調書を綜合する
と、被告人は、昭和四〇年二月八日午後九時一五分頃いわゆる白タク営業をなすた
め、被告人所有の普通乗用車を運転して高知市中須賀交差点附近にさしかかつたの
であるが、同所において客として高知市i所在HI工場工員E(当二〇年)を後部
座席に乗車させたこと、同女は行先をHI工場と指示したのであるにかかわらず、
被告人は、同工揚の所在地を知つていたのに、同工場へ行くのには通常通らない道
順、すなわち、勧進橋、国鉄土讃線福井踏切及びバス停留所福井を経て本件現場で
ある同市f町j通称kまで自動車を操縦して同女を連行していること(前記検証調
書添付の第一見取図参照)、被告人の操縦する自動車が前記バス停留所福井附近で
右折しないで直進したとき、同女が、「私この道初めてやけど」というのに、被告
人は「こつちからでも行ける」といつてそのまま進行し、本件現場の手前五〇米位
の地点で同女が「道が違うから元の所へ引返して下さい」というのに、道路東側に
ある前記kの草原の空地(J方から西南方約二八米位の地点)に自動車を乗り入れ
て停車したのであるが、当時雨が降つており、時間は既に午後九時半近くになつて
いたこと、同所は、山間の淋しい場所で、附近に人家は尠なく、同所から東北方約
二八米の地点にある前記J方が最も近くにある人家で、南方にあるK方及び東南方
にあるF方はいずれも約一〇〇米位距たつており、他には人家がなかつたこと、被
告人が自動車を運転して来た道路は幅員約三・五米位の狭い田舎道であつたし夜間
であつたため殆ど人車の往来もなかつたこと、被告人は、自動車が故障したわけで
もないのに「車がエンコした」といつて下車し運転席のドアを閉め、停車した位置
が前部がやや高くなるような傾斜地であつたため、各後車輪に石で歯止めをし、自
動車の右前方から自動車に近寄り後部座席の右側のドアを開いてEのいる座席に乗
りこもうとしたこと、その際、既に貞操に対する危険を感じていた同女は、咄磋に
被告人の開いた乗車口から飛び出して、被告人の傍をくぐり抜けるようにして現場
を逃れて、前記F方に救いを求めたものであることがそれぞれ認められるのみなら
ず、前記に認定したように、被告人は、昭和三九年一二月二日夜にはAを自己の運
転する自動車に乗車させて強姦しようとしたことがあり、検察事務官作成にかかる
被告人の前科調書によると、被告人は、昭和二六年八月二三日及び昭和三二年一一
月一日の二回に亘り、高知地方裁判所において強姦致傷、強姦、強姦未遂罪等によ
り各懲役五年に処せられたことがあること並びに被告人の検察官に対する昭和四〇
年三月四日付供述調書によると、被告人は、Aを強姦しようとした事件について取
調を受けた際ではあるが、検察官に対し、「私がどうして女の人に対して乱暴をす
るのか、その気持は、女の人を口説いて関係したり口説きおおせんときは暴力を振
つても関係することに興味を持つています。同じ様な罪で二回も刑を受けておりま
すので、また、このようなことがばれると相当重い罪になることは十分判つておつ
たのですが、それでもなおやめることができなかつたのです。乱暴することを一途
に思いこみ外のことを考える余地がなかつたのです」と供述していることが認めら
れるのである。右に認定した各事実に徴すると、前記kまでEを連行する必要等の
特段の事情の認められない本件においては、被告人は、同女を乗車させてから間も
なく同女を強いて姦淫する意思を生じたと認めるのが相当である。被告人は、被告
人が進行した道順について、当審の検証期日において、前記認定の道順とは異なる
旨供述しているのであるが(前記検証調書添付の第一見取図参照)、右供述は証人
Eの供述に照してにわかに信用できなく、また、被告人は、原審第一回及び第五回
各公判期日において、「女を車に乗せたととは事実であるが、福井の方へ行つたの
は、私はその日の前二日間徹夜して麻雀をしたため眠くて道を間違えたのであり、
引返す途中で車を落し、動かなくなり、恰度雨が降つていたのに女が傘を持つてい
なかつたので、私のレインコートを貸そうと思い女のところへ行つたら女が逃げた
のであつて、強姦するつもりはなかつた」旨供述していることが認められるが、右
供述記載は、前記認定の運転経路及び被告人の職業歴並びに当審証人Eの尋問調書
に照して到底措信することはできない。なお、原審及び当審における証人Lの各供
述記載によると、本件当夜被告人の運転していた自動車の後輪が現場附近の道路西
側の竹藪に落下していた事実が認められ、被告人はEを乗車させていたときに後輪
が道端に落ちた旨供述するのであるが、しかし、当審証人Eの右尋問調書による
と、右のような事実は全く認められないのであつて、右は、被告人が、同女が下車
して前記F方に救いを求めた後、自己の自動車の方向転換をしていた際、後輪を道
路外に脱落させたことが窺われるから、右事実があるからといつて、前記認定を妨
げるものではない。
 元来、犯罪の実行の着手の概念については、学説上主観説及び客観説の対立があ
り、或は、犯意の成立がその遂行的行為によつて確定的に識別せられるときここに
着手があるとか(主観説)、或は、犯罪構成要件の一部を行ない又はこれに近接す
る行為をなすことであるとか、或は、経験上犯罪に一般な行為を開始したときであ
るとか、又は、犯罪の危険が現出したときであるとか(以上客観説)、その説くと
ころは区々に別れているところ、判例は古くから客観的立場に立つものであること
は周知のとおりであるが、そのいずれの立場をとるにしても、各具体的事件に即し
て、着手と予備との区別が明瞭を欠く場合の存することは否定し得ないのである
が、結局、各個の具体的事件について、当該行為が、外部から観察して、結果発生
の危険がある客観的状態に達したか否かによつて決すべきであると解するを相当と
