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平成17年3月4日判決言渡
平成15年(ワ)第14522号損害賠償請求事件
判決
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
被告は原告に対し、金3293万9163円及びこれに対する平成14年12月21日から支払
済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、被告が開設するA眼科において三度の近視矯正手術(LASIK手術)を受けた原
告が、第二回目の手術及び第三回目の手術の際に手術手技上の過失及び説明義務違反の
過失があり、これによって右眼に視力障害を生じたとして、不法行為に基づき、金3293万91
63円及びこれに対する不法行為の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害
金の支払いを求めた事案である。
1 争いのない事実及び証拠によって容易に認定できる前提事実等
(1)ア 原告は、昭和52年生まれの男性である(争いのない事実)。
イ 被告は、東京や大阪などにおいて「A眼科」の名称で眼科医療を行う医療法人であり、
東京都港区ab丁目c番d号において「A眼科・東京院」を、札幌市e区fg丁目hにおいて「A眼
科・札幌院」をそれぞれ経営するなど、全国6か所で眼科診療所をしている(以下、被告の経
営するA眼科を「被告病院」ということとし、特に個々の診療所をいう場合には、「被告東京
院」、「被告札幌院」などという。)(争いのない事実、乙A4)。
ウ 被告代表者は、被告の理事長であるとともに、眼科医師として診療を行っている。B医
師及びC医師は、被告病院の医師として原告の診療に携わっていた者である(争いのない事
実、甲A13、乙A24)。
(2) 平成13年8月10日、原告は被告札幌院において、B医師の執刀により、両眼の近視
矯正手術を受けた(以下「本件第一回手術」という。)。
平成14年8月25日、原告は被告札幌院において、被告代表者の執刀により、右眼の近
視矯正手術を受けた(以下「本件第二回手術」という。)
同年12月20日、原告は被告東京院において、被告代表者の執刀により、右眼の近視
矯正手術を受けた(以下「本件第三回手術」という。)(争いのない事実、乙A1)。
2 診療経過等
被告病院における原告に対する診療経過に関する当事者の主張は、別紙診療経過一覧
表記載のとおりであり、その間の原告に対する検査結果が別紙検査結果一覧表のとおりであ
ることについては、当事者間に争いがない。
3 争点
(1) 本件第二回手術における説明義務違反の有無
(2) 本件第二回手術における適正手術義務違反の有無
(3) 本件第三回手術における説明義務違反の有無
(4) 本件第三回手術における適正手術義務違反の有無
(5) 損害額(判断の必要がなかった争点)
4 争点についての主張
(1) 争点(1)(本件第二回手術における説明義務違反の有無)
(原告の主張)
ア セントラルアイランドの発生についての説明義務違反
(ア) LASIK手術の結果、レーザーを照射した角膜の中央部分に、照射
部位周辺に比べて高い屈折力の領域が島状に残存する場合、セントラルアイランドが
相当の確率で発生することが知られている。セントラルアイランドは、エキシマレーザーの一
括照射型で高頻度に起こるが、スキャンニングスリット型やフライングスポット型では殆ど生じ
ないと言われているほか、矯正屈折量が大きいほど、また照射面積が広いほど発生しやすい
とされている。また、セントラルアイランドが、手術後6ケ月以上経っても残存する症例がある
ことも知られている(甲B8)。
したがって、被告は、適正な手術義務を尽くさなければ、セントラルアイランドが合併す
る危険性があり、一度セントラルアイランドが合併すると深刻な視力障害を生ずることを説明
する義務がある。
(イ) しかしながら、被告は、手術前に提供したガイダンス資料(甲A4・3頁、甲A5、乙A
4・7頁)においては「『セントラルアイランド』という矯正不足が起こる可能性があります。それ
を防ぐために私は、横から風を送ってレーザー照射を行っていますので、セントラルアイランド
が発生したことがありません。」「『セントラルアイランド』という矯正不足が起こる可能性があり
ます。A眼科ではこれを防ぐために『ガス発生除去装置』を用います。この装置は、初代院長D
の考案によるもので、特許申請中です」と記述し、被告においては、セントラルアイランドが発
生する危険性が解決済であるかのように説明している。
(ウ) 以上のように、被告は、セントラルアイランドの合併症については、あたかもセントラ
ルアイランドが発生する危険性が解決済みであるかのように説明したのであるから、被告に
は説明義務の懈怠がある。
イ 本件第二回手術の内容の説明義務違反、第一回手術の結果についての説明義務違

患者に対して手術を行う以上は、患者の現在の状態、当該手術の目的、当該手術の予
後及び合併症の危険性について正しく説明すべき義務がある。
原告に対する本件第一回手術を執刀したB医師は、本件第一回手術の結果、左右眼に
おいて、視力矯正の結果に大きな差異が生じた原因について、「左右の角膜における水分の
違いで、レーザー照射後の結果に相違が出た」と説明し、「右眼に残った乱視については再L
ASIK手術で乱視をとれば見えるようになる。フラップや角膜の安定を待って1年後に再手術
をします。」と説明した。
ところが被告札幌院は、B医師が退職した後、被告代表者を原告の担当にしたものの、
被告代表者は、原告に対して本件第二回手術を施行するまでの間に、何らの診察もしないま
ま、本件第二回手術当日に「乱視を取るだけだね」と説明したのみで、本件第二回手術を施行
した。
すなわち、被告札幌院は、本件第一回手術後の原告の右目の状態がどのようになって
いるかの説明もせず、本件第二回手術においていかなる手術を行うのかの説明も行わなかっ
た。
ウ 再手術のリスクについて
LASIK手術は、既にLASIK手術がなされている場合、2回のレーザー照射により角膜
に生じる形状変化の予測はより困難になり、視力矯正の精度が低下する。
したがって、被告はかかる事実を説明すべきであったが、被告はそのことを告知しなか
ったのであり、説明義務違反の懈怠がある。
(被告の主張)
ア 本件第一回手術前の説明
被告は、本件第1回手術の前の診察時に、30分程度のビデオを患者に見せ、その中で
被告代表者が合併症について説明している。また、屈折矯正手術の問題点、副作用、合併症
等の危険性について、被告代表者の著書やパンフレット等を配布し、その中でセントラルアイ
ランドについても、数字を挙げて具体的に説明している。なお、原告が主張する文言は、被告
がセントラルアイランドの防止対策を解説したものにすぎない。
イ 本件第二回手術前の説明
被告代表者は、本件第一回手術を行ったB医師やC医師から、原告の状況の説明を受
け、原告の再手術の方法に関するB医師の相談を受けていた。B医師が退職した後、被告の
職員及び被告代表者は、原告とメールや電話によるやりとりを行い、原告の再手術に対する
要望があることを確認した。被告代表者は、事前にカルテを確認し、手術が可能かどうか検
査、診察を行い、可能であれば再手術を行うこともあり得る旨、原告に伝え、被告は平成13
年8月25日に来院するように指示した。矯正視力検査では-1Dの乱視矯正を行うと裸眼視
力0.4が矯正視力0.8に向上することが認められた。
被告代表者は原告に対し、診察室において、最善矯正視力が1.0にならない原因がセ
ントラルアイランドにあると思われること、矯正精度に限界があり、セントラルアイランドと乱視
を完全に取り除くことは困難であり、それらを軽減することを目的として手術を行うこと、特に、
プリトリートメントについては第一回手術の照射記録紙にある数字を具体的に示して本件第一
回手術の4パーセントを8パーセントにすること、乱視のレンズの装着によって矯正視力の改
善がある程度認められるので、-1Dの乱視軽減を目的として照射を行うことを説明した。
手術の副作用、合併症、問題点についても十分説明し、特に再手術ではレーザー照射
による角膜形状変化の予測は初回の手技より困難であること、セントラルアイランド後の矯正
ではその精度が低下することを説明した。そして、説明に対する質問の機会を与え、再手術の
