弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を次のとおり変更する。
     控訴人は被控訴人に対し金一一万六三七円を支払え。
     被控訴人のその余の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分し、その一を控訴人の負担と
し、その一を被控訴人の負担とする。
     この判決は、被控訴人において金三万円の担保を供するときは、その勝
訴部分につき仮りに執行することができる。
         事    実
 控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二
審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却
する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、次のとおり附加するほかは、原判決の事実摘示と
同一であるから、それをここに引用する。
 (一) 被控訴人は、控訴人の後記抗弁事実を否認する、と述べ、
 (二) 控訴人は、訴外Aより原判決添付目録記載の建物(以下本件建物とい
う)の一階部分を昭和三八年二月七日頃まで賃借していたことを認め、抗弁とし
て、被控訴人主張の未払賃料につき、昭和三八年八月二八日訴外A(賃貸人)との
間で、(1)控訴人は同訴外人に対し、金二一万円の未払賃料債務のあることを認
める、(2)右訴外人は控訴人に対し、返還または支払うべき、(イ)敷金一〇万
円、(ロ)水道料立替金五、〇〇〇円、(ハ)道路舗装費立替金六、〇〇〇円、
(ニ)器物破損修理費立替金四、〇〇〇円、(ホ)地下天井補修費二万七、〇〇〇
円、(ハ)雑品処分代金二万八、〇〇〇円等、合計金一七万三、〇〇〇円の債務を
負担していることを認める。(3)右(1)(2)の債権債務を対当額において相
殺する、との示談が成立し、控訴人は即日右訴外人に対し差引き残額金三万七、〇
〇〇円を支払い、以て賃料債務を完済した、と述べた。
 証拠として、被控訴人は、甲第一ないし第三号証を提出し、乙号各証の成立は不
知と述べ、控訴人は、乙第一ないし第五号証を提出し、当審証人Bの証言を援用
し、甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 昭和三六年一月二六日松山地方裁判所昭和三六年(ヌ)第五号不動産強制管理申
立事件において、債権者Cの申立により債務者A所有に係る本件建物に対して強制
管理開始決定がなされ、その決定正本がその頃第三者である控訴人に対し送達され
たこと、右決定において、被控訴人(弁護士)がその強制管理人に任命され、債務
者Aは、本件建物の賃料を処分することを、また控訴人(第三者)は、強制管理人
である被控訴人以外の者に本件建物の賃料を給付することを、それぞれ禁止された
こと(以上甲第一号証参照)、本件建物のうち一階部分については、当時控訴人が
右Aから賃料月額金二万一、〇〇〇円、毎月末払いの約でこれを賃借していたが、
右賃貸借は昭和三八年二月七日まで継続したこと、ならびに控訴人が被控訴人に対
し、昭和三六年三月分より昭和三七年三月分までの右賃料を支払つたことは、いず
れも当事者間に争いがない。
 そして成立に争いのない甲第三号証によると、本件建物は、その後抵当権の実行
により競売に付され、訴外Dが競落に因りその所有権を取得し、昭和三八年二月一
二日右訴外人のため所有権移転登記がなされると共に、同日本件強制管理申立登記
が抹消されていることが明らかであり、本件強制管理は既に終了しているものとい
わなければならない(なお強制管理取消決定がなされた形跡は存しない)。ところ
で強制管理人である被控訴人は、強制管理中である昭和三七年四月一日から昭和三
八年二月七日までの未払賃料につき、強制管理終了後の昭和三八年九月六日控訴人
に対する支払命令の申立をなし、控訴人の異議申立により、本件訴訟に移<要旨>行
したものであることもまた記録上明らかである。しかし強制管理が終了しても、強
制管理中の事務が残存している場合には、強制管理人の職務は、なお存続
し、強制管理人は、強制管理期間中に生じた収益(本件の場合家賃)であつて、未
だその取立を終つていない分については、強制管理終了後においても、その取立を
なし、必要な場合には原告として第三者に対しその請求訴訟を提起することもでき
る権能を依然有するものと解するのが相当であるから、本訴が不適当であるという
ことはできない。
 そこで、被控訴人が本訴において請求する前記未払賃料については、既にその債
務が消滅しているとの控訴人の抗弁について按ずるのに、右賃料は、前記のように
本件強制管理期間中のものであること明らかであるから、強制管理終了後においで
も、右賃料が未払である以上、これに対する強制管理の効力はなお存続し、訴外A
は右賃料債権を処分することができないとともに、控訴人は依然として右賃料を強
制管理人である被控訴人に対し支払うべき義務を負つているものといわなければな
らない。したがつて仮りに控訴人主張のように、昭和三八年八月二八日控訴人が訴
外Aとの間で右賃料の支払いについて示談をなし、同訴外人に対し、未払賃料の一
部については、反対債権と相殺し、その残額を現金で支払つたとしでも、強制管理
人を度外視してのそのような相殺および弁済は無効であつて、控訴人は被控訴人に
対し右賃料支払の義務を免れることができないものというべきであるから、控訴人
の右抗弁は、その主張のような事実があつたかどうかの判断をなすまでもなく失当
であつて、採用できない。
 しかしながら、当審証人Bの証言ならびにこれにより真正に成立したと認められ
る乙第二号証によると、控訴人が訴外Aに対し、本件賃貸借につき金一〇万円の敷
金を差入れていたことが明らかである。そこで考えるのに、通常借家人が賃貸人に
差入れる敷金は、賃貸借が終了したとき、借家人が賃貸人に負担する延滞賃料等の
債務があるときは、当然これに充当される約定のもとに授受されるものと解すべき
であるところ、前記甲第三号証に右証人Bの証言ならびに弁論の全趣旨を綜合する
と、控訴人と訴外Aとの間の本件建物一階部分の賃貸借契約は、右建物が競売され
たため、被控訴人主張の昭和三八年二月七日を以て終了したこと(控訴人は賃借部
分を競落人に対し明渡した)が窺われ、当時控訴人が右訴外人に対し、借家人とし
て被控訴人主張の延滞賃料以外になんらかの債務を負担していたことを認めるに足
る資料がないから、被控訴人が本訴において主張する昭和三七年四月一日から昭和
三八年二月七日までの延滞賃料債権金二一万五、二五〇円中金一〇万円に相当する
部分は、前記敷金が当然に充当されて消滅したものといわなければならない。
 してみると、被控訴人の本訴請求は、右金二一万五、二五〇円から右金一〇万円
を差引き、さらに被控訴人自ら認める控訴人の水道料立替金四、六一二円五〇銭を
差引いた残額金一一万六三六円(円単位以下切捨)の支払を求める限度において理
由があるので、その部分を認容し、その余の請求は失当としてこれを棄却すべきで
ある。よつて、これと一部結論を異にする原判決は、本判決主文のようにこれを変
更することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条、第九二条、第八九
条を、仮執行の宣言につき、同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決す
る。
 (裁判長裁判官 浮田茂男 裁判官 加藤龍雄 裁判官 山本茂)

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