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裁判例


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平成24年12月20日判決言渡
平成21年(行ウ)第161号固定資産税及び都市計画税減免措置取消請求事
件(住民訴訟)
主文
1本件訴えのうち,別紙2「変更決定一覧」記載の各固定資産に係
る平成20年度の固定資産税及び都市計画税の各減免措置のうち同
別紙記載の固定資産税及び都市計画税の各変更決定により減免措置
が一部変更された部分について取消しを求める部分をいずれも却下
する。
2大阪市長が別紙1「減免対象施設一覧」の「施設番号」欄1ない
し20記載の各固定資産について,同「納税者」欄記載の者らに対
して,同「本件各減免措置」欄中の「減免決定日」欄記載の日に行
った平成20年度の固定資産税及び都市計画税の各減免措置(ただ
し,別紙2「変更決定一覧」記載の各固定資産については,同別紙
記載のとおりそれぞれ減免措置が一部変更された後のもの。)をい
ずれも取り消す。
3訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余
は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
大阪市長が別紙1「減免対象施設一覧」の「施設番号」欄1ないし20記
載の各固定資産について,同「納税者」欄記載の者らに対して,同「本件各
減免措置」欄中の「減免決定日」欄記載の日に行った平成20年度の固定資
産税及び都市計画税の各減免措置をいずれも取り消す。
第2事案の概要
本件は,大阪市長が,別紙1「減免対象施設一覧」の「施設番号」欄1な
いし20記載の各固定資産(以下「本件各固定資産」といい,同別紙の「施
設番号」欄記載の番号に応じて,各固定資産を「施設1」などという。)に
ついて,地方税法367条,702条の8第7項,大阪市市税条例(以下
「本件条例」という。)71条4項,141条1項,大阪市市税条例施行規
則(ただし,平成21年大阪市規則第8号による改正前のもの。以下「本件
条例施行規則」という。)4条の3第31号に基づき,平成20年度の固定
資産税及び都市計画税(以下,両税をあわせて「固定資産税等」という。)
の減免措置(以下「本件各減免措置」といい,個々の施設に係る減免措置を
「本件減免措置(施設1)」などという。)をしたことにつき,大阪市の住
民である原告が,本件各固定資産は,いずれもP1の関連施設であること等
から,本件各減免措置はいずれも違法であると主張して,地方自治法242
条の2第1項2号に基づき,その各取消しを求めている事案である。
1法令等の定め
(1)地方税法367条は,市町村長は,天災その他特別の事情がある場合
において固定資産税の減免を必要とすると認める者,貧困に因り生活のた
め公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り,当該市町村の
条例の定めるところにより,固定資産税を減免することができる旨規定す
る。また,同法702条の8第1項は,都市計画税の賦課徴収は固定資産
税の賦課徴収の例によるものとし,特別の事情がある場合を除くほか,固
定資産税の賦課徴収とあわせて行うものとする旨を定め,同条7項は,1
項前段の規定によって都市計画税を固定資産税とあわせて賦課徴収する場
合において,市町村長が同法367条等の規定によって固定資産税を減免
したときは,当該納税者に係る都市計画税についても,当該固定資産税に
対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものとする旨を定めて
いる。
(2)本件条例71条は固定資産税の減免について規定しており,同条4項
は,大阪市長は,公益上その他の事由により特に必要と認めるときは,申
請に基づき,市規則で定めるところにより固定資産税を減免することがで
きる旨規定している。また,本件条例141条1項は,固定資産税を賦課
徴収する場合にあわせて都市計画税を賦課徴収する旨を規定している。そ
して,本件条例施行規則4条の3本文は,同条各号に掲げる固定資産につ
いては,本件条例71条4項の規定により固定資産税を減免する旨を規定
し,同施行規則4条の3第31号は,在日外国人のための公民館的施設に
おいて,専らその本来の用に供する固定資産については,固定資産税を免
除する旨をそれぞれ規定している。なお,同条ただし書は,固定資産を有
料で借り受けた者がこれを同条各号に掲げる固定資産として使用する場合
には,当該固定資産に係る固定資産税を減免しないことがある旨を規定し
ている。
(3)上記(2)の「在日外国人のための公民館的施設」に係る固定資産税等の
減免措置に関して,被告の財政局税務総長による関係市税事務所長宛の平
成20年4月1日付け「固定資産税及び都市計画税の減免の取扱いについ
て」(以下「平成20年通知」という。乙3)及び同税務総長による各区
長宛の平成17年5月24日付け「在日外国人のための公民館的施設に係
る固定資産税及び都市計画税の減免の取扱いについて」(以下「平成17
年通知」という。乙4)が存在する。
ア平成20年通知は,固定資産税等の減免に係る事務の取扱いについて
定めたものであり,このうち「在日外国人のための公民館的施設」に関
係する部分の内容は,概ね以下のとおりである。
(ア)減免規定適用の基本原則
減免は,①個々の納税義務者の個別的事情(納税義務者の担税力の
喪失等)を考慮して税負担の緩和を図る必要がある場合,あるいは,
②被告の施策上,一定の減免措置を講ずることが,直接,公益(広く
社会一般の利益)若しくはこれに準ずる住民一般の利益を増進すると
認められる場合に適用されるものである。
上記②については,当該固定資産の用途に着目して減免が適用され
るものであるが,使用者が有料で借り受けて,当該用途に供している
場合は,本件条例施行規則4条の3第19号(公衆浴場)に規定され
るものを除き,減免を適用しない。
減免の適用にあたっては,減免趣旨をよく認識した上で,十分な実
情調査等を実施し,減免適用要件の把握に努めなければならない。
(イ)減免適用範囲等
固定資産税等の減免の適用範囲等については,本件条例71条1項
及び2項並びに4項に基づき定める本件条例施行規則4条の3に基づ
き措置される範囲とし,このうち,同条31号に係る「在日外国人の
ための公民館的施設について」の具体的な取扱いは,以下のとおりで
ある。
a減免対象資産
在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に
供する固定資産
b減免の範囲
当該年度の賦課期日現在の状況が,上記要件を満たしている場合
に,当該年度分について適用する。
c減免率
100パーセント
dその他
細部の取扱いについては,「在日外国人のための公民館的施設に
係る固定資産税及び都市計画税の減免の取扱いについて」(平成1
7年通知)による。
(ウ)減免申請の手続等
固定資産税等の減免を受けようとする者は,その事由を詳記した申
請書にその証拠となる書類を添付して,当該市税の納期限(納期を分
けたものについては,最初の納期限とする。)までに大阪市長に提出
しなければならない(本件条例施行規則4条)ものとされており,そ
の具体的な取扱いは,以下のとおりである。
a減免申請書の記載要領
「実地調査記事」欄は,実地調査を行った市税事務所職員が,利
用実態その他調査内容等について明確に記載するとともに,「調査
年月日」及び「該当事由」を記載し,押印する。
b減免申請事由を証する書類
市税の減免を受けようとする者は,その事由を詳記した申請書に
その証拠となる書類を添付して市長に提出しなければならず,「在
日外国人のための公民館的施設」に係る固定資産税等の減免の申請
については,減免申請書添付書類として,平成17年通知に定めら
れている書類を提出しなければならない。
c減免申請書提出後の認定事務
減免申請書が提出されたときは,実地調査を行い,実地調査によ
り把握した状況は,減免申請書の「実地調査記事」欄に詳記し,減
免規定の適用が認められるものについては,税額変更決議書を作成
し,決裁する。また,減免規定に該当することを確認するために必
要な書類がある場合は,納税者に対して提出を求める。
d減免申請書の提出に係る留意事項
減免の適用は,毎年度新たに行うのが原則であり,減免措置した
事由が継続している場合であっても,毎年度改めて減免申請書等を
提出させ,実地調査により利用実態を的確に把握し,厳正な処理に
努める。
イ平成17年通知の内容は,概要以下のとおりである。
(ア)減免適用範囲等
a減免対象資産
在日外国人のための公民館的施設で専ら本来の用に供する固定資
産とする。ただし,当該資産を有料で借り受けている場合を除く。
なお,「在日外国人のための公民館的施設で専ら本来の用に供す
る固定資産」にいう「公民館的施設」とは,社会教育法20条の規
定と同様の目的をもって,大阪市の住民である在日外国人のために
設置された公民館的施設をいい,また,「専ら本来の用に供する固
定資産」とは,社会教育法22条に掲げる事業と同様の用に専ら供
している固定資産のことをいう。
したがって,減免対象となる施設は,大阪市の住民である在日外
国人のために「実際生活に即する教育,学術及び文化に関する各種
の事業を行い,もって住民の教養の向上,健康の増進,情操の純化
を図り,生活文化の振興,社会福祉の増進に寄与することを目的」
(社会教育法20条)として設置されたものであり,そのうち減免
対象となる部分は,社会教育法22条に規定されている公民館の事
業と同様の,次の事業の用に専ら供している部分である。
(a)定期講座を開設すること。
(b)討論会,講習会,講演会,実習会,展示会等を開催すること。
(c)図書,記録,模型,資料等を備え,その利用を図ること。
(d)体育,リクリエーション等に関する集会を開催すること。
(e)各種の団体,機関等の連絡を図ること。
(f)その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。
b減免率
100パーセント
c減免の範囲
実地調査等に基づき,公民館的な事業以外の用に供されている部
分(以下「その他部分」という。)を確定し,次いで全体からその
他部分を除くことにより減免対象範囲を求める。したがって,減免
対象範囲とその他部分とに共用されている部分(例,廊下等)につ
いては,減免対象範囲に含めるものとする。
(イ)減免申請の手続等
納税者から減免措置の適用を受けたい旨の申出があったときは,次
に掲げる書類の提出を求める。
a減免申請書
b減免申請事由を証する書類
(a)固定資産使用区分図(家屋平面図)
(b)固定資産を借用している場合は,有料で借り受けていない事
実を証する書類(使用貸借契約書等)
(c)その他減免適用部分確定のために必要となる資料
(4)総務省総務事務次官による平成20年4月30日付け都道府県知事宛
通知「地方税法,同法施行令,同法施行規則等の改正について」(以下
「本件総務事務次官通知」という。)には,特記事項として,地方税の減
免措置については,地方税法の規定に基づき,条例の定めるところによっ
て行うことができるが,各地方団体にあっては,当該措置が特別な事由が
ある場合に限った税負担の軽減であることを踏まえ,適正かつ公平な運用
に十分配慮することとし,公益性を理由として減免を行う場合には,公益
性の有無等条例で定める要件に該当するかを厳正に判断する必要があり,
特に,P1関連施設に対する固定資産税の減免措置については,最近の裁
判事例において,減免対象資産の使用実態やその公益性判断が問題とされ
ていることも踏まえ,減免対象資産の使用実態を的確に把握し,引き続き
適正化に努めるよう記載されている(甲13)。
2前提事実(争いがない事実のほか,各項掲記の証拠(以下,特にことわら
ない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨等により容易に認められる事
実)
(1)当事者
原告は,大阪市の住民である。
(2)本件各減免措置に至る経緯
ア大阪市長は,平成20年4月1日,本件各固定資産について,同年1
月1日を賦課期日,同年4月30日を納期限として,別紙1「減免対象
施設一覧」の「平成20年4月1日賦課決定」欄記載のとおり,それぞ
れ固定資産税等を賦課した。
イ本件各固定資産の各納税義務者である別紙1「減免対象施設一覧」の
「納税者」欄記載の者らは,平成20年4月7日から同月30日までの
間に,大阪市長に対し,本件各固定資産が「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」(本件条例施行
規則4条の3第31号)に当たるとして,固定資産税等の減免を申請し
た。
ウ大阪市長は,本件各固定資産について,別紙1「減免対象施設一覧」
の「本件各減免措置」欄記載のとおり,平成20年4月28日から平成
21年4月1日までの間に,地方税法367条,702条の8第7項,
本件条例71条4項,141条1項,本件条例施行規則4条の3第31
号に基づき,それぞれ平成20年度の固定資産税等の減免措置(本件各
減免措置)をした。
(3)住民監査請求等
ア原告は,平成21年6月25日付けで,大阪市監査委員に対し,P1
がその活動に使用している本件各固定資産に係る平成20年度の固定資
産税等の減免措置(本件各減免措置)が違法であるとして住民監査請求
を行った(以下「本件監査請求」という。甲1,2)。
イ大阪市長は,別紙2「変更決定一覧」の「変更決定日」欄記載のとお
り,平成21年7月15日付け又は同月22日付けで,別紙2「納税
者」欄記載の者らに対し,別紙2記載の各固定資産につき固定資産税等
の変更決定(以下「本件各変更決定」という。)をして,本件各減免措
置のうち一部を変更した(乙A1の9の1,1の9の2,3の9,5の
9,6の7)。
ウ大阪市監査委員は,平成21年8月20日付けで,本件監査請求には
理由がないとして,同監査結果を原告に通知した。
エ原告は,平成21年9月18日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3本件の争点
本件の争点は,本件各固定資産に係る本件各減免措置が,本件条例71条
4項及び本件条例施行規則4条の3第31号に定める「在日外国人のための
公民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」との減免事由
に当たらないにもかかわらずされた違法なものであるか否かである。
第3当事者の主張
1原告の主張
(1)ア本件各減免措置は,本件各固定資産において「公益上その他の事由
により特に必要と認めるとき」(本件条例71条4項)を受けて定めら
れた「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に
供する固定資産」(本件条例施行規則4条の3第31号)という要件を
満たすとしてされたものである。
ここにいう「公益上その他の事由により特に必要と認めるとき」(本
件条例71条4項)とは,特定の個人や団体を離れた不特定多数の住民
一般の利益を増進すると認められるときを意味するものであると解され
ることに照らすと,「公民館的施設」(本件条例施行規則4条の3第3
1号)とは,社会教育法20条の規定と同様,一定の属性を有する者を
対象とした施設ではなく,一定区域の住民を広く対象とした施設を予定
しているものと解するのが相当である。したがって,本件各減免措置が
適法であるためには,本件各固定資産が,在日外国人だけではなく広く
不特定多数の地域住民の使用にも開放されているか,もしくはP1やそ
の傘下の団体の活動を離れ,広く,在日韓国・朝鮮人(本邦に居住する,
大韓民国(以下「韓国」という。)や朝鮮民主主義人民共和国(以下
「北朝鮮」という。)の国籍を有する者らをいう。)を中心とする地域
住民によって使用されていることが明らかでなければならないというべ
きである。
イそして,P1は,P2党の指揮のもと,金正日独裁体制(本件各減免
