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裁判例


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主文
1一審原告らの控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却
する。
2一審原告らの控訴にかかる控訴費用は一審原告らの,
一審被告の控訴にかかる控訴費用は一審被告の,各負担
とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1一審原告ら
(1)原判決を以下のとおり変更する。
(2)一審被告は,Aに対し,4億4728万5000円及びこれに対す
る平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支
払を求める請求をせよ。
(3)一審被告は,Bに対し,6775万円及びこれに対する平成17年
4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請
求をせよ。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。
2一審被告
(1)原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
(2)一審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも一審原告らの負担とする。
第2事案の概要
事案の概要は,以下に付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」
「」,。の第2事案の概要の項に摘示のとおりであるからこれを引用する
なお,略称については,原判決の例による。
1原判決14頁15行目の「人事課が」の次に「人事配置案と照合する
などして,任用の必要性等を」を加え,同16頁4行目の「いうべきで
ある」を「のであって,それ以上に調査の端緒(具体的な行為につい。
て不正の疑いを抱くこと)までをも必要としないというべきである」。
と改め,同5行目の「給与条例及び本件内規は」の次に「茨木市例規,
集に登載されて」を加え,同6行目の「平成13年10月」を「平成,
14年1月4日」と改める。
2原判決18頁20行目の「知り得るものであるところ」の次に「住,
民は,通常,予算説明書や決算説明書等,地方公共団体から提供される
財務会計行為にかかる情報のすべてを目を皿のようにして読むだけの余
裕をもっているとは考えられないし」を加える。,
3原判決21頁6行目の末尾に「上記のような職員は,主に正規職員の
代替職員としての目的によるものであって,業務形態は基本的に常勤の
正規職員と全く同一であり,その大半は,週5日勤務のものである」。
を加える。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,原判決と同様,一審原告らの本件訴えのうち,平成7年度
から平成15年度までの本件一時金の支給に係る訴えは,適法な監査請求
を経ていないから不適法であって却下すべきであり,平成16年度の本件
一時金の支給に係る請求は理由があると判断する。その理由は,以下に付
,「」「」加訂正するほかは原判決の事実及び理由の第3当裁判所の判断
の項に説示のとおりであるから,これを引用する。
1原判決33頁16行目の旧給与条例36条のから同18行目の規「」「
定に基づく」までを「全体を通してみれば予算措置とこれに基づく」と
改め,同末行の「乙18」の次に「乙29ないし31」を加え,同,,
34頁17行目の「平成13年」から同18行目の「掲載されているこ
と」までを「平成13年10月に例規集が廃止された後は,平成14年
,」1月から同市のウェブサイトに掲載されて一般に公開されていること
と改める。
2原判決35頁11行目の「乙1,18」を「乙1,乙5の1・2,乙
18」と,同19行目の「この3年間で」から同21行目の「支給して
いる」までを「この3年間で正規職員には勤勉手当0.55か月の削減
があったが,正規職員の勤勉手当に見合う臨時的任用職員の増給分,6
月期で4万円,12月期で4万5000円については,臨時的任用職員
の勤務条件を勘案して削減していない」と,それぞれ改め,同36頁1
8行目の「一定の判断」の次に「給与条例主義はもちろんのこととし(
て,地方自治法上非常勤職員に対しては勤務日数に応じた報酬しか支給
できず,条例によっても期末手当を支給できないこと,茨木市において
は臨時雇として日給制の職員が多数存在すること,旧給与条例に臨時的
任用職員の日給制の賃金・報酬に関する規定が存在しないこと,臨時的
任用職員については本件内規が存在すること本件内規には期末手当増,〔
給分〕に関する規定がないこと,の各事実を了知し,その比較対照によ
り,臨時的任用職員の賃金については条例上の根拠がないこと,特に増
給分については何らの根拠規定が存在しないことを知ることができ
る」を加え,同37頁4行目の次に,改行の上,以下のとおり加え。)
る。
「一審原告らは,本件一時金の支給は,茨木市の内部職員であれば容
