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平成12年(行ケ)第414号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成13年5月10日
判          決
原      告    三菱化学株式会社
訴訟代理人弁護士    上 谷   清
同           宇 井 正 一
訴訟復代理人弁護士   笹 本   摂
訴訟代理人弁理士    吉 田 維 夫
被      告    特許庁長官 及川耕造
指定代理人       喜 納   稔
同           小 林 正 己
同    森 田 ひとみ
同    大 橋 良 三
主           文
1 特許庁が平成11年異議第74004号事件について平成12年9月1
4日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「抵抗制御エンドレスベルト材」とする特許2886
505号の特許(平成2年12月27日に出願された特願平2-414872号を
原出願とする同8年8月29日分割出願,平成11年2月12日設定登録,以下
「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし4につき,平成11年10月22
日に特許異議の申立てがなされ,特許庁は,これを平成11年異議第74004号
事件として審理した結果,平成12年9月14日,「特許第2886505号の請
求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年10月4日に,その
謄本を原告に送達した。
(2) 決定の理由
決定の理由は,要するに,本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし4に係
る特許は,特許法29条1項3号及び同条2項の規定に違反して登録されたもので
あるから,取り消されるべきである,とするものである。
(3) 原告は,本訴が係属中の平成12年11月30日,本件特許の出願の願書に
添付された明細書の訂正をすることについて審判を請求し,特許庁は,これを訂正
2000-39147号事件として審理した結果,平成13年2月19日に上記訂
正をすることを認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし,これが確定し
た。
(4) 訂正審決による訂正の内容
(ア) 訂正審決による訂正前の本件特許の特許請求の範囲は,次のとおりであ
る。
(請求項1)
「導電性フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物からなり、その長手方向の
直径の変化量が±0.5㎜以内であると共に、その長手方向及び円周方向の表面抵
抗の変化量が±1オーダー以内であることを特徴とする抵抗制御エンドレスベルト
材。」
(請求項2)
「その円周方向の肉厚の変化率が±5%以内であることを特徴とする請求項
1に記載の抵抗制御エンドレスベルト材。」
(請求項3)
「導電性フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物を溶融してチューブ状に押
し出し、このチューブの内外周面を温調冷却しつつ固化させ、チューブ状を維持し
たままで連続して引き取り、輪切り状に切断して形成したことを特徴とする請求項
1又は2に記載の抵抗制御エンドレスベルト材。」
(請求項4)
「電子写真式複写機、レーザープリンタ等の感光体装置、中間転写装置、転
写分離装置又は帯電装置の構成要素として使用されるエンドレスベルトの素材とし
て適用されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の抵抗制御エンドレ
スベルト材。」
(イ) 訂正審決による訂正後の特許請求の範囲は,次のとおりである(下線部
が訂正された箇所であり,請求項の数が2となった。)
(請求項1)
「導電性フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物からなり、その長手方向の
直径の変化量が±0.5㎜以内であると共に、その長手方向及び円周方向の表面抵
抗の変化量が±1オーダー以内であり、その円周方向の肉厚の変化率が±5%であ
り、電子写真式複写機、レーザープリンタ等の感光体装置、中間転写装置、転写分
離装置又は帯電装置の構成要素として使用されるエンドレスベルトの素材として適
用されることを特徴とする継ぎ目部を有さない抵抗制御エンドレスベルト材。」
(請求項2)
「導電性フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物を溶融してチューブ状に押
し出し、このチューブの内外周面を温調冷却しつつ固化させ、チューブ状を維持し
たままで連続して引き取り、輪切り状に切断して形成したことを特徴とする請求項
1に記載の継ぎ目部を有さない抵抗制御エンドレスベルト材。」
3 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件特許の請求項1ないし4につい
ては,特許法29条1項3号,同条2項の規定に違反して登録された特許であるこ
とを理由に特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係
る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審決が確定したということになり,決定は,
結果として,判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったものとなる。この誤
りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定は取消しを
免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官     山  下  和  明
裁判官     設  樂  隆  一
裁判官     阿  部  正  幸

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