弁護士法人ITJ法律事務所

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平成19年8月29日宣告
平成19年(わ)第354号道路交通法違反被告事件
主文
被告人を罰金10万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を
1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成18年4月16日午後11時14分ころ,兵庫県公安委員会が道路
標識により,その最高速度を80キロメートル毎時と指定した兵庫県a市b自動車道
上り73.5キロポスト付近道路において,その最高速度を84キロメートル超える
164キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したものである。
(証拠の標目)
(省略)
(事実認定の補足説明)
被告人は,捜査段階では本件事実を格別争っていなかったが,公判廷では,時速1
20キロメートルを少し上回る速度で走行していたもので,時速164キロメートル
も出ていなかったと思う旨を述べているので,判示事実を認定した理由を補足して説
明する。
証人Aの公判供述,速度違反自動監視装置点検結果報告書(甲6,点検成績書)
(端末装置)謄本2通(甲7,点検成績書(中央装置)謄本2通(甲8)及び点検)
),成績書(端末装置〔走行試験成績書添付のもの〕謄本2通(甲9,10)によれば
判示場所付近に設置された本件速度違反自動監視装置(B株式会社製,オービス・ー
Lk型)は適正に設置され,定期点検を経たものであり,本件当時適正に作動してお
り,誤作動や誤計測の可能性はなかったものと認められるところ,速度違反認知カー
ド(甲1)によれば,判示日時場所において,被告人車両が164キロメートル毎時
で走行していたことを示している状態の写真が撮影されていることが明らかであり,
その計測値を揺るがすような証拠がなければ,被告人車両が少なくとも同速度で走行
していたことを疑うべき余地はない。被告人が公判段階で述べる時速120キロメー
トルを少し上回る速度で走行していたとの点は,確たる根拠がなく,当時の感覚とし
て単にそう思うというにすぎず,判示認定を何ら左右せず,本件証拠上,他に前記計
測値を揺るがすような証拠はない。
弁護人は,公訴事実に「164キロメートル毎時の速度」と記載されている点につ
いて,本件装置に計測誤差がプラスマイナス2.5パーセントあり,そのプラス誤差が
出ないように最初から計測値を本件装置の本来の数値から2.5パーセント下げた記載
をしているとして,これは誤った速度の表示であり,そのような誤った速度表示によ
る起訴は,公訴権乱用として公訴を棄却すべきであると主張する。
関係証拠によれば,弁護人のいうように,本件装置には計測誤差がプラスマイナス
2.5パーセントあり,表示される計測値にプラス誤差が出ないように最初から計測値
を本件装置の本来の数値から2.5パーセント下げていることはそのとおりであり,更
に小数点以下は切り捨てた速度が表示されるようになっていることが認められる。前
記証人Aの公判供述等関係証拠によれば,そのような措置を講じているのは,実際の
走行速度よりもプラスの速度誤差がいかなる場合にも出ないようにするためであり,
速度違反車両が,速度測定区間内において,斜め走行,急加速,急減速等の特殊な走
行をした際の本件装置のプラス誤差を考慮に入れて,本件装置が測定時に表示する速
度が最低でも出ていたことを示すようにしているものと認められる。そうすると,本
件装置のプラス誤差を考慮に入れて表示された速度を起訴状の公訴事実に記載するの
は被告人の利益のために当然のことというべきであり,最低でもその速度で走行して
いたということを示しているものであって,そこには何の誤りもない。弁護人の主張
は失当である。
(法令の適用)
罰条
道路交通法118条1項1号,22条1項,4条1項,同法施行令1条の2第1項
刑種の選択
罰金刑
労役場留置
刑法18条
訴訟費用の負担
刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
被告人は,内妻の体調が悪かったので自宅への帰途を急いでいた旨を述べるものの,
具体的事情は明らかでなく,判示のような高速度で走行するまでの必要性,緊急性は
およそ認められず,経緯に酌量の余地がないこと,本件のような高速度での運転行為
は極めて危険であること,被告人は,本件道路の最高速度が時速100キロメートル
であったと思っていたと述べており,道路標識や走行速度を警告する表示などに気を
配らずに走行しており,この点でも酌むべき点がないこと,平成14年12月に前刑
を出所後,生活全般にわたって自重すべきであったにもかかわらず,平成15年5月
及び平成16年6月にいずれも速度超過で検挙されたのにまたもや本件犯行に至って
おり,交通法規に対する規範意識の鈍麻がみられることなど検察官が論告で指摘して
いる点はまことにもっともな面があり,被告人の刑事責任は相当重いというべきであ
る。しかし,被告人のこれまでの交通違反歴は,前記平成15年5月の速度超過が高
速道路での35キロメートル未満のもの,平成16年6月のそれが同40キロメート
ル未満のものであり,いずれも反則金による処分であり,また,平成17年10月に,
普通乗用自動車を運転中,交差点で単車と衝突する事故を起こしているが,これにつ
いては処分がなかったことが認められ,公訴を提起されたのは本件が初めてである。
確かに,銃砲刀剣類所持等取締法違反の前刑を平成14年12月に受け終わり,自重
した生活をすべきであったのは検察官が指摘するとおりであり,反則金による処分と
はいえ,高速道路上での速度違反歴が2回あった上で,更に本件犯行に及んでおり,
交通法規を軽視する態度が明らかというべきであるが,本件で懲役刑を選択すると,
前刑との関係で実刑を科するしかなく,これまでに交通関係での処分歴で罰金前科の
ない被告人にいきなり実刑を科するのは,前刑が交通事犯にまったく関係のない事案
であることを考えると,些か酷なように思われる。以上のほか,本件運転車両はすで
に処分されており,今後運転免許を取得した上で車を運転する際には交通法規を守る
旨を述べて反省の態度を示していることなどの事情を総合考慮し,今回は罰金刑で処
罰することとする。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役4月)
(私選弁護人C)
平成19年8月29日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判官佐野哲生

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