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裁判例


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       主   文
1 被告が原告に対して平成13年9月13日付けでした原告の同日付け別紙自動
車目録記載の自動車に関する自動車新規登録申請に対する不受理処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
       事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
 本件は,原告が被告に対して自動車の新規登録申請をしたところ,被告が同申請
を不受理とする処分をしたことから,原告がその取消しを求めた抗告訴訟である。
1 前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実及び証拠により容易に認定
可能な事実)
(1) 当事者
ア 原告は,エムケイタクシーの名称で,京都市域交通圏において一般乗用旅客自
動車運送事業を営む会社である。
イ 被告は,道路運送車両法(以下「車両法」という。)105条1項,2項及び
同法施行令8条1項1号,同条2項3号によって国土交通大臣(旧運輸大臣,以下
同じ。)から中部運輸局長に委任された自動車の登録に関する権限について,さら
に権限の再委任を受けている者である。
(2) 無償旅客自動車運送事業の届出
 原告は,平成13年5月10日,中部運輸局長(道路運送法(以下「運送法」と
いう。)88条2項及び同法施行令1条2項によって国土交通大臣から無償旅客自
動車運送事業に関する所定の権限の委任を受けた者)に対し,予定する事業区域を
名古屋交通圏とし,経営期間を同月21日から平成14年5月20日までとする無
償旅客自動車運送事業経営届出書(甲5。以下「本件届出書」という。)を提出し
た(以下「本件届出」という。)。本件届出書には,運送法施行規則34条1項所
定の事項が漏れなく記載されており,同条2項所定の書類が添付されていた。
(3) 本件届出書の不受理
 中部運輸局長は,平成13年5月17日,本件届出に係る事業(以下「本件事
業」という。)は運送法44条1項所定の無償旅客自動車運送事業に該当しないと
の理由で,本件届出書及びその添付書類を原告に返付した。
(4) 本件届出書の不受理の取消訴訟
 これに対して,原告は,本件届出を不受理とした行為の取消しを求めて,平成1
3年5月25日,当裁判所に対して提訴した(当庁平成13年(行ウ)26号)。
これに対して,当裁判所は,同年8月29日,本件届出は,本件届出書が中部運輸
局の事務所に提出された時点で効力が生じており,中部運輸局長が原告に本件届出
書を返付した行為は
,事実上の行為にすぎず,取消訴訟の対象となる処分その他公権力の行使に当たる
行為に該当しないから,原告の上記訴えは不適法であるとして,同訴えを却下する
との判決をし(甲6),同判決は同年9月13日に確定した。
(5) 自動車の新規登録申請
 上記判決を受けて,原告は,平成13年9月13日,被告に対し,車両法7条,
自動車登録令、(以下「登録令」という。)14条ないし16条に基づき,別紙自
動車目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)について,所定の事項が漏
れなく記載された自動車新規登録申請書(甲1。以下「本件申請書」という。)に
所定の書類(甲2,3,5ないし12)を添付し,かつ本件自動車の提示に代えて
自動車予備検査証(甲4)を提出して自動車の新規登録申請(以下「本件申請」と
いう。)を行った。なお,原告は,本件申請と同時に自動車予備検査証を提出し
て,自動車検査証の交付申請を行っている(車両法7条4項,71条4項)。
(6) 本件申請の不受理処分
 被告は,平成13年9月13日,本件事業は無料で行うタクシー事業であって,
法の容認しないものであり,運送法に定める無償旅客自動車運送事業には当たらな
いので,登録令21条1項2号に規定する「登録の申請をした事項が登録をすべき
ものでないとき。」に該当するとの理由で,本件申請を受理しない旨の処分(以下
「本件処分」という。)をした。
2 争点及び争点に関する当事者の主張
 本件処分の適法性。すなわち,本件申請に不受理事由が存在するか。
(被告の主張)
 登録令21条1項2号は,自動車の登録申請が,「登録の申請をした事項が登録
をすべきものでないとき。」に該当するときは,当該申請を受理してはならないと
規定しているところ,原告の本件申請は,以下の理由により同号の事由に該当する
