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裁判例


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       主   文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 (甲事件)
 原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)に対する平成9年
度の固定資産課税台帳登録価格につき,被控訴人横浜市固定資産評価審査委員会が
平成11年3月11日付けでした控訴人らの審査の申出を棄却する旨の決定を取り
消す。
3 (乙事件)
 本件土地に対する平成9年度の固定資産税・都市計画税につき,被控訴人横浜市
神奈川区長が平成11年11月10日付けでした市税減免不許可決定を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件の甲事件は,マンション敷地である本件土地の一部に横浜市市街地環境設
計制度に基づく公開空地が存在するところ,横浜市長がその部分についても,本件
土地のその他の部分と同様に,宅地として平成9年度の固定資産価格を決定し,固
定資産課税台帳に登録したことに対し,本件土地の共有持分権者である控訴人ら
が,被控訴人横浜市固定資産評価審査委員会に対し,審査の申出をしたが,同被控
訴人が同審査申出を棄却する決定をしたので,控訴人らが,その取消しを求める事
案であり,乙事件は,控訴人Aが,本件土地の公開空地部分に係る市税の減免を求
める申請をしたが,被控訴人横浜市神奈川区長が減免不許可決定をしたので,その
取消しを求める事案である。
 原審裁判所は,控訴人らの請求をいずれも棄却したことから,これを不服とする
控訴人らが控訴したものである。
2 前提となる事実及び争点と双方の主張は,原判決「事実及び理由」欄第2「事
案の概要等」の2及び3(原判決2頁末行から12頁14行目まで)記載のとおり
であるからこれを引用する(ただし,原判決3頁17行目の「平成9年2月末日ま
で」の次に「に」を加え,同5頁13行目の「有しないと道路」を「有しない道
路」と改める。)。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断するものであり,そ
の理由は,次の2のとおり,控訴人らの当審における主張とこれに対する判断を付
加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第3「争点に対する判断」の1及び2
(原判決12頁16行目から24頁1行目まで)に説示のとおりであるからこれを
引用する(ただし,原判決21頁12行目の「同年8月7日」を「同年7月1日」
と改める。)。
2 控訴人らの当審における主張とこれに対する判断
(1) 甲事件について
ア 公開空地の扱いの適否(争点1)について
 控訴人らは,固定資産税は,財産を所有(保有)の事実に着目して課せられる保
有税であるから,財産の実態に即して課税されるべきであり,したがって,土地の
現況で評価すべきところ,本件公開空地は,原判決が認定するように「歩道の用に
供する公開空地は,外形的に既存の歩道と判別がつかないほど一体となって道路と
して使用されており,また,一般的公開空地は,主に公園として,本件マンション
の居住者に限らず,地域住民も利用できるようになっている」のであるから,その
実態に即して評価すべき旨主張する。
 しかし,本件公開空地の実態としては,原判決が認定するとおり,歩道の用に供
する公開空地は,外形的に既存の歩道と判別がつかないほど一体となって道路とし
て使用されており,また,一般的公開空地は,主に公園として,本件マンションの
居住者に限らず,地域住民も利用できるようになっていると認められるものの,本
件公開空地部分の土地がなければ,本件マンションは建設できなかったのであり,
かつ,歩道及び公園としての性質は暫定的なもので,建築物の建て替え等の必要に
応じて建物の敷地としての本来の性質を顕在化させることができ,その場合には当
該公開空地は何らの規制も受けないというのであるから,その意味において本件公
開空地部分は本件マンションの建築を支える敷地としての意義と機能をなお有し,
宅地の性質を残しているとする原判決の判断は,正当として是認することができ
る。
 したがって,実態に即して評価すべきであるとの控訴人らの主張を勘案しても,
本件公開空地部分も含めて本件土地全体を宅地として評価して本件登録価額を決定
した本件棄却決定は適法というべきである。
イ 時価に関する制度の違憲違法の有無(争点2)について
(ア) 控訴人らは,租税法律(条例)主義の趣旨より,課税要件のうち基本事項
は法律で定めることが求められ,命令に委任することが許される対象は専門的技術
的かつ細目的な事項であることを要すると解すべきところ,①地方税法341条5
号は「適正な時価」とのみ定め,適正な時価とは何かということを定めていないこ
と,②評価基準は固定資産評価額を決定する基準であり,固定資産評価額は固定資
産税の課税標準を決定する基であって,課税標
準そのものであるから,評価基準は決して下位規範に委ねるべき専門的技術的かつ
細目的な事項ではないこと,③固定資産の評価は地方の実情に応じて地方自治体の