延期も含めて、今日無理して手術しないで、もし不安なことや疑問点があれば手術を受けない
ほうが良いと説明した。その上で、原告は再手術を強く希望したため、同意書に署名をしても
らい、原告の要望どおり再手術を行った。
ウ 結論
以上のとおり、被告は原告に対し、本件第一回手術後の原告の右目の状態、本件第二
回手術の内容、セントラルアイランドの発生の危険性及び再手術のリスクについて説明したも
のであるから、被告に説明義務違反はない。
なお、争点(2)において被告が主張するように、原告には本件第二回手術によって視力
低下の損害が発生したとはいえない。
(2) 争点(2)(本件第二回手術における適正手術義務違反の有無)
(原告の主張)
ア 既にLASIK手術がされた角膜に対して2回目のレーザーを照射する場合には、角膜
表面の形状(レーザー照射後の治癒の状況や治癒に伴う形状の変化)を把握して適切に手術
計画を立てる必要がある。そして、原告の右目に対する本件第二回手術は、本件第一回手術
の結果、残存した乱視に対する再手術であったことから、角膜の中央部(2.5ミリメートル)の
削除のみを行うべきであった。しかし、被告代表者は、通常のレーザー照射と同様に「6.5ミ
リメートル×5.0ミリメートル」の楕円形のレーザーの照射(87発)を行った。その結果、角膜
の中央部(2.5ミリメートル)のみの削除にとどまらず、本件第一回手術と同様に周辺部も削
除したことから、角膜が薄くなったうえ、過矯正になったほか、セントラルアイランドが発生した
ものである。
イ 被告病院の医師が適正に装置の保守点検を実施したり、適正に診察したうえ適正な
手術計画を立てたり、手術の施行に当たり適正に手術を施行しさえすれば、容易にセントラル
アイランドの発生を未然に防止できる。とりわけ、すでにLASIK手術がなされた角膜に対し
て、2回目のレーザー照射をする場合には、さらに注意して手術を施行する必要がある。にも
かかわらず、本件第二回手術においてセントラルアイランドが形成された原因として、被告病
院が、以下に指摘する何らかの注意義務を懈怠したことが推認される。
(ア) レーザー発生装置自体の問題(メンテナンス不良も含む)で、レーザ
ー密度の不均一分布に伴う切除不良によってセントラルアイランドが発生することがあ
る。この場合はレーザーのエネルギー分布が均一であるかをチェックしたり、ミラーの汚れな
どを調べる必要がある。
(イ) 被告は、セントラルアイランドを防止するための送風装置を開発して利用していたと
するが、その送風装置の保守点検を十分に行う必要がある。
(ウ) レーザーの照射中に、角膜実質からの水分の滲出により低矯正となる。角膜は周
辺より中央、表層より深層に行くほど含水率が増加しているため角膜中央の切除効率は相対
的に低くなる。また照射径が広く、矯正度数が強いほど、滲出した水分による影響を受けやす
くなるため、結果として中央にセントラルアイランドが生じる。この場合はレーザーを照射する
角膜面に滲出する水分や残存する水分等を可能な限り除去した状態でレーザーを照射すべ
きである。
(エ) PRK術後の創傷治癒過程で、上皮修復の不均一による厚みの変化が
見られることがある。角膜中央に上皮の過形成が生じた場合はセントラルアイランドが
起こり得る。
(オ) PRK術後早期など角膜表面が粗慥な場合、ビデオケラトスコープのマイヤー像が
正しくディジタライズされず、一見セントラルアイランド様のパターンを示すことがある。これは
角膜中央のリングの間隔が狭いために生じるアーチファクト(虚像)であり、正しくディジタライ
ズされたマップであるかを含めて評価する必要がある。
ウ 以上のように第二回手術に当たっては、被告に数々の注意義務があったにもかかわ
らず、被告による診察もなされないまま、原告が痛みを訴えたにもかかわらずそのまま続行さ
れたものであり、慎重に手術計画を検討して行ったとはいえない。
(被告の主張)
ア 原告がアにおいて主張する、プリトリートメント及び照射範囲による手術方法は現実に
不可能である。被告は、角膜を削る量を最低限に抑えて乱視矯正を行う手術を選択したので
あり、その結果、本件第二回手術で削った角膜の量はわずか12ミクロンであり、セントラルア
イランドが発生する危険性は全くない。
イ そもそもセントラルアイランドは、LASIK手術によって不可避的に発生するものである
から、原告にセントラルアイランドが発生したからといって、それが適正義務違反から発生した
ものであるとはいえない。
ウ 本件第二回手術については、本件第二回手術後のトポグラフィー図を見ても、従前か
ら見られたセントラルアイランド及び乱視が悪化したと見ることはできず、むしろ改善している。
本件第二回手術後、本件第三回手術以前には、原告の主張によっても裸眼視力0.4、矯正
視力0.7が確保されており、平成14年9月23日の診断時には、矯正視力1.0が認められ
る。さらに、コンタクトレンズ等の使用により、日常生活に支障のない程度に矯正されていた。
したがって、施術において何らのミスがあったとは認められないし、少なくとも、視力低下
の損害が発生したとはいえない。
エ したがって、本件第二回手術についての適正手術義務違反は認められない。
(3) 争点(3)(本件第三回手術における説明義務違反の有無)
(原告の主張)
ア セントラルアイランドが発生したことについて告知しなかったこと
本件第二回手術の結果、右眼について強いセントラルアイランドを発生したが、当初、
被告代表者は原告に対して、本件第二回手術によってセントラルアイランドが発生したことを
正直に告知せず「フラップが安定していないから視力がでない。黙って放って置けば、そのうち
視力がでると思う。」などと説明した。
原告が被告代表者から説明を受けたのは、
「東京では世界で1番いい機械を使用している」こと
「札幌の解析装置では無理で、東京の機械で解析する」こと
「(視力が回復する可能性については)検査をしてから話をする」
ことであり、被告の主張するような説明を受けた事実はまったくない。
イ 再照射が困難であることについての説明義務違反
(ア) すでに発生したセントラルアイランドに対して、具体的にどのように
再度のレーザー照射を行うかについては議論があり、未だ確立した手技はない。それど
ころか、レーザー(たとえ、使用されるエキシマレーザーがウエーブ・フロント・レーシックである
としても)の再度の照射により角膜の形状がどのように変化するかほとんど予測不可能であ
り、ますます角膜の不整を増強させたり、その結果裸眼視力や矯正視力を増悪化させる具体
的危険性がある。したがって被告は、原告に対し上記の事実を説明すべき義務を負う。
(イ) しかし、平成14年11月になると被告代表者は、突然、原告に対し「貴方の目は特
別なので、ウエーブ・フロント・レーシックしか治せない。東京のA眼科の本院で検査を受けてく
れ」と言い始めたが、再度のLASIK手術を行う可能性があるとは告知しないまま、原告に対し
て、被告東京院での検査を受けさせた。さらに検査の後、当初は「手術をしない」と説明してい
たにもかかわらず、「検査の結果、ウエーブ・フロント・レーシックで手術が可能であることが判
ったので、明日手術をします。見えるようになりますよ。」と指示したのみで本件第三回手術を
施行した。
(ウ) このように、被告代表者は原告に対し、裸眼視力や矯正視力を増悪化させる危険
性があることを適正に説明しなかったばかりか、手術の内容、合併症、ウエーブ・フロント・レ
ーシックの特徴や効能等についても全く説明しなかった。
(被告の主張)
ア 本件第三回手術前の説明内容
被告代表者らは、原告及びその家族に対し、平成14年9月2日、同月8日、同月22
日、同月29日、同年11月18日、同年12月19日など、いずれも長時間にわたり詳細な説明
を行っている。
原告は、裸眼視力向上に対する要望が強く、治せる手段と可能性を被告代表者に求め
たため、被告代表者は、時期が経過すれば改善するかもしれないが、必ず良くなるとはいえな
いと説明した。
その上で、被告代表者は治せる可能性のひとつとして、ウエーブ・フロントレーザー装置
であれば、不正乱視の矯正が可能と言われているので、セントラルアイランドの再手術後の
角膜ではあるが、そうした角膜の矯正が出来るかもしれない旨を伝えた。
ただし、被告代表者はその際、ウェーブ・フロント解析装置の結果次第なので、手術が
出来るかどうかは不明であること、解析結果で手術可能であると判断されたとしても、原告の