ことから,これを受理しなかったものであり,本件処分は適法である。
(1) 原告は,平成12年12月14日,中部運輸局長に対し,名古屋地区にお
ける一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー及びジャンボタクシー)の免許申請を
行った(以下「別件申請」という。)が,同局長は,原告が免許基準の法令遵守要
件を満たしていないことから,平成13年4月27日に同申請を却下した。その
後,原告は,同年5月7日,ハイヤー及びジャンボタクシーの旅客を相手とする無
償旅客自動車運送事業の届出に及んだものの,タクシーの事業内容
そのものを無償旅客自動車運送事業として行うべく,上記届出を取り下げ,改めて
本件届出を行ったものである。
 原告は,このように,有償で一般乗用旅客自動車運送事業を営むことを希望して
いたが,別件申請が却下されたことから,無償事業が届出制であることを奇貨とし
て,本件届出書を提出したものであり,本件届出によって原告が予定している事業
は,無料のタクシー事業であるから,本件届出は一般乗用旅客自動車運送事業を免
許制とした運送法の趣旨を潜脱する目的の下になされた違法なものであり,無償旅
客自動車運送事業の届出としての効力は認められない。
(2) 法律上,タクシーとは,運送法3条1号ハに規定する一般乗用旅客自動車
運送事業を経営する者がその事業に供する自動車(ハイヤーを除く。)をいうと規
定されており(タクシー業務適正化臨時措置法(以下「臨時措置法」という。)2
条1項),タクシー事業とは,タクシーを使用して行う一般乗用旅客自動車運送事
業をいう(臨時措置法2条3項)とされているところ,上記の一般乗用旅客自動車
運送事業を経営しようとする者は,国土交通大臣の免許を受け(運送法4条1
項),旅客の運賃その他運輸に関する料金を定め,国土交通大臣の認可を受けなけ
ればならない(同9条1項)。このことから,タクシー事業は有料で行う事業であ
ることが当然に予定されているものであり,無料のタクシー事業というのは,法律
上認められないものである。
(3) また,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業は,その対象
として特定の旅客を想定したものであって,不特定多数の旅客を想定したものでは
なく,需要者と事業者本来の事業との間に特殊な関係が存する旅館やゴルフ場が行
う送迎バスのような事業形態に限定されるというべきである。
 原告が本件届出により実施しようとする事業は,需要者との間に上記のような特
別な関係を伴わないもので,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業
には該当しないというべきである。
(4) 仮に,原告が行おうとする事業がタクシー事業ではなく,原告の主張する
無償旅客自動車運送事業に含まれるものであるとするならば,無料のタクシー事業
は不特定多数の旅客を対象とする点で一般旅客自動車運送事業とその事業形態が何
ら差異がないにもかかわらず,一般旅客自動車運送事業について種々の規制をして
いる法の趣旨が潜脱されることとなり,
安全な旅客の運送と適正なサービスの確保の点において,重大な問題がある。
 また,無料タクシーという法の予定しない違法な事業形態が行われた場合には,
旅客による無料タクシーの奪い合いが容易に想定されるだけでなく,タクシー事業
として参入する前宣伝と称して無料タクシーを運行させる事業を開始し,既存の一
般旅客自動車運送事業者を駆逐した後にタクシー事業に参入することとして,市場
の独占をする手段として用いられる可能性があり,特に保有するタクシーの台数が
少ない中小のタクシー事業者の経営を脅かす可能性が相当程度ある。この点,運送
法44条2項又は同条3項で準用する同法43条7項の事後的規制によってそうし
た事態を防止することができるとの考え方もあり得るが,無償旅客自動車運送事業
には自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)に基づく「自動車事故
報告書」についてのみ報告義務が課されているにすぎず,被告による監督が十分に
及ばないために,経営基盤の弱いタクシー事業への影響が回復不可能なものになる
ことが容易に予想される。さらに本件届出書によると,原告は,通常料金1500
円から2000円に相当する区間に対して無料運行を行うとしているが,利用者の
運送の要求が上記料金の距離以上の場合にあっては,利用者の運送の要求を満たす
ことができず,利用者は移動途中で下車せざるを得なくなる状況が生じ,不本意な
