弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人魚住直人,同塚原正典の上告受理申立て理由(ただし,排除されたも
のを除く。)について
1本件は,被上告人が,貸金業者である上告人に対し,上告人との間の継続的
な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号
による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分(以
下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生していると主張し
て,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)被上告人は,上告人との間で,次の①ないし④の各期間における取引の開
始時にそれぞれ金銭消費貸借に係る基本契約を締結して,①昭和56年4月10日
から昭和58年12月24日まで,②昭和60年6月25日から昭和61年11月
27日まで,③平成元年1月23日から平成10年4月6日まで,④平成12年8
月7日から平成21年3月9日まで,第1審判決別紙計算書(1)記載の「借入金
額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返され
る金銭消費貸借取引を行った(以下,上記各期間の取引に係る基本契約を順に「基
本契約1」などという。)。
(2)基本契約1ないし基本契約3には,いずれも,当初の契約期間の経過後
も,当事者からの申出がない限り当該契約を2年間継続し,その後も同様とする旨
の定め(以下「本件自動継続条項」という。)がある。
3原審は,上記事実関係の下において,基本契約1ないし3には本件自動継続
条項が置かれていることから,基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基
づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の
貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けま
での各期間のいずれにおいても,2年ごとの契約期間の自動継続がされていたとし
て,上記各期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は,事実上
1個の連続した貸付取引であり,基本契約1ないし3に基づく取引により発生した
各過払金をそれぞれ基本契約2ないし4に基づく取引に係る借入金債務に充当する
旨の合意(以下「本件過払金充当合意」という。)が存在すると判断して,原告の
請求を認容した。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定
した基本契約(以下「第1の基本契約」という。)が締結され,この基本契約に基
づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発
生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両
者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基
本契約(以下「第2の基本契約」という。)が締結され,第2の基本契約に基づく
取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した
過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限
り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に
係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第2
268号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号28頁)。そして,
第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれ
に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の
基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行
されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から
第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の
基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の基本契約における利率等の契約条
件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが
終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約とが事実上1個の連続し
た貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解
するのが相当である(前記第二小法廷判決)。
しかるに,原審は,前記事実関係によれば,基本契約1に基づく最終の弁済から
基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3
に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく
最初の貸付けまで,それぞれ約1年6か月,約2年2か月及び約2年4か月の期間
があるにもかかわらず,基本契約1ないし3に本件自動継続条項が置かれているこ
とから,これらの期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は事
実上1個の連続した取引であり,本件過払金充当合意が存在するとしているのであ
るから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があ
る。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記特段の事情の有無
等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官金築誠
志の補足意見がある。
裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。
法廷意見が引用するように,最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決は,中
断期間を置いて複数の基本契約に基づく貸付取引が存在する場合に,事実上一個の
連続した取引であると評価できるか否かは,取引の中断期間等のいわゆる6要素を
考慮して決定されるべきものとしている。自動継続条項が存在することを主要な理
由として取引の一連一体性を認める原審の見解によれば,中断期間の長短などは問
題にならなくなるのであるから,原審の見解が上記判決の趣旨に沿わないことは明
らかであろう。貸金業者の締結する金銭消費貸借基本契約に,本件と同様の自動継
続条項が盛り込まれている場合が多いことは,当裁判所に顕著な事実であるとこ
ろ,上記判決は,法律的には別個の基本契約が存在する場合に,これらに基づく実
際の取引が中断していた期間の長短,その間における貸主と借主との接触の状況,
新たな基本契約が締結されるに至る経緯といった,取引の事実上の側面に重点を置
いた6要素を総合的に考慮して一個の連続した取引と評価し,充当合意を認定すべ
きものとするものであって,自動継続条項に基づく法律的・形式的な契約の継続
は,考慮に加えるべき重要な要素として位置付けていないと解される。新たな取引
とみるかどうかについて,このように事実上の側面に重点を置くことは,消費者等
の取引当事者の通常の見方にも合致するように思われる。また,本判決の考え方
は,過払金返還請求権の消滅時効の起算点を,特段の事情がない限り取引終了時と
し,自動継続条項による基本契約の効力継続の点を問題にしていない,最高裁平成
20年(受)第468号同21年1月22日第一小法廷判決・民集63巻1号24
7頁とも,整合的であると考えられる。
(裁判長裁判官金築誠志裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