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平成29年9月8日判決言渡
平成29年(行ウ)第365号代理援助不開始決定取消請求事件
主文
1本件訴えを却下する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告が平成29年6月27日付けで原告に対してした代理援助の不開始決定
を取り消す。
2被告は,原告に対し,東京地方裁判所平成29年(ワ)第10910号事件
に係る代理弁護士着手金20万円につき,代理援助の開始決定をせよ。
第2事案の概要
本件は,原告がした代理援助(日本司法支援センター業務方法書(以下「業
務方法書」という。)5条1号。総合法律支援法30条1項2号イ,ロ参照)
の申込みに対して,日本司法支援センター東京地方事務所上野出張所長名でさ
れた代理援助の不開始決定(以下「本件決定」という。)について,原告が,
行政事件訴訟法3条2項に規定する処分の取消しの訴え及び同条6項2号に規
定する義務付けの訴えとして,本件決定の取消しと上記の申込みに対する代理
援助の開始決定の義務付けを求める事案である。
第3当裁判所の判断
1行政事件訴訟法3条2項に規定する処分の取消しの訴え及び同条6項2号に
規定する義務付けの訴えは,いずれも抗告訴訟の一つであり,抗告訴訟の対象
となる「処分」とは,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(同
条2項),すなわち,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,そ
の行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが
法律上認められているものをいうと解される(最高裁昭和37年(オ)第296
号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照)。
このような性質上,「処分」に当たる行為は,権力的作用に属する行為であ
ることが原則であるが,本件の代理援助のように,金銭や役務の給付を目的と
する非権力的作用に属する行為であっても,法令が,一定の者に当該金銭等の
給付に関する申請権を与えるとともに,国又は公共団体の機関が,申請権を有
する者の申請に基づき,支給・不支給の決定をして当該申請者の受給権の存否
を確定するという手続を採用するなど,当該行為を,公権力の主体としての優
越的地位に基づき,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為
として特に規定している場合には,そのような行為も「処分」に当たるものと
解される。
2しかしながら,これを本件の代理援助についてみても,代理援助を含む日本
司法支援センターの業務等について規定する総合法律支援法,その関連法令そ
の他の法令上,国民が同センターに対して代理援助に関する申請権を有するこ
とを定めた規定は存在しない。また,代理援助の申込みに関して,同センター
に公権力の主体としての優越的地位を与える旨の法令の規定や,同センターに
対する代理援助の申込みについて,同センターの機関である地方事務所長等に
対して,その諾否を決定し,その決定によって,直接,当該申込みをした国民
の代理援助を受ける権利の存否やその受けることができる代理援助の具体的内
容を確定する権限を与える旨の法令の規定も見当たらない。
なお,総合法律支援法34条1項に基づいて作成された業務方法書は,日本
司法支援センターの業務の方法の要領を記載したものにすぎず,この場合の法
令には当たらない。また,業務方法書は,代理援助の開始又は不開始の決定に
ついて,地方事務所長に対する不服申立てや理事長に対する再審査の申立ての
定めを設けているが,これは,その業務の公共性に照らして,公平・適正な運
営を図る見地から同センターが自らを規律する制度として定めているもので
あって,行政不服審査法や行政事件訴訟法との関係に一切触れていないことか
らしても,代理援助の開始又は不開始の決定が抗告訴訟の対象となる「処分」
に当たるものであることを前提としているものとは解されない。
以上からすれば,代理援助の申込みとこれに対する代理援助の開始又は不開
始の決定は,一般民事法上の契約の申入れとこれに対する承諾又は不承諾に当
たるものというべきであって,日本司法支援センターの機関が行う代理援助の
開始又は不開始の決定は,抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらないとい
うべきである。
3したがって,本件訴えは,抗告訴訟の対象ではないものを対象とした抗告訴
訟として不適法であり,その不備を補正することができないものというべきで
ある。
第4結論
よって,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法140条により,口頭弁論を経な
いで本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官古田孝夫
裁判官貝阿彌亮
裁判官志村由貴

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