弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は被控訴
人の負担とする。」
 との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれ
を引用する。
 証拠として、被控訴代理人は甲第一乃至第七号証、第八号証の一乃至四、第九号
証の一、二、第十乃至第十六号証、第十七第十八号証の各一、二、三、第十九、二
十号証の各一、二、第二十一号証、第二十二号証の一、二を提出し、いずれも原審
における証人A、B(第一、二回)、C(第一、二回)、D、E、F、被控訴本人
(第一乃至第四回)、控訴本人(第一回)の各供述、検証の結果、鑑定人Gの鑑定
の結果を援用し、乙第四号証は不知その他の乙号各証の成立を認める、原審第四回
公判調書中甲第二号証の控訴人名下の印影を認めた部分を援用する、と述べ、控訴
代理人は乙第一乃至第四号証を提出し、いずれも原審における証人H、I、J、B
(第二回)、控訴本人(第二、三、四回)、被控訴本人(第五回)の各供述、検証
の結果、並に当審における控訴本人の供述を援用し、甲第九号証の一、二、第十、
十一号証、第十三、十四号証、第十六号証、第十七、十八号証の各一、二、三、第
十九号証の一、二、第二十二号証の一、二の各成立を認める、甲第十五号証の成立
を否認する、甲第二号証の控訴人名下の印影の成立を否認しその他は不知、甲第二
十号証の一の官印の部分の成立は認めるが、その他の部分は不知、その他の甲各号
託は不知、と述べた。
         理    由
 本件の争点は(一)控訴人において改築前の別紙目録記載の建物を前主である訴
外Kから買いうけた者は被控訴人であるか控訴人であるか、それともその双方が二
重に買いうけたものであるか、(二)その所有権の対抗力はどうか、(三)控訴人
は時効によつて右建物の所有権を取得したかどうか、(四)控訴人は右建物の増
築、改築大修繕によりその所有権を取得したものであるか、という四点に尽きるの
で、以下順次に判断を加えることにする。
 (一) 控訴人において改築前の別紙目録記載の建物が元訴外Kの所有であつた
ことは当事者間に争なく、原審における証人A、B(第一回)、C(第一、二
回)、被控訴本人(第一乃至第五回)の各供述並に右証人A、被控訴本人(第一
回)の各供述により真正に成立したものと認める甲第一号証、原審における証人
J、被控訴本人(第一、三回)の各供述により真正に成立したものと認める甲第二
号証、原審における被控訴本人の供述(第二回)により成立を認める甲第三号証、
第七号証、原審における証人E、被控訴本人(第四回)の各供述及び鑑定人Gの鑑
定の結果により成立を認める甲第十五号証、成立に争のない甲第十六号証を綜合す
ると、Kは大正十三年一月一日Lの後見人Mから萩市大字a町第b番の宅地の一部
に借りうけ、同地上に瓦葺平家建一棟建坪三十四坪を所有してこれを控訴人に賃貸
していたところ、昭和十二年三月八日右建物を被控訴人に対し代金七百五十円で売
渡した事実、被控訴人は何日控論人に対し右買受けの事実を告げて右建物の新所有
者たることの承認を得且つ双方の間で改めて右建物の賃貸借契約を締結した事実を
認めるに十分である。
 控訴人は昭和十年三月頃Kから前記建物を買いうけてその所有権を取得した、と
主張するけれども、原審における証人H、I、J、控訴本人(第一乃至第四回)の
各供述中右主張に副う部分は信用しない。
 尤も成立に争のない乙第一号誕の家屋台帳謄本によると、萩税務署備附の家屋台
帳には控訴人が本件建物の所有者である旨記載してあるけれども、同号証の摘要欄
に「昭和一九年七月三日毀損昭和二十三年一月八日申告昭和二十三年一月九日賃貸
価格更正」と記載してある点右家屋台帳の記載は何等公信力を有するものでない点
成立に争のない甲第二十二号証の一、二並に前記認定事実に徴して、右乙第一号証
のみを以ては未だ前記認定を覆して控訴人が前記家屋をKから買いうけた証拠とす
るに足らない。
 又成立に争のない乙第三号証に原審における被控訴本人(第一同)、原審及び当
審における控訴本人の各供述によると、控訴人において前記建物に対する家屋税を
自己名義で支払つた事実が窺えるけれども、控訴人の立証によつては右納税の年度
及び回数が明瞭でない点、原審における被控訴本人の供述によれば被控訴人は十数
軒の貸家を所有して家屋税は全部一括して支払つていたため前記建物に対する家屋
税を控訴人において支払つたことがあるのに気附かなかつた事実を認められる点並
に前記認定の被控訴人と控訴人との間に右建物の賃貸借契約が締結せられた点を綜
