弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人清瀬一郎、同内山弘の上告趣意第一点について。
 元来昭和一二年法律第九二号輸出入品等ニ関スル臨時措置ニ関スル件が昭和二〇
年法律第四九号により昭和二一年一月一六日から廃止され同臨時措置ニ関スル件に
基く命令又は処分が同年七月一六日からその効力を失うことになつたので、同年七
月一五日商工省令第三四号(昭和一二年法律第九二号に基く省令の措置に関する件)
によつて、カーバイド配給統制規則(昭和一四年一二月一八日商工省令第七四号)
外十五の配給、需給、取締等の統制規則は物資統制令(国家総動員法に基く昭和一
六年勅令一一三〇号)に基いて発したものとされ、次で、国家総動員法(昭和一三
年四月一日法律第五五号)が昭和二〇年法律第四四号により同二一年四月一日から
廃止され、同動員法に基く勅令が同年一〇月一日から失効することになつたので、
同日商工省令第四一号によつて右カーバイド配給統制規則外十九の統制規則は臨時
物資需給調整法(昭和二一年一〇月一日法律第三二号)に基いて発したものとされ、
更に昭和二二年二月一五日商工、農林省令第三号(指定生産資材割当規則の附表第
一制定の件)制定と共にカーバイド配給統制規則外十五の統制規則が廃止され同規
則の実質は指定生産資材割当規則(昭和二二年一月二四日閣令第一号)に吸收され
たものである。従つて、原判決が被告人は所論昭和二二年一月二四日指定生産資材
割当規則発布前である昭和二一年一〇月頃より以後は富山、石川両県下に跨る指定
工場に対する資材の割当等に関する判示事務を担当した旨認定判示したからといつ
て所論のように法令を無視して公務員の職務権限を決定した違法があるとはいえな
い。しかのみならず判示第一の(一)乃至(五)の所為は、昭和二二年一〇月頃以
降の所為であるから、所論昭和二二年一月二四日指定生産資材割当規則発布以後の
資材割当事務に関するものであるから、原判決の所論判示は原判決に影響を及ぼさ
ないこと明らかであるといわなければならない。それ故、所論は、採ることができ
ない。
 同第二点について。
 原判決は、被告人が名古屋商工局北陸出張所商工課長及び生産協力官として判示
事務を担当中昭和二二年一〇月頃同出張所管下の指定工場であるB工業株式会社を
判示Cに紹介してやり且つコークスブリーズについてはB工業株式会社に割当証明
書を発券してやり、また、カーバイドについては神戸海運局長宛のカーバイド割当
発券に関する通知書を作成しCをしてこれを持参帰社せしめ、その結果D造船所は、
B工業株式会社から還元カーバイドを譲受けることができた旨認定判示しているの
である。されば、右被告人の行つた交換に関する斡旋、発券その他これに関する事
務上の処置は、被告人の職務に関するものというべく、従つて、原判決が右処置竝
びにその結果取引が成立したことに対する謝礼、報酬等の趣旨で供与するものであ
ることの情を知りながら受領した判示第一の(一)の所為を以て被告人の職務に関
して賄賂を收受したものとし刑法一九七条一項を適用したのは正当であつて、何等
の違法も存しない。論旨は、その理由がない。
 同第三点について。
 しかし、原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判示の知情の点を肯認することがで
きるから、所論は採用し難い。
 同第四点について。
 しかし、所論摘示のEに対する司法警察官の聴取書中の供述記載自体と原判決挙
示のその他の証拠を綜合すれば、所論贈賄者側の意思竝びに判示被告人の知情その
他原判示第一の(二)の事実認定を肯認することができるから、所論は採用し難い、
 同第五点について。
 しかし、原判決挙示の証拠就中所論摘示のFに対する司法警察官の聴取書中の供
述記載を綜合すれば所論贈賄者側の意思その他原判示第一の(三)の事実認定を肯
認することができるから、本論旨も採用し難い。
 同第六点について。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判示第一の(五)の事実認定を肯認する
ことができるから、所論は採ることができない。
 同第七点について。
 原判決は、証拠説明の箇所に第一審第二回公判調書中被告人Aの供述としてCか
