弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人ら両名の負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、被告人ら両名の弁護人竹内信一作成の控訴趣意書記載のと
おりであり、これに対する答弁は検察官岩本信正作成の答弁書記載の通りであるか
らこれを引用する。
 論旨一乃至三点について
 所論は要するに、原判決は、被告人AはB郵便局の事務員として郵便物の集配の
事務に従事していた国家公務員であるところ、B電報電話局よりB郵便局に差し出
されていた「電話架設のご案内」と表面に印刷してある第五種郵便物について、そ
の名宛人の住所、氏名、電話番号を紙片に書き写し、被告人Cらに交付し、もつ
て、郵便法八〇条二項の信書の秘密を侵すとともに、国家公務員法一〇〇条一項の
職務上知ることのできた秘密を漏らしたものであると認定しているが、(一)右の
電話架設案内は開封の信書で、その内容が信書の表面に明白に記載されているか
ら、その内容が他人に知られても差し支えないとして出されたものであり、守らな
ければならない秘密はないので、宛名、住所を漏らしても、郵便法上の信書の秘密
を侵したとはいえない。(二)国家公務員法一〇〇条一項の秘密とは、客観的にみ
て誰がみても、他人に知られたくないという事項か又は法律、命令又は当事者関係
人から具体的に「秘密にすべし」とされている事項でなければならない。電話架設
案内は、いかなる意味でも他人に知られたくない事項とはいえず、しかもBの電報
電話局では、特定の証券業者に電話の新規架設該当者の氏名を教示している事実に
徴しても同法上の秘密ではないというのである。
 <要旨>よつて、案ずるに、郵便法九条は郵政省の取扱中に係る信書の秘密は、こ
れを侵してはならない。郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して
知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても同様と
すると規定している。同法八〇条は同法九条に違反した場合の罰則規定である。郵
便法の右の諸規定は、通信の秘密を侵してはならないという憲法二一条の要求に基
いて設けられており、憲法は思想の自由や、言論、出版等の表現の自由を保障する
とともに、その一環として通信の秘密を保護し、もつて私生活の自由を保障しよう
としているのである。従つて郵便法上の信書の秘密は、この憲法の目的に適うよう
解釈しなければならない。そもそも郵便物の委託者は郵便官署を信頼してその秘密
を託するものであり、開封の信書や葉書であつても委託者が秘密にすることを欲す
る場合のあること、そして少なくとも委託者はその郵便物の内容を積極的に他人に
公開する意思のないこと、郵便物の発送元や宛先といえども、それが知られること
によつて思想表現の自由が抑圧される虞のあることを考えると同法上の信書には封
緘した書状のほか開封の書状、葉書も含まれ、秘密には、これらの信書の内容のほ
か、その発信人や宛先の住所、氏名等も含まれると解すべきである。
 しかも、原審における証人Dの供述、当審における証人Eの供述を綜合すれば、
電話の新規架設者の住所、氏名を架設案内によつて知らせる前に公表すると、電話
業者が、しゆん動して新規架設者に不利益をもたらす危惧のあることや電々公社の
職員が特定の業者と結託して不正を働いているのではないかという疑惑を持たれる
虞があるので、本件犯行当時は、誰に電話の新規架設を認めたかを何人にも公表せ
ず(弁護人所論の勧業証券に架設者の名簿を閲覧させるようになつたのは、本件犯
行後のことであり、しかも、同証券以外の者には公表していない)職員にもこれを
洩らすことを禁じていたこと、開封の信書であつても、郵便局で取扱中に他に漏れ
るとは予想していなかつた事実を認めることができる。そうしてみると、発信人で
あるB電報電話局は、本件の信書につき、その内容はもとよりその宛先につき、こ
れを秘密にすることを欲し、しかも秘密を保持することに合理的な相当事由があつ
たものといわなければならないのである。
 そして、本件犯行の態様をみると、被告人は、配達中にたまたま電話架設案内の
本件書状をみて、その宛先等を知つたというのではなく、B郵便局において、B電
報電話局から一括して差し出された電話架設案内の書状を発見するや、これを局外
に持ち出して、その宛先の住所、氏名のほか、書状の中に記載されている電話番号
を封筒の隙間から覗き見して書き取り、これを被告人Cらに知らせているのであ
る。被告人Aの原判示第一、(一)の所為が郵便法八〇条二項に違反することは明
白であるといわなければならない。従つて弁護人の本件書状は開封だから、守らな
ければならない秘密はなく被告人の所為は郵便法上の信書の秘密を侵したものでな
いとの主張は採るを得ない。
 次に国家公務員法一〇〇条一項に職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなら
ないと規定されている秘密とは、他の法令によつて秘密とされている事項を含むも
のと解すべきである。郵便法九条によつて秘密とされている信書の秘密は、国家公
務員法一〇〇条一項の秘密であるといわなければならない。従つて電話架設案内
は、いかなる意味でも他人に知られたくない事項とはいえないから、公務員法上の
秘密に当らないという弁護人の所論は採るを得ない。
 原判決に所論のような法令適用の誤りはないから論旨は理由がない。
 論旨四点について
 所論は要するに公務執行妨害罪における公務員と収賄罪における公務員とは、保
護法益を異にするから画一的にきめるべきではなく、若干の相違があると考えるの
が当然である。被告人Aは郵便集配人であるが、収賄罪にいう職務に関しというの
は専ら機械的単純労働を指すものではないから、被告人の判示第一、(二)の所為
は収賄罪に当らないというのである。
 <要旨>よつて案ずるに、刑法上公務員の概念は同法七条によつて明らかにされて
おり、構成要件のいかんによつて解釈を異にすべきものではないと解すべき
である。昭和三五年三月一日第三小法廷、判決(集、一四、三、二〇九)は郵便集
配人の担当事務の性質は単に郵便物の取集め、配達というごとき単純な肉体的、機
械的労働に止まらず、民訴法、郵便法、郵便取扱規程等の諸規定にもとづく精神的
労務に属する事務をもあわせ担当している点を考慮してこれを刑法上の公務員と判
示しているのである。従つて被告人が刑法上の公務員であること明白であり、その
職務に関して賄賂を収受すれば、収賄罪を構成することはいうまでもない。郵便集
配人は機械的単純労働に従事するに過ぎないことを前提として、公務員でないと主
張する所論は理由がない。
 論旨五点について
 所論は要するに被告人Cは被告人Aの秘密漏洩を教唆し、かつ贈賄したというけ
れども、被告人Aの所為は無罪であるから被告人Cもまた無罪であるというのであ
るが、被告人Aの所為は原判示のとおりの犯罪を構成すること前説示のとおりであ
るから、弁護人の所論は前提を欠くこととなり、理由のないこと明白である。
 よつて、刑事訴訟法三九六条に則つて本件各控訴を棄却し、当審における訴訟費
用は、同法一八一条一項本文により被告人ら両名に負担させることとして主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 畠山成伸 裁判官 松浦秀寿 裁判官 八木直道)

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