角膜は再手術後の状態である為、必ずしも解析結果が正しく反映されるとは限らないこと、今
回は解析の検査だけを行って手術をすぐにする必要はなく、手術を希望したとしても再々手術
を受けるにしても1年以上は待った方がいいこと、ウエーブ・フロントによる照射は機械がそれ
を判断し、コントロールするが、誤差が生じる可能性があるなどの説明を行っている。また、ウ
エーブ・フロントについての本も渡して、その内容を十分理解した上で手術を行うかどうか決定
するよう求めている。
イ 以上のような説明を受けた上で、原告は同意書に署名捺印したものであり、被告は十
分な説明義務を果たしたといえる。
(4) 争点(4)(本件第三回手術における適正手術義務違反の有無)
(原告の主張)
ア 乱視の軸の設定を誤ったこと
本件第三回手術の前、原告の右眼は検眼の結果、矯正視力1.25の遠視とマイナス
1.0の乱視が10度方向に軸がある状態であった。にもかかわらず被告は、本件第三回手術
において、乱視を1.37に設定したうえ、乱視の軸を10度と80度ほぼ直交する78度に設定
し、もって原告の検眼の結果と著しく相違する手術計画を行った。
たとえウェーブ・フロント・レーシック手術が手術計画のほとんどをコンピューターで処理
しているとしても、合理的でない状態で作動している。
イ 切除深度を手術適応を超えて設定したこと
被告代表者は、原告の角膜厚が手術適応の400ミクロンを下回る396ミクロンである
にもかかわらず、切除深度の47ミクロンを設定しており、その結果本件第三回手術後の角膜
の厚みは388ミクロンになっており、セントラルアイランドと相まって矯正視力低下の原因とな
っていると考えられる。
ウ 再照射の適応がなかったこと
(ア) レーザーの再照射により、裸眼矯正視力、複視が改善されるという報告があるが、
具体的にどのように照射すべきであるかについては議論があり、レーザー(たとえ、使用され
るエキシマレーザーがウエーブ・フロント・レーシックであるとしても)の再度の照射により角膜
の形状がどのように変化するかほとんど予測不可能であり、ますます角膜の不整を増強させ
たり、その結果裸眼視力や矯正視力を増悪化させる具体的危険性がある。
したがって、平成14年12月21日の当時、未だ、ウエーブ・フロント・レーシック装置に
おいても、すでに2回のLASIK手術を経過した後にセントラルアイランドを生じた症例に対し
て、どのようなエキシマレーザーの照射を行えば、合併症の発生を避けながら、セントラルア
イランドを矯正できるのかについて知見は確立していなかった。当初、被告病院のC医師が
「手術の予定はない」と説明していたのも、そのような状況であったからである。
(イ) このような状況下で本件第三回手術を施行することは、文字どおり人体実験そのも
のであったといっても過言ではない。
したがって、被告代表者には、十分な知見のないままに、原告の右眼に対して、不適
切なウエーブ・フロント・レーシック手術を施行した責任がある。
エ 3回目のレーザーの照射をしようとした場合には、本件第二回手術における適正手術
義務違反において主張した適正な手術を施行するべきより高度の注意義務がある。というの
も、レーザーの照射により角膜の形状がどのように変化するのか予想がますます不可能とな
り、再度のレーザーの照射により、さらに角膜にある不整を増悪したり、角膜の混濁等を生じ
させる危険性がますます多くなるからである。
なお、適正手術義務の懈怠について、被告に具体的にいかなる注意義務違反があるの
かについては、被告において適正手術を施行したことを立証するべきであり、適正な手術の
施行を証明できないものについては、適正手術義務の懈怠があったことになる。
(被告の反論)
ア 本件第三回手術においては、ウェーブフロントの機械の読みとった数値が正しいもの
であることを前提として行われるものであるから、被告に過失があるとはいえない。
イ 原告は本件第三回手術以降、2回も角膜切除を伴うPRK手術を受けていることからみ
て、本件第三回手術において切除過剰であったとはいえない。
ウ 争点(2)における被告の主張と同じく、そもそもセントラルアイランドは、LASIK手術に
よって不可避的に発生するものであるから、原告にセントラルアイランドが発生したからといっ
て、それが適正手術義務違反から発生したものであるとはいえない。
エ 視力低下の事実が認められないこと
本件第三回手術後もセントラルアイランドは残存しているが、それは1回目の手術によ
って生じたものであって、本件第三回手術における適正手術義務違反はない。
本件第三回手術の結果は、平成14年12月21日の検診、同月24日の検診では、裸眼
視力は0.3であるとともに、24日の検診では、-1.50(近視用のコンタクト)を装用すること
によって0.8の視力が得られている。いずれにしても、裸眼視力においては、原告のもともと
の視力である0.03よりも改善されているし、ソフトコンタクトレンズの使用により矯正視力が
得られており、何ら損害も発生していない。
オ 原告の積極的要請に基づく手術であったこと
仮にセントラルアイランドの悪化や視力低下が認められたとしても、それは適正に行わ
れた手術の結果予期されたリスクが発現したのみであり、ウェーブ・フロント・レーシックという
機械自体の限界である。
そもそも、本件第三回手術は、被告による説明が尽くされた上で、原告の強い希望によ
り、リスクを承知した上で行われたものであるから、被告に対して結果についての責任を問う
ことはできない。
(5) 争点(5)(損害額)
(原告の主張)
ア 手術費用相当額の損害     45万0450円
原告は、本件第一回手術代金として75万8100円を支払ったほか、本件第二回手術
代金として7万1400円を支払っており、手術代金のうち、第一回の手術代金の半額(37万9
050円)と第二回手術代金の全額の合計45万0450円相当の損害を被ったといえる。
イ 通院交通費用等        10万円
被告病院への通院等に要した交通費・宿泊費用は少なくとも10万円を超えるものであ
る。
ウ 後遺障害慰謝料       461万円
原告の右眼の視力障害は、後遺障害等級第10級(1眼の視力が0.1以下になったも
の)に準ずる後遺障害であり、これを慰謝するには461万円の支払が相当である。
エ 逸失利益         2478万8713円
原告の右眼の視力障害は、今後、原告が従事できる職種を制限する事由になるほか、
労働能力の27パーセントを喪失するものと評価することができることから、原告の被った逸失
利益相当の損害は、2478万8713円を超えるものである。
オ 弁護士費用         299万円
原告は、代理人弁護士に訴訟手続を委任し、弁護士費用として前記アないしエの合計
額の10パーセントに相当する金額を支払うことを約した。原告が代理人弁護士に支払う弁護
士費用も、原告が被告の近視矯正手術の過誤により被った損害の一つである。
カ 原告の損害は以上のとおりであり、総額は3293万9163円を超えるものである。
(被告の主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件の診療経過について
前記争いのない事実、別紙診療経過一覧表中の争いのない部分及び当事者間に争いの
ない別紙検査結果一覧表の記載に加えて、以下の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件の
診療経過について以下の事実が認められる。
(1) 本件第一回手術前
ア 原告は、昭和52年生まれの男性であり、12歳の頃から近視であることが分かり、眼
鏡を使用し、20歳の頃からはコンタクトレンズを使用していた。しかし、ソフトコンタクトレンズ
を使い続けることは角膜に悪いとの不安があり、プールで泳げないなどの煩わしさもあり、で
きればソフトコンタクトレンズを使用しないで生活できないだろうかと考えていた(甲A2、証人
B、原告本人)。
イ 平成13年6月頃、原告は、札幌市のE病院でレーザーを使った近視や乱視を矯正す
る手術を行っていることを知り、同年7月6日、同病院を受診し、矯正手術について相談を行っ
た(甲A2、14、乙A26、原告本人・1頁)。
ウ(ア) 同月27日、原告は、被告の存在をインターネットで知り、被告札幌院でB医師の
診察を受けた。同日の視力検査(午後2時41分実施)の結果は、以下のとおりである(検査結
果一覧表、乙A1・2頁)。
右眼           左眼