合すると、控訴人が前記のとおり家屋税を支払つた事実を以ては未だ叙上認定を左
右するに足らない。
 その他控訴人の提出援用する証拠を以ては前記認定を覆すことはできない。
 <要旨>(二)次に被控訴人は控訴人に対し前記建物の所有権取得を以て対抗しう
るかどうかにつき判断する。控訴人が被控訴人の前主Kから右建物を賃借し
ていたことは当事者間に争のないところであつて、被控訴人が右建物につき所有権
保存登記も所有権移転登記も経ていないことは被控訴人の自認するところである。
しかしながら建物の所有者が何等登記を経ていなくとも、第三者がその所有者に対
し登記をえていないことを捉えて対抗する権利を放棄したときは、該所有者は右第
三者に対し建物の所有権を以て対抗できると解するを相当とするところ、控訴人が
被控訴人に対し前記建物の所有権取得を承認して改めてこれを賃借したことは前記
認定のとおりであつて、右は控訴人に於て被控訴人に対し右建物の所有権取得を争
う権利を放棄したものと認めるのが相当であるから、被控訴人は登記なくとも控訴
人に対し前記建物の所有権取得を対抗しうるものといわなければならない。
 (三) 次に控訴人主張の取得時効の点につき判断するに、控訴人が前記建物を
被控訴人から賃借していることは前段説示のとおりであるから、控訴人から被控訴
人に対し右建物を自己の所有として占有する旨を何等かの方法により告知しない限
り取得時効に進行しないものというべきであるところ、原審における被控訴本人
(第二回)の供述によると、昭和二十四年四月被控訴人から控訴人を相手方として
申立てた本件建物の所有権確認のための調停期日において控訴人が被控訴人に対
し、本件建物は自分がKから買いうけたものであると争つたことがある以前には、
かつて被控訴人に対し本件建物を控訴人の所有として占有する旨を告知した事実を
認めうる証拠は少しもないから、時効によつて本件建物の所有権を取得したとの控
訴人の主張は採用できない。
 (四) 最後に控訴人が本件建物につき旧態を止めねまでに増築、改築、大修繕
を加えた結果その所有権を取得したとの控訴人の主張につき判断する。原審におけ
る証人B(第一、二回)、H、C(第一回)E、控訴本人(第一、二回)、被控訴
本人(第一乃至第五回)、当審における控訴本人の各供述並に原審における検証の
結果を綜合すると、控訴人は被控訴人から前記建物を賃借中被控訴人の承諾たなし
て、右建物を改造して三畳の部屋一室、二階六畳の部屋一室、事務室二室を設けた
ほか、八畳の板の間、四畳の部屋各一室、便所及び二階建離屋を増築したけれど
も、右増築、改築の部分中二階建離屋を除いた部分はすべて従前の建物に附加して
一体をなし容易にこれを分離することができない状態になり、しかも従前の建物は
ほぼその原型を止めている事実を認めるに十分である。原審における証人H、控訴
本人(第二回)の各供述中右認定に反する部分は信用し難く、他に右認定を覆する
に足る証拠はない。そうすると、前記増築、改築の部分のうち二階建離屋を除いた
部分はすべて附合により被控訴人の所有に帰属したものというべきであつて、改築
後の別紙目録記載の建物が、右増築、改築により控訴人の所有に帰したとの控訴人
の主張は採用できない。
 以上説示のとおり、別紙目録記載の建物は被控訴人の所有であつて、被控訴人
は、控訴人に対し右所有権を対抗しうること明らかである。そして、成立に争のな
い甲第九号証の一、二、第十号証、乙第二号証並に原審における控訴本人(第二、
三、四回)の供述によると、控訴人が昭和十三年六月二十日萩市大字a町第b番地
上に控訴人が建築した一、木造瓦葺部屋建坪四坪五合、附属一、木造瓦葺平家造厠
建坪三坪、一、木造亜鉛葺平屋造倉庫建坪三十七坪五合に付所有権保存登記を経、
昭和二十四年九月六日山口地方法務局萩支局に対し同支局受付第二一四七号を以て
右控訴人所有家屋を昭和二年九月七日改築を登記原因として被控訴人所有の別紙目
録記載の建物に付建物表示変更登記を経た事実を認めることができる。そうする
と、右表示変更登記は被控訴人の所有建物に付何等実体上の権利なく真実に反して
たされたものであるから、控訴人に対し本件建物が被控訴人の所有であることの確
認並に右建物表示変更登記の抹消登記手続を求める被控訴人の本訴請求は正当とし
てこれを認容すべく、右と同趣旨の原判決は相当である。
 よつて民事訴訟法第三百八十四条第一項、第九十五条、第八十九条に従い主文の
とおり判決する。
 (裁判長裁判官 小山慶作 裁判官 土田吾郎 裁判官 宮田信夫)
 (別紙目録省略)

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