易に知り得るが,一般市民はこれを知り得ることにはならない,本件
一時金支出の適法性について合理的な疑いを抱かせるような事情もな
いのに,予算要求基準等の関係書類を精査して読むことは期待できな
いなどと主張するが,上記のとおり,本件一時金の支給の事実及び関
係法令等が容易に知り得る状態にある以上,相当の注意をもってすれ
ば,本件一時金の支給の適法性についての調査をすることができたと
いえ,住民の具体的な知不知は,これを問うところではないというべ
きであるから,一審原告らの主張を採用することはできない」。
3原判決51頁13行目の「その」の前に「勤労すべき時間の大半を公
務に従事するという」を,同16行目の「その」の前に「勤労すべき時
間の一部において公務に従事するのみで,生計を支える収入をもっぱら
公務から得ることを予定していないという」を,それぞれ加え,同22
行目末尾の「そ」から同52頁5行目の末尾までを「そして,地方自治
法等の法令が定める常勤の職員と非常勤の職員に関する他の関係規定に
もかんがみると,地方自治法204条1項にいう常勤の職員と同法20
3条1項にいう非常勤の職員の意義については,まずもって常勤・非常
勤という言葉の通常の意味に従い,これと同法が上記のとおり異なる給
与体系を定めた趣旨をも勘案して理解するのが相当というべきである。
そうであるとすれば,地方自治法204条1項にいう常勤の職員とは,
その勤労すべき時間の大半を公務に従事する者をいい,同法203条1
項にいう非常勤の職員とは,勤労すべき時間の一部において公務に従事
する者をいうと解することが相当である」と改める。。
4原判決53頁25行目の「主張するが」を「主張し,確かに茨木市に
おいては,臨時的任用職員に対する賃金を日給で定め,勤務日数に応じ
て支給するものとして,地方自治法203条2項本文の適用される同条
1項の非常勤職員と扱っているようにも思われるが」と改め,同54頁
3行目の「対比しても」の次に「臨時的任用により常勤職員を採用す,
ることは地方自治法の許容するところというべきであるから」を加え,
る。
5原判決54頁16行目の「3日の者は」の次に「その1日の勤務時,
間を7時間45分と仮定しても」を,同17行目の「すぎないことに,
なる」の次に「上記基準は勤務日数のみを基準としており,1日あた(
りの勤務時間を基準としていないから,週3日以上勤務するパートタイ
〔,,ム職員甲5の1ないし4によればパート作業員・パート保育士など
パートタイム職員も相当数存在すると認められる〕も上記基準に該当。
する可能性があるところ,そうであれば,その勤務時間はさらに短くな
る」を,同18行目の「係る勤務が」の次に「常勤という言葉の通。)
常の意味にあてはまらないことはもとより,当該勤務が」を,同56頁
5行目の「前記のとおり」の次に「常勤・非常勤の言葉の通常の意味,
からしても,上記基準に従って職務を分けた場合の給与の性質からして
も」を,それぞれ加える。,
6原判決57頁3行目の「明らかである」の次に「規則と区別して内(
規という場合には,行政機関内部の規程であって,法規としての性格を
有しない内部規程に止まるものをいうと理解すべきである。現に,茨木
市においても,職員証明書読取機出勤簿管理内規は訓令とされてい
る」を加え,同18行目の「旧給与条例36条」から同行の「制定。)
されないまま」までを「これを規定した条例は存在せず(旧給与条例3
6条が臨時的任用職員の給与について規則に委任したと解することがで
,)」。きるとしてもその委任に基づく規則が制定されないままと改める
,。7原判決61頁7行目から同65頁8行目までを以下のとおり改める
「しかしながら,臨時的任用職員のうち,常勤の職員については,地
方自治法204条3項,地方公務員法22条7項,24条6項等の規
定により,法制度上,一般職に属する正規職員と同等の扱いをするこ
とが定められているから,一審被告の上記主張を採用することはでき
ない。
確かに,一審被告が主張するように,臨時的任用職員は,常勤の職
に就いている者であっても,終身雇用を前提とする正規職員とは異な
って雇用期間が限定されていることや,茨木市の人的体制において,
正規職員の補助的な業務に従事したり,正規職員の残業や定員の増加
に代えて,繁忙な職に従事するという位置づけがなされていることか
らすると,正規職員と常勤の職にある臨時的任用職員との間には,大
きな差異があるといわなければならないが,地方自治法及び地方公務
員法は,そのような差異があることを理由に,両者の給与や手当を条
例で定めるにつき,異なった取扱いを許容していると理解される規定
はなく,臨時的任用職員に限って,条例では期末手当の支給根拠のみ
を定め,支給要件や金額のすべてを規則に委任することが許されてい
ると解することはできない。
一審被告は,昭和36年5月5日自治丁公発第47号高知県総務部
『』()長あて公務員課長回答臨時職員の給与の取扱いについて乙22
を引用して,行政実例において,臨時的任用職員については,条例中
に特別の定めをすることが許容されていると主張するが,同回答は,
前記の給与条例主義に関する行政実例に例外を認める趣旨のものとは
考えられず,その要点は,臨時的任用職員に係る特別の定めを条例そ