裸眼視力   0.03        0.03
矯正視力   1.25         1.00
近視度数  -7.50D(強度近視) -9.25D(強度近視)
乱視度数  -2.25D(乱視)   -1.75D(乱視)
(メーカー:TOPCON)
(イ) 原告は、検査が終了した段階で30分程度の患者の説明用のビデオを見た後、B医
師から「初診検査3」と題する書面を示され、視力矯正のメカニズムや原告の眼には直乱視が
生じていることなどの説明を受け、合併症については被告のパンフレット「屈折治療のガイダ
ンス」(乙A4)を使って説明を受け、同パンフレット及び被告代表者の著書である「詳説近視レ
ーザー手術」(乙A3・平成12年発行)、「近視レーザー治療レーシック」(乙A2・平成13年発
行)を受け取った(被告病院では一般的に患者に対して被告代表者の著書を交付している)
(甲A2、5、13、乙A1・1ないし5頁、証人B、原告本人、被告代表者・6頁)。
エ 前記被告のパンフレット「屈折治療のガイダンス」及び被告代表者の著書の中には、セ
ントラルアイランドの発生について、以下のような記載がある(乙A2ないし4)。
(ア) 「照射中に、フラップをめくったところから水分が染みてきて水蒸気が発生(ハイドレ
ーション)し、上昇気流とともに角膜中心部にガスが発生することがあります。その場合、レー
ザー照射が中心部だけ遮蔽されて「セントラルアイランド」という矯正不足が起こることがあり
ます。A眼科ではこれを防ぐために、「ガス発生除去装置」を用います。この装置は、初代院長
Dの考案によるもので、特許申請中です。(乙A4・7頁)」
「合併症の発生率 A眼科の合併症(14,633眼) 0.01パーセント(2001年8月3
1日現在)(乙A4・9頁)」
(イ) 「エキシマレーザー照射中に角膜表面からガスが発生し、レーザー光をさえぎること
があります。その場合、照射の効果が中心部だけ低下し「セントラルアイランド」という矯正不
足が起こります。トポグラフィーでみると、周囲が切除されて平坦で青くなっているのに対し、
中央部だけが島状に黄色や赤く盛り上がって見えることからこの名がつけられました。それを
防ぐため、A眼科では私が考案したガス発生除去装置を取り付けています。これまで、セント
ラルアイランドと考えられるのはPRKとLASIKを合わせた約6,000の症例の中で3例しかあ
りません。こうした場合は、後日、中心部だけ追加の照射を加えることで、治すことができま
す。(乙A3・142頁)」
(ウ) 「術後、角膜中心部と周辺部からくる光の結び方があいまいになり、クリアな見え方
が得られない状態になる。A眼科では私が開発した「ガス発生除去装置を用いて照射を行っ
ているので、セントラルアイランドの発生はまず起こることはない(乙A2・71頁)」
オ 原告は、本件第一回手術の前から、近視矯正手術についての書籍を読んでおり、自ら
セントラルアイランドなどの合併症についても調べ、被告においては風を送ってセントラルアイ
ランドを防止していることから、他の病院に比べ特に優れているところであると考えていた(原
告本人・3頁)。
カ 原告は、同年7月29日、E病院において同年8月1日に予約していたLASIK手術を自
らキャンセルし、同年8月10日にA眼科・札幌院で近視矯正手術を受けることを予約し、同月
8日、手術費用(合計75万8100円)を銀行口座に振り込んで支払った(甲A2・3頁、甲A1
4、乙A26・7頁)。
キ 同月10日、原告は「屈折矯正手術の説明書・屈折矯正手術の同意書」と題する書面
に記名押印した。同書面の説明書欄には、不動文字で、屈折矯正手術に関し、①副作用:ハ
ロ、コントラストの低下、視力の日内変動、夜間性近視など ②合併症:角膜混濁、最善矯正
視力の低下、セントラルアイランド、術後性乱視・複視、術後感染、角膜潰瘍、角膜フラップ形
成不全、エピセリームイングロース、ウォッシュボードエフェクト、角膜異物残留、角膜穿孔、ス
ウドケラトコーヌスなど ③問題点:過矯正及び低矯正による遠視・近視・乱視の発生、レーザ
ー照射の光軸ズレ、レーザー照射中のハイドレーション、角膜の薄化、角膜強度の低下、満
足度、老眼鏡の使用時期が早まるなどといった内容が記載されており、同書面の同意書欄に
は、説明書欄の記載に対応して、屈折矯正手術の副作用・合併症・問題点等に関する説明を
受け理解し、了解しましたなどの記載があった(乙A1・92頁)。そして原告は、被告札幌院
で、B医師を執刀医として本件第一回手術を受けた。本件第一回手術の照射記録(右眼、左
眼)には、「Pretreatdepth:4% Pretreatdia:2.5mm(4パーセントのプリトリートメントを中心
2.5ミリメートルの部分に行う)」との記載がなされている(乙A1・10頁)。
(2) 本件第一回手術後、本件第二回手術前まで
ア 同月11日(本件第一回手術翌日)に被告札幌院において実施された視力検査の結果
は、以下のとおりである(検査結果一覧表、乙A1・12頁)。
右眼 左眼
裸眼視力   0.5   0.9
近視度数  +0.50D         +1.75D
乱視度数  -0.75D(乱視)     -1.75D(乱視)
(メーカー:TOPCON)
イ 原告は、本件第一回手術後1週間ぐらいは右眼、左眼ともほとんどぼやけて見えない
状態であったが、特に、本件第一回手術の翌日から右眼の違和感を訴え、左眼の方は徐々
に見えるようになってきたが、右眼がずっとぼんやりした状態であったので、B医師及び被告
病院の職員らに対し、電子メールなどを通じて右眼が見えないと訴え、再手術を強く希望し
た。これに対しB医師は、同年9月3日、左右の角膜における水分の違いで、レーザー照射後
の結果に相違が出たのではないかと思われるが、慌てず、もう少し時間が経って3ヶ月後、6
ヶ月後の経過を見て必要があれば再手術を行うことを説明した(乙A1・12頁、15頁、16頁、
証人B・58頁、原告本人・5頁)。
ウ 同年9月4日、B医師は、被告代表者に対し電子メールを送信し、その中で「昨日札幌
の1ヶ月検診の患者です。」、「トポは一見、セントラルアイランドですが、きれいに8の字になっ
ています。」、「プリトリートメントを従来の8パーセントではなく、4パーセントにして照射したた
め、マスクが完全には焼かれずに残ってしまったのだと思います。」、「いずれにせよ待つ意味
はないので、早めにリオペしたいのですが、会長のご意見をご教示頂ければ幸いです」などと
記載して、原告に対する再手術の方法について被告代表者に相談した。これに対し、同日、
被告代表者は、「再手術の照射に関しては、今すぐこのようにしたら良いという考えが浮かび
ません。」、「再手術の照射では無理をしないことが肝心です。」と返信した(乙A9)。
エ 同月5日、B医師は、原告に対し「再手術の件」と題する電子メールを送信し、当初は
セントラルアイランドだと考えていたが、トポグラフィーを見るとセントラルアイランドとは異なる
形で、きれいな乱視の形となっている、詳しくは次回来院の日に説明する、残りの乱視につい
ては追加で治療すれば治るからがっかりする必要はない、再手術の日程を検討して欲しいと
説明した(甲A10)。
オ 同月9日、B医師は、被告代表者に対し、「セントラルアイランドの件」と題する電子メー
ルを送信し、その中で、原告のセントラルアイランドに対する再手術は同月16日の予定であ
るが、被告代表者の考えも教えて欲しいと記載した。これに対し、被告代表者は、同月11日、
「セントラルアイランドの照射に関しては、電話にて詳しく相談したいと思っています。」と返信
した(乙A10)。
カ 同月16日、B医師は、被告札幌院に来院した原告に対し、トポグラフィー(角膜形状解
析画像検査)上角膜の形状が変化しており、改善する余地が残っているので、再手術を1ヶ月
後に延期するよう説明した(乙A1・19頁、20頁、証人B)。
同年10月15日、B医師は原告に対し、検査結果には問題がなく、2ヶ月後に来院する
よう指示した。その後、被告札幌院のスタッフは、原告に電話で、再手術は行わないことを説
明した(甲A13、乙A1・24頁)。
キ 原告は、他の眼科で再手術の時期について聞いたところ、すぐ再手術せず、角膜が安
定するまで待つのが普通の眼科医であるという話を聞いていたので、再手術が可能になる時
期を待ち、平成14年8月、自ら被告病院に対し再手術の予約の電話をかけた(原告本人・6、
7頁、被告代表者・29頁)。