措置当時)に奉仕することを目的とし,北朝鮮と一体の関係にあって,
専ら北朝鮮の国益やその所属構成員の私的利益を擁護するために活動を
している組織であるから,本件各固定資産については,P1の関連施設
ではないことを厳格に調査した上で減免措置の判断をすべきである。
被告は,本件各固定資産を使用している者がP1の関係者か否かを知
ることはできないから,本件各固定資産をP1関係者しか使用していな
いことが明らかでない限りは,P1のための施設ではなく,在日韓国・
朝鮮人一般が使用する施設であると判断している旨主張するが,専ら北
朝鮮の国益やその所属構成員の私的利益を擁護するために我が国におい
て活動を行っているP1や,その指揮下にある「支部」ないし「分会」
及び傘下団体である「P3」,「P4」,「P5」,「P6」等の活動
が,我が国社会一般の利益のために行われているものでないことはいう
までもなく,P1と関係のない在日韓国・朝鮮人がP1の支部ないし分
会の施設におけるコミュニティ活動に参加するということは考え難いか
ら,P1関係者である在日韓国・朝鮮人とそれ以外の在日韓国・朝鮮人
は一体の関係にあるとは到底いえず,「在日外国人のための公民館的施
設において,専らその本来の用に供する固定資産」(本件条例施行規則
4条の3第31号)というためには,P1の活動から離れて,公益目的
のため,少なくとも広く在日韓国・朝鮮人が自由に使用できる施設でな
ければならず,具体的には,施設の看板の記載や運営規約,広報ビラ,
掲示板,ホームページ等により,P1関係者だけではなく広く在日韓
国・朝鮮人を含む地域住民に開かれていることが周知され,現に使用さ
れていることが確認されなければならないというべきである。
ウ以上の観点から,大阪市長は,本件各固定資産が,P1関係団体から
離れ広く不特定多数の在日韓国・朝鮮人ないし地域住民に開かれている
かといった点について確認を行い,主としてP1関係者以外の者が使用
していることが明らかでない限り,本件条例施行規則4条の3第31号
に該当する施設であると認めるべきではないから,その判断に当たって
は,当該固定資産で営まれる事業の目的及び内容,設備内容,使用実態
等の具体的事実の存否を客観的資料をもって認定し,当該事実をもとに,
本件各固定資産が,P1ないしその関係団体の活動から離れて,その大
半の使用が不特定多数の在日韓国・朝鮮人ないし地域住民によってなさ
れていることが明らかであるといえるか否かを厳格に判断しなければな
らないというべきである。
(2)本件各減免措置の違法性
本件各固定資産に係る固定資産税等の減免措置は,上記のように,客観
的な資料に基づいた厳格な判断の下になされるべきところ,本件各減免措
置は十分な調査を経ておらず,また,社会通念上,本件各固定資産が本件
条例施行規則4条の3第31号の要件に合致しないことは明らかであるこ
とに照らすと,本件各減免措置は大阪市長の裁量権を逸脱・濫用してされ
たものとして違法である。
ア施設1
施設1にはP1の大阪府P7支部がおかれているところ,利用規約及び
使用簿は提出されておらず,本件減免措置(施設1)の判断の時点におい
て,土地に係る使用貸借契約書は提出されていなかった。施設1の利用実
体を基礎づける資料としては,平成19年度のP8会館使用年間計画書
(乙A1の5)が提出されているが,あくまで計画書にすぎず,実際の使
用実態を裏付ける使用簿等の資料は何ら提出されていない。同計画書の記
載をみても,いずれもP1の関連団体である婦人会(おそらくP4)及び
青年会(おそらくP3)による使用が大半である。同計画書には,「P9
会・老人クラブ」での「お茶会」による使用が記載されているものの,
「P9会」なるものが使用していたはずの部屋は,平成21年7月22日
の変更決定(別紙2「変更決定一覧」参照)により,パソコンショップの
商品の保管に使用されていたと認定され,固定資産税等の減免対象から外
されていることからしても,同計画書の記載内容の正確性及び施設管理者
による説明の信用性は疑わしいものであるから,施設1が広く在日朝鮮人
一般のための公民館的施設として使用されていたことを客観的な資料に基
づいて認定することはできない。また,本件減免措置(施設1)がなされ
た際,土地を「有料で借り受けていない事実を証する書類」が提出されて
おらず(この点に係る証明書(乙A1の4の2)の作成日付は平成21年
7月14日付けである。),実地調査の際に口頭で確認をしたのみであり,
書類上の不備があったことは,本件減免措置(施設1)における手続が杜
撰であることを示している。
イ施設2
施設2にはP1の大阪府P10支部が置かれているところ,施設2の利
用規約及び使用簿は提出されていない。被告は,本件減免措置(施設2)
後に,「P11会館月予定」と題する書面(乙A2の5)が提出され
たことをもって,使用簿の提出があったと主張するが,同書面は同減免措
置の際には提出されていなかったものであるし,使用の予定を記載したメ
モに過ぎず,施設の使用の都度記載される使用簿等とは全く性格の異なる
書面である。同書面の記載内容をみても,毎週金曜日の夜に開催されてい
る青年部(おそらくP3)の交流会や,月に2,3回の支部の協議会は,
P1の支部活動そのものである。毎週水曜日のヨガ教室や,毎週土曜日の
老人会についても,いずれもP1関係者以外の在日朝鮮人のための活動で
あることを裏付ける資料は何もない。
ウ施設3
施設3にはP1の大阪府P12支部が置かれているところ,施設3の利
用規約及び使用簿は提出されていない。使用状況に係る資料として提出さ
れている「P13会館利用状況」と題する書面(乙A3の5)は,関係者
によって作成された断片的メモであって,施設の使用の都度記載される使
用簿等とはいえず,記載内容も不十分であり,具体的な使用状況を把握す
ることはできない。同書面によれば,平成19年の主な利用団体はテコン
ド教室等の様々な教室等であるところ,使用場所,使用頻度が不明である
ばかりか,学童保育所等の使用が全く記載されておらず,信用性に欠ける。
また,施設3は,後に学童保育所等の使用が判明したため,当該部分に係
る減免措置を取り消す変更決定がなされている(別紙2「変更決定一覧」
参照)ところ,このことは,実地調査段階における調査の杜撰さを示すも
のである。
エ施設4
施設4にはP1のP14支部が置かれているところ,利用規約は提出さ
れておらず,使用簿は本件減免措置(施設4)の時点で提出されていなか
った。使用簿(乙A4の5)の提出時期は同減免措置があった後の平成2
1年7月であるし,「使用者」欄には「一般同胞」と「P5役員」の記載
があるところ,「一般同胞」の使用とされているのは,P1関係の同胞で
あると考えられるし,「P5役員」は,P1傘下のP5の役員であるから,
施設4が,一般の在日朝鮮人のための公民館的施設として使用されていた
という事実を認めることはできない。また,使用簿によると,最も多い使
用は「卓球クラブ」であるが,これはP1P14支部のサークルであると
考えられ,いずれにせよその使用者はP1関係者である。また,施設4の
2階は,その使用の大半がP5役員とP4というP1関連団体が使用して
いることから,少なくともこの部分については,専ら在日朝鮮人のための
公民館的施設に供されているといえないことは明らかである。
オ施設5
施設5には,P1の大阪府P15支部が置かれているところ,施設5の
利用規約及び使用簿は提出されていない。「P16会館使用状況につい
て」と題する書面(乙A5の5)が提出されているが,同書面は施設の使
用後に関係者によって作成された活動報告のようなものであるから,使用
の都度,使用状況を逐一記録したものとはいえない。また,同書面によれ
ば,施設5の利用は,P1関連団体(P1支部常任委員会,P5理事会,
P3支部常任委員会,P4支部常任委員会,P17結成準備委員会)の会
議であるところ,これらはいずれもP1の活動であって,一般の在日朝鮮
人のための公民館的施設として使用されていたという事実を認めることは
できない。
平成21年4月21日に実施された実地調査においては,施設5の一部
がP1傘下のP18会によって専用使用されていたことが判明し,減免措
置の変更決定が行われた(別紙2「変更決定一覧」参照)。これは,平成
20年5月7日に行われた施設管理者の説明が全く信用できないものであ
ることを示しており,その他の施設部分の使用実態についても,施設管理
者の説明は信用できない。
カ施設6
施設6には,P1大阪府のP19支部が置かれているところ,施設6の
利用規約及び使用簿は提出されていない。「2008年度P20会館及
びP21会館利用状況について」と題する書面(乙A6の5)が提出され
ているが,同書面によれば,大半の使用はP1関連団体によるものである
ことが一見して明らかである。老人クラブや囲碁クラブ等の団体の使用も
みられるが,これら団体も,P1の関係団体であることが推認される。
また,本件減免措置(施設6)当時に家屋平面図が添付されていなかっ
たことに加え,実地調査の聴き取りによって把握された施設6の使用状況
と上記書面の記載との間に齟齬があること,同減免措置後に再度行われた
実地調査において,駐車場部分の使用について疑義が生じ,減免措置の変
更決定がなされたこと(別紙2「変更決定一覧」参照)等からすると,実
地調査の聴き取りによる使用状況は信用できず,調査は杜撰なものであっ
たといえる。
キ施設7
施設7は,P1大阪府P19支部が借り受け,P22分会として使用さ
れているところ,施設7の利用規約及び使用簿は提出されていない。「2
008年度P20会館及びP21会館利用状況について」と題する書面
(乙A6の5,7の5)が提出されているが,同書面によると,施設の使
用は月に2回「P23会」による利用と,P1P4P22分会の年3回な
いし4回の集いがあるだけである。これら活動がP1の活動と無関係なも
のであるかは不明であるし,そもそも月2回程度の使用をもって,専ら公
民館的使用に供されていると認めることは困難である。
また,本件減免措置(施設7)当時,家屋平面図が添付されておらず,
住居として使用されていた可能性もあるにもかかわらず,電気メーターな
どの確認もなされていないこと等からすると,調査も杜撰なものであった
といえる。
ク施設8
施設8は,P1大阪府P24支部として使用されているところ,施設8
の利用規約及び使用簿は提出されていない。利用単位を記載した書面(乙
A8の5)が提出されているが,同書面によると,使用しているのはいず
れもP1の関連団体であることがうかがわれるし,「P3室」,「P4
室」等の部屋の名称からしても,それぞれP1の傘下団体によって専有使
用されていることが窺われる。
ケ施設9
施設9は,P1大阪府P24支部P25分会として使用されているとこ
ろ,施設9の利用規約及び使用簿は提出されていないし(使用状況に係る
資料についても,事後的にも提出されていない。),1階が居室として使
用されていることが確認されており,2階についても同様であると推測で
きるから,施設9についても,一般の在日朝鮮人のための公民館的施設と
して使用されていたという事実を認めることはできない。
コ施設10
施設10は,P1の基層組織であるP26分会として使用されていると
ころ,施設10の利用規約及び使用簿は提出されていないし(使用状況に
係る資料についても,事後的にも提出されていない。),1階の半分強,
2階及び3階は居室として使用されていることが確認されており,1階の
うち一部の区画が「集会所」とされているが,当該「集会所」には,長机
が並べられているのみであり,この部分が一般の在日朝鮮人のための公民
館的施設として使用されていたという事実を認めることは到底できない。
サ施設11
施設11は,P1大阪府のP27支部として使用されているところ,施
設11の利用規約及び使用簿は提出されていないし,3階の「事務室兼会
議室」には応接セットが置かれているだけで,実地調査による聴き取りで
もその使用状況は何ら確認されていない。
また,施設11は,施設管理者の立会いなしに実地調査を行っており,
実地を見る前に電話で施設管理者から説明を受けたに止まるから,実地調
査自体が行われていないと評価すべきである。
シ施設12
施設12は,P1大阪府P28支部として使用されているところ,施設
12の利用規約及び使用簿は提出されていない。施設12の使用状況に係
る資料として「P29会館」と題する書面(乙A12の5の1)及び「P
28支部のサークル活動」と題する書面(乙A12の5の2)が提出され
ているものの,これら書面によれば,施設12は,複数のP1傘下団体に
よる各月1回の会議に供されていることがうかがわれるし,開催されてい
る各種教室も「P28支部のサークル活動」と記載されており,P28支
部の会員による活動であると認められるから,一般の在日朝鮮人のための
公民館的施設として使用されていたという事実を認めることはできない。
ス施設13
施設13は,P1大阪府P28支部が借り受け,P30分会として使用
されているところ,施設13の利用規約及び使用簿は提出されていない。
使用状況に係る書面として「P30分会」と題する書面(乙A13の5)
が提出されているものの,同書面によれば,施設13は,月1回のP30
分会の「分会役員会議」の使用と,月1回の「囲碁」の使用が記載されて
いるが,「囲碁」の使用が,P30分会と無関係なものとは思われず,一
般の在日朝鮮人のための公民館的施設として使用されていたという事実を
認めることはできない。
セ施設14
施設14は,P1大阪府P28支部が借り受け,P31分会として使用
されているところ,施設14の利用規約及び使用簿は提出されていない。
「P31分会」と題する書面(乙A14の5)が提出されているものの,
同書面によれば,施設14は,専ら,月2回のP31分会の「分会役員会
議」に使用されていたことがうかがわれ,P1の会員以外の在日朝鮮人が
自由に利用できる雰囲気はなく,公民館的施設として使用されていたとい
う事実を認めることはできない。
また,本件減免措置(施設14)当時,家屋平面図が添付されておらず,
調査も杜撰なものであったといえる。
ソ施設15
施設15は,P1大阪府P32支部として使用されているところ,施設
15の利用規約及び使用簿は提出されていない。「P33会館使用記録」
と題する書面(乙A15の5)によれば,大半がP1関連団体(支部役員,
P3,P4等)による使用である。ミニデイ運営委員会やヨガ教室のよう
な中立的な名称の活動もみられるが,これらがP1の活動とは無関係な活
動であることをうかがわせる資料はない。
タ施設16
施設16は,P1大阪府のP34支部として使用されているところ,施
設16の利用規約及び使用簿は提出されていない。使用簿に準じる「P3
5会館利用申込書」と題する書面(乙A16の5)によれば,月1回ない
し2回程度,茶話会等による使用がうかがわれるが,P1関連団体の活動
ではないと認めるに足りる裏付けはない。施設16の入り口等には「P3
6会」の看板が掲げられており,P1関連団体であるP5が専有使用して
いる疑いがある。
チ施設17
施設17は,P1大阪府のP37支部の基層組織であるP38分会が置
かれているところ,施設17の利用規約及び使用簿は提出されておらず,
使用貸借契約書等は本件減免措置(施設17)の時点では提出されていな
い。施設管理者からの聴き取り内容にも疑義があり,一般の在日朝鮮人の
ための公民館的施設として使用されていたという事実を認めることはでき
ない。また,2階については実地調査が行われた形跡はなく実地調査が不
十分である。
ツ施設18
施設18は,P1大阪府のP37支部P39分会が置かれているところ,
施設18の利用規約及び使用簿は提出されておらず,使用貸借契約書等は
本件減免措置(施設18)の時点では提出されていない。
テ施設19
施設19は,P1大阪府のP37支部として使用されているところ,施
設19の利用規約及び使用簿は提出されておらず,使用貸借契約書等も提
出されていない。施設管理者による施設の使用実態の説明は具体性がなく,
信用できないし,1階の「P3集会室」は,その名称からしてP1傘下の
P3が専有している疑いがあり,一般の在日朝鮮人の集会等に使用されて
いるとは考え難い。