場所で下車を余儀なくされた利用者との間でトラブルに発展する可能性が非常に高
い。
(原告の主張)
(1) 被告が不受理の理由として主張する,本件事業が無償旅客自動車運送事業
に当たらないといった事由は,そもそも登録令21条1項2号の事由に該当しな
い。
(2) 仮にそうでないとしても,以下の理由により,本件事業が無償旅客自動車
運送事業に該当しないことを理由とした本件処分が違法であることは明らかであ
る。
 本件申請に先立ってなされた本件届出は,平成13年5月10日に本件届出書が
中部運輸局長の事務所に提出されたことにより,無償旅客自動車運送事業の届出と
して効力を生じている。
 被告は,本件事業が運送法44条1項所定の無償旅客自動車運送事業に該当しな
いと主張するが,①被告が無償旅客自動車運送事業の典型例として挙げる旅館等の
送迎バスに係る無償運送事業は,その役務の提供が結果として他の事業(宿泊業や
飲食業等)に何らかの良好な影響をもた
らすとの経営判断の下になされるものであるから,動機,目的の点では本件事業と
何ら異ならず,当該運送事業以外の事業の収益によって当該運送事業に必要な経費
を捻出するものである点でも両者に相違はないこと,②無償旅客自動車運送事業の
定義規定である運送法3条3号は,事業の内容につき被告主張のような限定は全く
加えていないこと,③運送法40条1号や43条7項の規定が44条3項によって
無償旅客自動車運送事業に準用されていることからすると,むしろ,運送法は,一
般旅客自動車運送事業の経営を困難なものとさせるような形態の旅客自動車運送事
業についても,それが無償でなされるものである限り,一応無償旅客自動車運送事
業に該当するものとして届出により事業を行うことを許容し,例外的に,当該事業
の経営によって運送法43条7項所定のおそれがあると認められるような場合等に
限って,事業の実施方法の変更を命じたり,これに違反した事業者に対して事業の
停止等を命ずる権限を国土交通大臣に与えたものであると解すべきであることから
すると,無償旅客自動車運送事業が一定の類型のものに限定される旨の被告の主張
は誤りである。
第3 当裁判所の判断
1 被告は,原告が予定している本件事業は,無料で行うタクシー事業であって,
法の容認しないものであり,運送法に定める無償旅客自動車運送事業には当たらな
いので,本件申請は登録令21条1項2号に規定する「登録の申請をした事項が登
録をすべきものではないとき。」に該当すると主張するところ,原告は,被告主張
の事由はそもそも登録令21条1項2号に該当しないと主張するので,まずこの点
について判断する。
 自動車登録申請の不受理事由を定める登録令21条1項各号のうち,2号の「登
録の申請をした事項」とは,本件で問題となっている新規登録においては,車両法
9条の規定する「(同法)第7条第1項第1号から第5号までに掲げる事項」,
「新規登録の年月日」及び「自動車登録番号」を指すと解される。このような形式
的記載事項であって,登録すべき事項か否かが容易に判明することを考慮して,上
記事由は法律事項とされず,政令である登録令に委ねられたものと解される。この
ことは,登録令21条1項各号で定める他の不受理事由が,いずれも外形的,形式
的事由であって,陸運支局長が容易に判断し得るものと考えられること(それ故
に,「申請が次に掲げる場合に
該当するとき」に不受理とされる。),これに対し,車両法8条の定める新規登録
拒絶事由は実質的審査を要する事項を含むこと(なお,これについても,登録令2
1条2項に基づき陸運支局長が不受理とすることができるが,そのためには,車両
法8条の規定によって「登録すべきものでないと認めるとき」が必要となる。)か
らも裏付けられる。なお,新規登録申請書には,自動車登録規則5条1項に掲げる
事項を記載することとなっており,同申請書の様式及び記載方法について規定した
自動車の登録及び検査に関する申請書等の様式等を定める省令(以下「様式令」と
いう。)第2条に基づき定められた申請書(本件の場合,同条1項4号の第2号様
式)には,当該申請に係る自動車の用途として,自家用,事業用等の別を記載する
こととなっているが,用途として事業用と記載する際にその事業の種類を記載する
ことは要求されていない(様式令3条1号の第10号様式による新規登録に係る登
録事項等通知書も同様である。)。
 そうすると,被告は,そもそも不受理事由に該当しない事由を理由として本件申
請を不受理としたものであり,それだけで本件処分は違法なものとして取消しを免
れない。
2 なお,念のために,被告主張に係る事由が他の申請不受理事由に該当し得るか
について判断するに,登録令21条1項5号は,新規登録申請は車両法71条4項
