弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人両名関係部分を破棄する。
     被告人両名を各懲役八月に処する。
     但しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     押収の別紙一覧表記載の物件はこれを没収する。
     訴訟費用中原審において生じた分は被告人両名と原審相被告人A、同B
の連帯負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾添附の被告人両名の弁護人平岡啓道、同元林義治提出の各
控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これに対する当裁判所
の判断は左のとおりである。
 元林弁護人の論旨第一について。
 原判決挙示の証拠により被告人両名が共謀の上昭和三十年四月十八日頃から同年
五月七日頃までの間連日に亘り、東京都葛飾区a町b番地C方階下店舗においてD
外多数の賭客を集め、同人等をして勝敗の決した後はいつでも同額の現金と交換で
きる各種チケツト(十円交換券、百円交換券、千円交換券)を購入させ、右チケツ
トを賭けさせ、数字が示してある円筒をモーターで廻転させ、これが静止したとき
右各円筒の上部に取りつけてある指針の示す数字の合計数の多寡により被告人等と
賭客との間で勝敗を決する俗に「数字合せ」と称する賭銭博奕を常習として為した
との原判示事実を明認するに十分である。なるほど本件ではE名義をもつて昭和三
十年四月七日付の東京都公安委員会宛の遊技場営業許可申請が所轄の本田警察署に
提出されたことは記録上認められないではない。しかし右遊技場営業許可申請によ
るとC方階下店舗におけるF射的場では射的遊戯を営業とするもので、その遊戯方
法には標的吊下式と標的廻転式との区別はあつても、いずれも玩具用銃とキルク玉
を標的に命中させることを目的とし、料金は玉三発につき十円とし、玉が標的物に
命中すれば五十円を限度とする右標的物を客に進呈することとなつているのであ
る。然るに被告人等が現実にC方店舗を使つて開設した営業のやり方では前記のよ
うに円筒三筒をモーターで廻転させ、これが静止したときこの円筒の上部に取りつ
けた指針の示す数字の合計数の多寡で勝敗を決するものであつて、円筒をモーター
で廻転させる仕掛だけがいわゆる標的廻転式射的にいくらか似ている点があるのみ
で、キルク玉を銃で発射し標的物に命中させる射的遊戯とは似ても似つかないもの
であるし、客がこれによつて勝敗を争うため客にそれぞれ金額を表示したチケツト
を購入させてこれを賭けさせ、勝敗が決すれば、いつでも自由に同額の現金と交換
していたと認められ、偶々少数の希望者の余つたチケツトを現金に交換したに過ぎ
ないとはいえない。又そこでは銃やキルク玉など一切使用しないのであるから、玉
を標的に命中させる射的遊戯本来の興味即ち遊戯乃至娯楽といつた要素は少しもな
く、ただ円筒が停止したときいかなる数手を現わしているかという偶然の結果で勝
敗が決り、ひいてそれが自由に現金に換えられ現金と同一視すべきチケツトの得喪
につながつていること即ち偶然の支配によつて財物を得或いはこれを失うという賭
博的要素が存するのみであるから、右所為が賭博罪に該当すること明白である。所
論は被告人らがその営業が許可を得られるものと信じていた旨主張するけれど、そ
うではなく却つて被告人らがその営業たる前記数字合せの方法が許可申請をした射
的遊戯とは全然相違しており、営業の許可が得られる見込のないことや、右営業を
初めることによつて多数の客を相手とし円筒が静止したときの数字が何であるかと
いう偶然性に金銭を賭け勝敗を争うものであることを認識していたこと原判決挙示
の証拠によつて認めることができる。本件営業所が多数公衆の往来する道路に面し
ているとの事実又は世上許可を得てパチンコ、スマートボール等の遊戯場(これら
許可を受けた遊戯に於ては本件の数字合せの方法とは異なり僅かではあるが娯楽的
要素があると認められる)が経営されているとの所論の事由によつては、本件数字
合せの方法をも遊戯と認め営業許可があるものと信じていたとすることはできな
い。従つて被告人らに違法の認識がないとの論旨も採用できない。
 次に所論は被告人方に集まる客は一時の娯楽として来たに過ぎないこと他のパチ