ト施設20
施設20は,P1大阪P34支部による無償使用がなされており,P1
関係施設であることが明らかである。施設20の利用規約及び使用簿は提
出されていない。使用状況に関する資料として提出されている「P40会
館利用状況」と題する書面(乙A20の5)には,利用団体,利用場所の
記載がなく,そもそも使用予定が記載されているのか使用実績が記載され
ているのかも不明であることからすれば,使用実態が客観的に把握できる
とはいえない。利用目的として記載されているヨガ教室等は,P1の活動
とは無関係なものであるか否かは不明であり,P1関係者による使用であ
ることが推認できる。しかも,本件減免措置(施設20)の際,施設20
の内部調査は行われておらず,施設管理者の立会いもなく,施錠されたド
アの隙間から中をのぞき込んだというだけであるなど,実地調査が十分に
なされないまま減免措置がなされたことは明らかである。
(3)小活
以上によれば,本件各減免措置は,本件各固定資産がP1関係団体や関係
者によって使用されていることが明らかであるか,もしくはP1関係者以外
の者が使用していることが明らかであるとは認められないにもかかわらず,
十分な使用状況の調査がなされないまま,信用性に乏しい各施設管理者の説
明を鵜呑みにし,各施設の使用に係る客観的な裏付けとなる資料がない状況
下でなされたものであるといえるから,大阪市長の裁量権を逸脱・濫用した
ものとして違法である。
2被告の主張
(1)ア地方税法は,条例により地方公共団体が減免措置を行うことができる
場合として「その他特別の事情」を規定しているが(地方税法367条),
具体的に何がこれに該当するかについては条例の裁量に委ねていること,
住民の利益や達成すべき行政目的は地方公共団体ごとの事情により多種多
様であって,減免措置の対象となる固定資産においてなされる活動自体が
直接に住民一般の利益を増進するものである必要があるとはいえないこと
等からすると,一定範囲の住民のみが使用している固定資産であっても,
これを減免措置の対象とする合理性・必要性が存在すれば本件条例に反す
るものではなく,必ずしも当該固定資産が,住民一般に使用されている必
要はない。
そして大阪市内には,在日韓国・朝鮮人が約8万人居住しているところ,
これらの在日韓国・朝鮮人は,大阪市の住民として地域社会の中で日本国
民と共に生活するとともに,独自のコミュニティを形成していることから,
被告においてその存在を重視せざるを得ず,またこれら在日韓国・朝鮮人
に使用されてきた特定の施設は,教養の向上,健康の増進,生活文化の振
興,社会福祉の増進などそのコミュニティ活動のための施設として活用さ
れていることからすれば,一般の地域住民のための地域振興などの集会所
とは別に,在日韓国・朝鮮人のための施設を確保する必要があるから,た
とい当該施設が不特定多数の地域住民に使用されていなくともこれについ
て減免措置を行う合理性・必要性があるといえ,当該施設が「在日外国人
のための公民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」
(本件条例施行規則4条の3第31号)にあたるとして固定資産税等を減
免することは,地方税法及び本件条例において大阪市長に認められた裁量
の範囲内にあり,適法である。
イそして,「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の
用に供する固定資産」(本件条例施行規則4条の3第31号)に当該施設
が該当するか否かについての調査の程度は,本件各固定資産が在日朝鮮人
(本邦に居住する北朝鮮の国籍を有する者らをいう。)のための公民館的
施設に当たるとして固定資産税等の減免の申請がされていることを踏まえ
ると,調査担当者は,減免申請書,同添付書類の検討や実地調査による確
認を中心として,関係者への聴き取り結果等をも踏まえて,当該施設につ
いて①在日朝鮮人が広く使用できる用途に使用し得る状態にあり,使用資
格を特定団体や特定人に限定していないこと,②公民館的施設として専ら
使用されているものであること,③当該固定資産が有料で貸付けされてい
るものではないことといった点を満たすものであること,したがって,専
らP1のための施設となっていないことを確認すれば必要十分である。
なお,実際に施設を使用している者がP1関係者であるか否かは知るす
べがないから,実務上は,在日朝鮮人が広く使用できる用途であったか,
使用対象をP1関係者に限定していないかといった観点から確認を行い,
限定使用であることが明らかでない場合は,在日朝鮮人一般が使用する施
設であると判断しており,かかる確認を行えば十分である。
原告は,P1関係者による使用があることを指摘するが,使用者が専ら
P1関係者以外の者であることを確認する必要はない。なぜなら,ハング
ル語講座やヨガ教室など,使用内容からして明らかに特定団体の利益を目
的とするものではなく,社会教育やレクリエーション目的で開催されてい
るものもあるから,P1関係団体ないしP1関係者が主催者として本件各
固定資産を使用していたとしても,その使用は在日朝鮮人のための公民館
的施設としての本来的使用に当たるし,P1関係団体の会議のための使用
も「各種団体の連絡を図る」ためであるといえるから,在日朝鮮人の公民
館的施設としての本来的使用に当たる。むしろ,P1関係者が本件各固定
資産を使用していることをもって直ちに固定資産税等の減免の対象外とす
ることは,P1関係者であるという特定の資格を有していることのみをも
って,在日朝鮮人として公民館的施設を使用することを制限するというこ
とであり,在日朝鮮人の間での差別を生じさせるものであって妥当ではな
い。
ウ原告は,平成17年通知において提出を求められている書類の不備や,
平成20年通知において求められている実地調査の記事欄の記載の不備を
指摘するが,平成17年通知及び平成20年通知はいずれも被告の内規に
すぎず,減免措置の要件を満たすか否かを判断するための一資料として求
められているものであるという性格上,実地調査や聴き取り等の結果から
減免措置の要件を満たすことが確認されればよいのであって,必ずしも両
通知どおりの取扱いがなされていなくとも,減免措置が違法となるもので
はない。
(2)以上を前提とすると,以下のとおり,本件各固定資産に係る本件各減免
措置はいずれも違法であるとは認められない。
ア施設1について
施設1は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,減免措置に至ってい
る。使用貸借契約書については,本件減免措置(施設1)後に提出されて
いるが,同減免措置の時点では書面での提出がなかったということにすぎ
ず,有料で借り受けていないことについては実地調査の際に調査担当職員
が口頭で確認済みであるから,何ら問題はない。
原告は,本件減免措置(施設1)後に一部変更決定がなされていること
を指摘するが,これは施設の一部がパソコンショップとして使用されてい
ることが,施設管理者の申告によって事後に判明したという特殊事情によ
るものであり,当時の実地調査が適正であったことに影響を与えるもので
はない。
イ施設2について
施設2は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
2)に至っている。使用状況に関する資料については,同減免措置後に提
出されているが,同減免措置の時点では書面での提出がなかったにすぎず,
使用状況については実地調査の際に調査担当職員が口頭で確認済みである
から,何ら問題はない。
施設2を使用している団体がP1関連団体であるという原告の主張は憶
測にすぎないし,仮にそうであったとしても,これら団体のみが使用して
いるのではなく,ヨガ教室や老人会の使用もあるから,P1関係者のみに
使用が限定されているとはいえない。
ウ施設3について
施設3は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
3)に至っている。
原告は,本件減免措置(施設3)後に一部変更決定がなされていること
を指摘するが,これは施設の一部がP41センターや学童保育所のために
使用されていることが,施設管理者の申告によって事後に判明したという
特殊事情によるものであり,当時の実地調査が適正であったことに影響を
与えるものではない。
エ施設4について
施設4は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
4)に至っている。使用貸借契約書及び使用簿については,同減免措置後
に提出されているが,同減免措置の時点では書面での提出がなかったにす
ぎず,有料で借り受けていないこと及び使用状況については実地調査の際
に調査担当職員が口頭で確認済みであるから,何ら問題はない。
使用団体が「P1P14支部のサークル」であるという原告の主張は憶
測にすぎない。一般同胞は,P1とは関係のない朝鮮人を意味しているも
のであるし,P5役員とP4はP1関連団体ではない。仮にP5役員とP
4がP1関連団体であったとしても,P1とは関係のない団体によっても
施設4は使用されているのだから,使用がP1関係者に限定されているわ
けではない。
なお,施設4には,P42が平成23年に調査に訪れているが,これは
本件減免措置(施設4)に係る実地調査から約3年も後に行われたもので
あり,P5の看板の有無や部屋内の備品配置等,同減免措置当時の状況と
は異なっている。
オ施設5
施設5は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
5)に至っている。
そして,施設5については,ハングル語やヨガなどのセミナーの使用が
みられるから,一般朝鮮人に利用されているといえる。
本件減免措置(施設5)後に一部変更決定がなされているが,これは施
設の一部が商工会のために使用されていることが,施設管理者の申告によ
って事後に判明したという特殊事情によるものであり,当時の実地調査が
適正であったことに影響を与えるものではない。また,施設5についても
P42が平成23年に調査に訪れているが,施設4と同様,本件減免措置
(施設5)当時の状況とは異なっている。
カ施設6
施設6は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
6)に至っている。
そして,施設6については,老人クラブや囲碁クラブによる使用がみら
れるところ,これら使用団体がP1関連団体であることをうかがわせる客
観的資料はない。原告は現地調査の聴き取りと使用状況に係る資料の記載
との齟齬を指摘するが,これは平成20年1月5日から同年5月19日ま
での限られた期間における使用を記載したものであるから,原告の指摘は
あたらない。
本件減免措置(施設6)後に一部変更決定がなされているが,これは施
設の駐車場の使用実態について,施設管理者の申告によって事後に疑義が
生じたという特殊事情によるものであり,当時の実地調査が適正であった
ことに影響を与えるものではない。
キ施設7
施設7は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
7)に至っている。
ク施設8
施設8は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
8)に至っている。
原告は,部屋の名称からすれば使用者がP1関係者であることが明らか
である旨主張するが,部屋の名称で使用団体を推測することなどできない。
本件では,実地調査によって,一般朝鮮人が使用していることが明らかと
なっている。
ケ施設9
施設9は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確認
するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類等
を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること及
び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施設
9)に至っている。使用簿については,同減免措置後に提出されているが,
同減免措置の時点では書面での提出がなかったということにすぎず,使用
状況については実地調査の際に調査担当職員が口頭で確認済みであるから,
何ら問題はない。
コ施設10
施設10は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設10)に至っている。使用簿については,同減免措置後に提出されてい
るが,同減免措置の時点では書面での提出がなかったということにすぎず,
使用状況については実地調査の際に調査担当職員が口頭で確認済みである
から,何ら問題はない。
サ施設11
施設11は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設11)に至っている。施設11については,施設管理者と日程の都合が
つかず,やむを得ず立会人なしで実地調査を行っているが,当該施設につ
いては,調査担当職員が前年度においても実地調査を行い,概ね内部の状
況を把握している上,使用状況について施設管理者からあらかじめ聴き取
りを行い,実地調査によってその説明と齟齬がないことを確認している。
使用簿が提出されていないが,当該施設において公民館的使用がなされ
ていることについては,実地調査及び施設管理者からの聴き取りによって
確認をしており,何ら問題はない。
シ施設12
施設12は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設12)に至っている。
施設12をP1関係者が使用しているという原告の主張は推測にすぎな
いし,P1以外の団体によるものとみられる文化教室も開催されている。
ス施設13
施設13は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設13)に至っている。
セ施設14
施設14は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設14)に至っている。
施設14で行われている会議の内容は,花見や敬老会,地蔵盆など,在
日朝鮮人のための行事に関するものであり,P1関係者に関するものとは
いえない。
ソ施設15
施設15は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設15)に至っている。
タ施設16
施設16は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設16)に至っている。
チ施設17
施設17は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設17)に至っている。
使用簿が提出されていないが,施設17において公民館的使用がなされ
ていることについては,実地調査及び施設管理者からの聴き取りによって
確認をしており,手続面でも何ら問題はない。
2階について実地調査が行われていない点については,2階は天井の高
さが足りないため,屋根裏部屋のようなものであり,減免対象外として扱
っていることから,何ら問題はない。
ツ施設18
施設18は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設18)に至っている。
使用簿が提出されていないが,施設18において公民館的使用がなされ
ていることについては,実地調査及び施設管理者からの聴き取りによって
確認をしており,手続面でも何ら問題はない。
テ施設19
施設19は,調査担当職員による実地調査が行われ,各部屋の状況を確
認するとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に添付された書類
等を精査することによって,公民館的施設としての使用が認められること
及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本件減免措置(施
