弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
関東信越国税局長が原告に対して平成18年6月19日付けでした,
6748万4523円を限度とする納税者Aの別紙滞納税金目録記載の
滞納国税及び滞納処分費に係る第二次納税義務の告知処分を取り消す。
第2事案の概要
原告の父であるAは,別紙滞納税金目録記載の滞納国税の納付義務を
負っていたところ,原告の母を被相続人とする相続財産の相続に関し,
法定相続人であるA,原告及びBの間でした遺産分割協議の結果,上記
相続財産の1割以下に相当する財産を取得するにとどまり,原告がその
6割以上に相当する財産を取得することとなった。本件は,原告が,関
東信越国税局長から,上記遺産分割協議に基づき原告が法定相続分を超
える財産を相続したことは国税徴収法(以下「徴収法」という)39。
条が規定する財産の譲渡,処分等により権利を取得したことに当たると
して,原告の受けた利益の限度額において第二次納税義務を負う旨の告
知処分をされたため,遺産分割協議は同条の規定する財産の譲渡,処分
等には当たらないなどと主張して,同告知処分の取消しを求める事案で
ある。
1前提事実
本件の前提となる事実は,以下のとおりである。証拠及び弁論の全趣
,,旨により認めることのできる事実は括弧内に認定根拠を付記しており
その余は,当事者間に争いのない事実である。
()相続の発生及び遺産分割協議について1
ア原告の母であるC(以下「本件被相続人」という)は,平成▲。
年▲月▲日に死亡した。その法定相続人は,本件被相続人の夫であ
るA,長男である原告及び次男であるB(以下,併せて「本件相続
人ら」という)の3名であった。。
イ本件相続人らは,平成17年6月9日,別表1「遺産分割による
相続財産の取得の内訳」記載のとおりの内容の遺産分割協議(以下
「本件遺産分割協議」という)をし,それぞれ相続財産を取得し。
た(乙1)。
本件遺産分割協議の時点における本件被相続人の相続財産の合計
は2億0189万3794円であったところ,Aの法定相続分は2
分の1であるが(民法900条1号,本件遺産分割協議の結果,)
Aは上記相続財産の1割以下である合計1994万1520円相当
の財産を取得することになり,他方,原告の法定相続分は4分の1
であるが,本件遺産分割協議の結果,原告は,上記相続財産の6割
以上である合計1億2790万1918円相当の財産を取得するこ
ととなった(乙1,弁論の全趣旨)。
ウ本件相続人らは,平成18年3月22日,高崎税務署長に対し,
本件被相続人の相続に係る相続税の申告書を提出した。
()被告による第二次納税義務の追及について2
ア被告は,平成18年6月19日現在,Aに対し,別紙租税債権目
録記載のとおり,既に納付期限を経過した11億6778万349
7円の国税債権を有していた(乙2)。
イ関東信越国税局長は,本件遺産分割協議が平成17年6月9日に
行われたものであるところ,最も新しい同10年分申告所得税第1
期分の法定納期限が同年8月31日であるから,別紙租税債権目録
記載の国税債権の法定納期限の1年前の日以後にされたものであ
,,,りまた国税債権の徴収不足が本件遺産分割協議に基因しており
原告が別表1「遺産分割による相続財産の取得の内訳」記載のとお
り,本件遺産分割協議によりAの相続分を減少させて自己の法定相
続分である4分の1をはるかに超える相続財産を取得しているとし
て,徴収法39条の規定に基づき,別表2「受けた利益の限度額計
算表」記載のとおり,原告が法定相続分を超えて取得した相続財産
の価額7742万8470円から,国税徴収法基本通達(以下,単
に「基本通達」という)39条関係11及び15に従って,原告。
がその財産の対価として支払った以下の①ないし③記載の各費用の
合計額994万3947円を控除した残額6748万4523円が
原告の受けた利益の限度額であると認定し,同18年6月19日,
原告に対して第二次納税義務の告知処分(以下「本件告知処分」と
いう)をした(甲1,弁論の全趣旨)。。
①債務及び葬儀費用263万7450円
②相続税725万4133円
③登録免許税5万2364円
()本件訴訟に至る経緯について3
ア原告は,平成18年8月9日,国税不服審判所に対し,審査請求
を申し立てた。
イ国税不服審判所は,平成19年4月13日,上記アの審査請求を
棄却する旨の裁決をした。
,,,。ウ原告は平成19年5月9日被告に対し本件訴えを提起した
(当裁判所に顕著な事実)
2争点
()争点11
遺産分割協議が徴収法39条にいう「その他第三者に利益を与える
処分」に該当し得るか。
()争点22
遺産分割協議に徴収法39条が適用される場合に「詐害の意思」が
要件となるか。
()争点33
本件遺産分割協議が徴収法39条にいう「その他第三者に利益を与
える処分」に該当するか。
3争点に関する当事者の主張の要旨
()争点1(遺産分割協議の徴収法39条の「その他第三者に利益を1
与える処分」該当性)
(原告の主張)
