弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人島田武夫、同高見之忠の上告趣意第一点について。
 所論は、原判決は被告人等相互の間に本件強盗につき意思の連絡があつたことを
判文中明示しないで被告人等を強盗の共犯として処断したのは、所論引用の大審院
判例に違反する旨主張する。しかし、原判決は、まず第一審判決挙示の各証拠によ
りその判示第五の事実即ち強盗の事実を肯認するに十分であるとしており、第一審
判決の判示第五によれば、被告人Aが前記(判示第一乃至第四)賭博はインチキで
あつたからB及びCから金員を奪取せんことを主張し、被告人D・同E・同F及び
GことHもこれに賛同し茲に被告人等は共謀し、……連続して暴行脅迫しB及びC
の反抗を抑圧した上……をそれぞれ強取したものであるとなつているのであるから、
原判決は被告人等相互の間に強盗についての意思の連絡があつたことを明示してい
るものというべく、従つて所論引用の判例になんら違反するところはなく、論旨は
理由がない。
 同第二点について。
 所論は判例違反を主張するけれどもその実質は事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇
五条の上告理由とならない。そしてまた原判決は、被告人等を強盗の共同正犯と認
定しているのであるから、これと事実関係を異にする所論引用の判例は本件に適切
でない。
 同第三点について。
 所論は、第一審の裁判官は、本件起訴前において証人尋問を行つたものであるか
らすでに予断と偏見をいだいており、かかる裁判官が本件審判をすることは、刑訴
法の精神に反し、公平な裁判を保障した憲法三七条に違反すると主張する。しかし
所論の証人尋問の事実は、記録上認められるけれども、起訴前刑訴二二七条により
証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものでないのみならず、
また被告人並びに弁護人からこれを理由として裁判官忌避の申立をした事跡も記録
上認められず、かつ所論証人尋問調書を証拠とすることに被告人も弁護人も同意し
ているのであるから、なんら刑訴法に違反するところはない。またかかる場合、そ
の裁判官のした審理判決が憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判でないと
いうことはできないことはすでに当裁判所の判例とするところである(昭和二七年
(あ)一三二七号、同二八年四月一六日第一小法廷判決、昭和二九年(あ)一三九
六号、同三〇年三月二五日第二小法廷判決参照)。論旨は理由がない。
 弁護人神保泰一の上告趣意第一点について。
 所論は、本件賭博(第一審判決第三及び第四の判示事実)はIことB及びJこと
C等のいわゆる詐欺賭博であつたから、同人等に金員を騙取された被告人等には賭
博罪の成立はないのに、同罪の成立を認めた原判決は、従来の大審院または最高裁
判所の判例に違反すると主張する。しかし所論は、具体的に判例を挙示していない
ばかりでなく、原判決は、精細に証拠を検討した上、被告人等の所為はいずれもい
わゆる詐欺賭博ではなく、本来の賭博行為であるという趣旨を認定した第一審判決
を支持しているのであつて、その判断に誤はない。
 同第二点について。
 所論は、本件強盗(第一審判決第五の判示事実)につき原判決の事実誤認を主張
するものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第三点について。
 所論は、量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年一一月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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