設19)に至っている。
使用簿が提出されていないが,施設19において公民館的使用がなされ
ていることについては,実地調査及び施設管理者からの聴き取りによって
確認をしており,手続面でも何ら問題はない。
原告は,P3による使用はP1による使用である旨主張するが,憶測に
すぎない。
ト施設20
施設20は,調査担当職員によって外観から施設20を調査する形態で
の実地調査が行われるとともに,施設管理者から事情を聴取し,申請書に
添付された書類等を精査することによって,公民館的施設としての使用が
認められること及び在日朝鮮人一般が使用できることを確認した上で,本
件減免措置(施設20)に至っている。
実地調査の際,調査担当職員は施設内部に立ち入っていないが,調査担
当職員はあらかじめ施設管理者から施設内の状況の説明を受けていたし,
施設20がわずか35.50平方メートルと小さいものであること,1階
は備品が置かれており,2階は窓にカーテンがないなど,外部から見て住
居として使用していないことをうかがわせる状況にあったこと,施設管理
者の説明と外部から把握できる状況との間に齟齬がなかったことなどから,
内部調査を行う必要はなかったものである。
原告は,P1の分会での活動が施設使用の過半数と占めると主張するが,
そのような指摘は的外れであるし,ヨガがP1関係者に限定されていると
いう裏付けもない。
第4当裁判所の判断
1本件各減免措置のうち,別紙2「変更決定一覧」記載の各固定資産に係る本
件各変更決定により変更された部分の取消しを求める訴えの利益について(職
権による検討)
前記前提事実イ記載のとおり,本件各減免措置のうち,別紙2「変更決
定一覧」記載の各固定資産(施設1,3,5,6)については,本件各変更決
定によりその一部が変更されているから,本件各変更決定により変更がされた
部分の取消しを求める利益はなく,同取消しを求める部分は却下を免れない。
2P1について
P1は,昭和30年に結成された団体である。P1の平成24年1月6日時
点のホームページには,P1の性格と活動原則について,「P1は,人民大衆
中心の世界観であり,愛族愛国の思想であるチュチェ思想を指導的指針として
すべての活動を繰り広げている。」旨掲載されており,また,同ホームページ
によれば,P1の綱領(平成16年5月に現在のものに改正された。)におい
て,「われわれは,愛族愛国の旗じるしのもとに,すべての在日同胞を朝鮮民
主主義人民共和国のまわりに総結集させ,同胞の権益擁護とチュチェ偉業の継
承,完成のために献身する。」,「われわれは,朝鮮民主主義人民共和国を熱
烈に愛し擁護し,合弁・合作と交流事業を経済,文化,科学技術の各分野にお
いて強化し,国の富強発展に特色のある貢献をする。」などと定められており,
P1が金日成によって唱えられたチュチェ思想を活動の中心としていることが
明らかにされている。(甲15,17の1)
また,同ホームページには,P1の地方本部について,「P1は,日本の都
道府県ごとに47の地方本部をおいている。ただし東京都には,東京都本部と
西東京本部の2つの地方本部がある。」,「地方本部は,愛族愛国運動の地域
的指導単位であり,管轄地域の各界各層同胞を団結させ,民族教育文化事業の
発展と同胞生活奉仕活動の強化,そして祖国の統一と隆盛,対外事業の促進の
ために活動する。」旨掲載され,P1の支部について,「支部は,管轄地域の
同胞社会と諸般の活動の総合的拠点であり,P1の末端指導機関,愛族愛国事
業の執行単位としての機能と役割を遂行する。」,「支部は,同胞の生活と直
結する分会の活動を管轄し,同胞生活相談総合センターを設立,運営してい
る。」,「支部は,P1の方針にしたがって管下のP5,P3,P4,P17,
学校などと協力して,地域同胞の生活と権利,民族性を守るための活動など,
すべての愛族愛国事業を企画し遂行している。」旨掲載され,さらにP1の分
会について,「分会は,同胞の生活単位であり,P1の基層組織である。」,
「分会は,同胞の中から提起される生活上の困難や悩みを速やかに受けとめ誠
意をもって解決し,彼らの民族性を守り,同胞が団結し仲睦まじいトンネ(町
内)をつくる活動を繰り広げる実践単位である。」旨掲載されている(甲17
の2)とともに,大阪府下の本部及び支部の住所地が掲載されているが,本件
各固定資産のうち約半数は,同掲載の支部の住所地と同一の住所地となってい
る(甲17の6)。そして,上記ホームページ等によれば,P1の傘下団体と
して,P5,P3,P4,P17,P43,P44などが認められる(甲16,
17の2)。
P1は,思想と政見,信仰及び社会的地位を問わずその綱領,規約を支持,
賛同する同胞の各団体と人士によって構成される統一戦線体であるとされ,全
ての同胞の意思と利益を代表すると標榜しているところ,在日朝鮮人の全てが
P1の会員となっているものではなく,平成20年時点でのP1の会員数は約
4万人程度とみられている(甲14,17の1)。
3判断枠組み
(1)地方税法367条は,市町村長は,天災その他特別の事情がある場合に
おいて固定資産税の減免を必要とすると認める者,貧困に因り生活のため公
私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り,当該市町村の条例の
定めるところにより,固定資産税を減免することができる旨規定している。
これを受けて,本件条例71条は,固定資産税の減免について規定しており,
同条4項は,大阪市長は,「公益上その他の事由により特に必要と認めると
き」は大阪市規則で定めるところにより固定資産税を減免することができる
旨規定しているところ,本件条例施行規則4条の3は,上記本件条例71条
4項の規定により固定資産税を減免すべき固定資産を列挙しており,本件条
例施行規則4条の3第31号で,「在日外国人のための公民館的施設におい
て,専らその本来の用に供する固定資産」については,固定資産税を免除す
るとされている。そして,本件各免除措置は,本件各固定資産が本件条例施
行規則4条の3第31号にいう「在日外国人のための公民館的施設において,
専らその本来の用に供する固定資産」に当たるとして,固定資産税等の減免
がされている。
そうであるところ,上記各規定の文言からすれば,本件条例71条4項及
び本件条例施行規則4条の3第31号は,「在日外国人のための公民館的施
設において,専らその本来の用に供する固定資産」が類型的に公益性が高い
といえるとして,かかる固定資産について固定資産税等の減免を認める趣旨
にでたものと解される。
平成20年通知別添の「市税の減免に係る基本的な考え方」(平成19年
3月付け)には,公益上の理由により減免を実施する場合の「公益」とは,
学術・科学技術(学術及び科学技術の振興),文化・芸術(文化及び芸術の
振興),地域社会(地域社会の健全な発展)等同書面別表の公益の分類に掲
げる22の項目のいずれかに該当する「不特定多数の利益」(利益を受ける
者が特定の範囲に限られず,かつ,多数であること)であり,さらに,減免
の実施が市の施策に寄与することが必要である旨記載され,また,市税は,
本来,法律,条例に基づいて適正・公平に賦課徴収されるべきものであるか
ら,これを公益上の理由から減免する場合,減免を行うことによって本来の
市税を徴収して市の施策の財源として市民のために活用した場合に劣らず効
果的に公益の増進を図ることができるものでなければならず,したがって,
市税の減免を行うにあたっては上記の「公益」の概念に該当するとともに,市
の何らかの施策に寄与し市民全体の利益につながるものであることが必要で
あると考えられる旨記載されている。
上記に加え,前記法令等の定め(3)記載の平成20年通知(乙3)及び平
成17年通知(乙4)の内容にかんがみると,固定資産が本件条例施行規則
4条の3第31号にいう「公民館的施設」にあたるためには,当該固定資産
が上記の意味での公益に資する施設であるとともに,市民全体の利益につな
がる施設であることが必要であると解されるが,大阪市に居住し生活してい
る在日外国人に対してコミュニケーションの場を確保し,その交流を促進す
ることは,地域社会の円滑な人間関係の維持・発展に結びつくものであるほ
か,当該地域における文化の形成に寄与するものであり,ひいては当該地方
公共団体の住民一般の公益に資するといえるところ,在日外国人のための公
民館的施設としては,複数の国籍を有する者のコミュニティにより使用され
る施設も存しようが,同一の国籍を有する者のコミュニティにより使用され
ることが予定されている施設が通常であると解されることからすれば,本件
条例施行規則4条の3第31号にいう「公民館的施設」には,当該地域に居
住する外国人について,国籍を超えて広く使用されている施設のみならず,
当該地域に居住する同一の国籍を有する在日外国人によって広く使用されて
いる場合も含まれると解するのが相当である。
また,「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に
供する固定資産」が固定資産税等の減免の対象とされている趣旨は,大阪市
内に居住し生活している在日外国人に対してコミュニケーションの場を提供
し,その交流を促進することが最終的には大阪市全体の公益に結びつくため
と解されることに照らすと,当該施設の近辺の一定区域内に居住し,少なく
とも当該施設がその使用を予定している同一の国籍を有する者一般が使用し
得る施設であって初めて固定資産税等の減免が正当化されるものと解するの
が相当であって,一定区域内に居住する同一の国籍を有する住民のうち特定
の団体の構成員であるなど一定の資格を有するものでなければ使用すること
ができない施設は,固定資産税等の減免の対象となる「在日外国人のための
公民館的施設」には当たらないというべきである。
さらに,本件条例施行規則4条の3第31号は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」と規定しており,
固定資産税等の減免がされるためには,当該固定資産が公民館的施設として
「専ら」その本来の用に供されていることが要件とされていることに照らせ
ば,少なくとも当該施設の使用の大半が,在日外国人のための公民館的施設
の用途に供されているものであって,それ以外の用途に供されることがあっ
たとしても,それが単発的,例外的な使用に止まるものと認められる場合に
初めて当該施設が同号に該当し固定資産税等の減免の対象となるものと解す
るのが相当である。
(2)P1による使用
本件においては,本件各固定資産がP1によって使用されているのではな
いかが問題となっているところ,前記2記載のP1の性格や活動内容,組織
内容等に照らせば,P1は,北朝鮮の国家的な政治体制や政治思想を所与の
ものとしてこれに賛同し,北朝鮮の権利利益を擁護しつつ,在日朝鮮人の民
族性を保持し,民族教育を行い,民族的差別と迫害行為に反対するために活
動する団体であり,我が国やその地域社会の利益と直接結びつく活動を行っ
ているとは見受けられない上,在日朝鮮人全員を構成員とする団体ではなく,
在日朝鮮人の一部が構成員となっているに止まるものである。このようなP
1の性格や,構成員の状況等に照らせば,P1の活動のための施設の使用は,
同施設の所在する地域に居住する在日朝鮮人一般のコミュニケーションの場
を確保し,在日朝鮮人一般の人間関係を円滑にし,当該地域の文化の形成等
に資するという本件条例施行規則4条の3第31号の目的に沿うものという
ことはできない。
以上によれば,本件各固定資産が「在日外国人のための公民館的施設にお
いて,専らその本来の用に供する固定資産」(本件条例施行規則4条の3第
31号)に該当するためには,本件各固定資産の大半がその所在する地域に
居住する在日朝鮮人一般により現に使用され,あるいは使用可能なものとな
っていることが必要であり,たといP1の活動としての使用があったとして
も,それが単発的,例外的な使用に止まるものである必要があると解するの
が相当である。
この点,被告は,P1関係団体ないしP1関係者が主催者として本件各固
定資産を使用していたとしても,それが在日朝鮮人一般を対象とする社会教
育やレクリエーション等のための使用であれば,在日朝鮮人のための公民館
的施設としての本来的使用に当たるし,P1関係団体の会議のための使用も
「各種団体の連絡を図る」ためであるといえるから,在日朝鮮人の公民館的
施設としての本来的使用に当たり,むしろ,P1関係者が本件各固定資産を
使用していることをもって直ちに本件各固定資産の減免の対象外とすること
は,P1関係者であるという特定の資格を有していることのみをもって,在
日朝鮮人として公民館的施設を使用することを制限するということであり,
在日朝鮮人の間での差別を生ぜしめるものであって妥当ではない旨主張する。
しかしながら,上記2記載のようなP1の性格や活動内容等に照らし,また,
P1が在日朝鮮人一般とは一線を画した組織であることを踏まえると,P1
関係団体がその会議のために当該施設を使用する場合はもとより,在日朝鮮
人一般を対象とするものであっても,P1関係団体ないしP1関係者が主催
者となって行う活動である場合には,これら活動に係る当該施設の使用は,
公民館的施設をその本来の用に供しているものということはできないのであ
って,上記被告の主張を容れることはできない。
(3)調査方法及び固定資産減免措置等の判断等
本件条例71条4項が,大阪市長は,公益上その他の事由により特に必要
と認めるときは,申請に基づき,固定資産税を減免することが「できる」と
していることや,本件条例71条4項を受けた本件条例施行規則4条の3第
31号が「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に
供する固定資産」を固定資産税等の減免措置の対象として規定しているが,
同号の規定内容に照らしても,同号に該当するか否かが一義的に定まるもの
とは言い難いことからすると,大阪市長は,固定資産税等の減免対象となる
施設が「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に供
する固定資産」に当たるか否かの判断について,一定の裁量権を有している
と解される。
もっとも,固定資産税等の減免措置が,租税公平の原則の例外をなすもの
であって,本件のような固定資産税等の減免措置は,固定資産税等を適正に
徴収してこれを被告の施策の財源として大阪市民のために活用すべきところ
を公益的な見地からこれを減免するものであることに加え,平成20年通知
や平成17年通知さらには本件総務事務次官通知の内容をもあわせ鑑みれば,
「在日外国人のための公民館的施設において,専らその本来の用に供する固
定資産」に当たるか否かの判断について大阪市長が有する裁量の範囲は相当
程度限定されたものというべきである。また,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」と認めることができ
ない場合についても,大阪市長においてなお固定資産税等の減免措置を行う
裁量を有するものではないことは明らかである。
そして,上記各通達等の内容に照らせば,とりわけ,本件のようにP1に
よる使用が問題となる固定資産については,「在日外国人のための公民館的
施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当するか否かを判
断するために必要な事実関係の把握は,的確な実地調査を行った上で,客観
的な裏付けに基づいて厳正になされるべきであるし,それを前提とした固定
資産税等の減免措置を行うか否かの判断も,上記実地調査の結果や客観的な
資料等(なお,固定資産税等の減免申請に必要な書面等の内容は,平成17
年通知記載のとおりである(前記法令等の定め(3)イ参照)。)に基づく厳
格な事実認定をした上で,事実に対する評価を適正に行い,当該施設が在日
外国人のための公民館的施設としての用に専ら供されていると認められた場
合に初めて,当該施設に係る固定資産税等の減免措置を講ずるべきであると
解するのが相当である。
したがって,本件各減免措置が違法であることの主張立証責任は原告にあ