する。
 <要旨>さて、本件についてこれをみるに、前記認定の各事実、ことに、被告人が
自動車を停車した地点が附近に人家の尠ない山間であり、道路の往来は殆ど
なく、時間は既に午後九時半近くであり、当時小雨が降つていたのみならず、被害
者Eは狭い自動車内に監禁された状態にあつたのであり、引返してくれと懇請する
同女の言には耳をかさないで、被告人は、自動車の両後輪に歯止めをしたうえ、無
言で自動車後部の右側ドアを開いて右座席の中央部に腰かけている同女に近づくた
め乗車しようとしたのであつて、この行為により同女は強度の畏怖状態に陥つてい
たことに徴すると、被告人の右行為は同女を強いて姦淫するための無言の威圧行為
であり、ひいては、強姦の手段である暴行もしくは脅迫行為に極めて近接した行為
であり、右行為によつて、同女に対する強姦の危険が外部から客観的に優に観察し
得る状態に達したというべく、したがつて、被告人の前記所為は、強姦の予備行為
をもつて目するのは失当であつて、強姦の着手行為であると認めるのが相当であ
る。
 然るに、原判決が、被告人にEに対する強姦の意思のあつたことを認定しなが
ら、前記程度の行為では未だ強姦罪の実行の着手があつたとすることはできないと
してこれに対し無罪を言渡したのは、法令の解釈適用を誤つた違法があるものとい
うべく、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄を
免れない。論旨は理由がある。
 よつて、被告人の本件控訴及び検察官の本件控訴中強盗(公訴事実第二)に関す
る部分はいずれも理由がないから、刑訴三九六条によりこれを棄却すべく、弁護人
及び検察官の控訴趣意各第二点(いずれも量刑不当)についての判断を省略し、本
件公訴にかかる各犯罪は併合罪であるから、刑訴三九七条一項三八〇条により原判
決中強盗(公訴事実第二)の点について無罪を言渡した部分を除くその余の部分を
破棄し、同法四〇〇条但書に従い当裁判所において直ちに判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、
 第一、 原判示第一事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
 第二、 原判示第二事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
 第三、 昭和四〇年二月八日午後九時一五分頃、いわゆる白タクの営業をなすた
め普通乗用車を運転中、高知市中須賀交差点附近において、E(当二〇才)が客と
して乗車したことを奇貨として、同女を強いて姦淫しようと企て、同女が行先を同
市i所在HI工場と指示したのにかかわらず、同女の意思に反し、右行先と異なる
同市f町j通称k方面に向け、同市ah丁目を約三〇〇米東進した附近で左折し、
同所より勧進橋(同市井口町六番地先)を渡り、こちらからでも前記工場に行ける
などと虚言を弄して、国鉄土讃線福井踏切(同市山手町大字石井)及びバス停留所
福井を経て前記kに達し、同女の引返して欲しいとの懇請をしりぞけて、道路東側
の空地(同市fg番地の二F方から西北方約一〇〇米の地点)に自動車を乗り入れ
て停車し、自動車が故障したと虚構の理由をつけて下車し運転席のドアを閉め、停
車した位置が前部がやや高くなるような傾斜地であつたため、各後車輪に石で歯止
めをし、自動車の右前方から自動車に近寄り後部座席の右側のドアを開いて後部座
席にいた同女の身辺に迫ろらとしたが、既に貞操に対する危険を感じていた同女が
咄唾に被告人の開いた乗車口から被告人の傍をくぐり抜けるようにして飛び出して
車外に逃れ、前記F方に救援を求めたため、強姦の目的を遂げなかつたものであ
る。
 (証拠の標目)
 判示第一の事実につき
 一、 原判決の挙示する関係各証拠
 一、 当審における昭和四一年四月一六日付検証調書
 一、 当審証人A及び同Cの各尋問調書
 判示第二の事実につき
 一、 原判決の挙示する関係各証拠
 判示第三の事実につき
 一、 原審第一回公判調書中の被告人の供述記載
 一、 司法警察員作成にかかる昭和四〇年二月二三日付及び同年同月二四日付各
実況見分調書
 一、 原審証人E、同F及び同Gの各供述記載
 一、 当審における昭和四一年四月一五日付検証調書
 一、 当審証人Eの尋問調書
 (累犯加重の原因となる前科)
 原判決が累犯前科の項において認定したとおりであるから、ここにこれを引用す
る。
 (法令の適用)
 罰   条
 判示第一の強姦致傷の点について
 刑法一八一条(一七七条前段、一七九条)(所定刑中有期懲役刑を選択する)
 判示第二の道路運送法違反の点について
 道路運送法一二八条の三の二号、一〇一条一項、罰金等臨時措置法二条一項(所
定刑中懲役刑を選択する)
 判示第三の強姦未遂の点について
 刑法一七七条前段一七九条
 再犯加重
 法五六条一項五七条(但し、判示第一の強姦致傷及び判示第三の強姦未遂の各罪
についてはいずれも刑法一四条の制限に従う)
 併合罪加重
 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重い判示第一の強姦致傷罪の刑に刑
法一四条の制限に従つて法定の加重をする)
 原審の未決勾留日数の算入
 刑法二一条
 原審及び当審における訴訟費用の負担
 刑訴一八一条一項本文
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 加藤謙二 裁判官 木原繁季 裁判官 越智伝)

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