ら受取つた金は保釈後先方に送り返したが、それまで自分の金とやりくりして居て
使つて仕舞つたので別の金を返した旨の記載を掲げ、擬律の箇所で判示賄賂は既に
消費せられその全部を没収することができない旨説明している。そして、収賄者が
収受した賄賂を自ら費消した以上その後は同額の金円を贈賄者に返還したとしても
収賄者において既に享受した利益を追徴される責を免れないことは当法廷の判例と
するところ(昭和二四年(れ)一九九七号同年一二月一五日当法廷判決判例集三巻
一二号二〇二三頁以下参照)であるから、原判決には所論の違法は認められない。
 被告人A本人の上告趣意について。
 所論第一の理由のないことは、清瀬弁護人等の論旨第七点に対する説明により了
解すべきである。
 また、所論第二摘示の原判決の担当事務に関する判示は、所論のごとく本件に無
関係の判示であることは所論のとおりである。しかし、原判決は所論法的に認めら
れた工場以外の管内関係の工場からの収賄を認定していないのであるから、所論の
原判示は、原判決に影響のない事項に関することも明らかである。それ故、所論は、
採用し難い。
 次に、原判示第一の(一)が被告人の職務に関係のあることは、清瀬弁護人等の
論旨第二点に対する説明により了解すべく、その他は、原判決が適法になした事実
認定(同弁護人等の論旨第三点に対する説明参照)を非難するに帰するから、所論
第三は、採用することはできない。
 次に、原判決挙示の証拠によれば、原判示第一の(五)の金員受領の年月日、供
与の趣旨竝びに知情の点その他原判示の事実認定を肯認することができる。されば、
所論第四は、原判決の採用しない証拠に基き原判決の事実誤認を主張するに帰し、
適法な上告理由ではない。
 次に、原判決挙示の証拠によれば、原判示第一の(二)(三)(四)の事実認定
を肯認することができる。されば、所論第五も、原判決が適法になした事実認定を
非難するに帰し、適法な上告理由ではない。
 そして、所論証人Gは贈賄者であるから、旧刑訴二〇一条一項三号により宣誓を
させないのは、当然であつて、何等異とするに足りないし、また、被告人に対する
司法警察官の聴取書が自由意思によらない強制のものであることは、これを認むべ
き資料が存しない。されば所論は、すべて採ることができない。
 被告人Hの弁護人古屋東の上告趣意第一点について。
 被告人よりも犯情の重い他の者が贈收賄行為につき起訴処罰を受けず又は起訴さ
れたが無罪となつたとしても、それ自体が正義に反するだけであつて、これがため
被告人の所為を無罪とすべき理由とならないことは多言を要しないところであるし、
また、被告人と他の者との間にかかる差異を生じたからといつて、被告人を憲法一
四条所定の理由により差別待遇をしたといえないことも明々白々であるから、所論
は採ることができない。
  同第二点について。
  しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判示事実の認定を肯認することができ
る。されば、所論は、結局原判決が適法になした事実認定を非難するに帰し、適法
な上告理由ではない。
  同第三点について。
  贈賄者なるが故に必ず訴追しなければならないものでないことは、所論も認む
るところであるから、本件贈賄者を起訴しなかつたからといつて、違法であるとい
えないことは、必ずしも所論の争うところではないし、その他所論は、原判決の違
法を主張するものではなく、結局その事実認定を非難するものと解されるから、当
法律審適法の上訴理由として採ることはできない。
 同被告人の弁護人位田亮次の上告趣意について。
 原判決挙示の証拠によれば、被告人が本件金員受領の際における判示知情の点そ
の他原判示の事実認定を肯認することができる。されば、所論は、結局原審の裁量
に属する証拠の判断を非難するに帰し適法な上告理由ではない。
 よつて、旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年三月二九日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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