るところ,その内容は,本件各固定資産がその大半が在日朝鮮人一般の使用
に供されており,P1による使用が存するとしても,それが単発的,例外的
なものに止まるものと認めることはできないことの主張立証で足りるものと
いうべきである。この点,被告は,専らP1のための施設となっていないこ
とを確認すれば必要十分であり,このことが明らかでない場合は在日朝鮮人
一般が使用する施設であると判断すべき旨主張するが,かかる被告の主張は,
本件条例施行規則4条の3第31号の文言に照らしても,また,上記説示し
た諸点に照らしても,採るを得ない。
4本件各減免措置の違法性の検討
上記3の見地から,本件各固定資産について,その大半が在日朝鮮人一般の
使用に供されており,P1による使用が存するとしても,それが単発的,例外
的なものに止まるものと認めることはできず,したがって,本件各減免措置が
違法と認められるか否かを検討する。
(1)施設1について
ア本件減免措置(施設1)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設1の名称は「P8会館」であり(乙A1の1,1の5),P1の
大阪府P7支部として使用されている(甲13,17の6,乙A1の
4)。
施設1の家屋平面図及び平成20年4月22日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設1の1階部分(約85.67平方メ
ートル)には「コミュニティ室,老人クラブ室(P9会),ミニデイ
室」,2階部分(約91.49平方メートル)には「老人クラブ(P9
会),ミニデイ娯楽室,会議室」,「老人クラブ室,生活相談所,図書
室」,「囲碁クラブ室,図書室」,3階部分(約91.49平方メート
ル)には,「講堂(多目的ホール)」,4階部分(5.88平方メート
ル)には「階段室」があること(なお,各部屋の呼称は,実地調査を行
った担当職員の陳述書(乙A1の1)によるものであり,家屋平面図上
の呼称とは異なっている。)が認められる(乙A1の1,1の3)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計約274.53平方メートル)
及び土地(102.89平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措
置の対象とされた(乙A1の1,1の2,1の7)。
(イ)施設の納税者及び借受人等
施設1の家屋に係る固定資産税等の納税者はP45及びP46(同人
らの住所は施設1の住居表示と同一であり,住所の表記にはP1の「大
阪府P7支部」が含まれている。),土地に係る固定資産税等の納税者
は有限会社P47(同社の住所は,P1大阪府P19支部の住居表示と
同一である。甲17の6,乙A1の2の2),施設1の借受人はP1大
阪府P7支部である(乙A1の4)。なお,施設1の家屋に係る使用貸
借証明書等は固定資産税等の減免の申請時に提出されていたが,土地に
係る使用貸借証明書等は本件監査請求後の平成21年7月14日に追加
提出されたものである(乙A1の4の2)。
(ウ)施設の使用状況
施設1の使用状況に係る資料としては,「平成19年度(2007)
P8会館使用年間計画書」と題する書面(乙A1の5)が提出されて
おり,同書面には,毎月3回ないし7回程度,「P9会・老人クラブ」
のお茶会,「婦人会」や「青年会」のミーティング,生活相談,会議,
新年会等の年中行事等が開催されている旨が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,施設1のうち,1階部分の「コミ
ュニティ室,老人クラブ(P9会),ミニデイ室」は会館の物品を保管
するための倉庫として,2階部分の「老人クラブ(P9会),ミニデイ
娯楽室,会議室」は老人クラブの活動や会議に,「老人クラブ室,生活
相談所,図書室」は老人クラブの活動や会館運営のための事務に,「囲
碁クラブ室,図書室」は囲碁教室に,3階部分の「講堂(多目的ホー
ル)」は学習会,ハングル講座,税金説明会等に,4階部分の「階段
室」は備品置き場として使用しているとの説明がされた(乙A1の1)。
(エ)固定資産税等変更決定
平成21年5月28日に行われた,平成21年度の施設1の固定資産
税等の減免措置に係る実地調査により,上記1階部分の「コミュニティ
室,老人クラブ(P9会),ミニデイ室」は,新品の家電商品が入って
いると思われる箱が多数保管されていたことが判明し,さらに同年7月
9日に行われた実地調査の際には,実地調査担当職員らが,施設管理者
から,同部屋がパソコンショップの商品の保管のために使用されている
こと,平成20年度の実地調査の際は,同部屋の中に商品の在庫がほと
んどなかったことから,商品の保管をしている旨の説明をしなかったと
の申し出を受け,さらに,同パソコンショップを運営する法人が平成2
0年4月21日に設立されたことが判明するなどしたため,平成21年
7月22日,同商品が保管されている1階部分の「コミュニティ室,老
人クラブ(P9会),ミニデイ室」(約68.87平方メートル)及び
2階部分のうち1部屋(約24.79平方メートル)については,平成
20年5月以降は,固定資産税等の減免適用対象から除外する旨の変更
決定(別紙2「変更決定一覧」参照)がされた(乙A1の1,1の8,
1の9)。
イ検討
以上によれば,施設1は,P1大阪府P7支部として使用されているほ
か,家屋に係る固定資産税等の納税者(個人)の住所はP1大阪府P7支
部と同一の住所であり,土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所
はP1大阪府P19支部と同一の住所であること,その名称も「P8会
館」とされており,P1大阪府P7支部の支部名にちなんだものと推認で
きること等からすると,施設1は,P1の支部として使用されているもの
であって,施設1における各種使用もP1との関連性が強く疑われる。そ
して,本件減免措置(施設1)当時,「平成19年度(2007)P8会
館使用年間計画書」が提出されていたものの,広く在日朝鮮人一般が使
用している実態を有するのであれば,使用者(もしくは団体)らが他の使
用者の使用予約状況等を確認するために使用簿が備え付けられていて然る
べきであるから,使用簿の存在は,広く在日朝鮮人一般が使用している実
態を検討するにあたって重要な資料であると考えるべきところ(この点に
ついては以下に検討する各施設(使用簿が提出されている施設4を除
く。)についても妥当する。),上記年間計画書は使用団体等の属性が明
らかではなく,施設1がP1の活動以外の在日朝鮮人一般の使用に供され
ているか否かを判断するための具体的な調査資料としては不十分である。
なお,上記のとおり,施設1がP1大阪府P7支部として使用されている
ことからすると,同年間計画書における会議,婦人会ミーティング,青年
会ミーティング等の記載は,P1としての活動と推認される。
また,減免措置がなされた当時,施設1の土地に係る使用貸借証明書等
及び調査担当職員による実地調査報告書は提出されていないこと(甲1),
減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調
査の内容が明確といえるほどに記載されてはいないこと,施設1の一部に
ついては,本件減免措置(施設1)後にその一部が減免対象から除外され
ており(上記ア(エ)),施設管理者による説明の信用性にも疑義があるこ
と(乙A1の1,1の8,1の9)等からすると,同減免措置に係る判断
資料の収集は不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設1について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設1)は,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないにも
かかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪市
長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(2)施設2について
ア本件減免措置(施設2)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設2の名称は「P11会館」であり(乙A2の5),P1大阪府P
10支部として使用されている(甲13,17の6,乙A2の4)。
施設2の家屋平面図及び平成20年4月8日に調査担当職員によって
行われた実地調査によれば,施設2の1階部分(面積の詳細不明)には
2階に上がるための「階段室」,2階部分(面積の詳細不明)にはロッ
カーで間仕切りされた「応接室」及び「管理室」,3階部分(面積の詳
細不明)には「多目的スペース」がある。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計152.08平方メートル)及
び土地(91.64平方メートル)が固定資産税等の減免措置の対象と
なっている(乙A2の1ないし2の3,2の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設2の家屋に係る固定資産税等の納税者はP1大阪府P10支部
(常任委員会)(同支部の住所は施設2の住居表示と同一である。),
土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47,施設2の借受人は
P1大阪府P10支部常任委員会である(乙A2の2,2の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設2の使用状況に係る資料としては「P11会館月予定」と題
する書面(乙A2の5)が提出されているところ,同書面には,毎週水
曜日夜にはヨガ教室,毎週金曜日夜には青年部交流会,毎週土曜日昼に
は老人会,月二,三回不定期の協議会,月1回生活相談が行われている
ほか,新年会やクリスマス会等の年間行事が開催されている旨が記載さ
れている。同書面は,本件監査請求後に追加で提出されたものである
(甲1)。
実地調査の際,施設管理者からは,2階部分の「応接室」は勉強会の
ために,「管理室」は施設運営のために,3階部分の「多目的スペー
ス」はヨガ教室,生活相談,老人会のカラオケや青年部の交流のために
使用するとの説明がされた(乙A2の1)。
イ検討
以上によれば,施設2は,P1大阪府P10支部として使用されてい
るほか,家屋に係る固定資産税等の納税者(同支部(常任委員会)とな
っている。)の住所は同支部と同一の住所であり,土地に係る固定資産
税等の納税者(法人)の住所はP1大阪府P19支部と同一の住所であ
ること等からすると,施設2は,P1の支部として使用されているもの
であって,施設2における各種使用もP1との関連性が強く疑われる。
また,本件減免措置(施設2)がなされた当時,使用状況に関する資料
及び調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこと(甲
1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による
実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと等からす
ると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であったといわざるを得
ない。
また,減免措置後に「P11会館月予定」と題する書面が提出さ
れているが,同書面は施設の使用に係る予定を記載したものに過ぎず,
同書面の記載自体も,使用頻度,曜日,昼もしくは夜に使用する旨及び
使用目的等がごく簡単に記載されているに止まるから,施設2がP1の
活動以外の在日朝鮮人一般の使用に供されているか否かを判断するため
の具体的な調査資料としては不十分であるというほかない。なお,上記
のとおり,施設2がP1大阪府P10支部として使用されていることか
らすると,同書面における協議会やP3交流会等の記載は,P1支部と
しての活動と推認される。
以上のことからすれば,施設2について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設2)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しない
にもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(3)施設3について
ア本件減免措置(施設3)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設3の名称は「P13会館」であり(乙A3の1,3の5),P1
大阪府P12支部として使用されている(甲13,17の6,乙A3の
4)。
施設3の家屋平面図及び平成20年4月25日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設3(家屋)の1階部分(56.00
平方メートル)には「学童保育所」,「倉庫」及び「給湯室」があり,
2階部分(57.00平方メートル)には「事務所」,「給湯室」及び
「倉庫」があり,3階部分(52.50平方メートル)には「集会室」
がある。このうち,本件減免措置(施設3)の対象部分に相当するのは,
1階部分のうち「倉庫」及び「給湯室」等(合計28.97平方メート
ル),2階部分,3階部分の各部屋(合計138.47平方メートル)
に,共用部分按分後の1階共用部分に係る減免措置適用面積部分を加え
た面積部分(合計約143.90平方メートル)である(乙A3の1,
3の3)。
上記施設3の家屋の延床面積から,減免措置対象外の学童保育所等に
係る部分を除いた床面積は,延床面積の87パーセントに相当するとこ
ろ,施設3の土地の面積部分(66.12平方メートル)のうち,同割
合の87パーセントに相当する面積部分が,本件減免措置(施設3)の
対象となっている(乙A3の1,3の2)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設3の土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47,借受人
はP1大阪府P34支部常任委員会である(乙A3の2,3の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設3の使用状況に関する資料としては「P13会館利用状況」と題
する書面(乙A3の5)が提出されており,同書面には,平成19年の
主な利用団体として,テコンド教室,チャンゴ教室,日朝友好新春のつ
どい実行委員会,日朝友好新春お花見会及び地域敬老会と箇条書きで記
載されているものの,使用日時,使用頻度,使用団体の代表者の氏名等
の具体的な事項は何ら記載されていない。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「学童保育所」は学童
保育所として,「倉庫」は会館の備品の収納に,「給湯室」は会館の使
用者の使用に,2階部分の「事務所」は会館運営のために,「給湯室」
は会館使用者の使用に,「倉庫」は3階で使用する備品の一部の保管に,
3階部分の「集会室」はテコンド教室,チャンゴ教室等に使用されてい
る旨の説明がされた(乙A3の1)。
(エ)固定資産税・都市計画税変更決定
平成21年4月30日に行われた,平成21年度の施設3の固定資産
税等の減免措置に係る実地調査の際,実地調査担当職員は,施設管理者
から,前年の使用実態と変更はない旨の申告を受けたものの,同年7月
15日に行われた実地調査において,上記(ウ)2階部分の「事務室」は,
主に「P41センター」の事務所として使用されていること,同月17
日の実地調査において,1階部分の「倉庫」及び「給湯室」が学童保育
所の専用使用である旨が判明したため,1階部分の「倉庫」及び「給湯
室」(約24.75平方メートル)及び2階部分の「事務室」(約30.