ク 同年8月25日、原告は被告札幌院を受診し、検査を受けた。同日の検査結果は以下
のとおりである(検査結果一覧表、乙A1・28頁、原告本人・8頁)。
右眼左眼
裸眼視力   0.4  1.0
近視度数  -0.25D        +0.75D
乱視度数  -1.00D(乱視)    -1.00D(乱視)
(メーカー:TOPCON)
被告代表者は、原告に対し、本件第二回手術の際に、本件第一回手術の手術計画を
記載した用紙及び本件第一回手術後のトポグラフィーを示し、記録用紙の上に書き込みを行
いながら、視力が出ないのは、本件第一回手術の際にはレーザーが当たっている間に水分
が上昇気流に乗って、レーザーの当たる部分を遮ったために削り漏れ、セントラルアイランド
が起こったことが原因であろうということ、本件第二回手術の計画として、プリトリートメントを4
パーセントから本来の8パーセントに戻し、中心部に少し多くレーザーを当てるというということ
などを説明した(乙A8・3頁、被告代表者・4、5、29頁)。
同日、原告は、「屈折矯正手術の説明書・屈折矯正手術の同意書」と題する書面に署名
押印した。同書面には、平成13年8月10日に原告が署名押印した説明書(前記(1)キ)に追
加して、副作用として眩輝(グレア)、スターバストの発生、合併症として反復性角膜びらん、角
膜内皮障害、問題点として長期予後は不明確であること、手術前の状態には戻れないこと、
屈折度安定までは一定の期間が必要であること、術後の異物感、違和感が記載されている
(乙A1・90頁)。
引き続いて原告は、同日、被告代表者を執刀医として、右眼に対する本件第二回手術
を受けた。本件第二回手術の照射記録(右眼のみ)には、「Pretreatdepth:8% Pretreatdia:
2.5mm(8パーセントのプリトリートメントを中心2.5ミリメートルの部分に行う)」との記載が
なされているところ、「8%」の記載が赤線で囲まれ、「2.5mm」の記載の下に赤線が引かれ
ている(乙A1・31頁)。
(3) 本件第二回手術後、本件第三回手術前まで
ア 同月26日(本件第二回手術翌日)に被告札幌院において実施された視力検査の結果
は、以下のとおりである(検査結果一覧表、乙A1・33頁)。
右眼左眼
裸眼視力   0.5  1.0
近視度数  +0.75D        +0.75D
乱視度数  -0.75D        -0.75D
(メーカー:TOPCON)
イ 本件第二回手術後、原告は、右眼がほとんど見えなくなったと感じ、眼鏡やコンタクトレ
ンズを使用しても変わりがなかったので、原告の家族らに右眼が見えなくなったことを訴えると
ともに、被告代表者ら被告病院の医師らに対し、度々、どうして見えないのかと詰め寄ったり、
セントラルアイランドですかと尋ねたりするなどして、視力が良くならない理由について尋ねた
(甲A2・5、6頁、原告本人・9、11、13頁)。
ウ 同年9月2日、原告は、原告の妹を同伴して被告札幌院を受診し、検査を受けるととも
に、C医師に対し、片目をふさいでみると見えないことを訴えると、C医師は、気にするから見
えないのであり、フラップが安定していないだけだから時間が解決すると説明した(甲A11、乙
A1・38頁、原告本人・10頁)。
エ 同月8日(日曜日)、原告は被告札幌院において検査を受け、その際、被告代表者は
原告に対しトポグラフィーを示すなどして説明を行った。同日、原告は被告代表者あてに「D先
生へ」と題する電子メールを送信し、その中で、「日曜日は詳しく説明していただきありがとうご
ざいました。とても詳しく説明してくれたので残念なところもありましたがしょうがないのかな-
と思いました。」と記載している(乙A1・39、40、89頁)。
オ 同月22日、原告の妹は被告札幌院に電話をかけ、被告代表者に対し、原告の右眼
の状態について質問し、その際、F眼科で検査したところ、角膜が薄すぎ円錐角膜の可能性も
あると言われたことを伝えた。これに対し被告代表者は、視力が上がらない原因について、セ
ントラルアイランド、角膜中央部の隆起がまだあるのではないか、角膜の安定性の問題などに
ついての説明をし、角膜の厚みについては残った部分(角膜ベッド)として安全とされている2
50ミクロンを60ミクロン超えているとの説明をした(乙A1・39、47頁、被告代表者・2頁)。
カ 同月23日、被告代表者は原告を診察して、+2.0D、-0.25D及び-0.75Dの三
枚のレンズ、合計+1.0D相当のレンズを入れた時点で1.0の視力が得られており弱遠視で
あるといえること、ただし今日の値はこうであっても、まだ変動するから経過を見なければなら
ない旨説明した(乙A1・42ないし44、48頁、乙A8・6頁、被告代表者・35ないし39頁、)
キ 同月29日、被告代表者は原告の父親と被告仙台院で面談した(被告代表者・3頁)。
ク 同年11月18日、原告は原告の祖父を同伴して被告札幌院を受診し、検査を受けた
(乙A1・49頁)。その際、被告代表者は、原告に対し、ウェーブ・フロント・レーシック手術とい
う治療法が新しくできて、それで1度検査をしてみれば原因が分かるかもしれないが、いきなり
手術ということはありえず、検査をして、手術を受けられる人と受けられない人に分かれると伝
えた(乙A8・6頁、原告本人・11頁、被告代表者・3頁)。
同日のカルテには、「異常なし」との記載の下部に、角膜の中央部が盛り上がった図が
青線で記載されており、盛り上がった部分を削る形で赤線が引かれている(乙A1・49頁)。被
告札幌院は、原告に対し、被告代表者の著書(乙A5・平成14年発行)を交付した(甲A9、弁
論の全趣旨)。
ケ 同月22日、原告は被告あてに電子メールを送信し、その中で再手術の時期について
質問した(甲A8)。
コ 同月25日、原告は被告あてに電子メールを送信し、「本などを見て普通のレーシックと
比べ不正乱視やコマ収差の矯正が出来るのは分かったのですが、手術後の結果としては何
が違うのですか?見え方が違ったりするのですか?」と、ウェーブ・フロント・レーシック手術の
手術後の結果について質問した(甲A9)。
サ 同年12月8日、原告は被告代表者あてに「D先生へ」と題する電子メールを送信し、
その中で、「よくよく考えると色々疑問がわきます。2日間も時間をとられ、遠い東京まで行って
再々手術をするとか。だったらこないだの再手術はなんだったのですか?」「こないだ診察の
時に質問したら東京で話すって、それじゃ遅いんじゃないですか?」と記載している(乙A1・8
8頁)。
シ 同月11日、原告は被告札幌院に電話をかけ、札幌(千歳)から東京(羽田)までの航
空券を送るよう求め、被告札幌院は12月19日11時00分千歳発羽田行きの航空券及び12
月20日20時05分羽田発千歳行きの航空券を原告あてに郵送した(乙A1・86頁)。
ス 同月19日午後、原告は被告東京院において検査を受けた。同日時点の原告の角膜
厚は、右眼438ミクロン、左目433ミクロンである(乙A1・62、63頁、乙A7・5頁)。
セ 被告代表者は、上記検査時には被告東京院におらず、同日、検査が終了して原告が
被告東京院を出た後に同院に戻って、原告に電話をかけ、同日の検査結果、翌日の手術内
容、合併症・副作用等について説明を行った。この被告代表者と原告の会話内容は、テープ
に録音されているところ、その中で被告代表者は以下のような発言を行っている(乙A7、8、
被告代表者・8頁。次の(ア)ないし(オ)記載の頁数は乙A7の頁数を示す。)。
(ア) ウェーブ・フロント・レーシック手術について
「やってみなくては分からないというところです正直言って。それは、インプットなんかを
人がやるわけじゃないから。」、「Wave-frontレーザーを信頼するかどうかという事だけにかか
ります。」(以上2頁)、「日本では、Wave-frontまだ認可されていないんですね。」、「Wave-front
は、残念ながら医師が関与するところっていうのは、インプット出来ないから、何ミリに直径を
あわしていくかっていうぐらいの領域しか、参加できないんですよね。だから、ある程度機械を
信じるかどうかというぐらいのところになってくるんですね。」(以上7頁)
(イ) セントラルアイランドについて
「それからフラップのところで、ハイドレーション、水がにじんで、セントラルアイランドが
発生するという報告があるんですけれども、あなたの場合は最初の手術で、真ん中が少し残
ってるんで、今回それを取るということで、やるつもりなんですけれども。」(6頁)