条例によって適切な定めをすべきものであり,固定資産税の課税要件として求めら
れる固定資産評価基準の内容を告示や通達等に委任すべき合理的理由はないこと,
④固定資産評価基準は,時価について通則規定を設けず,更に依命通達に委ねてお
り,最も重要な「時価」について,定義も評価基準の内容等もすべて告示及び通達
に委ねていることに照らせば,地方税法は固定資産税評価基準の内容すべてを告示
及び通達に委ねており,これは課税要件を包括的一般的に政令以下に白紙委任する
ものであって,租税法律主義,租税条例主義の趣旨に反し,違憲である旨主張す
る。
 しかし,原判決が説示するとおり,地方税法は,固定資産税についての課税要件
のうち,課税客体,課税標準及び標準税率といった基本的事項を同法で定めたう
え,同法388条1項により,固定資産の評価の基準,評価の実施方法,その手続
(評価基準)といった専門的,技術的かつ細目的な事項を定めることを自治大臣
(現総務大臣)の告示に委任しているものであり,その委任の目的は,固定資産の
評価の基準等を明確にし,全国的な固定資産の評価の統一を図り,市町村間の均衡
を維持するという見地からなされたものと解されるのであって,そのようにして定
められた固定資産評価基準は,委任の根拠が法律にあり,委任の目的,内容,程度
などが明確であり,概括的白地的委任ではないから,租税法律主義を定めた憲法8
4条に違反しないと解すべきである。
 控訴人らは,地方税法341条5号は「適正な時価」とのみ定め,適正な時価と
は何かということを定めておらず,最も重要な「時価」について,定義も評価基準
の内容等もすべて告示及び通達に委ねているが,課税標準そのものといえる評価基
準は,下位規範に委ねるべき専門的技術的かつ細目的な事項ではない旨主張する。
 しかし,「適正な時価」の意味内容自体が不明確ということはできず,その適正
な時価についての評価の基準,評価の実施方法,その手続といった事項は,専門
的,技術的かつ細目的事項ということができる。したがって,その定めを告示に委
任することをもって,課税要件を包括的一般的に政令以下に白紙委任するものとい
うことはできない。
 また,控訴人らは,固定資産
の評価は地方の実情に応じて地方自治体の条例によって適切な定めをすべきもので
あり,固定資産税の課税要件として求められる固定資産評価基準の内容を告示や通
達等に委任すべき合理的理由はない旨主張する。
 しかし,固定資産の評価の基準等を明確にし,全国的な固定資産の評価の統一を
図り,市町村間の均衡を維持するという必要があることは否定することができない
というべきである。
(イ) 控訴人らは,本件通達の発出を機縁として7割評価が実施され,その結果
控訴人らの税額が決定されたことはまぎれもない事実であって,通達を機縁として
新たに課税が実施され,通達の内容が正しい法の解釈に合致しないときには,租税
法律主義に反することがあると判例も認めているところ,本件通達は,固定資産評
価基準の内容を改変するものであって,正に租税法律主義に反する場合に当たる旨
主張する。
 しかし,原判決が説示するとおり,通達は,上級行政庁が法令の解釈や行政の運
用方針などについて,下級行政庁に対してなす命令又は指令であって,市町村長や
国民に対して拘束力を持つ法規ではない。したがって,本件通達が固定資産評価基
準の内容を改変する法的効力を持つといえないことは明らかである。
(ウ) 控訴人らは,平成6年度の固定資産評価の宅地の評価替えに際して,
「『固定資産評価基準の取扱いについて』の依命通達の一部改正について」(平成
4年1月22日自治事務次官通知)により「地価公示価格の一定割合(当分の間こ
の割合を7割程度とする)を目途とすること」とされ,これが基準となって平成6
年度の評価もなされたから,依命通達によって課税要件を改変したものであり,法
律によらず従前より高額の固定資産評価額を定める結果となるもので租税法律主義
に反するものであったところ,自治省は,平成9年度の評価替えにおいては,固定
資産評価基準(告示)の経過措置として,従前通達で行われていた7割基準を盛り
込んだが,告示に変更したとしても,法律によらずして従前と異なる課税要件を定
めるものであるから,変更した告示も租税法律主義に反するといわなければならな
い旨主張する。
 しかし,従前通達で行われていた7割基準を告示に盛り込むことは,法律の委任
に基づく告示の改正であって,租税法律主義を定めた憲法84条に違反しないこと
は,(ア)で述べたとおりである。
(エ) 控訴人らは,固定資産税の納税者の大部分は
,当該土地を売買することを予定せず,それを毎年同じように使い続けるものであ
り,このような者にとっては,当該土地の価値は正にその土地を利用することによ
って得ることのできる価値であるが,これに対し,取引価格(時価)とは,将来の
見通しの変化に異常に敏感に反応する人が設定する異常値といってもよく,このよ
うな異常値で国民の大半が納税する固定資産税の税額を決めるということは誤りで
あり,固定資産税のような保有税について,保有を続けることと相反する要素をも
つ(すなわち保有を放棄するということを前提とする)交換価値を考える取引価格
を持ち込むこと自体,矛盾する考え方であって,居住するためだけの生存的財産
は,本来売買を予定しないものであるが,固定資産税は毎年課税され,それ故に年
