弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人浅井精三上告趣意第一点について、
 本件において、原審における弁論終結の期日と判決言渡期日との間に、一五日以
上の期間の経過があつたことは、所論のとおりであるが、旧刑事訴訟法第三五三条
は、裁判官が審理を続行する場合次の期日との間に一五日以上の間隔を置くときは、
裁判官が従前の審理の結果についての記憶が薄弱になり、ために心証を形成するに
困難を来すこともないとはいえないので、特にその点を考慮して、この場合には公
判手続の更新をすることを命じたものであつて、一旦弁論を終結した後は、これを
再開しない限り、審理の結果形成せられている心証に基いて評議判決をすればよい
のであつて前記のような理由により更新を必要とする審理というものは存在しない
のであるから、本件のように、弁論終結の日から判決言渡期日までの間に一五日以
上を経過したにすぎない場合には同条の適用はないものと解するが相当であるそれ
故論旨は理由がない。
 同第二点について。
 記録により本件審理の経過を辿つてみると、被告人に対し公訴の提起があつたの
は、昭和二二年五月九日で同年同月三一日第一審判決があり、同年六月四日被告人
より控訴の申立を為し、第二審即ち原審は同年七月一〇日本件を受理し、昭和二三
年七月一四日公判を開廷し、即日弁論を終結して同月三〇日判決を言渡したという
推移であつて、原審が本件を受理してから、公判期日を指定するまでに一一ケ月を
経過し、その間、審理の進行について、何らかの考慮を払つた形迹は、少くとも記
録の上では認められない。もとより、裁判が迅速に行われたかどうかは、事案の性
質、内容その他諸般の状況、殊に本件のごとき被告人が当初から不拘束であつた場
合、他の長期勾留の被告事件が輻輳していて、これらを優先的に処理する必要上、
本件が遷延を余儀なくされたのではないか等について十分の検討を加えた上でなけ
れば、軽々にこれを断ずることはできないのであるが、記録にあらわれた前記のよ
うな経過に徴してみれば、本件の審理は、迅速に行われたものとは言い難い。しか
しながら、仮りに本件原審の裁判が迅速を欠いたとしても、その故を以て、原判決
を破毀すべき理由とすることのできないことは、すでに、当裁判所の判例とすると
ころである。(昭和二三年一二月二二日言渡、同年(れ)第一〇七一号大法廷判決)
それ故論旨は、本件上告の理由としては、これを採用することができない。
 尚被告人は第一審判決の後、改悛の情顕著なるものあるにかゝわらず、原審が第
一審判決と同一の刑を言渡したことは不当であるとの論旨は、原審の専権に属する
量刑の不当なことを主張するに帰するから、当裁判所に対する上告適法の理由とな
らない。
 よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条に則り主文のとおり判
決する。
 右は全裁判官一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二四年三月一二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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