(ウ) その他合併症について
合併症として説明している事項を読み上げるなどしたほか(6頁)、「理論的にレーザー
で角膜薄くしますから、角膜の強度っていうのは、理論的には少し低下しますよね。」「薄くなっ
て、偽の円錐角膜状になった時は、コンタクトでおさえなくてはいけないわけです。それが、リ
スクといえば最大のリスクですね。」「(円錐角膜がどの程度発生するのかについて聞かれ)ま
ずいません。ただね、あなたの場合は、照射に対して、Wave-frontかけるから、厚さの削る量
をちょっと見てみないと分かんないですね。それは、当日さしこんでみないと分からないです
ね。」(以上8頁)、被告代表者の著書を持参していないことを確認した上、「明日また手術の
方、後ろの方へ回しますから、明日手術をするとすればね、よく読んで、また説明しますけれ
ども、よく納得してね、ご自身でしっかりと判断をして下さい。」(11頁)
(エ) 再手術の時期について
「私のところでは、1年3ヶ月、少なくとも1年超えないとやらないんですね。」(2頁)、
「再手術行う場合はですね、もう今回が最後だと思って下さい。」、「一応ね、再手術は1年3ヶ
月と1年5ヶ月ということでやってるんですが、矯正量がほんの少しなんで、私は本当はもっと
あとでやりたいとは思ってるんですが。」(以上7頁)、「よく考えて。本来は、手術は、私はしな
くてもいいんじゃないかな、という気はあるんです。」(10頁)
(オ) 同日までの検査結果について
「値は前からいい値なんです。値はね。ただ、今回オーブスキャン等で角膜、あるいは
水晶体を見た場合にね。非常に綺麗なんです。で、真ん中が綺麗に対象形になってるんだけ
どね。ただ、残念ながら右のほうがよく見ると、真ん中がちょっと盛り上がってるなって感じな
んです。左に比べて。」(10頁)
ソ 同月20日、原告は、被告東京院において検査を受けた。同日の検査結果は以下のと
おりである(検査結果一覧表、乙A1・61頁、)。
右眼左眼
裸眼視力   0.4  1.0
近視度数  -0.75D        +0.25D
乱視度数  -1.50D(乱視)    -0.50D
(メーカー:NIDEK ARK-2000)
原告は、同日付けで「屈折矯正手術の同意書」と題する書面に署名押印した。同書面に
は、不動文字で、「手術結果については法的責任を問わないことを前提に、ウェーブ・フロント
装置による手術を受けることに同意します」との記載がある(乙A1・87頁)。
タ 同日、原告は、被告代表者を執刀医として、ウェーブ・フロント・レーシック手術を受け
た。ウェーブフロント・レーザーの設定値は以下のとおりである(乙A1・59頁)。
角膜厚     396ミクロン
       術前検査結果         レーザーの設定
切除深度                  47ミクロン
照射経                   5.2ミリメートル
屈折度数   +1.00          0.00
乱視度数   -1.00         -1.37
乱視の軸    10°           78°
術前検査結果の角膜厚の数値は、実際の値に0.7とか0.6などの安全係数を掛けて
算出した値である。術前検査結果の欄の数値は、照射に影響しない。レーザーの設定の屈折
度数、乱視度数及び乱視の軸は、ザイウェーブという角膜形状を検討する機械に表示が現
れ、その表示を選択することによって自動的に入力される(被告代表者・19、20頁)。
(4) 本件第三回手術後
ア 同月21日(本件第三回手術翌日)に被告東京院において実施された視力検査の結果
は、以下のとおりである(検査結果一覧表、乙A1・67頁)。
右眼左眼
裸眼視力   0.3           1.5
近視度数  -2.00D        +0.25D
乱視度数  -1.00D        -0.25D
(メーカー:NIDEK ARK-2000)
イ 原告は、平成15年1月14日を最後に、被告A眼科への通院を終了した。同日の検査
結果は、右眼裸眼視力0.1、左眼裸眼視力1.2であった(乙A1・85頁)。
ウ 同年3月15日付けのG医師によるLASIK手術患者検査報告書には(以下、全て右眼
について)、同月3日に実施した検査において、裸眼視力0.1、矯正視力0.2、角膜厚388ミ
クロンと記載されている。また、総合評価として、右眼ではレーザー照射の不整により角膜中
央部にいわゆるセントラルアイランド(島状の屈折力増加区域)が形成されたため、矯正視力
の低下、コントラスト感度の低下など、視機能の低下が引き起こされたと考えられると記載さ
れている(甲B1、弁論の全趣旨)。
エ 同年7月9日、原告はE病院を受診し、平成16年9月18日まで診察を受けた。E病院
のカルテには、平成15年7月9日の欄に「去年の12月に東京のA眼科でレーザーを受け、O
Dにセントラルアイランドあるといわれた。オーブのあるところで検査うけるようにいわれてい
る。」と来院の趣旨が記載され、次のとおりの検査結果が記載されている。
右眼左眼
裸眼視力   0.3           1.2
矯正視力   0.3           1.5
近視度数  +0.50D        +1.00D
乱視度数  -1.00D        -1.37D
また、同カルテの最後の診療日の欄には「2004.8.13 Vd(右眼)0.1(n.C(矯正
不能))」と記載されている(甲A14、乙A26・8、10頁、弁論の全趣旨)。
オ 平成15年8月22日、原告は、Hクリニックを受診し、同年11月26日及び平成16年6
月2日、同クリニックでPRK手術を受けた。
同クリニック初診時の原告の視力検査の結果は、右眼裸眼視力0.2、同矯正視力0.
3、左眼裸眼視力1.2、同矯正視力1.2であった。
同クリニックのカルテには、「右眼はセントラルアイランド様の角膜不正乱視のため眼鏡
矯正視力不良を認めます。角膜厚395ミクロンのためレーザーによる矯正はエクタジア等の
リスクが伴うことをお話ししましたが、角膜移植が必要になる可能性があっても手術的な矯正
を希望されております。」「フラップ下の角膜厚250ミクロン以下と思われます」などと記載され
ている(乙A27・3、13、15、17頁)。
2 視力等に関する医学的知見及びLASIK手術について
(1) 視力等について
ア 厳密には視力とは二つの点を識別する能力で定義される。自覚的な視力を測定する
検査方法としては、5メートル離れた地点から、Cの字型のランドルト環(外径7.5ミリメート
ル)の1.5ミリメートルの切れ込みが60~80パーセント認識できる視力を1.0と定め、外径
7.5センチメートルのランドルト環しか見えない視力を0.1と定めている。近視の程度を問題
にするとき、視力では屈折異常を正確に表すことはできない(乙A2・128頁、131頁、A3・3
0頁)。
イ このような自覚的な検査とは異なり、角膜のカーブの状況から客観的に焦点距離を算
出し、それを基に視力の程度を現わす方法もある。すなわち、このようにして算出した焦点距
離で100を除した数値を屈折度数といい、これによって正確に視力を測定・把握することがで
きる。屈折度数は英語でジオプターといい「D」で略記する。この度数を測定するには通常「オ
ートレフラクトメーター」が用いられる(甲A4・1頁、乙A2・129ないし131頁、乙A4・1~4
頁)。
ウ 近視及び乱視のいずれも度数で表され、近視の度数を表す指標は球面度数といい
「S」の指標を使用し、近視にはマイナスの符号が付く。-1.00Dから-3.99Dを軽度近
視、-4.00Dから-5.99Dを中度近視、-6.00Dから-9.99Dを強度近視、-10.00
D以上を最強度近視と分類する。
乱視の度数を表す指標は乱視度数といい「C」の指標を使用する。医学的には1.00D
以上を乱視と扱うが、0.75D程度でも乱視として矯正することがある。乱視には角度があり、
その角度(軸)を表す指標は「X」で略記する(検査結果一覧表、甲A13、乙A2、4、証人B)。
エ トポグラフィー(角膜形状解析画像検査)とは、角膜に影響を及ぼさないような低出力
のレーザー光を角膜全域に照射して、角膜の湾曲を測定するものである。湾曲の差異は地図
の等高線のように表現され、色を付けて区分される(乙A2・153頁)。
(2) LASIK手術について
ア レーザー屈折治療は、眼の部位の中で、光を屈折する率が最も高い角膜の形状を変