アそもそも遺産分割協議は,徴収法39条が具体的に列挙して規定
する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする
譲渡を除く,債務の免除」に該当せず,また,基本通達39条。)
,「「」,,,,関係3には法第39条の譲渡とは贈与特定遺贈売買
交換,債権譲渡,出資,代物弁済等による財産権の移転をいい,相
続等の一般承継によるものを含まない」と規定されているので,。
「譲渡」に「相続」は含まれない。
イしかも,遺産分割協議は,以下の理由により徴収法39条の「そ
」。の他第三者に利益を与える処分にも当たらないと解すべきである
(ア)徴収法39条は,民法424条の詐害行為取消権の行使と同
様の効果を,徴税上の便宜のために,裁判所での訴えによること
なく,行政庁である税務官署による一方的な告知処分によりでき
ることにした規定であると説明されている。
そこで,そのような類似の法律関係である民法424条の詐害
行為取消権と遺産分割協議との関係をみるに,①詐害行為取消権
は,債務者が「積極的に」固有の財産を他に譲渡し,又は流出さ
せようとする場合にそれを抑止することができる権限として債権
者に与えられた権利であるが,他方,債務者が「消極的に」他か
ら資産を取得しない場合に債権者がそれを取得することを強制す
ることはできないという制約があること,また,②詐害行為取消
権の対象となる行為が相続放棄や遺産分割といった身分行為であ
る場合には,身分法上の制約として,他人の意思により強制すべ
きものではないという制約が重ねて掛けられることからすると,
被相続人から財産を承継する相続という身分行為に民法424条
を適用することはできないというべきである。
したがって,身分行為である遺産分割協議は,民法424条の
詐害行為取消権の対象にはならないと考えるべきである。
そうすると,この理は,私人間の債権者と債務者の関係のみな
らず,国家と納税者の関係でも同様であり,租税を滞納する者に
対して国家が強制労働を命じて納税資金を獲得しようとすること
は許されないのであるから,徴税を目的とする徴収法39条が民
法424条の適用される範囲を超えて,相続などの身分行為にま
で適用される余地はないというべきである。
両者は類似の関係であるとしても詐害行為取消権の行使と徴収
法39条に基づく徴税権発動の要件は全く同一とまではいえず,
むしろ詐害行為取消権の行使は訴えの形式によらなければならな
いが,徴収法39条では,中立的な裁判所の司法審査を経ること
なく,債権者という一方当事者である行政庁の判断で同様な効果
を生じさせる点で,その要件はむしろ厳格に解されるべきであっ
て,私人間の詐害行為取消権行使が許されない相続という身分上
の行為にまで,上記徴税権発動が許されるという理屈はどこにも
存在しない。
したがって,遺産分割協議が徴収法39条の適用の対象となる
ことはない。
(イ)現に,基本通達39条関係3には「法第39条の「譲渡」,
とは,贈与,特定遺贈,売買,交換,債権譲渡,出資,代物弁済
等による財産権の移転をいい,相続等の一般承継によるものを含
まない」と規定されており「譲渡」に「相続」は含まれない。。,
そして「譲渡」は「その他第三者に利益を与える処分」の例,,
,「」「」示であるからその他第三者に利益を与える処分にも相続
が含まれるはずはなく,この「相続」には,法定相続分どおりの
遺産取得のみならず,法定相続分と異なる割合による遺産の取得
も当然に含まれるから,国税庁自らが,上記の基本通達により,
遺産分割協議が徴収法39条の適用の対象とならないことを示し
ているというべきである。
(ウ)また,基本通達39条関係5には「法第39条の「その他,
第三者に利益を与える処分」とは,譲渡,債務の免除以外の処分
のうち,滞納者の積極財産の減少の結果(滞納者の身分上の一身
専属権である権利の行使又は不行使の結果によるものを除く,。)
」。第三者に利益を与えることとなる処分をいうと規定されている
すなわち,滞納者の身分上の一身専属権である権利の行使又は不
行使の結果によるものは「その他第三者に利益を与えることと,
なる処分」に当たらないということであり,滞納者が相続を放棄
して,その結果「第三者」たる他の相続人の相続分が増えても,
徴収法39条の要件には該当しないということである。つまり,
基本通達39条関係5は,徴収法39条にいう「その他第三者に
利益を与える処分」について,滞納者が被相続人である場合をい
うのではなく,滞納者が相続人である場合の相続権の行使の有無
を問題にしているのである。
徴収法39条の「譲渡」は,同条の「その他第三者に利益を与
える処分」の例示であるから,基本通達39条関係3にいう「譲
渡」と「相続」の関係についても,滞納者自身の相続権の行使の
有無の問題と理解しなければ,徴収法39条を統一的に解釈する
ことはできない。基本通達39条関係3の「相続」も,滞納者が
相続人である場合の相続をいうのであり,滞納者の相続行為は,
すべからく「譲渡」とはみないという解釈を示しているというべ
