弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾添附の弁護人井本良光提出の控訴趣意書記載のとおりであ
るからここにこれを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。
 論旨第一点について。
 原判決は所論も指摘するとおり東京都台東区a界隈を縄張とする博徒A一家の配
下たる被告人が、元B組配下のC一家の者が賭場における怨みから昭和三十年六月
十七日午前零時三十分頃A一家の代貸台東区ab町c丁目d番地D方に殴り込みを
かけて来た際、これをよう撃するため、法定の除外事由がないのに、右D方に保管
されてあつた刃渡四十五糎六粍の日本刀一振を持ち出し、右時刻頃これを同町同番
地E方において携帯して所持したものと判示し銃砲刀剣類等所持取締令第二十六条
第二条を適用しているところ、同令の所持とはある物件に対する保管について、支
配関係を開始しこれを持続する行為をいうものであることは所論のとおりである。
 所論は支配関係の持続したことを示すためには、その始期終期を明らかにする
か、若しくは少くともその時間的継続を判文上に示す要があると主張する。しかし
支配関係が持続しておればこそ初めて所持といい得るものであり、日本刀を所持し
たというからにはそれで右日本刀に対する支配関係の持続したことがおのずから判
示されているものといわねばならない。
 又もし時間的にこれを判示しようとしても、所持が短時間で終つてしまつた場合
など、何時何分に初まり何時何分に終つたとすべきか、正確にこれを判示すること
は極めて困難で、殆んど不可能に近く、かくの如き判示を必要とする理由があると
は認められない。本件に於ては原判示によれば前記のとおり被告人がD方に保管し
てあつた日本刀一振を持ち出し、E方において携帯したものであり、場所的にその
支配関係が持続した状況が明示されているから所論のような理由不備の違法がある
とはいえない。
 なお又原判示の携帯とは所持の一態様を示していること判文上明らかである。な
るほど銃砲刀剣類等所持取締令には所持と携帯とを区別した規定の存することは所
論のとおりであるが、それら規定はいずれも携帯以外の所持は適法でありこれによ
る法益侵害は存しないことを前提とし、所持の一態様たる携帯のみを処罰したもの
である。従つてこれらの規定を適用する場合には所持の事実と区別し、所持よりは
狭い観念である携帯の事実を判示すべきであるが、本件の場合の如く、被告人の所
持した日本刀一振(東京地方裁判所昭和三十一年押第三十号の五)につき同令第七
条の登録を受けていてもなお所持罪が成立すること後記のとおりであるにおいて
は、特に携帯と所持を区別する要はなく、寧ろ原判決が「携帯して所持し」と判示
したことは所持の態様を明示したものというべきで、所論の如き違法はない。それ
故論旨は理由がない。
 同第二点について。
 たとえ数分間位の短時間とはいえ、日本刀をその保管場所から持ち出し、保管場
所と同番地に属するとはいつても保管場所とは別個の家屋にこれを持参し、同所に
おいてこれを携帯した所為はその間右日本刀に対する支配関係が持続されているこ
と明白で、銃砲刀剣類等所持取締令第二条に違反する所為であることはいうまでも
ない。被告人の本件所為がC一家が殴り込みをかけてくるかも判らないと予想され
た時期であり、しかも突如として侵入した者があり、Dが「大変だ」との声を聞い
たからであつても、同令の所持というに該当しないものとすべき理由がない。なる
ほど右日本刀はFの所有にかかり、同人がC一家の襲撃に備えD方押入に保管しこ
れを所持したものである。しかしこの事は被告人が右日本刀を持ち出し、E方に於
て携帯しこれを所持していた事実と相容れないものではない。言いかえれば前者の
所持が認められるからといつて、後者即ち被告人の所持が否定される理由にならな
い。所論引用の判例は物件の所有者がこれを他に託した場合もその受託者を通じ間
接にその物の保存につき支配関係を持続し得る場合を肯定し、その所持を失わない
ものと認めた趣旨で本件における日本刀所有者たるFの場合における判示をしてい
るに止まり、現実に日本刀を携帯した被告人の所持を否定したものではない。原判
決は正当に被告人の所為が銃砲刀剣類等所持取締令第二条の所持に該当する事実を
認定し、同令第二十六条をもつて処断したもので、所論の如き事実の誤認も法令適
用の誤もなく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 記録に徴するに本件日本刀が銃砲刀剣類登録証第四四七〇八号による登録を受け
たものであることを窺い得ないではない。しかし右日本刀が銃砲刀剣類等所持取締
