弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人元林義治の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決は被告人が経営している飯場に実在していないA以下七一名が、
実在しているように装い、東京都B配給所係員を欺罔して、同係員より右A等の主
食配給名下に、主食米換算合計三八九一瓩九八八瓦を交付せしあてこれを騙取した
旨判示していることは判文上明らかなところであつて、右の判示事実はその挙示す
る各証拠に照してたやすくこれを肯認するに足り、その間反経験則等の違法は存し
ない。論旨は、原判決の採用しない各証拠と、原審公判廷における被告人の供述を
綜合して、原判示にそわない事実を独断して、原判示事実の認定を非難するに帰し、
上告適法の理由とならぬ。
 同第二点について。
 しかし、原判示の被告人の詐欺の所為が正当の行為である旨の弁護人の主張は原
審でなされた形跡を記録上発見することができないし、原審も特にその点について
何等判断も示していないところであるのみならず、たとい、論旨に縷述するような
事情があるとしても、原判決が判示の被告人の所為をもつて、正当の所為と認めな
かつたからといつて、原判決の認定を違法となすに由なきことは多言を要しないと
ころである。論旨は結局原審の裁量に属する事実の認定を非難するに帰し上告適法
の理由とならぬ。
 よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年三月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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