きである。
ウしたがって,いかなる意味においても,身分行為である遺産分割
協議が徴収法39条の適用の対象となることはあり得ないと解すべ
きである。
(被告の主張)
ア徴収法39条の規定の趣旨は,納税者が国税の差押えを免れるた
めその財産を譲渡した場合において,その譲渡が虚偽表示に基づく
ときは,その行為が民法94条により無効であるから,その財産は
依然納税者に帰属するものとして,また,その譲渡が民法423条
(債権者代位権)及び424条(詐害行為取消権)の規定を国税の
徴収に関して準用すると規定する国税通則法(以下「通則法」とい
う)42条の詐害行為に該当するときは,その行為を訴訟によっ。
て取り消し,財産を納税者に復帰させた上で,それぞれ滞納処分を
執行するが,租税に対する詐害行為のすべてを訴訟を待って処理す
ることでは,租税の簡易迅速な確保を期し得ないため,納税者が無
償又は著しい低額で財産を処分し,そのため納税が満足にできない
ような資産状況に立ち至らせた場合,すなわち詐害行為となるよう
な場合には,その処分による受益者に対して第二次納税義務を負わ
せ,実質的には詐害行為の取消しをしたのと同様の効果を得ようと
するものである。
イ徴収法39条の規定の対象となる「譲渡」や「その他第三者に利
益を与える処分」の解釈については,基本通達において「譲渡」,
とは,贈与,特定遺贈,売買,交換,債権譲渡,出資,代物弁済等
による財産権の移転をいい,相続等の一般承継によるものを含まな
いとされ(基本通達39条関係3,また「その他第三者に利益),
を与える処分」とは,譲渡,債務の免除以外の処分のうち,滞納者
の積極財産の減少の結果(滞納者の身分上の一身専属権である権利
の行使又は不行使の結果によるものを除く,第三者に利益を与。)
()。えることとなる処分をいうとされている基本通達39条関係5
さらに,後者の「その他第三者に利益を与える処分」の解釈につい
ては「国税徴収法基本通達逐条解説(平成7年改訂版)におい,」
て,譲渡及び債務の免除以外の処分(贈与,売買,債務の免除等の
特定の法律行為類型に属さない経済的価値の移転をいう)で,広。
く第三者に利益を与えることとなる処分をいうとされている。この
ように解することは,上記アのとおりの徴収法39条の規定の趣旨
からしても妥当というべきである。
ウ遺産分割協議の法的性質について考察するに,遺産分割協議は,
明示又は黙示による相続の承認によって,遺産共有の状態となった
後に,相続資格者の間で財産の帰属を確定する行為であり,持分の
譲渡という実質を有するといえ,いわば相続人の一般財産に組み入
れられた財産を譲渡するという実質を持つものであると解すべきで
ある。そうである以上,遺産分割協議も,滞納者の積極財産を減少
させて第三者に利益を与える処分に該当し得る。
エまた,最高裁平成10年(オ)第1077号同11年6月11日
第二小法廷判決(民集53巻5号898頁。以下「最高裁平成11
年判決」という)は,遺産分割協議と詐害行為取消権との関係に。
つき,共同相続人の間で成立した遺産分割協議が詐害行為取消権行
,,使の対象となり得ると判示したものであるところ前記アのとおり
,,徴収法39条の規定の趣旨は租税の簡易迅速な確保を期するため
納税者が無償又は著しい低額等で財産を処分し,そのため納税が満
足にできないような資産状況に立ち至らせた場合,すなわち詐害行
為となるような場合には,その処分による受益者に対して第二次納
税義務を負わせることによって,実質的には詐害行為の取消しをし
たのと同様の効果を得ようとするものであって,その趣旨は,詐害
行為取消権と共通するところがあるから,最高裁平成11年判決が
遺産分割協議について詐害行為取消権の対象となると判示した趣旨
は,徴収法39条の適用関係についても同様に当てはまるものとい
うことができる。
オしたがって,以上のとおりの徴収法39条の規定の趣旨,遺産分
割協議の法的性質及び最高裁平成11年判決の判示等からすると,
遺産分割協議が同条の「その他第三者に利益を与える処分」に該当
し得ることは明らかというべきである。
()争点2(詐害の意思」の要否)2「
(原告の主張)
ア民法424条の詐害行為取消権には「詐害の意思」が必要であ,
。,「」ることが明文で規定されている徴収法39条には詐害の意思
の要否について明文の規定がないが,同条による告知処分は民法4
24条の詐害行為取消権を裁判所の判断を経ることなく行政庁の判
断のみで簡易迅速に一方的な処分としてすることができるのであ
る。したがって,その実質的要件を民法424条の詐害行為取消権
と別異に解すべき理由も必要もなく,徴収法39条においても「詐
害の意思」を要すると解すべきである。
そして「詐害の意思」があるということについては,民法42,
4条においては債権者に立証責任があるのであるから,徴収法39
条においても,徴税者に立証責任があると解すべきである。
,,「」イ本件において徴税者である関東信越国税局長は詐害の意思
があることの主張立証をしない。