02平方メートル)については,平成20年度から,固定資産税等の減
免適用から除外する旨の変更決定(別紙2「変更決定一覧」参照)がさ
れた(乙A3の1,3の8,3の9)。
イ検討
以上によれば,施設3は,P1大阪府P12支部として使用されている
ほか,土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所はP1大阪府P1
9支部と同一の住所であること,同土地の借受人はP1大阪府P12支部
常任委員会であること等からすると,施設3は,P1の支部として使用さ
れているものであって,施設3における各種使用もP1との関連性が強く
疑われる。
また,本件減免措置(施設3)がなされた当時,施設3の調査担当職員
による実地調査報告書は提出されていなかったこと(甲1),減免申請に
係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調査の内容が
明確といえるほどに記載されていなかったこと,「P13会館利用状況」
の記載も,使用団体の属性や使用頻度等が全く明らかではないこと,施設
3の一部については,同減免措置後にその一部が減免対象から除外されて
おり(上記ア(エ)),施設管理者による説明の信用性にも疑義があること
(乙A3の1,3の8,3の9)等からすると,減免措置に係る判断資料
の収集は不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設3について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設3)は,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないにも
かかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪市
長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(4)施設4について
ア本件減免措置(施設4)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設4の名称は「P48会館」であり(乙A4の3),P1大阪府P
14支部として使用されている(甲13,17の6,乙A4の4)。
施設4の家屋平面図及び平成20年5月21日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設4の家屋の1階部分(155.26
平方メートル)には「会議室」,パーテーションで区切られた「事務
室」及び「小会議室」,2階部分(155.26平方メートル)には
「会議室」,「小会議室」,「小会議室(ビデオ室)」,3階部分(1
55.26平方メートル)には「小会議室」,「小会議室(フロア
ー)」,「料理教室」,「図書室」,4階部分(155.26平方メー
トル)には「講堂(大会議室)」,5階部分にも部屋(29.70平方
メートル)がある(乙A4の1,4の3,証人P49)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計650.74平方メートル)及
び土地(197.41平方メートル)が固定資産税等の減免措置の対象
となっている(乙A4の1,4の2,4の7)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設4の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P50
(同社の住所は,施設4の住居表示と同一である。),施設4の借受人
は,P1大阪府P14支部常任委員会である(乙A4の4)。なお,施
設4の家屋及び土地に係る使用貸借証明書等は,本件監査請求後に追加
で提出されたものである(甲1)。
(ウ)施設の使用状況
施設4の使用状況に係る資料としては,「P48会館使用簿」と題す
る書面(乙A4の5)が提出されているところ,同書面には使用日時,
使用者,使用目的,使用場所,使用人数等が記載され,使用者欄には
「一般同胞」もしくは「P5役員」の記載がみられる。同書面は,本件
監査請求後に追加で提出されたものである(甲1)。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「会議室」はサークル
や各種会議のために,「事務室」は女性セミナー,パソコン作業等に,
「小会議室」はパソコン作業や少人数の会議に,2階部分の「会議室」
は税務相談,P5役員会,納涼会打合せのために,「小会議室」は法律
相談などに,「小会議室(ビデオ室)」はビデオ閲覧用として,3階部
分の「小会議室」は料理教室の試食や少人数の各種会議のために,「小
会議室(フロアー)」は備品置き場に,「料理教室」は料理教室のため
に,「図書室」は図書室として,4階部分の「講堂(大会議室)」は,
卓球クラブや税務説明会のために,それぞれ使用されている旨の説明が
された(乙A4の1,証人P49)。
イ検討
以上によれば,施設4は,P1大阪府P14支部として使用されてい
るほか,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所は同
支部と同一の住所であり,借受人も同支部常任委員会であることからす
ると,施設4は,P1の支部として使用されているものであって,施設
4における各種使用もP1との関連性が強く疑われる。
また,本件減免措置(施設4)がなされた当時,施設4の使用貸借証明
書等,使用状況に関する資料及び調査担当職員による実地調査報告書は提
出されていなかったこと(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事
欄にも,調査担当職員による実地調査の内容が明確といえるほどに記載さ
れていなかったこと等からすると,減免措置に係る判断資料の収集は不十
分であったといわざるを得ない。
なお,減免措置後に「P48会館使用簿」が提出されており,同使用簿
には,P1とは関係のない在日朝鮮人を意味するとみる余地のある「一般
同胞」による使用が頻繁にみられ,月によっては「一般同胞」のみによっ
て使用されている旨の記載もみられるものの,同記載自体によっても,P
1の傘下団体であるP5の会議等にも用いられているほか,施設4が多数
の会議室等を有する比較的大きな規模の施設である上,上記のように施設
4がP1大阪府P14支部として使用されていることからすると,施設4
が上記使用簿に記載された使用(1か月に4回ないし8回程度の使用に止
まる。)にのみ供されているとは考え難い。
以上のことからすれば,施設4について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設4)は,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないにも
かかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪市
長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(5)施設5について
ア本件減免措置(施設5)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設5の名称は「P16会館」であり(乙A5の1,5の5),P1
大阪府P15支部として使用されている(甲13,17の6,乙A5の
4)。
施設5の家屋平面図及び平成20年5月7日に調査担当職員によって
行われた実地調査によれば,施設5の1階部分(約78.62平方メー
トル)には「多目的ホール」,「事務室(パソコン室)」が,2階部分
(約78.62平方メートル)には「事務室&集会室」,「学習室」,
「応接室・相談室」が,3階部分(約78.62平方メートル)には
「多目的ホール・資料室」がある(乙A5の1,5の3)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計約235.86平方メートル)
及び土地(114.45平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措
置の対象とされた(乙A5の1,5の2,5の7)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設5の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P51
(同社の住所は,施設5の住居表示と同一である。),施設5の借受人
は,P1大阪府P15支部である(乙A5の2,5の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設5の使用状況に係る資料としては,「P16会館使用状況につい
て」と題する書面(乙A5の5)があるが,同書面には,施設5におい
て,同胞生活相談会や,P1支部常任委員会(毎月1回),P5理事会
(隔月1回),P3支部常任委員会(毎月1回)等の各種会議,ハング
ル教室(毎週1回)等の各種教室,新年会等の年間行事が開催されてい
る旨の記載がある。なお,使用頻度についての記載はあるものの,具体
的な使用の年月日等は不明である。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「多目的ホール」は語
学教室,児童教室,講演会,講習会,各種団体の打合せや高齢者の集い
等に,「事務室(パソコン室)」はNPO法人によるパソコン教室に,
2階部分の「事務室&集会室」は施設運営のための事務や小規模の会議
に,「学習室」は税金相談会や業種別相談会に,「応接室・相談室」は
税金相談会に,3階部分の「多目的ホール・資料室」はP5の会議や経
営セミナー会場として使用されている旨の説明がされた(乙A5の1)。
(エ)固定資産税・都市計画税変更決定
平成21年4月21日に行われた,平成21年度の施設5の固定資産
税等の減免措置に係る実地調査の際,実地調査担当職員は,施設管理者
から,前年の使用実態と変更はない旨の申告を受けたものの,同年7月
15日に行われた実地調査において,2階部分の「事務室&集会室」は,
在日朝鮮大阪府P18会の商工会事務室として専用使用されていること
が判明したが,使用実態の変更の時期については明確とならなかったた
め,遅くとも平成20年度からは同2階部分の「事務室&集会室」が上
記P18の商工会事務室として専用使用されていたとして,2階部分の
「事務室&集会室」については減免適用から除外する旨の変更決定(別
紙2「変更決定一覧」参照)がされた(乙A5の1,5の8,5の9)。
イ検討
以上によれば,施設5は,P1大阪府P15支部として使用されている
ほか,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所は同支部
と同一の住所であり,借受人も同支部であることからすると,施設5は,
P1の支部として使用されているものであって,施設5における各種使用
もP1との関連性が強く疑われる。そして,施設5の使用状況に係る書面
として提出されていた「P16会館使用状況について」においても,P1
支部常任委員会,P5理事会,P3支部常任委員会等の,P1の支部や傘
下団体の活動のために使用されていたことが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設5)がなされた当時,
施設5の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこと
(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員に
よる実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと,施
設5の一部については同減免措置後にその一部が減免対象から除外されて
いるため(上記ア(エ)),施設管理者による説明の信用性にも疑義がある
こと(乙A5の1,5の8及び5の9)等からすると,同減免措置に係る
判断資料の収集は不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設5について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設5)は,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないにも
かかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪市
長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(6)施設6について
ア本件減免措置(施設6)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設6の名称は「P20会館」であり(乙A6の1,6の5),P1
大阪府P19支部として使用されている(甲13,17の6,乙A7の
4)。
施設6の家屋平面図及び平成20年5月19日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設6の1階部分には「P52診療所」
(本件減免措置(施設6)の対象とはされていない。)及び物品が置か
れている倉庫が,2階部分には「事務室」,「給湯室」,2つの「会議
室」が,3階部分には「多目的ホール」(家屋平面図の記載は「会議
室」)が,4階部分には「研修室」が,地下1階部分には物品等が置か
れた倉庫がある。また,施設6の土地には駐車場(P20会館使用者専
用駐車場)がある。(乙A6の1,6の3,6の8)
上記施設6の家屋の延床面積から,減免措置対象外のP52診療所に
係る部分を除いた床面積は,延床面積の84パーセントに相当するとこ
ろ,同割合の84パーセントに相当する施設6の家屋の面積部分(合計
455.73平方メートル)及び土地の面積部分が,減免措置の対象と
なっている(乙A6の1,6の2)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設6の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47,
借受人はP1大阪府P19支部である(乙A6の2,7の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設6の使用状況に係る資料としては,「2008年度P20会館
及びP21会館使用状況について」と題する書面(乙A6の5)がある。
同書面には,「P1P19支部常任委員会会議」,「P4P19支部常
任委員会会議」,「P1支部学習会」,「P19支部運動推進委員会」,
「P53P17会幹事会会議」等による会議や,学習会,囲碁クラブ例
会などによる使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の倉庫は備品の保管に,
2階部分の「事務室」は税務相談などの各種相談,施設使用のための予
約受付等に使用され,2つの「会議室」は生活・法律相談,朝鮮語教室,
子育て支援サークル「P54」のスタッフ会議等に使用され,「給湯
室」は施設使用者の湯茶の準備や軽食を取る場所に使用し,3階部分の
「多目的ホール」は各種教室や新年会に使用され,4階部分の「研修
室」は会議の使用や備品の保管に使用され,地階の倉庫は,会館の備品
の保管に使用されている旨の説明がされた(乙A6の1)。
(エ)固定資産税・都市計画税変更決定
平成21年5月19日に行われた,平成21年度の施設6の固定資産
税等の減免措置に係る実地調査の際,実地調査担当職員は,施設管理者
から,前年の使用実態と変更はない旨の申告を受けたものの,同年7月
13日に行われた実地調査において,上記施設6の駐車場については,
使用者について使用簿等が作成されておらず,施設管理者からも同駐車
場の使用者については具体的な説明がなかったため,平成20年度から,
同駐車場については減免適用から除外する旨の変更決定(別紙2「変更
決定一覧」参照)がされた(乙A6の1,6の7)。
イ検討
以上によれば,施設6は,P1大阪府P19支部として使用されてい
るほか,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所は同
支部と同一の住所であり,借受人も同支部であることからすると,施設
6は,P1の支部として使用されているものであって,施設6における
各種使用もP1との関連性が強く疑われる。そして,施設6の使用状況
に関する資料として提出された「2008年度P20会館及びP21
会館使用状況について」の記載においても,「P1P19支部常任委員
会会議」,「P4P19支部常任委員会会議」,「P1P19支部学習
会」,「P19支部運動推進委員会」,「P53P17幹事会会議」等
の記載があり,P1の支部や傘下団体の活動のために使用されていたこ
とが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設6)がなされた当時,
施設6の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこと
(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員に
よる実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと,施
設6の一部については,同減免措置後に減免対象から除外されているため
(上記ア(エ)),施設管理者による説明の信用性にも疑義があること(乙
A6の1,6の7)等からすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不
十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設6について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設6)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しない
にもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(7)施設7について
ア本件減免措置(施設7)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設7の名称は「P21会館」である(乙A7の1,7の5)。
施設7の家屋平面図及び平成20年5月19日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設7の1階部分(約59.66平方メ
ートル)には「集会所」,2階部分(約57.17平方メートル)には
「集会所」がある(乙A7の1,7の3)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計116.83平方メートル)及
び土地(102.46平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措置
の対象となっている(乙A7の1,7の2,7の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設7の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47,
借受人はP1大阪府P19支部である(乙A6の4,7の2)。
(ウ)施設の使用状況
施設7の使用状況に係る資料としては,「2008年度P20会館
及びP21会館利用状況について」と題する書面(乙A6の5,7の
5)があるが,同書面には,同施設は,月2回の「P23会集い」及び
年3回ないし4回のP1・P4P22分会会員らの集いに使用されてい
る旨が記載されている(なお,同書面によれば,上記「P23会」とは
いわゆる敬老会のことである。)。
実地調査の際,施設管理者からは,2階部分の「集会所」はP23会
(敬老会)等に使用され,その際,1階部分の「集会所」は手荷物置場
として使用されている旨の説明がされた(乙A7の1)。
イ検討
以上によれば,施設7は,P1大阪府P19支部が借受人であるほか,
家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所が同支部と同
一の住所であること等からすると,P1との関連性が強く疑われる。そ
して,施設7の使用状況に関する資料として提出された「2008年度
P20会館及びP21会館利用状況について」と題する書面には,月2
回のP23会(敬老会)及び年3回ないし4回のP1・P4P22分会
会員らの集いに使用されている旨の記載しかないところ,これによって
も,P1の分会ないし傘下団体であるP4P22分会による使用がされ
ていることが推認できる。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設7)がなされた当時,
施設7の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこと
(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員に
よる実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと等か
らすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であったといわざる
を得ない。
以上のことからすれば,施設7について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設7)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しない
にもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(8)施設8について
ア本件減免措置(施設8)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設8の名称は「P55会館」であり(乙A8の1,8の7),P1
大阪府P24支部として使用されている(甲13,17の6,乙A8の
4)。
施設8の家屋平面図及び平成20年5月26日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設8の1階部分(面積の詳細不明)に
は「機材置場」が,2階部分(面積の詳細不明)には「事務室」,「女
性部室」,「囲碁室」,「炊事室」,「P56協会」,「談話室」,
「青年部室」が,3階部分(面積の詳細不明)には「男子更衣室」,
「女子更衣室」,「会議室(大)」,「音楽室」,「会議室(小)」が,
4階部分(面積の詳細不明)には「多目的ホール」がそれぞれあり,塔
屋部分には備品が置かれていた(乙A8の1,8の3,8の7)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計1158.91平方メートル)
及び土地(408.24平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措
置の対象となっている(乙A8の1,8の2,8の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設8の家屋に係る固定資産税等の納税者はP57(同人の住所は施
設8の住居表示と同一である。),土地に係る固定資産税等の納税者は
P58らであり,借受人は,施設8の土地に係る固定資産税等の納税者