ンコ営業等と同様であると<要旨第一>主張する。しかし本件では客は現金と同一視
すべきチケツトを勝敗の結果に賭けていること先に説明したとおりであ
る。而して金銭は経済上価値の尺度たる機能を有し、他の一切の商品と等価的に交
換できるものであるから、その性質上一時の娯楽に供せられるものとはいえない。
金銭と同一視すべき本件チケツトも亦同様である。従つて被告人方に集まつた賭客
がチケツトを購入して賭けたことが一時の娯楽に供せられるものを賭けたとはいえ
ず、これによつて賭博罪の成立を否定する理由とはならない。
 次に所論は賭博前科のない被告人両名を賭博常習者として処断したのは事実を誤
認したものと主張する。なるほど被告人Gは一回の前科もなく、被告人Hも昭和十
六年六月十八日窃盗罪で処罰されたことがあ<要旨第二>るのみで、賭博に関する前
科があるわけではない。しかし刑法第百八十六条第一項の常習性を認定するには
定の資料殊に賭博の前料あることを要するものではなく、被告人の所
為自体に於て賭博の習癖が存するものと認定するを妨げないところである。被告人
両名は共謀の上昭和三十年四月十八日頃より同年五月七日頃までの間連日に亘り原
判示場所に於て多数の客を相手として賭博行為を反覆したものであり、右行為の態
容に於て被告人らに賭博の常習性ありと認定しても違法ではない。原判決がこれと
同一見解によつて被告人らが常習として本件賭博を為したものと認定したのは相当
で、事実の誤認ではない。
 なお所論は原判決の没収の言渡についても事実の誤認があるという。しかし昭和
三十年五月八日附差押調書被告人Gの司法警察員に対する右同日附供述調書、(記
録第三四九丁以下)原審相被告人Bの司法警察員に対する同日附供述調書に押収の
現金三万二千七百四十円の存在を綜合すると、被告人Gは昭和三十年五月七日原判
示店舗に於て賭博行為をしている時店の売上金の外に金一万九千円を所持していた
が、その中九千円は本件賭博行為に使用せんとの意思であつたからこの九千円を売
上金に加えて合計三万二千七百四十円が本件で押収されているもので、残金一万円
は洋服支払のための金であるとの被告人の弁解が認められたのか押収されなかつた
と認められる。従つて右合計金三万二千七百四十円はすべて本件賭博行為を組成す
る金員であり所論洋服代金に支払うべき一万円は右押収金員中に含まれていない。
それ故原審がこれを全部没収したのは正当で所論のように事実を誤認したものとは
いえない。
 それ故論旨はすべてその理由がない。
 平岡弁護人の論旨第一点乃至第三点について。
 賭博場を開設し客を誘引しても、寺銭又は手数料等の名義による金銭を徴収する
とは限らない。客からこのような金銭を徴収しないでも、自ら客の相手方となり、
これと賭博行為をして利益を挙げることが不可能ではない。そしてこの場合に賭場
開設者が挙げた利益は賭博行為により得たものというべきで、寺銭又は手数料等の
名義で徴収した金銭と相違すること明白であるから、賭場開設者が挙げた利益であ
つても、賭場開張罪の構成要件たる利を図つた所為であるとして、刑法第百八十六
条第二項を適用すべきではない。これを本件についてみると、被告人両名は共謀の
上昭和三十年四月十八日頃から同年五月七日頃までの間連日にわたり東京都葛飾区
a町C方階下店舗においてD外多数の賭客を集め、原判示の方法により俗に「数字
合せ」と称する賭銭博奕を常習として為したものであること原判示のとおりで、客
より寺銭又は手数料等の名義で金銭を徴収した事実がなく被告人等が利益を得たの
はすべて客との間の前記賭博行為により得たものに外ならないこと原判決挙示の証
拠により明白である。それ故被告人等の所為は賭博場を開設し賭客を誘引した事実
はあつてもその対価として利を図つたものとすることはできず、客との賭博行為に
よつて利益を得たに過ぎないから、刑法第百八十六条第一項を適用した原判決の擬
律は正当である。所論はこれに反し同条第二項を適用すべきものと主張するのであ
るが、賭博行為により得たる利益と賭場開張罪の構成要件たる利を図る行為とをか
れこれ混同したものであつて、本件が常習賭博罪たることを否定することはできな
いから、論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 加納駿平 判事 吉田作穂 判事 山岸薫一)

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