弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鍛治利一の上告趣意(後記)第一点、第二点及第三点について。
 よつて、Aに対する所論聴取書を見ると、同聴取書には、同人の供述として論旨
摘録の如き記載があるけれども、同供述によつてもわかるとおり、同人は当時判示
家屋が被告人の所有でないことを知つていたのであり、被告人が所有者から右家屋
の売買につき一切を任せられていると聞かされていたので、これを買取るため、所
論の如く売買契約を締結したというのであるから、論旨援用のAの供述は、結局、
将来所有者に支払うべき買受代金の内金に充当して貰う意図の下に判示小切手を被
告人に託したもので、被告人との間に所論の如く売買契約を締結したのは買取斡旋
のための方便としてこれを締結したという趣旨にこれを解するを相当とする。即ち、
右小切手についてはAにおいて前記の如くその使途を限定して被告人にこれを交付
したもので、所論の如く単に被告人との間の売買契約の履行として被告人にその自
由処分を許す意思の下に交付したという趣旨を、供述したものと解すべきではない。
 して見ると、右Aの供述は被告人が判示小切手を判示の如き委託の趣旨の下にA
のために保管していたという事実を裏書立証するに足り、従つて、また被告人が該
小切手についてその委託の本旨に違い判示の如き処分行為をした以上、横領罪を構
成するものと言わなければならない。従つて、原判決には所論の如き違法違憲はな
く、論旨はその理由がない。
 同第四点について。
 しかし、原判決は所論金銭は製茶員受資金として被告人に寄託されたものである
ことを認定している。即ち、右金銭についてはその使途が限定されていた訳である。
そして、かように使途を限定されて寄託された金銭は、売買代金の如く単純な商取
引の履行として授受されたものとは自らその性質を異にするのであつて、特別の事
情がない限り受託者はその金銭について刑法二五二条にいわゆる「他人ノ物」を占
有する者と解すべきであり、従つて、受託者がその金銭について擅に委託の本旨に
違つた処分をしたときは、横領罪を構成するものと言わなければならない。そして
所論の金銭の中には将来被告人の受くべき利益金を包含していないことは判文上明
かであるかち、原判決が所論の金銭について判示の如き事実を認定して被告人を横
領罪に問擬したことは相当であつて、何ら所論の如き違法はなく、論旨はその理由
がない。
 同第五点について。
 よつて、記録を精査すると、原審第一、二、三、四回公判期日には被告人の疾病
又は弁護人差支の理由により期日の延期申請書が提出され、被告人は右期日に一回
も出頭しなかつたので、右各期日はそれぞれ延期された上、第五回公判期日は昭和
二五年五月二四日に指定されたのであるが、同期日には被告人も原審弁護人山田豊
もいずれも無届のまま出頭しなかつたので、裁判長は旧刑訴四〇四条により審理し
弁論を終結した上、被告人の陳述を聴かないで同年六月二三日判決を言い渡したこ
とがわかる。尤も、第五回公判期日の翌日(同年五月二五日)被告人の疾病を理由
として医師の診断書を添えた被告人及び弁護人山田豊連名の期日延期申請書が原審
に提出されているけれども、右診断書の記載もこれを従前の公判期日の延期申請書
に添付された各診断書の記載と比べて検討すれば、必ずしも信用しなければならな
いものではないし、第四回公判期日に出頭した原審弁護人小淵方輔は、同公判にお
いて被告人の病状調査の上至急上申する旨を述べたに拘らずこれを怠り、第五回公
判期日には原審裁判所に出頭し乍ら被告人の弁護を辞任したことが記録上明かであ
るから、これらの事実に徴すれば、原審が被告人の第五回公判期日における不出頭
を正当の事由がなかつたものと認め、旧刑訴四〇四条により被告人の陳述を聴かな
いで判決を言い渡したことは相当であるといわなければならない。
 なお論旨は旧刑訴四〇四条は憲法三七条一項に反すると主張するけれども、正当
の理由なくして公判期日に出廷しなかつた被告人が訴訟上ある種の不利益を受ける
ことは当然であり、従つて、旧刑訴四〇四条が控訴審において再度の召喚に故なく
応じない被告人に対し、其の陳述を聴かないで裁判をすることができるということ
を規定し、被告人にその不利益を帰せしめたとしても、それは被告人が自ら求めた
結果であつて、何ら人権を抑圧するものでないことは当裁判所の判例とするところ
である(昭和二四年(れ)第六〇四号同二五年二月一日大法廷判決参照)。して見
ると、憲法三七条一項を所論の如く解することの当否は兎も角として、旧刑訴四〇
四条が被告人の対審の権利を害するものでないことも右判例の趣旨に徴して明かで
ある。従つて、原審が同条を適用したことについては、何ら所論の如き違憲はなく、
論旨は理由がない。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、全裁判官一致の意見を以つて、
主文のとおり判決する。
 検察官 竹内壽平関与
  昭和二六年五月二五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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