弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 申立人(弁護人)菊地養之輔の抗告理由(後記〉について。
 憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきも
ので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ
足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の事由で弁護人を依
頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対
して弁護人を附すれば足るものであること及び同条項は被告人に対し弁護人の選任
を請求し得る旨を告知すべき義務を裁判所に負わせているものでないことは、すで
に当裁判所の判例としているところである(昭和二四年(れ)二三八号同年一一月
三〇日大法廷判決、集三巻一一号一八五七頁)。本件において、被告人Aは、同被
告人に対する詐欺、賍物故買被告事件について、昭和二八年四月九日、盛岡地方裁
判所一関支部が言渡した判決に対し同日控訴の申立をなし即日第一審において被告
人の弁護人であつた弁護人千葉参治を原審弁護人に選任したのであるが、同弁護人
は同年五月一日辞任したので、原審は、同年五月二一日被告人に対して刑訴規則一
七七条、一七八条の通知書及び控訴趣意書差出最終日通知書(最終日は同年六月一
九日)を郵便により送達し、被告人は同年六月五日弁護人を私選する旨の回答をし
たが、自己の弁護人を選任しないのみならず、国選弁護人の選任をも請求せず、適
法に定められた控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出しなかつたため、原審は
刑訴三八六条一項一号により控訴を棄却したことが、本件記録上明らかである。そ
して、被告人が、弁護人において控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出できる
ような時期に弁護人を選任しなかつたことは、被告人の懈怠に基因するものであり、
記録を調べてみても、原審が被告人の憲法三七条三項によつて保障された弁護人選
任権の行使を妨げた事跡は認められない。されば、原決定の判断は正当で論旨は理
由がない。
 よつて刑訴四三四条、四二六条一項により主文のとおり決定する。
 この決定は裁判官谷村唯一郎の補足意見を除く他の裁判官全員一致の意見である。
 裁判官谷村唯一郎の補足意見は昭和二五年(あ)第二一五三号同二八年四月一日
言渡大法廷判決(集七巻四号)に附した補足意見の趣旨を引用する。
  昭和三〇年二月二三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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