したがって,この点からしても,本件告知処分は違法であり,取
り消されるべきである。
(被告の主張)
徴収法39条の文言上「詐害の意思」は要件とされていないとこ,
ろ,同条の規定する第二次納税義務の制度は,滞納者が行った無償又
は著しく低額による譲渡,債務の免除その他第三者に利益を与える処
分を取り消すものではなく,その処分により受けた利益の限度におい
て受益者に第二次納税義務を負わせるにとどまり,他方,民法424
条の詐害行為取消権は,総債権者のために,債務者が行った法律行為
を取り消して,債権者の満足を図ろうというものであって,その対象
及び効果等が異なり,それに応じてそれぞれ異なる適用要件が条文上
定められているのである。
したがって,第二次納税義務の制度と詐害行為取消権の制度とで趣
旨を共通にする部分があるからといって,必ずしも同一の要件を必要
とすると解するのは相当ではなく,両者がそれぞれ必要とする要件を
異にするものであることは明らかであるから,徴収法39条の文言上
必要とされていない「詐害の意思」を黙示的な要件として必要と解す
べき理由はなく,むしろ,条文上明らかなとおり「詐害の意思」は,
要件ではないと解すべきである。
()争点3(本件遺産分割協議の徴収法39条の「その他第三者に利3
益を与える処分」該当性)
(原告の主張)
ア仮に,遺産分割協議に徴収法39条の適用があるとしても,以下
の理由により,同条が適用される遺産分割協議とは,①積極的に債
務者の財産を減少させる行為であり,かつ,②遺産に属する物又は
権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活
の状況その他一切の事情を考慮しても,なお相続人の意思を否認し
て取り戻すべき必要がある事案のものに限られるというべきであ
る。
(ア)遺産分割協議と詐害行為取消権との関係につき,共同相続人
の間で成立した遺産分割協議が詐害行為取消権の行使の対象とな
り得ると判示した最高裁平成11年判決は,ある特定の遺産分割
協議が詐害行為取消権の対象となるとしたものであり,すべての
遺産分割協議が当然に詐害行為取消権の対象となるとするもので
はない。最高裁平成11年判決の事案を具体的にみると,遺産の
分割の基準を定める民法906条の法意に反し,いわば遺産分割
協議を濫用して債権者からの追及を免れたと評価されてもしかた
のない事案であり,詐害行為取消権の要件である「詐害の意思」
の存在が明白な事案であった。また,最高裁平成11年判決にお
いても「取消権行使の対象となる行為は,積極的に債務者の財,
産を減少させる行為であることを要し,消極的にその増加を妨げ
るにすぎないものを包含しない」と判示した最高裁昭和47年
(オ)第1194号同49年9月20日第二小法廷判決(民集2
8巻6号1202頁。以下「最高裁昭和49年判決」という)。
は否定されていない。
そうすると,上記の最高裁平成11年判決と最高裁昭和49年
判決を統一的に解釈すれば,遺産分割協議は,積極的に債務者の
財産を減少させる行為と評価し得るものであって初めて詐害行為
取消権の対象となると解するほかない。
(イ)また,遺産分割協議は,民法906条で「遺産に属する物又
は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び
生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と規定され
ている。遺産分割は,その家族間又は相続人間での様々な要素を
考慮し,各相続人間の主観的な事情を踏まえて,その内容を協議
すべきものである。それを債権者の意思だけで,法定相続分まで
機械的に取り戻すことを許すというのは,民法906条の遺産分
割に関する諸事情を考慮してすべきであるという要請を無視する
ものであって,条文に違背した越権の行為である。
(ウ)債権者にとって,債務者たる相続人が相続を放棄すれば,相
続財産について何ら引当てにすることはできない。それにもかか
わらず,放棄しないで単純承認して遺産分割協議をしたとたん,
それが法定相続分より少ない取得である場合には,債権者は,詐
害行為取消権なり徴収法39条により,他の相続人が法定相続分
より多く取得した財産にまで手を伸ばし,もって,債務者たる相
続人の法定相続分まで相続財産を引当てにすることができるとい
うのは,結局,国家が相続人をして法定相続分どおりの遺産分割
を強制するのと同一の結果を招き,民法906条を無視する結果
となる。
イ本件において,Aは,81歳と高齢であり,本件被相続人である
妻に先立たれ,別紙滞納税金目録記載の債務は租税債権であるので
自己破産をしても免責を受けることができず,自己の財産を所持し
てもすべて租税債権の弁済のために取り上げられてしまう運命であ
る。他方,Aとしては,これからの短い余生を考えれば,原告ら子
供たちに,経済的にも肉体的にも精神的にも扶養されて生活を維持
していくしかない。そうであれば,Aが本件被相続人の相続財産を
原告ら子供たち,特に近くに居住する原告に相続してもらい,原告
