弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aの控訴を棄却する。
     当審の訴訟費用は全部被告人Aの負担とする。
     原判決中被告人Bに関する部分を破棄し、本件を広島地方裁判所に差し
戻す。
         理    由
 被告人Aの弁護人吾野金一郎、被告人Bの弁護人渡部利佐久の控訴の趣意は末尾
添附の各控訴趣意書記載のとおりである。
 被告人Aの弁護人吾野金一郎の控訴の趣意第一点について。
 所論は、原判示第二の強盗殺人の事実につき、被害者Cの死体は、いかなる段階
においても取り調べられた形跡がないから、これを取り調べることたくして、右事
実を認定したのは、審理不尽であり、その結果原判決には判決に影響を及ぼすべき
事実の誤認があるというに帰着する。なるほど本件のような強盗殺人の事実におい
てその殺人被害事実の証拠として死体を取り調べるということは、最も望ましいこ
と敢て多言を要しないところであるけれども、そは事実上又は法律上可能であるこ
とを前提として立論せられるところである。そして本件においてはその死体の存在
を立証することが事実上不可能であるからこれを取り調べないことをもつて、審理
不尽というはあたらない。又原判示証拠によれば、犯行の場所はDで大分県東国東
郡a村から山口県能毛県b村に航行中c村沖合であり、犯行の方法は被害者Cの頭
部を又木(昭和二十五年原審領第五十六号の第五号)で、三回強打して、昏倒さ
せ、これを海中に落したのであり、被告人Aは右被害者の海中に没するのを確認し
(同人に対する司法警察員作成第一回供述調書)、被告人Bは右被害者の突き落さ
れた海上附近をその乗船で一廻転したが、その姿を見なかつたのであり(原審第一
回公判調書)、その後右被害者の消息を断つたというのであるから、これをもつて
右被害者を溺死させたと認定しても何等経験則に反するところもないから、原判決
には判決に影響を及ぼすべき事実の誤認はないといわなければならない。
 論旨は理由がない。
 同上第二点、第三点について。
 しかし、刑事訴訟法第三百十二条第一項によれば、公訴事実の同一性を害しない
限度において起訴状に記載された訴因の追加、撤回又は変更が許されるのであり、
公訴事実の同一性とは、犯罪の基本的事実関係即ち、犯罪の日時場所、方法、被害
法益等において一個の事実として認めうる範囲をいうものと解すべきであるから、
本件のように、共同正犯として起訴に係る事実を、予備的訴因として単独犯行と追
加しても単にその犯罪の方法の一部を異にするに過ぎずその相違は事実の同一性を
害することはないというべくく、従つて共同正犯として起訴に係る事実に、単独犯
行として訴因を予備的に追加するも法令に違反するところはないといわなければな
らない。そして相被告人に対する訴因の変更、追加が許されないからといつても被
管人に対する訴因の変更、追加が適法である限り許容せられること当然である。論
旨第二点は理由がない。所論第三点において主張するところはこれと反対の見解に
おいて立論するものであつて採用の限りでない。
 同上第四点について。
 訴訟関係人の公判廷における供述又は供述調書の記載中の一部を採つてもつて証
拠とする場合において、それを特定して記載することが、どの部分を証拠としたか
を明らかにする上に役立つことは、いうをまたないところであるけれども、現行訴
訟法がこれを要求しているという所論はあたらない。けだし、有罪判決には罪とな
るべき事実、証拠の標目、法令の適用が記載されているのであるから(刑事訴訟法
第三百三十五条第一項)、その判文を通にて諒知することができるからである。い
ま本件について見ても「被告人Aの当公延の供述の一部」とあるのは、「被告人A
の当公廷における供述中判示認定事実と牴触しない部分」という趣旨に解せられ
る。所論供述調書についても同様である。それ故これをもつて原判決には理由不備
の違法があるとはいえない。論旨は理由がない。
 被告人Bの弁護人渡辺利左久の控訴の趣意第二点について。
 被告人Bに対する公訴事実は、窃盗、強盗殺人として原裁判所に起訴せられ、次
いで右強盗殺人の事実につき賍物収受の事実が予備的訴因として追加せられ、原裁
判所はこれを容れて、同被告人に対しては強盗殺人の事実につき判示することな
く、賍物収受の事実を認定判示したこと所論のとおりである。論旨は右強盗殺人の
事実と財物収受の事実との間に事実の同一性を欠くと主張するので、案ずるに、公
訴事実の同一性とは、犯罪の基本的事実関係即ち、犯罪の日時、場所、方法、被害
法益等において、一個の事実として認めうる範囲をいい、必ずしも厳格にすべてが
同一でなければならないというものでないこと、被告人Bの弁護人の控訴の趣<要
旨>意につき説明したとおりであるが、いま本件において強盗殺人の事実と財物収受
の事実とについて見るに犯罪の日時、場所において必ずしも大差ありとはい
えないにしても、賍物罪は事後従犯といわれているように強盗殺人の犯行後に行わ
れるのであるからその日時、場所は自ら異るものというべく、また犯罪の方法、被
害法益の全然相違すること多言を要しないから、その間には公訴事実の同一性を欠
くものといわなければならない。
 従つて本件のように検察官が強盗殺人の事実に、予備的に賍物収受の訴因を追加
しても、右訴因の追加は許さるべきでないから、原裁判所は固よりこれに拘ること
なく、強盗殺人の事実につき審判しなければならないのに拘らず、これにつき判断
しなかつたのは、審判の請求を受けた事件について判決をしない場合にあたるもの
といわざるをえない。論旨は理由があり、同被告人については他の論旨につき判断
するまでもなく、原判決は破棄を免れない。以上説明のとおり被告人Aの控訴は理
由がたいから、刑事訴訟法第三百九十六条に則つて、これを棄却し、当審の訴訟費
用は同法第百八十一条により全部被告人の負担とし、被告人Bの控訴は理由がある
から、同法第三百九十七条第三百七十八条第三号第四百条本文に則り、原判決中、
同被告人に関する部分を破棄し、本件を広島地方裁判所に差し戻すべきものとし、
主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 小山慶作 判事 和田邦康 判事 小竹正)

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