化させることにより、近視・遠視・乱視を矯正する治療法である。
LASIK手術(LaserAssistedin-SituKeratomileusisu)とは、マイクロケラトームを使って
角膜実質層(角膜の最も厚い層)を含む角膜の一部を薄くめくり(めくられる角膜の厚さは、角
膜の約30パーセントにあたる130~180ミクロンで、その膜を「フラップ」という。)、照射位置
を合わせて眼球を固定した後、角膜実質層のみにエキシマレーザーを照射し、レーザー照射
後、フラップの内面を薬液によって洗浄し、フラップを元の位置に戻すレーザー屈折矯正手術
である。
同じレーザー屈折治療であるPRK手術が、角膜表面に直接エキシマーレーザーを照射
する術式であるのと異なる(乙A2・28、39、43、58頁、A3・68、118頁)。
イ ウェーブ・フロント・レーシック手術とは、眼に測定用のレーザーを照射して微小な角膜
や水晶体の歪み(不正乱視)をコンピューターで解析し、その計算に基づきエキシマレーザー
を照射するレーザー屈折矯正手術であり、このレーザー装置をウェーブフロント・レーザーとい
う(乙A5・45ないし53頁)。
ウェーブフロント・レーザーによる屈折矯正手術は、平成14年12月の時点において厚
生労働省の認可を得ておらず、被告病院において初めて導入されたのは平成13年である
(乙A5・148頁、A7・7頁、証人B・31頁)
(3) セントラルアイランドについて
セントラルアイランドについて、以下のように記載する文献がある(いずれも平成14年発
表の同一文献である)。
ア 近視に対するエキシマレーザー角膜屈折矯正手術(PRK、LASIK)後の合併症で、角
膜トポグラフィー上で照射領域の中央に、照射部位周辺に比し高い屈折力の領域が島状に残
存する場合があり、これをセントラルアイランドと呼んでいる。セントラルアイランドの大きさ、
屈折力は著書によりさまざまで、一般的に直径1~3ミリメートル、屈折力1~3Dと定義されて
いる(直径1.5ミリメートル以上、屈折力3D以上の報告もある)。セントラルアイランドが生じ
ると低矯正、裸眼視力や矯正視力の低下、コントラスト感度の低下、単眼複視やグレアが生
じ、さらには、不正乱視の出現、視力回復の遅れなど見られる(甲B5)。
イ セントラルアイランドの発生原因としてさまざまな仮説があるが、依然明確な回答は得
られていない。セントラルアイランドの発生には、①エキシマレーザー、②角膜、及び③角膜形
状解析装置に原因を求めることができる。
レーザー発生装置自体の問題で、レーザー密度の不均一分布に伴う切除不良によるも
のがあげられる。この場合はレーザーのエネルギー分布が均一であるかをチェックしたり、ミ
ラーの汚れなどを調べる方法がある。
照射中、角膜実質からの水分の滲出により、低矯正となる。
PRK術後の創傷治癒過程で、上皮修復の不均一による厚みの変化が見られることが
ある。つまり角膜中央に上皮の過形成が生じた場合はセントラルアイランドが起こり得る(甲B
8)。
ウ セントラルアイランドの発生率は、エキシマレーザー発生装置や照射径などにより変動
する。通常はPRKに発生しやすいが、LASIKでも起こり得る。文献間でかなりのばらつきが
あり、LASIKでは0~24パーセント、PRKでは26~80パーセントと、LASIKでの発生率は
PRKに比べ少ない(甲B5)。
エ セントラルアイランドは、以前ではPRKでしばしば生じ得る術後合併症であったが、現
在ではエキシマレーザー発生装置の改良により、ほとんど生じない合併症となっている。しか
しながら、現段階でもエキシマレーザーは改良の余地があり、未だセントラルアイランドは発
生する可能性がある(甲B8)。
オ セントラルアイランドの発生原因により治療方法が異なる。一般的に上皮の過形成ま
たは、角膜フラップや実質ベッドの水分の変化によるものでは、自然経過により徐々に消失す
る。これに対して原因がvortexplumetheory(エキシマレーザーにより切除された物質はまず
照射部位周辺より舞い上がり、しだいに角膜中央部に集まり、上昇する。最上部で渦を形成
し、乱流が生じ、切除効率が低下する。このために角膜中央部が周辺部に比べ隆起した状態
となった場合)など実質の切除不足によって生じたもので、6ヶ月経過しても軽快せず、視力障
害など、患者が不満を訴えるときにはレーザーの再照射が必要となる場合もある。再照射に
よりセントラルアイランドが軽減又は消失し、裸眼矯正視力、複視が改善されるという報告が
あるが、具体的にどのように照射すべきかについては議論がある(甲B5)。
(4) セントラルアイランドの発生について
本件においては、本件第一回手術後にセントラルアイランドが生じていたか否かについ
て当事者間に争いがあり、B医師は、本件第一回手術後にはセントラルアイランドは生じてい
なかったと陳述ないし供述し、被告代表者は、本件第一回手術後からセントラルアイランドが
生じていたと陳述ないし供述している(甲A13、乙A8、証人B、被告代表者)。しかし、本件に
おいては、原告も本件第一回手術に過失があったとは主張しておらず、本件検査結果につい
ても当事者間に争いがなく、本件第二回手術の過失について判断するに当たっては本件第二
回手術の前後を比較すれば足りることなどからすると、セントラルアイランドがどの時点で生じ
たかについては、本件についての判断を行う上で必要のない事項であると考えられるので、
本判決においてもこの点を認定することは差し控えることとする。
3 争点(1)(本件第二回手術における説明義務違反の有無)について
(1) 原告は、被告病院の資料等はあたかもセントラルアイランドが発生する危険性が解決
済みであるかのように説明しており、説明義務の懈怠があると主張するので、以下、前記1(1
)エに認定した被告病院のパンフレット及び被告代表者の著書の各記載について検討する。
もとより医師が患者に対し合併症の危険性について説明するに当たっては、それが発生
する頻度に応じた説明を行うべきであることは当然である。そして、前記2(3)に認定したところ
によれば、平成14年の時点においても、セントラルアイランドの発生原因として依然明確な回
答は得られておらず、LASIK手術によってはほとんど生じない合併症であるとされており、発
生率の報告も様々であることが認められる。かかる医学的知見に照らした場合、前記1(1)エ
に認定したセントラルアイランドについての記載は、本件当時におけるセントラルアイランドの
実情を説明したものとして誤りではないというべきである。また、送風装置に関する説明につ
いてみても、セントラルアイランドに対する被告病院の予防策の一つを紹介したものに過ぎ
ず、セントラルアイランドが生じる可能性を完全に否定しているわけではないのであるから、患
者に誤解を与えるものであるということはできず、説明義務違反は認められない。
なお、「近視治療のガイダンス」と題するパンフレットには、「セントラルアイランドが発生し
たことはありません」と記載されているところ(甲A4・3頁)、これはいささか誇張した宣伝であ
るといわざるを得ない。しかしながら、原告が被告病院医師から同パンフレットのみを示され、
セントラルアイランドが生じないという内容の説明を受けたのであれば格別、前記1(1)エに認
定した他の記載も併せて、示されていることからすると、通常一般人としては被告の説明によ
ってセントラルアイランドが発生する危険性が皆無ではないことを優に理解し得るものと認め
られるから、同パンフレットの記載は上記判断を覆すものではない。
(2) 原告は、本件第一回手術の結果及び本件第二回手術の内容について説明を受けなか
ったと主張する。
ア 原告が陳述及び供述するところによれば(甲A2、原告本人)、原告は、本件第一回手
術後、B医師から本件第一回手術の結果として、左右の角膜における水分の違いで、レーザ
ー照射後の結果に相違が出たものであるが、残った乱視については再手術で乱視を取れば
見える旨の説明を受け、その上で自ら本件第二回手術の予約を行ったことを認めており、こ
のことからすると、被告代表者自身による説明の有無を検討するまでもなく、原告の主張はす
でにその前提を欠くものというべきである。
なお念のため、被告代表者による説明について判断するのに、被告代表者の陳述ない
し供述(乙A8、被告代表者)及びカルテ上の書き込み(乙A1・10頁、31頁)を総合すれば、
前記1(2)クに認定したとおり、本件第二回手術の際、被告代表者は原告に対し、原告の右眼
