弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人上杉一美,同高橋金次郎の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を
異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反を
いう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条
の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,職権で判断する。
1原判決が是認する第1審判示第1の事実の要旨は,次のとおりである。
被告人は,平成17年2月25日に成立した,A株式会社(以下「A」とい
う。)及び医療法人B会の2者間,並びに,A,破産者C破産管財人弁護士D及び
B会の3者間の各裁判上の和解(以下「本件和解」という。)に基づき,同日,A
から上記D及びB会に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のためAが登
記簿上の所有名義人であった本件建物を,Aの実質的代表者として,B会のために
預かり保管中であったものであるが,医療法人E会理事長Fほか2名と共謀の上,
本件建物及びその敷地である本件土地に設定されていた本件地上権の各登記簿上の
名義人が,いずれもAであることを奇貨とし,その各登記簿上にE会を登記権利者
とする不実の抵当権設定仮登記をすることにより,上記D及び本件建物で病院を経
営していたB会から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,真実は,AがE
会から5億円を借り受ける金銭消費貸借契約を締結した事実並びにその担保として
本件建物及び本件地上権に係る抵当権設定契約を締結した事実がないのに,同年3
月11日ころ,法務局出張所において,登記官に対し,本件建物及び本件地上権に
つき,E会を登記権利者,Aを登記義務者とし,上記内容の虚偽の金銭消費貸借契
約及び抵当権設定契約を登記原因とする本件建物及び本件地上権に係る各抵当権設
定仮登記の登記申請書等関係書類を提出し,情を知らない登記官をして,本件建物
及び本件土地の登記簿の原本として用いられる電磁的記録である各登記記録にそれ
ぞれその旨の記録をさせ,そのころ,同所において,その各記録を閲覧できる状態
にさせ,もって,公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせ
て,これを供用するとともに,本件建物を横領した。
2所論は,①原判決の是認する第1審判決は,本件建物につき抵当権設定仮登
記(以下「本件仮登記」という。)を了したことにより横領罪が成立するとしてい
るが,本登記とは異なり,仮登記には順位保全の効力があるだけであるから,横領
罪は成立しない,②原判決の是認する第1審判決が,AとE会との間で本件建物に
抵当権を設定した事実はないとして,本件仮登記を了したことは電磁的公正証書原
本不実記録罪及び同供用罪に当たるとする一方で,横領罪にも当たるとしているの
は自己矛盾である旨主張する。
しかしながら,まず,本件仮登記の登記原因とされたAとE会との間の金銭消費
貸借契約及び抵当権設定契約は虚偽であり,本件仮登記は不実であるから,電磁的
公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立することは明らかである。そして,被
告人は,本件和解により所有権がB会に移転した本件建物を同会のために預かり保
管していたところ,共犯者らと共謀の上,金銭的利益を得ようとして本件仮登記を
了したものである。仮登記を了した場合,それに基づいて本登記を経由することに
よって仮登記の後に登記された権利の変動に対し,当該仮登記に係る権利を優先し
て主張することができるようになり,これを前提として,不動産取引の実務におい
て,仮登記があった場合にはその権利が確保されているものとして扱われるのが通
常である。以上の点にかんがみると,不実とはいえ,本件仮登記を了したことは,
不法領得の意思を実現する行為として十分であり,横領罪の成立を認めた原判断は
正当である。また,このような場合に,同罪と上記電磁的公正証書原本不実記録罪
及び同供用罪が併せて成立することは,何ら不合理ではないというべきである(な
お,本件仮登記による不実記録電磁的公正証書原本供用罪と横領罪とは観念的競合
の関係に立つと解するのが相当である。)。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官古田佑紀裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官
竹内行夫)

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