の生活を安定させるとともに,その反面,経済的に安定した原告の
余力でできるだけ扶養を受けたいと切望することは,人の情として
当然のことである。他方,本件遺産分割協議において,原告が取得
した相続財産は,原告が代表取締役を務める中古自動車販売会社が
使用している不動産やほとんど無価値の山林などであり,高齢のA
が取得する必然性はなく,むしろ原告の営む上記会社の経営と密接
な関係のある財産であって,Aが取得するより原告が取得する方が
自然で合理的であるという事情がある。
ウ以上のとおりであり,仮に,遺産分割協議に徴収法39条が適用
される場合があるとしても,本件告知処分は,格別の理由を示すこ
となく,原告に対し,本件遺産分割協議による法定相続分を超える
部分の額に相当する額から諸費用を控除した額について第二次納税
義務があるとしたものであって,明らかに違法である。
(被告の主張)
ア確かに,遺産分割協議については,民法906条の規定が存在す
ることから,ある相続人がその法定相続分を超える財産を取得し,
他方で,滞納者である相続人がその法定相続分を下回る財産しか取
得しなかった場合であっても,直ちに徴収法39条の「その他第三
者に利益を与える処分」に該当するとまではいえないと解する余地
もある。
イしかし,本件において,Aは,法定相続分が2分の1(5割)で
あったにもかかわらず,本件遺産分割協議の結果,1割以下にすぎ
ない合計1994万1520円相当の財産しか取得せず,他方,原
,(),告は法定相続分が4分の12割5分であったにもかかわらず
本件遺産分割協議の結果,6割を超える合計1億2790万191
8円相当の財産を取得したのであるから,民法906条にいう「遺
産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,,
」,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮したとしても
法定相続分から著しく乖離した本件遺産分割協議は,明らかに徴収
法39条の「その他第三者に利益を与える処分」に該当するという
べきである。
よって,本件告知処分は,徴収法39条の規定に従い,適法にさ
れたものである。
ウなお,被告主張に係る相続財産の価額は,合計2億0189万3
794円であるところ,本件相続人らが提出した本件被相続人の相
続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という)に基づく。
相続財産の価額は,合計2億0270万5351円であり,若干の
食い違いが生じている。
,,「」しかしこの食い違いは別表3相続財産の取得の内訳一覧表
,。,のとおり定期預金及び普通預金の一部にあるのみであるそして
本件の裁決書(乙8)に記載された「現金・預貯金等」の金額は,
本件申告書に基づく相続開始日である平成17年5月20日の現,「
金・預貯金等」の金額であるが,徴収法39条の適用においては,
原告に第二次納税義務を課すに当たり,原告が本件遺産分割の結果
受けた利益の限度額を算定すべきであるから「現金・預貯金等」,
の金額は,本件遺産分割協議により取得した金額,すなわち,平成
17年6月9日付け本件遺産分割協議書(乙1)において明記され
ている金額をその算定の基礎とすべきである。そこで,関東信越国
,,税局長はそのように解した上で本件告知処分を行ったものであり
その余の財産の価額については,本件被相続人の相続開始から本件
遺産分割協議に至るまでの期間がわずか3週間程度であり,相続開
始時と比較してその価額には大きな変動がないものと考え,本件申
告書記載の相続税評価額をそのまま算定の基礎としたものである。
なお,被告主張に係る相続財産の価額は,本件申告書記載の相続財
産の価額の範囲内である。
よって,被告主張に係る上記イの相続財産の価額は,いずれも正
当である。
第3争点に対する判断
1争点1(遺産分割協議の徴収法39条の「その他第三者に利益を与え
る処分」該当性)
ア徴収法39条は「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなお,
その徴収すべき額に不足すると認められる場合において,その不足す
ると認められることが,当該国税の法定納期限の一年前の日以後に,
滞納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の
対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く,債務の免除その。)
他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは,これら
の処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の
時にその滞納者の親族その他の特殊関係者であるときは,これらの処
分により受けた利益の限度)において,その滞納に係る国税の第二次