々の収益から支払われることを予定する収益税の性質を持っているものであるか
ら,このような観点からも,その評価は収益を基準とする方式でなされるべきであ
り,また,評価額そのものにおいても,応能負担の限度を超えたものとならないよ
うな調整がなされるべきことは,憲法25条,13条の趣旨から考えても当然のこ
とであって,土地に対する固定資産税は,土地が生み出す課税年度の収益をベース
にした収益還元価格以外にはあり得ない旨主張する。
 しかし,地方税法341条5号にいう「適正な時価」の「時価」とは,当該土地
の交換価値に着目したもので,正常な条件の下に成立する土地の取引価格,すなわ
ち,客観的な交換価値をいうものと解されるとする原判決の判断は,正当として是
認することができる。
 控訴人らが主張するいわゆる収益還元価格は,不動産が将来生み出すであろう純
収益に着目した価格であるが,将来の純収益を適切に把握することが一般的にいっ
て困難な場合が少なくない等の実務上の難点があると解され,直ちに採用すること
はできないというべきである。
(オ) 控訴人らは,通達か標準宅地の評価を時価公示価格の7割程度としたの
は,「不正常要因」を排除する趣旨であり,その不正常要因を3割程度と見た結果
であって,その「不正常要因」とは,「買い急ぎや特別な関係のある者の売買,あ
るいは僅少な土地等個別的な事情」であるから,地価の下落は,この不正常要因に
は含まれておらず,原判決が時価の下落が不正常要因に該当するかのような判断を
しているのは誤りである旨主張する。
 しかし,原判決が説示する
とおり,地方税法は,土地に対して課する固定資産税の課税標準を,基準年度に係
る賦課期日における土地の「価格」で土地課税台帳等に登録されたものとし,同
「価格」とは「適正な時価」(客観的時価)であるとしている。したがって,客観
的時価を超えない限り評価が違法となることはないというべきであり,原判決が,
平成8年7月2日以降の下落があっても,それが3割の範囲内にとどまる限り,7
割基準によって求めた評価額は,客観的時価を超えることはなく,評価は適法とい
えると説示したことは正当というべきである。
(2) 乙事件について
 控訴人Aは,横浜市市税条例施行規則19条の3第1項3号アに列挙されている
ものは,「不特定多数人の用に供する水防・防火器具専用格納庫,防火貯水槽,夜
警詰所,児童遊園地,休日急患診療所,自治会・町内会の集会所その他これに類す
る固定資産」であり,それは,不特定多数の用に供される不動産について,固定資
産税の減免を認める趣旨であるところ,本件公開空地も不特定多数の近隣住民に公
開され,その使用の用に供されている公園及び通路であるから「その他これに類す
る固定資産」として,減免を受けられるべきであり,また,地方税法348条2項
は,「固定資産税は次に掲げる固定資産に対しては課することができない」とし,
その第5号で「公共の用に供する道路,運河用地及び水道用地」を挙げているとこ
ろ,本件公開空地のうち少なくとも歩道部分である336.68平方メートルは,
原判決も認定しているとおり,「歩道の用に供する公開空地は,外形的に既存の歩
道と判別がつかないほど一体となって道路として使用されて」いるのであるから,
非課税とすべきであり,全体としては減免とすべきである旨主張する。
 しかし,そもそも横浜市市税条例施行規則において,公開空地が固定資産税の減
免の対象となるとの明示的な規定は存在しない上,本件公開空地は,原判決も説示
するとおり,歩道及び公園に供されるもので,公的な性格を有するといえるもの
の,そもそも私的な利益(建築物の高さの緩和)を実現したいという私的な目的を
達成することとの引き替えに,建物の存続する限り公的な性格を帯びたものにすぎ
ないものであり,したがって,これが「公益上その他の事由により特に減免を必要
とする固定資産」には該当しないとした原判決の判断は,正当として是認すること
ができる。
 また,地方税法
348条2項5号によれば,「公共の用に供する道路,運河用地及び水道用地」に
ついては固定資産税を課することができないと規定しているところ,本件公開空地
のうちの歩道部分については,その公的性格が全くないとはいえないが,本件公開
空地部分の土地がなければ,本件マンションは建設できなかったのであり,かつ,
歩道としての性質は暫定的なものであって,本件公開空地部分が本件マンションの
建築を支える敷地としての意義と機能をなお有し,宅地の性質を残していること
は,すでに(1)アで述べたとおりである。したがって,本件公開空地のうちの歩
道部分について,地方税法348条2項5号に該当するものと認めることはでき
ず,これが全体としての減免事由に該当すると解することもできない。
第4 結論
 以上によれば,控訴人らの請求はいずれも理由がないから,これをいずれも棄却
した原判決は相当であって,控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がない。
 よって,本件各控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官 石垣君雄
裁判官 大和陽一郎
裁判官 橋本昌純

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