の交付の申請と同時にしなければならないことを定めた同法7条4項の規定に違反
する場合を不受理事由としているところ,同法71条4項の交付申請については,
車両法施行規則43条,36条2項1号によって,「一般旅客自動車運送事業の免
許若しくは許可」を受けたことを証する書面等の提示が必要とされている。前記の
とおり,本件申請に際し,原告は無償旅客自動車運送事業の届出書(甲5)を添付
しているから,被告が主張するように,仮に原告の予定している本件事業が無償旅
客自動車運送事業ではなく,一般旅客自動車運送事業に該当するのであれば,本件
申請に際して提示すべき書面を欠いていたと解する余地がある(被告は,本件申請
が法の規定する形式的要件を満たしていることを自認しているが,上記の点につい
ては留保していると解されなくもない。)。
 しかしながら,以下のとおり,本件事業は運送法上の無償旅客自動車運送事業に
当たり,本件申請が前記不受理事由に該当しないことは明らかというべきであ
る。
(1) まず,原告は,前提事実(2)のとおり,運送法44条1項に基づき,運
輸省(現国土交通省,以下同じ。)令の定めるところによって,その旨を中部運輸
局長に届け出ているところ,被告は,本件届出の効力について,原告は当初から法
の認めていない無料のタクシー事業を行うことを目的として無償事業の届出をなし
たものであるから,運送法44条1項の届出としては無効であると主張する。
 しかしながら,運送法上,当該届出につき実質的な審査がなされることを前提と
した規定は存在せず,また,運送法施行規則は,34条等で上記届出に関する具体
的方式を定めているが,その内容としては届出書に記載すべき事項及び添付を要す
る書面について規定するのみであって,届出を受理するか否かについて一定の審査
が行われ,当該審査の結果として受理又は不受理が決定され,そのことによって届
出による法律効果が発生する旨の条項又はこれを前提とした条項は存しないし,運
送法施行令にもそのような規定はない。このように,運送法,同法施行令及び運送
法施行規則が,いずれも運送法44条1項の届出の効力の発生要件について別段の
定めを置いておらず,行政手続法37条が,形式上の要件に適合した届出が当該届
出の提出先とされている機関の事務所に到達したときは,当該届出をすべき手続上
の義務が履行されたものとする旨定めていることからすると,運送法44条1項に
基づく届出は,運送法施行規則34条の定める形式上の要件に適合するものである
限り,行政手続法37条所定の時期,すなわち,提出先機関の事務所への到達時に
効力を生ずると解すべきところ,本件においては,本件届出が運送法施行規則34
条の定める形式上の要件に適合するものであることは当事者間に争いがないから,
原告による本件届出は,本件届出書が中部運輸局長の事務所に提出された平成13
年5月10日に無償旅客自動車運送事業の届出としてその効力を生じたものと解さ
れる。
(2) 次に被告は,原告が予定している本件事業は無料のタクシー事業であり,
タクシー事業が有償であることを前提とする運送法等の規定に反するものであっ
て,法律上認められないものであると主張する。しかしながら,以下に述べるとお
り,かかる主張は採用することができない。
ア 運送法は,2条3項で「他人の需要に応じ,自動車を使用して旅客を運送する
事業」を旅客自動車運送事業と規定
し,3条で同事業を一般旅客自動車運送事業(1号),特定旅客自動車運送事業
(2号)及び無償旅客自動車運送事業(3号)の3種類に大別し,さらに1号を一
般乗合旅客自動車運送事業(イ),一般貸切旅客自動車運送事業(ロ)及び一般乗
用旅客自動車運送事業(ハ)に細分している。
 そして,3号の無償旅客自動車運送事業は,「無償で旅客を運送する旅客自動車
運送事業」とされているところ,1号の一般旅客自動車運送事業は,2号及び3号
以外の旅客自動車運送事業を指すと定義されているから,1号は,無償でない事
業,すなわち有償による事業を指すことはいうまでもない。このことは,1号ハの
一般乗用旅客自動車運送事業(1個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸
し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)については,免許制が採用され
ており(運送法4条),旅客の運賃その他運輸に関する料金を定め,国土交通大臣
の認可を受けなければならず(同9条),運賃及び料金に関する規定(同10条,
11条)が置かれているなどの有償事業であることを前提とする規定が整備されて
いることからも明白である。