納税義務を負う」と規定している。。
そこで,遺産分割協議が徴収法39条にいう「その他第三者に利益
を与える処分」に該当するか否かが問題となる。
イ検討するに,徴収法39条の「その他第三者に利益を与える処分」
とは,基本通達39条関係5によると「譲渡,債務の免除以外の処,
分のうち,滞納者の積極財産の減少の結果(滞納者の身分上の一身専
属権である権利の行使又は不行使の結果によるものを除く,第三。)
者に利益を与えることとなる処分をいい,例えば,地上権,抵当権,
賃借権等の設定処分がある」とされており,また「国税徴収法基。,
本通達逐条解説(平成7年改訂版(乙5)によると「譲渡及び債」),
務の免除以外の処分(贈与,売買,債務の免除等の特定の法律行為類
型に属さない経済的価値の移転をいう)で,広く第三者に利益を与。
。」。,,えることとなる処分をいうとされている他方遺産分割協議は
相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について,そ
の全部又は一部を,各相続人の単独所有とし,又は新たな共有関係に
移行させることによって,相続財産の帰属を確定させるものであり,
いわば,相続人の一般財産に組み入れられた財産を譲渡するという実
質を持つものということができるから,その性質上,財産権を目的と
()。する法律行為であると解すべきである最高裁平成11年判決参照
そうすると,共同相続人の間で成立した遺産分割協議について,共同
,,相続人のうちに滞納者が含まれている場合には当該遺産分割協議は
徴収法39条の「その他第三者に利益を与える処分」に該当し,同条
の規定の適用対象となり得るものと解すべきである。
なお,最高裁平成11年判決は,直接的には,詐害行為取消権と遺
産分割協議との関係について,共同相続人の間で成立した遺産分割協
議は,詐害行為取消権の行使の対象となり得ると判示したものである
が,徴収法39条の趣旨は,租税の簡易迅速な確保を期するため,納
税者が無償又は著しい低額等で財産を処分し,そのため納税が満足に
できないような資産状況に立ち至らせた場合,すなわち詐害行為とな
るような場合には,その処分による受益者に対して第二次納税義務を
負わせることによって,実質的には詐害行為の取消しをしたのと同様
の効果を得ようとするものであると解することができるのであって,
同条の趣旨と詐害行為取消権の趣旨とは共通するところがあるという
ことができるのであるから,最高裁平成11年判決の趣旨は,徴収法
39条の規定の適用関係についてもあてはまるものというべきであ
る。
ウ(ア)この点に関し,原告は,基本通達39条関係3に「法第39条の
「譲渡」とは,贈与…(略)…等による財産権の移転をいい,相続等
の一般承継によるものを含まない」と定めていることから,徴収法。
39条の「譲渡」には「相続」が含まれず,したがって,同条の「そ
の他第三者に利益を与える処分」に遺産分割協議等の「相続」が含ま
れるはずがない旨主張する。
しかしながら基本通達39条関係3は徴収法39条の要件の滞,,「
納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の対
価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く,債務の免除その他。)
第三者に利益を与える処分」のうちの「譲渡」の解釈について示した
ものであるところ,その主体は「滞納者」であること,また,基本,
,「「」,,,通達39条関係3は法第39条の譲渡とは贈与特定遺贈
売買,交換,債権譲渡,出資,代物弁済等による財産の移転をいい,
相続等の一般承継によるものを含まない」と定め,注において「包。,
括遺贈(民法964条参照)があった場合には,通則法第5条《相続
による国税の納付義務の承継》の規定の適用がある」などと定めて。
いることからすると,基本通達39条関係3にいう「相続」とは,滞
納者が被相続人である場合において,滞納者の財産が「相続」によっ
て減少する場合を意味しているというべきであり,また,基本通達3
9条関係3が徴収法39条の「譲渡」に相続等の一般承継によるもの
を含まないとした趣旨は,滞納者が被相続人の場合の相続等の一般承
継のときには,通則法5条《相続による国税の納付義務の承継》の規
定が適用される結果,滞納者に相続が開始し,相続人に滞納者の財産
が移転した場合には,上記法条に基づいて当該相続人が滞納国税等を
納める義務を当然に承継するため,徴収法39条の第二次納税義務を
課す必要がないからであると解される。
したがって,基本通達39条関係3の規定を根拠として,徴収法3
9条の譲渡に相続等の一般承継によるものは含まれないからそ「」,「
の他第三者に利益を与える処分」にも遺産分割協議等の相続に関係す
る行為は含まれないという原告の上記主張は,その前提となる基本通
達39条関係3の解釈を誤ったものであり,失当というべきである。
(イ)また,原告は,基本通達39条関係5に「法第39条の「その他
