弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A並びに同被告人の弁護人草光義質、同松永和重、同鍛治利一、同柏木博
及び被告人Bの弁護人原良男の各上告趣意は末尾添付の別紙書面記載のとおりであ
る。
 被告人Aの上告趣意第一点乃至第三点について、
 所論は違憲をいうが、実質は単なる法令違反の主張にすぎない。のみならず原判
決は、判示認定の事情の下に昭和二九年六月七日島根県農地課職員等の仲裁により
改めて本件田地を売渡すことを約し、既払の代金の外約定の金員を支払い、同時に
売買農地の所有権移転につき所轄島根県知事の許可を受けるためその申請手続をす
ることを定めたものであることを認定し、右売買はこれを無効とすべき理由はない
から、右売買によつて意図された所有権移転は同年七月一五日知事の許可と同時に
其の効力を発生したものと解したのであつて、原判決の右判断は当審においてもこ
れを首肯することができる。所論は原審の認定に反する事実に基いて原判決を非難
するに帰し理由がない。
 同第四、第五点について
 しかし、本件抵当権設定により横領罪が成立したことは一審判決認定のとおりで
あつて、所論は違憲に名を藉る事実誤認の主張に帰し採るを得ない。
 同第六点について
 所論は違憲をいうが実質は単なる訴訟法違反、量刑不当の主張であつて適法な上
告理由に当らない。
 被告人Aの弁護人草光義質の上告趣意第一、第二点について。
 所論は事実誤認、及びこれを前提とする法令違反の主張であつて、適法な上告理
由に当らない。(なお前顕A被告人論旨第一点乃至第三点の説示参照)
 同第三点について
 所論は出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条所定の「金銭
の貸借の媒介を行う者」とは金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介を業として行う者を
意味すると主張するけれども、業として行うと否とを問わず単に金銭の貸借の媒介
を行う者と解すべきこと原判示のとおりであるから、所論は理由がない。
 同第四点乃至第六点について
 所論は事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張をいでず適法な上告理由に当
らない。
 同被告人の弁護人松永和重の上告趣意第一点について
 所論は判例違反をいう点もあるが所論掲記の判例は単に「農地所有権の移転につ
いての知事の許可を効力発生の停止条件としてあらかじめ農地売買契約を締結して
おくことは、法の禁止するところではない」というにすぎず、本件に適切でなく、
その余は事実誤認又は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。
 同第二点について
 所論は判例違反をいう点もあるが、所論摘示の原判示は「田地の所有権がC及び
Dに移転した後、右許可の事実を知り、しかもその行為が条理に反することを認識
しながら原判示横領の所為に出たものであるから……原判決挙示の証拠に徴すれば
むしろ被告人は右田地がC等の所有に帰したことを知りながら理由なき法律見解に
藉口し敢て右所為に出たものと認めるのが相当である」と説示し被告人等に横領の
犯意があることを認定したのであつて所論の如き事実の錯誤は認めなかつたことは
判文上明らかでありその判断は正当である。それ故所論摘示の判例は本件に適切で
なく、論旨はすべて理由がない。
 同第三点及び同追加補充趣意について
 所論は事実誤認、単なる法令違反及び量刑不当の主張をいでず適法な上告理由に
当らない。
 同被告入の弁護人鍛治利一の上告趣意第一、二点について
 所論は違憲違法をいうが原判決の認定に添わない事実を前提とするものであつて
採用し難い。(前顕A被告人論旨第一乃至第三点の説示参照)
 同第三点、第五点について
 所論は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。のみならず、
不動産の所有権が売買によつて買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売
主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべきことは当裁判所の判
例(昭和三〇年(あ)第二七一三号同年一二月二六日第三小法廷判決、集九巻一四
号三〇五四頁、昭和三二年(あ)第三二五三号同三三年一〇月八日第二小法廷決定)
とするところであり、この理は本件の如く当該不動産を買主に引渡し、買主におい
てその不動産につき事実上支配している場合であつても、異ならない。蓋し登記名
義人である売主は右不動産を引渡した後においても第三者に対し有効に該不動産を
処分し得べき状態にあるからなお刑法上他人の不動産を占有するものに該当するも
のといわねばならない。それ故本件不動産を売却し所有権を移転した後未だその旨
の登記を了しないことを奇貨として右不動産につき抵当権を設定しその旨の登記を
した所為を横領罪とした一審判決を維持した原判決は正当であつて、所論は採用し
難い(昭和二九年(あ)第一四四七号同三一年六月二六日第三小法廷判決、集一〇
巻六号八七四頁参照)
 同第四点について
 所論は判例違反をいうけれども所論は事実誤認を前提とするものであつて、所論
掲記の判例は本件に適切でない。
 同被告人の弁護人柏木博の上告趣意第一点について
 所論は上告受理申立の理由書記載事項につき裁判を求めるというのであるが、上
告趣意書自体にその趣意内容を示していないから適法な上告趣意とならない。
 同第二点について
 所論は違憲をいう点もあるが実質は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張に帰し適
法な上告理由に当らない。(なお前顕松永弁護人の論旨第二点についての説示参照)
 被告人Bの弁護人原良男の上告趣意第一点について
 所論は判例違反をいうが所論掲記の判例は本件に適切でないこと、前顕松永弁護
人の論旨第一点について説明したとおりである。(なお所論知事の許可の書面は一
審公判廷において同被告人が受取つた旨供述している(記録一五丁裏))
 同第二点、第三点について
 所論は事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張をいでず適法な上告理由とな
らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条に則り裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
  昭和三四年三月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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