弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人尾関義一の上告趣意第一点について。
 しかし刑は被告人各自についてその性格、年齢、境遇、犯罪の情状、犯行後の状
況等諸般の事情を考慮して各別に量定せられるものであるから、犯した罪の個数や
情状等を他の犯人と比較しただけで量刑の軽重を云々することはできない。言渡さ
れた刑が他の犯情の類似した犯人に比して重いことがあつても、憲法第一四条に規
定する平等の原則に違反するものでないことは、既に当裁判所の判例(昭和二三年
(れ)第四三五号同年一〇月六日大法廷判決)に示されている通りである。同様の
理由によつて、犯罪の個数や犯情の異なる犯人に同量の刑が言渡されることがあつ
ても、必ずしもこの原則に反するとは言えない。従つて強盗罪として処断された本
件被告人両名と、強盗罪及び銃砲等所持禁止令違反の罪の併合罪として刑を加重さ
れた原審相被告人Aとに、等しく懲役五年を言渡されたからとて、その故に原判決
は憲法第一四条に違反するものであると主張する論旨は採用することができない。
 同上第二点について。
 しかし旧刑訴第四〇三条の規定は、同条に定められた控訴事件につき、判決主文
の刑即ち判決の結果を原判決の結果に比して被告人の不利益に変更することを禁ず
るに止まり、それ以上の制限を加える趣旨を含まない(昭和二三年(れ)第一〇〇
八号同年一一月一八日第一小法廷言渡最高裁判所判決参照)。控訴審の裁判所がそ
の良心に従うて真実に合する事実を認定し、これに対して正当と信ずる法律を適用
すべきことはいうまでもないことであつて、ただ刑の量定について右の制限を受け
るに過ぎない。本件についてみれば、原判決は、第一審判決が認定しなかつた住居
侵入罪を認定したけれども、その言渡した刑は第一審判決の刑と同じく懲役五年で
あつて、それより重い刑を言渡したのではないから、旧刑訴第四〇三号に違反する
ものではない。これを違法とする論旨は理由がない。
 同上第三点について。
 しかし第一審判決が酌量減軽をしたのは相被告人Aに対してであつて、被告人両
名に対してではない。論旨は、第一審判決が被告人両名に対して酌量減軽をしたも
のと誤解し、誤解を前提として原判決が右両名に対し酌量減軽をしなかつたことを
非難するものであるから、採用することができない。
 被告人両名は弁護人古島義英を選任し、同弁護人から上告趣意書の提出があつた
が、右の選任届も上告趣意書の提出も期間経過後のものであるから、これに対する
判断を示さない。
 以上の理由により最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項及び旧刑訴法第四四
六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 安平政吉関与。
  昭和二四年八月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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