第三者に利益を与える処分」とは,譲渡,債務の免除以外の処分のう
ち,滞納者の積極財産の減少の結果(滞納者の身分上の一身専属権で
ある権利の行使又は不行使の結果によるものを除く,第三者に利。)
益を与えることとなる処分をい」うと規定されており,滞納者の身分
上の一身専属権である権利の行使又は不行使の結果によるものはそ,「
の他第三者に利益を与えることとなる処分」に当たらないとされてい
ることからすると,滞納者の相続権の行使である遺産分割協議が徴収
法39条の要件に該当することはあり得ない旨主張する。
確かに,基本通達39条関係5は,原告の上記主張のとおりの規定
でありまた国税徴収法基本通達逐条解説平成7年改訂版乙,,「」()(
5)においても,相続放棄等滞納者の身分上の一身専属権である権利
の行使又は不行使の結果により他の相続人が利益を得た場合はこれに
該当しないとされている。しかしながら,遺産分割協議の法的性質に
ついては,既に判示したとおりであり,相続の開始によって共同相続
人の共有となった相続財産について,その全部又は一部を各相続人の
単独所有とし,又は新たな共有関係に移行させることによって,相続
財産の帰属を確定させるものであり,その性質上,財産権を目的とす
る法律行為であると解すべきであるから,その意味では,滞納者が相
続人である場合の相続権の行使としての遺産分割協議はもはや「滞納
者の身分上の一身専属権である権利の行使又は不行使の結果によるも
の」であったとしても除外されないと解される。通達は,法令を解釈
する上での基準とはなり得ても,裁判所がこれに拘束されるというも
のではないから,基本通達39条関係5の規定を根拠に,前記判断が
覆ることはないといわなければならない。
したがって,基本通達39条関係5の規定を根拠とする原告の上記
主張も失当である。
2争点2(詐害の意思」の要否)「
ア原告は,徴収法39条には「詐害の意思」の要否について明文の規
定がないが,趣旨を同じくする民法424条の詐害行為取消権と実質
的要件を別異に解釈する理由も必要もないから,徴収法39条におい
ても「詐害の意思」を要すると解すべきであると主張する。
イそこで検討するに,確かに,徴収法39条の第二次納税義務の制度
は,民法424条の詐害行為取消権の制度とその趣旨を共通にする部
分はある。しかし,そもそも徴収法39条においては,文言上「詐害
の意思」が要件とされていない。また,民法424条の詐害行為取消
権は,総債権者のために,債務者が行った法律行為を取り消して,債
権者の満足を図ろうというものであるのに対し,徴収法39条の第二
次納税義務の制度は,滞納国税の法定納期限の1年前の日以後に滞納
者が行った無償又は著しく低額による譲渡,債務の免除その他第三者
に利益を与える処分を対象とするなど時期及び対象を限定し,また,
その効果は,当該処分を取り消すというものではなく,受益者が特殊
関係者の場合には当該処分により受けた利益の限度において,そうで
ない場合には当該処分により受けた利益が現に存する限度において,
受益者に第二次納税義務を負わせるにとどまるものであり,しかも,
その場合の第二次納税義務は徴収法32条1項に規定する告知手続に
よって確定するものであり,訴訟手続を要しないとされていることな
,,,ど民法424条とは明らかに異なる法律的構成となっておりまた
通則法42条が民法424条を国税の徴収に関して準用する旨規定し
ているにもかかわらず,それとは別に徴収法39条が設けられている
のである。このように民法424条の詐害行為取消権と徴収法39条
の第二次納税義務の制度とは,その対象及び効果等が異なり,それに
応じてそれぞれ異なる適用要件等が条文上定められていると解すべき
であることからすると徴収法39条の文言上必要とされていない詐,「
害の意思」を黙示的な要件と解すべき理由は見いだせず,むしろ,要
件ではないと解すべきである。
ウ以上のとおりであり,徴収法39条において「詐害の意思」は要,
件ではないと解すべきであるから,原告の上記アの主張は,失当であ
る。
3争点3(本件遺産分割協議の徴収法39条の「その他第三者に利益を
与える処分」該当性)
ア既に判示したとおり,遺産分割協議には,徴収法39条の規定の適
用があり,かつ「詐害の意思」があることは要件ではないと解され,
るので,本件遺産分割協議について同条所定の要件を充足しているか
否かを判断すれば足りると解すべきところ,本件遺産分割協議の内容
は,前記前提事実()イのとおり,Aが5割という法定相続分を下回1
る1割以下にすぎない合計1994万1520円相当の財産しか取得
せず,他方,原告は,2割5分という法定相続分であるにもかかわら
ず,6割を超える合計1億2790万1918円相当の財産を取得し
たというものであり,また,このような内容になったのは,たとえA
が自己破産をしたとしても,租税債権である別紙滞納税金目録記載の
債務の免責を受けることはできず,財産を所持してもすべて租税債権
弁済のために取り上げられる結果になることから,Aは,滞納してい