の一人であるP58である(乙A8の2,8の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設8の使用状況に係る資料としては「利用単位」と題する書面(乙
A8の5)があるが,同書面には,「P1本部」,「P3・P43」,
「P4本部」,「P3料理教室」等の団体の使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「機材置場」は倉庫と
して,2階部分の「事務室」は施設運営のための事務や児童教室及び各
種会議に,「女性部室」は書芸教室等女性中心の講座の開催に,「囲碁
室」は囲碁教室に,「炊事室」は料理教室に,「P56協会」は生活・
法律相談に,「談話室」は会館利用者に開放されている部屋として,
「青年部室」は各種教室や青年学生の交流に,3階部分の「会議室
(大)」は英会話サークル,ヨガ教室,各種会議に,「音楽室」はコー
ラスクラブの練習に,「会議室(小)」は少人数の交流会や会議,控え
室に,4階部分の「多目的ホール」は各種教室や打合せに,塔屋部分は
備品置き場に使用されている旨の説明がされた。
イ検討
以上によれば,施設8は,P1大阪府P24支部として使用されてい
るほか,家屋に係る固定資産税等の納税者(個人)の住所が同支部と同
一の住所であることからすると,施設8は,P1の支部として使用され
ているものであって,施設8における各種使用もP1との関連性が強く
疑われる。そして,施設8の使用状況に係る資料として提出された「利
用単位」と題する書面には,種々の団体による使用が記載されていると
ころ,同書面においても,「P1本部」,「P3・P43」,「P4本
部」,「P3料理教室」等の記載があり,P1の支部や傘下団体の活動
のために使用されていたことが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設8)がなされた当時,
施設8の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこと
(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員に
よる実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと等か
らすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であったといわざる
を得ない。
以上のことからすれば,施設8について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設8)は,「在日外国人のための公民館
的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないにも
かかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪市
長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(9)施設9について
ア本件減免措置(施設9)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設9の名称は「P1大阪府P24支部P25分会」である(乙A9
の1,9の4)。
施設9の家屋平面図及び平成20年5月26日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設9の1階部分は居宅として使用され
(減免申請の対象外),2階部分(約52.86平方メートル)には
「集会所」(家屋平面図では「事務所」)がある(乙A9の1,9の3,
9の6)。
上記施設9の家屋の延床面積から,減免措置対象外の部分を除いた床
面積は,延床面積の50パーセントに相当するところ,同床面積及び施
設9の土地の面積(68.83平方メートル)の50パーセントが,本
件減免措置(施設9)の対象となっている(乙A9の1ないし9の3)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設9の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者はP59らであり,
借受人はP60である(乙A9の2,9の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設9の使用状況に係る資料は本件減免措置(施設9)の時点では提
出されていない。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分は住居として使用されて
おり,減免申請の対象外である旨及び2階部分の「集会所」は囲碁や英
会話教室に使用されている旨の説明がされた。
イ検討
以上によれば,施設9はその名称からしてP1大阪府P24支部P2
5分会の活動に使用されている施設であると推認される。
そして,本件減免措置(施設9)当時,施設9の使用状況に係る資料は
全く提出されておらず(現在も証拠としては提出されていない。甲1),
減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも調査担当職員による実地調査
の内容が明確といえるほどに記載されていなかったものであって,同減免
措置に係る判断資料の収集は極めて不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設9について,その大半が同施設の所在する
地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用が
存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めること
はできない。
したがって,本件減免措置(施設9)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しない
にもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(10)施設10について
ア本件減免措置(施設10)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設10の名称は「P1大阪府P24支部P26分会」である(乙A
10の1,10の4)。
施設10の家屋平面図及び平成20年5月26日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,1階部分(約62.88平方メート
ル)には「集会所」及びこれとカーテンで仕切られた居宅が,2階部分
(69.61平方メートル)及び3階部分(約28.01平方メート
ル)にはいずれも居宅がある(乙A10の1,10の3)。
上記施設10の家屋の延床面積から減免措置対象外の部分を除いた床
面積は,延床面積の17パーセントに相当するところ,同床面積及び施
設10の土地の面積部分(75.52平方メートル)のうち17パーセ
ントが,固定資産税等の減免措置の対象となっている(乙A10の1,
10の2)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設10の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者はP61らであ
り,借受人はP61である(乙A10の2,10の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設10の使用状況に係る資料は本件減免措置(施設10)の時点で
は提出されていない。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「集会所」は児童教室,
子供会や地域の集会場として使用されており,1階部分の残余部分及び
2階,3階は住居として使用されている旨の説明がされた。
イ検討
以上によれば,施設10はその名称からしてP1大阪府P24支部P
26分会として使用されていると推認される。
そして,本件減免措置(施設10)当時において施設10の使用状況に
係る資料は全く提出されておらず(現在も証拠としては提出されていない。
甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員によ
る実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったものであっ
て,同減免措置に係る判断資料の収集は極めて不十分であったといわざる
を得ない。
以上のことからすれば,施設10について,その大半が同施設の所在
する地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による
使用が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認
めることはできない。
したがって,本件減免措置(施設10)は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しな
いにもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(11)施設11について
ア本件減免措置(施設11)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設11の名称は「P62会館」であり(乙A11の1),P1大阪
府P27支部として使用されている(甲13,17の6,乙A11の
4)。
施設11の家屋平面図及び平成20年4月30日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設11の1階部分(約61.71平
方メートル)には「集会所」(家屋平面図では「事務室」),2階部分
(約59.58平方メートル)には「多目的ホール」(家屋平面図では
「会議室」),3階部分(約57.26平方メートル)には「事務室兼
会議室」,塔屋部分の「階段室」(7.6平方メートル)があり,同家
屋が固定資産税等の減免措置の対象となっている(乙A11の1,11
の3,11の5,11の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設11に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47であり,施設
11の借受人は,P1大阪府P27支部・P63である(乙A11の2,
11の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設11の使用状況に係る資料は減免措置の時点では提出されていな
い(甲1)。
施設管理者からは,実地調査に先立つ事前の聴き取りの際に,1階部
分の「集会所」及び2階部分の「多目的ホール」は生活・法律相談,各
種教室に,3階部分の「事務室兼会議室」は施設管理のための事務室と
して使用されている旨の説明がされた。
イ検討
以上によれば,施設11はP1大阪府P27支部として使用されてい
るほか,施設11に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所はP1大
阪府P19支部と同一であり,借受人はP1大阪府P27支部・P63
等であることからすると,施設11は,P1の支部として使用されてい
るものであって,施設11における各種使用もP1との関連性が強く疑
われる。
そして,施設11の使用状況に係る資料は本件減免措置(施設11)
当時全く提出されておらず(現在も提出されていない。甲1),実地調
査も施設管理者等の立会いなしで行われており,減免申請に係る申請書
の実地調査記事欄にも調査担当職員による実地調査の内容が明確といえ
るほどに記載されていなかったものであって,同減免措置に係る判断資
料の収集は極めて不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設11について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設11)は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しな
いにもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(12)施設12について
ア本件減免措置(施設12)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設12の名称は「P29会館」であり(乙A12の1,12の5),
P1大阪府P28支部として使用されている(甲13,17の6,乙A
12の4)。
施設12の家屋平面図及び平成20年5月23日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設12の1階部分(95.84平方
メートル)には「文化教室」(家屋平面図では「会議室」),2階部分
(96.30平方メートル)には「事務所会議室」,「相談室」,「印
刷室相談室」,「食堂」(家屋平面図では「会議室」,「女性部会議
室」,「青年部会議室」,「倉庫」,「炊事場」),3階部分(96.
30平方メートル)には「講堂」(家屋平面図では「会議室」,「ホー
ル」)がある(乙A12の1,12の3,12の7)。
上記家屋が固定資産税等の減免措置の対象となっている。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設12の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P6
4,借受人はP1大阪府P28支部である(乙A12の2,12の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設12の使用状況に係る資料としては「P29会館」と題する書面
(乙A12の5の1)及び「P28支部のサークル活動」と題する書面
(乙A12の5の2)が提出されているところ,これらの書面には,曜
日ごとに毎月1回(サークル活動については毎週1回),定期的に,特
定の団体等(「P1支部」,「女性団体」,「青年団体」,「青年商工
会」等)による使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「文化教室」は子育て
サークル,囲碁教室やハングル教室などの大阪府P28支部の文化サー
クル活動に,2階部分の「事務所会議室」は施設の運営管理を行う場所
として,「相談室」及び「印刷室相談室」は生活・法律相談に,「食
堂」は韓国料理教室に,3階部分の「講堂」は各種教室等に使用されて
いる旨の説明がされた(乙A12の1)。
イ検討
以上によれば,施設12はP1大阪府P28支部として使用されている
ことからすると,施設12は,P1の支部として使用されているものであ
って,施設12における各種使用もP1との関連性が強く疑われる。
そして,使用状況に係る書面として提出されていた「P29会館」と題
する書面においても,施設12の使用団体は「P1支部」,「女性団体」,
「青年団体」,「青年商工会」等が毎月定期的に会議を行っている旨の記
載があり,P1の支部や傘下団体の活動のために使用されていたことが推
認される。「P28支部のサークル活動」と題する書面によれば,P1と
しての活動であると直ちには認められない団体などによるサークル活動等
の使用もみられ,同書面が施設12の外に設置された掲示板に貼られてお
り,広く参加者を募っているとみる余地はある(乙A12の7)ものの,
同書面が「P28支部」のサークル活動と題されていることからすれば,
同サークル活動はP1大阪府P28支部としての活動であることが推認で
きるし,同書面においても,同活動が緊急集会等で曜日変更されることも
あり得ることが記載されている。
また,減免措置がなされた当時,施設12の調査担当職員による実地調
査報告書は提出されていなかったこと(甲1),減免申請に係る申請書の
実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調査の内容が明確といえる
ほどに記載されていなかったこと等からすると,減免措置に係る判断資料
の収集は不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設12について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設12)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(13)施設13について
ア本件減免措置(施設13)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設13の名称は「P65会館」である(乙A13の7)。
施設13の家屋平面図及び平成20年5月23日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設13の1階部分(約22.56平
方メートル)には「集会所」,2階部分(約19.76平方メートル)
には2つの「会議室」があり,同家屋が固定資産税等の減免措置の対象
となっている(乙A13の1ないし3,13の7)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設13の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P4
7,借受人はP1P28支部・P66である(乙A13の2,13の
4)。
(ウ)施設の使用状況
施設13の使用状況に係る資料としては「P30分会」と題する書面
(乙A13の5)が提出されているところ,同書面には,毎月1回の分
会役員会議及び毎週1回の囲碁による使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「集会所」及び2階部
分の2つの「会議室」は各種教室及び地域の集会所として使用している
旨の説明がされた(乙A13の1)。
イ検討
以上によれば,施設13の借受人がP1P28支部・P66であり,
家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所がP1大阪府
P19支部と同一であること等からすると,施設13は,P1の支部と
して使用されているものであって,施設13における各種使用もP1と
の関連性が強く疑われる。そして,施設13の使用状況に係る資料とし
て提出されていた「P30分会」と題する書面においても,その題名や,
「分会役員会議」が毎月定期的に行われている旨の記載があることから
しても,P1の分会の活動のために使用されていたことが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設13)がなされた当
時,施設13の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなか
ったこと(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査
担当職員による実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなか
ったこと等からすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であ
ったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設13について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設13)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(14)施設14について
ア本件減免措置(施設14)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設14の名称は「P1P28支部P31分会」である(乙A14の
1,14の7)。
施設14の家屋平面図及び平成20年5月23日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設14は平屋であり,1階部分(約
27.10平方メートル)に「集会所」があるのみである(乙A14の
1,14の3,14の7)。
上記家屋の全ての延床面積部分及び土地(33.15平方メートル)
の全てが固定資産税等の減免措置の対象となっている(乙A14の1,
14の2,14の6)。なお,施設14の家屋は,固定資産税の免税点
未満であるとの理由から平成20年度の固定資産税等の賦課決定はなさ
れていない(甲1,乙14の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設14の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者はP67(平成
20年度固定資産税都市計画税減免申請書(乙A14の2)の納税者住
所欄及び証明書(乙A14の4)の土地所有者・家屋所有者欄には,同
人の氏名とともに,いずれも「P1」と記載されている。)であり,施
設14の借受人は,P1P28支部・P66である(乙A14の2,1
4の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設14の使用状況に係る資料としては「P31分会」と題する書面
(乙A14の5)が提出されているところ,同書面には,毎月2回の分
会役員会議による使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分は,各種教室及び地域の
集会場として使用されている旨の説明がされた(乙A14の1)。
イ検討
以上によれば,施設14の借受人がP1P28支部・P66であり,
家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者がP1・P67であること等
からすると,施設14は,P1の支部として使用されているものであっ
て,施設14における各種使用もP1との関連性が強く疑われる。そし
て,施設14の使用状況に係る資料として提出されていた「P31分
会」と題する書面においても,その題名や,「分会役員会議」が毎月定
期的に行われている旨の記載があることからしても,P1の分会の活動
のために使用されていたことが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設14)がなされた当
時,施設14の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなか
ったこと(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査
担当職員による実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなか
ったこと等からすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であ
ったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設14について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設14)は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しな
いにもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(15)施設15について
ア本件各減免措置に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設の名称は「P33会館」である(乙A15の1,15の5,15