のものの中に規定することを求めていると理解されるものである。し
たがって,一審被告の引用する上記実例によって,常勤の臨時的任用
職員につき,条例においては期末手当の支給根拠を定めれば足りると
いう解釈をすることはできないというべきである。
また,臨時的任用職員のうち非常勤の職員(既に説示したとおり,
茨木市の臨時的任用職員には週3日以上勤務していても常勤とは認め
られない職員が存在している)については,条例をもってしても期。
末手当を支給できないから,これらについては,給与条例の附則の規
定をもってしても,本件一時金の支給が適法となるものではない」。
8原判決66頁17行目の「対価は」の次に「常勤の職員も非常勤の,
職員も含めて」を,同22行目の「含まれていたとしても」の次に,,
「本件一時金自体は臨時的任用職員の勤務と量的な対応関係がなく,勤
務の対価としての性質を有しないから,条例の規定なくしては不当利得
としても請求できないものというべきであり」を,それぞれ加える。,
9原判決70頁10行目から同21行目までを,以下のとおり改める。
「しかしながら,市長は,普通地方公共団体の執行機関として,当該
普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び
法令,規則その他の規程に基づく事務を自らの判断と責任において誠
実に管理し執行する義務を負うものであり(地方自治法138条の
2,地方公共団体の歳出が法令上の根拠をもってなされなければな)
らないことや,地方自治法上,地方公務員の給料等の勤務条件につい
て条例主義がとられていることは,市長として当然知っている事柄と
いわなければならず,決裁にあたっては,その法令上の根拠について
常に関心を払うべきものである。したがって,市長が本件一時金の支
出を決裁するにあたって,その法令上の根拠を確認すれば,本件一時
金の支出について,旧給与条例に臨時的任用職員の給与に関する明示
の規定を欠いており,臨時的任用職員の給与について適用されるべき
条例が存在しないことを容易に知ることができたといえ,そうである
以上,本件一時金の支出を阻止することができたというべきである。
これに関して,一審被告は,市長は,条例等法規や行政行為の運用
状況について,問題視されていると否とに関わらず,その一切合切を
懐疑的にチェックし,それぞれの法規ないし行政行為に内包する問題
点を洗い出さなければならないことになると主張するが,支出行為の
決裁にあたって法令上の根拠を確認することは一審被告のいう一,,『
切合切を懐疑的にチェック』するような困難な事柄ではなく,市長に
不可能を強いるものでもないといわなければならない。
よって,一審被告の主張する事情をもって本件一時金の支給を阻止
しなかったBの過失を否定する根拠とする余地はないというべきであ
り,一審被告の主張を採用することはできない。
さらに,一審被告は,ある事項に関する法律解釈につき異なる見解
が対立し,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相
,,当の根拠が認められる場合に公務員がその一方の見解を正当と解し
これに立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断さ
れたからといって,直ちに当該公務員に過失があったとすることは相
当でないとも主張するが,既に繰り返し説示したとおり,臨時的任用
職員の給与につき,条例を定めることなく内規によってその支給基準
,,や金額を定めることや本件一時金につき条例に支給根拠のみを定め
具体的な支給の要件や金額を全面的に規則に委任することが,地方自
治法や地方公務員法の趣旨を没却する違法な処置であることは明らか
である。本件一時金については,異なる見解が対立しているともいえ
なければ,一審被告の見解に相当の根拠があるともいうことはできな
い。よって,この点に関する一審被告の主張も採用できない」。
第4結論
以上によれば,一審原告らの請求のうち,平成7年度から平成15年度
までの本件一時金の支給に係る訴えを却下し,平成16年度の本件一時金
の支給に係る請求を認容した原判決は相当であって,一審原告らの控訴及
び一審被告の控訴はいずれも理由がないから,これをともに棄却すること
として,主文のとおり判決する(なお,茨木市議会において,Bに対す。
る本件一時金に係る損害賠償請求権の権利を放棄する決議をしたことが窺
,,われるが茨木市がBに対して有する本件一時金に係る損害賠償請求権は
地方自治法149条6号により茨木市の執行機関が管理すべき債権であっ
て,その債務免除は,同法240条3項により,議会の同意を得た上で,
執行機関の債務者に対する意思表示によってなされるべきものであり,議
会の決議のみによって効力を生じるものということはできないから,その
事実は本判決の結論に影響するものではない)。
大阪高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官渡邉安一
裁判官安達嗣雄
裁判官松本清隆

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