 そして,有償か無償かは,当該旅客運送という役務の提供に対し,その利益を受
ける者が対価の支払義務を負うか否かによって定まることは,法律解釈を云々する
までもなく,日本語の用語例として当然である。そうすると,原告が予定している
本件事業は,対価の徴収を前提としないものであるから,運送法3条3号の無償旅
客自動車運送事業に当たるというべきである。
イ この点,被告は,原告が予定している本件事業は「無料タクシー」事業である
との前提に立って,有償であるタクシー事業に関する法の規制を潜脱するものであ
るから,このような事業は法律上認められないと主張するところ,なるほど,証拠
(乙2ないし7,13)によれば,原告あるいはマスメディアが本件事業を「無料
タクシー」と呼称している事実が認められる。
 しかしながら,臨時措置法2条1項は,「タクシー」とは運送法3条1号ハの一
般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその当該事業に供する自動車をいうと定
義し,同条3項は,「タクシー事業」とはその「タクシー」を使用して行う一般乗
用旅客自動車運送事業をいうと定義している。そうすると,本件自動車が法律上の
「タクシー」に該当せず,また,原告が予定している本件事業が法律上の「タクシ

事業」に該当しないことは明らかであり,被告の主張は,出発点となる認識に誤り
があり,それを前提として立論するという循環論法に陥っているといわざるを得な
い。
(3) さらに,被告は,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業
は,不特定多数の利用者を想定したものではなく,需要者と事業者本来の事業との
間に特殊な関係が存する旅館やゴルフ場が行う送迎バスのような事業形態に限定さ
れると主張するところ,同制度の立法ないし改正時に同主張に沿った見解が存在し
たこと及びそれらの見解に沿った行政運用がなされてきたことを示す証拠(乙14
の1,2,15の1,2,16ないし18)が存在する。
 しかしながら,これらの事業形態は,他の事業に付随し,そこから利益を得て経
費に充てるのでなければ経営的に成立するのが困難であるとの考えを基礎として,
典型例として例示されたものと考えられる(現に,本件事業も期間,台数,範囲を
限定して届出されている。)から,上記の事実をもって直ちに無償旅客自動車運送
事業はこれらに限定されていると解することはできないし,不特定多数の利用者を
相手とする点も,被告が無償旅客自動車運送事業の典型例として挙げる旅館等の送
迎バスに係る無償運送事業についても,本来の事業である旅館等の客である限り,
不特定多数の者をその対象とするものと考えられ,また,同事業は,その役務の提
供が結果として他の事業(宿泊業や飲食業等)に何らかの良好な影響をもたらすと
の経営判断の下になされるものであるから,動機,目的の点では本件事業と何ら異
ならず,当該運送事業以外の事業(他の地域における運送事業を含む。)の収益に
よって当該運送事業に必要な経費を捻出するものである点でも共通であるから,両
者の間に本質的な違いがあるとは認め難い。
 そして,無償旅客自動車運送事業の定義規定である運送法3条3号は,事業の内
容につき被告主張のような限定は全く加えていない上,同法40条1号や43条7
項の規定が同法44条3項によって無償旅客自動車運送事業に準用されていること
からすると,むしろ,運送法は,一般旅客自動車運送事業に類似した形態の旅客自
動車運送事業についても,それが無償でなされるものである限り,一応,無償旅客
自動車運送事業に該当するものとして届出により事業を行うことを許容するが,当
該事業の経営によって運送法43条7項所定のおそれがあると
認められるような場合等に限って,事業の実施方法の変更を命じたり,これに違反
した事業者に対して事業の停止等を命ずる権限を国土交通大臣に与えたものである
と解するのが相当であり(被告が縷々主張する本件事業を認めた場合に予想される
トラブル等についても,このような権限の行使によって対応することを法は予定し
ていると考えられる。),被告の前記主張は採用できない。
3 以上の次第で,本件処分は違法であり,原告の本訴請求は理由があるから,こ
れを認容することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法
61条を適用して,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 加藤幸雄
裁判官 橋本都月
裁判官 富岡貴美

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