の8)。
施設15の家屋平面図及び平成20年4月22日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設15の1階部分(約92.55平
方メートル)には「ミニデイP68室」,「カラオケボックス」(家屋
平面図では「老人会(カラオケ室),「宿直室兼物置」,2階部分(1
19.88平方メートル)には「事務室」,「青年部室」,「女性部室
兼小会議室」,3階部分(約119.88平方メートル)には「講堂」,
4階部分(約42.18平方メートル)には「物置」がある(乙A15
の1,15の3,15の8)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計約374.47平方メートル)
及び土地(151.58平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措
置の対象となっている(乙A15の1,15の2,15の7)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設15の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P4
7,借受人は,P1大阪府P32支部常任委員会である(乙A15の2,
15の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設15の使用状況に係る資料としては「P33会館使用記録」と題
する書面(乙A15の5)が提出されているところ,同書面には,「青
年部」,「女性部」,「支部役員」等の団体による使用が記載されてい
るほか,ヨガ教室等による使用が記載されている。
実地調査の際,施設管理者からは,「ミニデイP68室」はボランテ
ィアグループ「P68」が開催する地域の高齢者を対象とした催しに,
「カラオケボックス」は昼食会の際の施設使用者の懇親に,「宿直室兼
物置」は備品の保管に,2階部分の「事務室」は各種団体の会議や会館
運営に,「青年部室」は食事会や行事企画等の会議に,「女性部室兼小
会議室」は朝鮮語教室に,3階部分の「講堂」はヨガ教室や講演会等に,
4階部分の「物置」は倉庫として使用している旨の説明がされた(乙A
15の1)。
イ検討
以上によれば,施設15は,P1大阪府P32支部として使用されて
いるほか,施設15の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法
人)の住所がP1大阪府P19支部と同一であること等からすると,施
設15は,P1の支部として使用されているものであって,施設15に
おける各種使用もP1との関連性が強く疑われる。そして,施設15の
使用状況に係る資料として提出された「P33会館使用記録」の記載に
おいても,「支部役員会議」,「支部定期総会」,「P4会議」,「P3
の集い」等の記載があり,P1の支部や傘下団体の活動のために使用さ
れていたことが推認される。
実地調査等の結果をみても,本件減免措置(施設15)がなされた当時,
施設15の調査担当職員による実地調査報告書は提出されていなかったこ
と(甲1),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員
による実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかったこと等
からすると,同減免措置に係る判断資料の収集は不十分であったといわざ
るを得ない。
以上のことからすれば,施設15について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設15)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(16)施設16について
ア本件減免措置(施設16)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設16の名称は「P35会館」である(乙A16の1,16の5)。
施設16の家屋平面図及び平成20年4月4日に調査担当職員によっ
て行われた実地調査によれば,施設16の1階部分には「多目的ホー
ル」(部屋の扉に「P36会」と記載されたプレートが貼られている),
「事務室」,「炊事室」,2階部分には「多目的大ホール」,「事務
室」がある(乙A16の1,16の3,16の7)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計215.44平方メートル)及
び土地(118.42平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措置
の対象となっている(乙A16の2,16の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設16の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P4
7,借受人は,P1大阪府P34支部(借受人の住所は,施設16の住
居表示と同一。)である(乙A16の2,16の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設16の使用状況に係る資料としては「P35会館利用申込書」
(乙A16の5)が提出されているところ,同書面には,茶話会,朝鮮
語教室,セミナー,食事会等による使用が記載されているが,利用申込
書の様式には,利用者ないし利用団体名を記載する欄は設けられていな
い。
実地調査の際,施設管理者からは,「多目的ホール」は各種教室や茶
話会に,「事務室」は各種打合せや食事会等に,「炊事室」は料理教室
等に,2階部分の「大多目的ホール」はセミナー,食事会等に,「事務
室」は倉庫として使用されている旨の説明がされた(乙A16の1)。
イ検討
以上によれば,施設16は,P1大阪府P34支部として使用されて
いること,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所が
P1大阪府P19支部と同一であることからすると,施設16は,P1
の支部として使用されているものであって,施設16における各種使用
もP1との関連性が強く疑われる。そして,施設16の使用状況に係る
資料として提出された「P35会館使用申込書」の記載からすると,施
設16が各種サークル活動等にも使用されていることがうかがわれるも
のの,同書面においても,施設16の利用者の実体は何ら明らかではな
く,また,施設16の使用が同書面に記載された月2回程度の使用に止
まっているものとも考え難い。
また,本件減免措置(施設16)がなされた当時,調査担当職員によ
る実地調査報告書は提出されていなかったこと(甲1),減免申請に係
る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調査の内容が
明確といえるほどに記載されていなかったこと等からすると,同減免措
置に係る判断資料の収集は不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設16について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設16)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(17)施設17について
ア本件減免措置(施設17)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設17の名称は「P69会館」である(乙A17の1,17の7)
施設17の家屋平面図及び平成20年6月30日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設17の1階部分(面積の詳細不
明)には「集会室」,2階部分(面積の詳細不明)には「集会室」があ
る(乙A17の1,17の3,17の7)。
上記家屋の部屋の延床面積部分(65.54平方メートル)及び土地
(80.85平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措置の対象と
なっている(乙A17の1,17の2,17の5)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設17の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P4
7,借受人はP1大阪府P37支部P38分会である(乙A17の2,
17の4)。なお,施設17の使用貸借証明書等は,本件監査請求後に
追加で提出されたものである(甲1,乙17の4)ほか,施設17に係
る平成20年度の固定資産税等減免申請書(乙A17の2)の備考欄に
は,P38分会との記載がある。
(ウ)施設の使用状況
施設17の使用状況に係る資料は,証拠として提出されていない。
実地調査の際,施設管理者からは,月に1回程度,定例会議があるほ
か,不定期に子供向けの民族音楽の教室などを開催している旨の説明が
された(乙A17の1)。
イ検討
以上によれば,施設17は,P1大阪府P37支部P38分会として
使用されているほか,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法
人)の住所がP1大阪府P19支部と同一であり,P1の支部(分会)
として使用されているものであって,施設17における各種使用もP1
との関連性が強く疑われる。
そして,使用貸借契約書等及び調査担当職員による実地調査報告書も
本件監査請求後に追加で提出されたにすぎないこと,減免申請に係る申
請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調査の内容が明確
といえるほどに記載されていなかったことからすれば,同減免措置に係
る判断資料の収集は不十分であったといわざるを得ない。なお,被告は,
2階部分の調査を行っていなかった点について,施設17の家屋の不動
産登記簿上平家建となっており,家屋平面図上2階となっている部分の
天井高は低く,屋根裏部屋に止まるため,施設17の固定資産税等の課
税関係に当たっては施設17の家屋が平家建であることを前提としてお
り,2階部分の調査は不要であった旨を主張する。しかし,施設17の
家屋の不動産登記簿上の床面積が40.42平方メートルである(乙A
17の6)のに対し,施設17の家屋に係る固定資産税等の納税者等は
延べ床面積を65.54平方メートルとして減免申請書等を提出してい
る(乙A17の2,17の4)ことに鑑みると,被告の主張は理由がな
く,施設17の家屋全体の使用関係を検討する必要があったというべき
である。
以上のことからすれば,施設17について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設17)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(18)施設18について
ア本件減免措置(施設18)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設の名称は「P1P70分会」である(乙A18の1)。
施設18の家屋平面図及び平成20年12月26日に調査担当職員に
よって行われた実地調査によれば,施設18の1階部分(面積の詳細不
明)には「集会室」,2階部分(面積の詳細不明)には「集会室」(家
屋平面図では,「集会室」及び「備品管理室」)がある(乙A18の1,
18の3)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計56.30平方メートル)が固
定資産税等の減免措置の対象となっている(乙A18の1,18の2,
18の5)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設18の家屋に係る固定資産税等の納税者は有限会社P47,借受
人はP1大阪府P37支部P39分会である(乙A18の2,4)。な
お,施設18の使用貸借証明書等は,本件監査請求後に追加で提出され
たものであるほか(甲1,乙A18の4),施設18に係る平成20年
度の固定資産税等減免申請書(乙A18の2)の備考欄や家屋平面図
(乙A18の3)には,「P39分会」との記載がある。
(ウ)施設の使用状況
施設18の使用状況に係る資料は証拠として提出されていない。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「集会室」はハングル
教室や文化サークルの使用に,2階部分の「集会室」は備品の保管に使
用されている旨の説明がされた。なお,2階部分については,2階に通
じる階段に備品等が置かれており,通路がふさがっていたことから,調
査担当職員による実地調査は行われていない。(乙A18の1)
イ検討
以上によれば,施設18は,P1大阪府P37支部P39分会として
使用されているほか,家屋に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所
がP1大阪府P19支部と同一であり,P1の支部(分会)として使用
されているものであって,施設18における各種使用もP1との関連性
が強く疑われる。
そして,使用貸借契約書等及び調査担当職員による実地調査報告書も
本件監査請求後に追加で提出されたにすぎないこと(甲1),減免申請
に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担当職員による実地調査の内
容が明確といえるほどに記載されていなかったこと,調査担当職員は,
施設18の2階部分の実地調査は行っていないことからすれば,本件減
免措置(施設18)に係る判断資料の収集は不十分であったといわざる
を得ない。
以上のことからすれば,施設18について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設18)は,「在日外国人のための公民
館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しないに
もかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,大阪
市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(19)施設19について
ア本件減免措置(施設19)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設19の名称は「P71会館」であり(乙A19の1,19の6),
P1大阪府P37支部として使用されている(甲13,17の6,乙A
19の4)。
施設19の家屋平面図及び平成20年6月23日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設19の1階部分(約129.59
平方メートル)には「会議室(集会室)」,「青年部集会室(集会
室)」,2つの倉庫,2階部分(約129.59平方メートル)には
「北会議室」,「南会議室」,3階部分(約129.59平方メート
ル)には「講堂(集会場)」がある。(乙A19の1,19の3,19
の6)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計約388.77平方メートル)
及び土地(198.34平方メートル)の全てが固定資産税等の減免措
置の対象となっている(乙A19の2,19の5)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設19の家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者は有限会社P4
7,借受人はP1大阪府P37支部である(乙A19の2,19の4)。
なお,施設の家屋及び土地に係る使用貸借証明書等は,本件監査請求後
に追加で提出されたものである(甲1,乙A19の4)。
(ウ)施設の使用状況
施設19の使用について,使用簿等など施設19の使用全般が明らか
になるような資料は提出されていない(もっとも,実地調査の際,施設
管理者は土曜児童教室の案内及びサマースクールの周知ビラを,被告の
調査担当者に提出した(乙A19の1)。また,本件監査請求後の平成
21年7月11日に実施された実地調査において,施設管理者は,平成
19年11月24日から平成21年7月11日までに実施された土曜教
室(朝鮮語講座,チャンダンの練習)や各種パーティーの様子等を撮影
した写真を,被告の調査担当者に提出した(乙A19の1,19の
6))。
実地調査の際,施設管理者からは,1階部分の「会議室(集会室)」
及び「青年部集会室(集会室)」は青年部などの会議,各種教室,行事
に,2つの倉庫は備品の保管に,2階部分の「北会議室」及び「南会議
室」は催し物の準備のための会議,反省会等に,3階部分の「講堂(集
会場)」は大人数の催し物,集会や講演,各種教室等に使用している旨
の説明がされた(乙A19の1)。
イ検討
以上によれば,施設19は,P1大阪府P37支部として使用されて
いるほか,家屋及び土地に係る固定資産税等の納税者(法人)の住所が
P1大阪府P19支部と同一であることからすると,施設19は,P1
の支部として使用されているものであって,施設19における各種使用
もP1との関連性が強く疑われる。
そして,使用貸借契約書等及び調査担当職員による実地調査報告書も
本件減免措置(施設19)後に追加で提出されたにすぎないこと(甲1,
乙A19の4),減免申請に係る申請書の実地調査記事欄にも,調査担
当職員による実地調査の内容が明確といえるほどに記載されていなかっ
たこと等からすれば,本件減免措置(施設19)に係る判断資料の収集
は不十分であったといわざるを得ない。
なお,本件減免措置(施設19)がなされた後に被告の担当者に提出
された写真(乙A19の6)等によれば,施設19が各種のサークル活
動等としても利用されていたことがうかがえるが,その主催者や利用者
の範囲は明らかではないし,これら写真等から,施設19の使用がこれ
らサークル活動等に限られていたものと認めることもできない。かえっ
て,上記のように施設19がP1大阪府P37支部として使用されてい
るものであって,その部屋も,「P3集会室」や「会議室」等となって
いることからすれば,P1の支部ないし傘下団体の活動として使用され
ていることが推認されるものというべきである。
以上のことからすれば,施設19について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設19)は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しな
いにもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
(20)施設20について
ア本件減免措置(施設20)に係る調査,概要及び使用状況等
(ア)施設の概要
施設20の名称は「P40会館」である(乙A20の1,20の5)。
施設20の家屋平面図及び平成20年5月12日に調査担当職員によ
って行われた実地調査によれば,施設20の1階部分(約16.94平
方メートル)には「集会場」,2階部分(約18.56平方メートル)
には「集会場」がある(乙A20の1,20の4,20の7)。なお,
平成20年度における固定資産税等減免措置に係る実地調査においては,
外観からの調査のみで内部調査は行われておらず,平成21年度におけ
る同実地調査において内部調査が行われた(乙A20の1)。
上記家屋の全ての延床面積部分(合計35.50平方メートル)が固
定資産税等の減免措置の対象となっている(乙A20の2,20の6)。
(イ)施設の所有者及び借受人等
施設20の家屋に係る固定資産税等の納税者はP72(固定資産税等
の減免申請書の納税者として記載された同人の氏名の肩書には,P1大
阪府P73支部と記載されている。)であり,施設20の借受人は,P
1大阪府P12支部常任委員会である(乙A20の2,20の3)。な
お,施設20の家屋及び土地に係る使用貸借証明書等は,本件監査請求
後に追加で提出されたものである(甲1,乙A20の3)。
(ウ)施設の使用状況
施設20の使用状況に関する資料としては「P1大阪府P73支部P
40会館利用状況」(乙A20の5)が提出されているところ,同書面
には,月に1回ないし2回,「分会新年会」,「分会役員会」,「ヨガ
教室」,「ハングル語教室」等に使用されている旨が記載されているも
のの,具体的な利用団体については記載がない。
施設管理者からは,事前の聴き取り調査において,施設20は月数回
程度の使用しかないこと,1階部分の「集会場」は備品の保管に,2階
部分の「集会場」はハングル語教室,茶話会,年中行事等に使用されて
いる旨の説明がされた(乙A20の1)。
イ検討
以上によれば,施設20は,P1大阪府P73支部として使用されて
いるほか(借受人がP1大阪府P34支部であることに加え,上記のと
おり利用状況を示す書面(乙A20の5)に「P1大阪府P73支部」
との記載がされている。),家屋に係る固定資産税等の納税者の肩書き
もP1大阪府P73支部となっていることからすると,施設20は,P
1の支部として使用されているものであって,施設20における各種使
用もP1との関連性が強く疑われる。そして,「P1大阪府P73支部
P40会館利用状況」においても,「分会新年会」,「分会懇親会」,
「分会役員会」等の記載があり,P1の支部(分会)の活動のために使
用されていたことが推認される。なお,施設20の使用が,上記使用状
況に係る資料に記載された月に1回ないし2回程度の使用に止まるもの
であるのか疑義も存するところである。
また,本件減免措置(施設20)がなされた当時,使用貸借証明書等,
使用状況に関する資料及び調査担当職員による実地調査報告書は提出さ
れていなかったこと(甲1),実地調査においても,施設20の内部の
調査は行われず,担当職員が外から確認できる限度で施設内部の様子を
確認するにとどまっていること等からすると,同減免措置に係る判断資
料の収集は極めて不十分であったといわざるを得ない。
以上のことからすれば,施設20について,その大半が同施設の所在す
る地域に居住する在日朝鮮人一般の使用に供されており,P1による使用
が存するとしても,それが単発的,例外的なものに止まるものと認めるこ
とはできない。
したがって,本件減免措置(施設20)は,「在日外国人のための公
民館的施設において,専らその本来の用に供する固定資産」に該当しな
いにもかかわらず,固定資産税等の減免措置がなされたものであるから,
大阪市長の裁量の逸脱・濫用があるものとして違法である。
5以上検討したとおり,本件各減免措置(ただし,別紙2「変更決定一覧」記
載の各固定資産については本件各変更決定による変更後のもの)はいずれも違
法である。
6結論
よって,本件訴えのうち,別紙2「変更決定一覧」記載のとおり本件各変更
決定により減免措置が一部変更された部分について取消しを求める部分は不適
法であるからいずれも却下し,その余の原告の請求(原告の請求のうち本件各
減免措置(ただし,別紙2「変更決定一覧」記載の各固定資産については本件
各変更決定による変更後のもの)の取消しを求める部分)はいずれも理由があ
るからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,
民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官田中健治
裁判官尾河吉久
裁判官板東恵里

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