る租税債権の徴収を免れて,自分の面倒を看てくれるAの子ら,特に
近くに居住する長男である原告に多くを相続させるため,自分は法定
相続分をはるかに下回る財産を相続するにとどめ,大半を原告に相続
させることにしたという事情があったことは,原告が自認していると
おりである。そうすると,このような本件遺産分割協議の内容及び背
景事情を考慮すれば,滞納者であるAの積極財産の減少の結果,原告
に自己の相続分を超える利益を与えたことになるというべきであり,
本件遺産分割協議が徴収法39条にいう「その他第三者に利益を与え
る処分」に該当することは明らかというべきである。
イこの点に関し,原告は,最高裁平成11年判決と最高裁昭和49年
判決が整合性を持つためには,徴収法39条が適用される遺産分割協
議とは,①積極的に債務者の財産を減少させる行為であり,かつ,②
遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心
身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮しても,なお相続人
の意思を否認して取り戻すべき必要がある事案のものに限られるとい
,,うべきであり本件遺産分割協議の背景事情をるる主張するとともに
被告が本件遺産分割協議に同条が適用されるべき上記のような事情の
主張立証をしていないとして,本件遺産分割協議に同条の適用はない
旨主張する。
しかしながら,遺産分割協議の法的性質は既に判示したとおりであ
り,遺産分割協議には徴収法39条の適用があり,かつ「詐害の意,
思」があることは要件ではないのであって,同条所定の要件を充足し
ているか否かを判断すれば足りると解すべきであること,また,徴収
法39条の第二次納税義務の制度は,詐害行為取消権とは異なり,相
続人の意思を否認して財産を滞納者に取り戻すという効果まで有する
ものではなく,単にその処分により受けた利益の限度において受益者
に第二次納税義務を負わせるにとどまるものであることからすると,
原告の上記主張は失当というべきである。また,そもそも遺産分割協
議と詐害行為取消権との関係に関する最高裁平成11年判決と,相続
放棄と詐害行為取消権との関係に関する最高裁昭和49年判決は,遺
産分割協議と相続放棄のそれぞれの法的性質の違いにより結論に差が
生じたものであり,相互に事案を異にし,同一に解することはできな
いというべきである。すなわち,相続の放棄は,相続資格を遡及的に
喪失させるものであり,相続財産を相続人の一般財産へ組み入れるこ
とを否定するものであって,これによって相続財産から相続人の財産
へ財貨が移転することもない。これに対し,遺産分割協議は,明示又
は黙示による相続の承認によって遺産共有の状態となった後に,相続
資格者の間で財産の帰属を確定する行為であり,相続人の一般財産に
組み入れられた財産の譲渡という実質を有するものであるから,両者
の性質は異なるものである。したがって,最高裁昭和49年判決が存
在することをもって,徴収法39条が適用されるべき遺産分割協議が
原告の上記主張のように限定されたものになると解することはできな
いというべきである。
4本件告知処分の適法性
以上のとおりであり,本件遺産分割協議は,徴収法39条にいう「そ
の他第三者に利益を与える処分」に該当し,Aの滞納国税の徴収不足が
本件遺産分割協議を行ったことに基因していると認められ,その他の同
条所定の各要件を満たすものであることは,前記前提事実()のとおり2
であるから,本件遺産分割協議には同条の規定が適用されるというべき
である。そして,原告は,滞納者であるAの長男という身分関係にある
ので,本件遺産分割協議の結果受けた利益の限度において第二次納税義
,,,務を負うべきであるところ関東信越国税局長は同条の規定に基づき
別表2「受けた利益の限度額計算表」記載のとおり,原告が法定相続分
を超えて取得した相続財産の価額7742万8470円から,基本通達
39条関係11及び15に従って,原告がその財産の対価として支払っ
た債務及び葬儀費用263万7450円,相続税725万4133円及
び登録免許税5万2364円の合計額994万3947円を控除した残
額6748万4523円が原告の受けた利益の限度額であると認定した
上,その利益を限度として本件告知処分をしたことは前記前提事実()2
イのとおりである。そして,この計算関係については,原告において争
うことを明らかにしていないので,自白したものとみなす。
そうすると,本件告知処分は,徴収法39条の規定に従い適法にされ
たものというべきである。
第4結論
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の
負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
杉原則彦裁判長裁判官
小田靖子裁判官
島村典男裁判官

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