令第七条所定の登録を受けたものである事によつて、被告人の所為が同令第二条違
反に問うことが許されないものと解すべきではない。同令第七条は美術品として価
値ある刀剣類についての登録を認め、この登録を受けたものについては同令第二条
が原則的にその所持を違法としたに拘らず、特にその除外事由を認め所持を適法と
したのである。そして右第二条が「銃砲又は刀剣類は、所持することができない。
但し、左の各号の一に該当する場合はこの限りでない」と規定しその第四号に「第
七条の規定による登録を受けたものを所持なるとき」と定めているので、その立言
方法において同条第三号とは異るし、又同令により廃止された銃砲等所持禁止令の
立言とも異るものがあるが、その趣旨たるや刀剣類の愛好者が美術品として価値あ
る刀剣類を所蔵し、日常これを座右におき絶えず鑑賞せんと願望することもあろう
しその他これを手離すに忍びざる事情ありと認められる場合に、その所持を適法な
ものとするにあり、而してこのような場合所持人は美術品としてこれを尊重愛玩す
るから、これにその所持を許しても公共の秩序を維持する上に危険を及ぼすが如き
は絶無と認められるからに外ならない。それ故何人がいかなる目的をもつてこれを
所持しても、同令第七条の登録を受けさえすれば、すべて適法な所持であるとした
ものではなく、これを所持する人やその時、所によつては所持は許されないものと
いわなければならない。この事は同令第七条が「美術品又は骨とう品として価値あ
る火なわ銃式火器又は美術品として価値ある刀剣類の登録をするものとする」と規
定したこと、同令第十二条が、「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け若しくは
相続し、又はこれらの貸付若しくは保管の委託をなした者は、所定の手続により、
すみやかにその旨を文化財保護委員会に届け出なければならない。貸付又は保管の
委託をしなくなつたときも同様とする」と規定し、登録を受けてもその所有者又は
保管者に変動があればそれを届け出させることによつて所有者保管者が不明のまま
に放置することなからしめていること及び同令第十六条が「公安委員会は、第三条
の許可又は第七条の登録を受けた銃砲及び刀剣類の授受、運搬及び携帯が公共の秩
序を維持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合においては、一定の
公告式による告示をもつて、地域及び期間を定めてこれらの行為を禁止し、又は制
限することができる」とし更に同条第二項が「公安委員会は、前項の告示をした場
合においては、命令で定める手続により、同項に規定する銃砲又は刀剣類を仮領置
することができる」と規定したことをみると、登録制度をとり、所持を適法とした
趣旨に反するときは同令第二条の一般原則に帰りその所持は許されないとの解釈を
とらざる<要旨>を得ない。本件に於いてこれをみるに、被告人はA一家の配下で、
元B組配下のC一家の者が賭場の怨からA一家の代貸たるD方に殴り込みを
かけて来ることを予想し、他の一味と共にD方に集合し、日本刀や猟銃を集めて右
殴り込みに備えていたところ、原判示日時場所に於て、「Dが大変だ」との声に日
本刀を保管場所から持ち出し、DがGと争つている現場に赴き右の日本刀でGに斬
りかかつた事実は記録上顕著であるから、被告人の日本刀所持は場合により人を殺
傷するためのもので、たとえ登録を受けた日本刀であつても、銃砲刀剣類等所持取
締令第二条がこれを所持することを認めた趣旨に反すること明白であり、許容され
ざる所持と断定するのを相当とする。同令第十二条違反には同令第二十八条の罰則
が適用されることから、登録制度の趣旨に反する場合にも、登録を受けた刀剣類の
譲受人がその旨届け出れば、所持が適法となるとはいえない。又同令第十八条は美
術品としての価値を認めて登録を受けた趣旨に反しない場合であることを前提とす
るもので、そうでない場合にも同条違反が成立するのみで第二条違反にはならない
としたものではない。その他同令の解釈上、右説明に反対の規定が存しない。所論
は本件日本刀が登録を受けていることにより、その所持人にはいついかなる場合と
雖も所持の違反が存しないものであるとし、被告人の本件所為が同令第二条第四号
に該当すると主張なるけれど、当裁判所の賛同できないところである。それ故所論
は採用できない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 加納駿平 判事 吉田作穂 判事 山岸薫一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