にセントラルアイランドが発生した疑いがあり、それを除去するためにプリトリートメントの値を
本件第一回手術の時の値から変更して本件第二回手術を行うことを説明し、その上で原告は
本件第二回手術を受けることを承諾したことが認められ、これに反する原告の陳述ないし供
述は採用できない。
イ なお、本件第一回手術後にセントラルアイランドが生じていなかったのであれば、被告
の説明内容は客観的真実に合致していなかったのではないかという疑義が生じないでもない
が、証拠(乙A1・13頁)及び前記1(2)イウエに認定したところによれば、トポグラフィー上原告
の右眼角膜中心が隆起していると認められ、B医師も当初、原告の右眼にセントラルアイラン
ドが生じていたと判断していたのであるから、このような事情の下では、被告代表者によるセ
ントラルアイランドが発生したとの説明が不相当であるということはできない。
(3) 再手術のリスクについて
ア 原告は、再手術のリスクについては何ら説明を受けたことがないと主張し、原告本人も
同趣旨の陳述ないし供述を行っている(甲A2、原告本人)。一方被告代表者は、本件第二回
手術の前に、再手術ではレーザー照射による角膜形状変化の予測は困難であること、完全に
矯正することは困難であること、矯正精度に限界があることを説明したと陳述ないし供述する
(乙A8・4頁、被告代表者)ので、以下検討する。
イ 前記2(3)オに認定したところによれば、本件第二回手術当時、セントラルアイランド後
のレーザー再照射の方法、時期等について医学的知見が確立していたとは認め難いのであ
るから、被告病院としてはこの点について患者に説明する必要があるというべきである。
そして、前記1(2)エに認定したところによれば、B医師は原告に対し、再手術のリスクに
ついて説明することなく再手術の実施を勧めていることが認められるところ、かかるB医師の
説明のみを前提にした場合、少なくとも本件第一回手術直後においては、原告に対し、再手
術のリスクの説明が十分になされていたものであるか疑わしいといわざるを得ない。
ウ しかしながら、B医師は再手術の予定について、再手術は本来半年以上経過してから
行うべきものであるが、再手術に対する原告の意向が強いことに鑑み一応再手術を計画した
ものであると供述していること(証人B・59頁)に加え、前記1(2)ウオに認定したように、被告
代表者自身はセントラルアイランド後の再手術の方法について議論の必要があると考えてお
り、B医師に対し、再手術では無理をしないように諭しているところであるし、原告の再手術に
対する強い要望にもかかわらず再手術は少なくとも二度以上延期されており、一度は被告の
職員から再手術は行わない旨説明がなされていた。
これらの事情を総合すれば、被告病院は再手術について慎重な態度をとっていたもの
というべきであり、このような被告病院の姿勢に加え、前記(2)アに認定説示したように、被告
代表者が本件第二回手術の際に、本件第一回手術の内容及び合併症についても説明してい
たことを考え合わせると、被告代表者自身も原告に対し、再手術のリスクについて説明したと
する前記陳述ないし供述は信用できるものというべきであり、これに反する原告の主張及び
供述は採用できない。
(4) したがって、この点に関する原告の主張は、いずれも採用できない。
4 争点(2)(本件第二回手術における適正手術義務違反の有無)について
(1) 証拠(乙A1、証人B)及び検査結果一覧表によれば、本件第二回手術の結果、球面度
数及び乱視度数の明らかな低下は認められず、トポグラフィー上も、本件第二回手術の前後
でセントラルアイランドが増強したのか否かは判断することが難しい(証人B・29頁)ことが認
められるのであるから、かかる結果からレトロスペクティブに見ても、本件第二回手術に手技
上の過失があったということは困難であり、この点に関する原告の主張は、既にその前提を欠
くものである。
以下、念のため、原告が個別的に主張する手技上の過失についても検討する。
(2) 原告は本件第二回手術において、照射径2.5ミリメートルの範囲にプリトリートメント4
パーセントに当たる照射数を照射すべきであると主張しているところ、B医師も、当初再手術
の内容として、原告が主張する照射方法を検討していたと陳述ないし供述している(甲A13、
証人B・24頁)。しかしながら、前記2(3)オに認定したところによれば、角膜実質の切除不足
によってセントラルアイランドが生じた場合、レーザーの再照射を具体的にどのように照射す
べきかについては議論があることが認められる。さらに、B医師自身も前記照射方法が唯一
の方法であると陳述ないし供述しているわけではなく、むしろ前記照射方法の適否について
被告代表者の意見を求めている(乙A9)のであるから、B医師が検討していた照射方法が、
本件第一回手術後の原告の右眼に対する治療として有効適切であるということすらできず、
ましてや被告代表者がこれと異なる照射を行ったことをもって、違法であると評価することは
到底できない。
(3) 原告は、被告病院の医師が適正に装置の保守点検を実施したり、適正に診察したうえ
適正な手術計画を立てたり、手術の施行に当たり適正に手術を施行しさえすれば、容易にセ
ントラルアイランドの発生を未然に防止できるはずであり、原告にセントラルアイランドが生じ
た事実から、レーザー発生装置自体に問題があったこと、角膜面に滲出する水分等を除去し
なかったこと、送風装置の保守点検が不十分であったことなどの何らかの注意義務の懈怠が
推認されると主張する。しかしながら、証拠(証人B・56頁)及び前記2(3)に認定したところに
よれば、セントラルアイランドは発生確率こそ少ないとはいえ、現在においても不可避的に生
じる合併症であり、その発生原因についても依然明確な知見は得られていないのであるか
ら、セントラルアイランドが生じていたという結果に基づいて被告の過失を直接推認することは
困難であり、その他原告が主張する事実が生じたことを推認させるに足りる客観的かつ的確
な証拠はない。
なお原告は、本件第二回手術が、被告による診察もなされないまま、原告が痛みを訴え
たにもかかわらずそのまま続行されたものであり、慎重に手術計画を検討して行ったとはいえ
ないと主張するが、かかる事実とセントラルアイランドの発生とがいかなる結びつきを有する
のか何ら明らかにされておらず、前記判断を左右するものではない。
(4) したがって、本件第二回手術が適正なものでなかったとは認め難いし、同手術によって
視力低下の損害が生じたか否かも明らかでないから、この点に関する原告の主張は、いずれ
も理由がない。
5 争点(3)(本件第三回手術における説明義務違反)について
(1) ウェーブ・フロント・レーシック手術について
原告は、被告代表者から、ウエーブ・フロント・レーシック手術の特徴や効能等についても
全く説明を受けなかったと主張し、原告も同趣旨の陳述を行っている(甲A2、原告本人)。
しかしながら、証拠(乙A7)及び前記1(3)イケコサセに認定したところによれば、原告は
本件第二回手術の結果に強い不満を抱くとともに再度の手術を希望しており、被告から交付
されたウェーブ・フロント・レーシック手術に関する書籍を読み、その内容等について自ら積極
的に電子メールで質問していること、手術の前日にもウェーブ・フロント・レーシック手術の特
性について電話で専門的かつ複雑な説明を受けている。原告はこの際の電話の記録につい
て、その内容が不自然で証拠価値がないと主張するが、原告は自らはっきりと応対しており、
合併症の説明を受ける際にも積極的に質問したり、「じゃあ、1回目の初めて手術する時の副
作用と変わりはない」「はい、覚えてます。」などと自らの理解度を示す発言をし、しかも、同手
術の術式は厚生労働省の認可を受けておらず、その成否はコンピューターの解析結果が適
正かどうかによるものであり医師の関与するところはほとんどなく、コンピューターを信頼して
行わざるを得ないことの説明を受けながら、むしろ「(再手術の時期について)今度4ヵ月でど
うですかね?僕の方がリスクを承知で受けたいと言ったら、受けることは出来るでしょうか?」
と手術に積極的な姿勢を示していることなどからすると、原告はこの電話の際に被告代表者
の説明を十分に理解して自らの意思でウェーブ・フロント・レーシック手術を受ける意向を示し
ていたものと認められ、上記電話記録の信用性に疑問を差しはさむ余地はない。
以上の事情によれば、被告は、ウェーブ・フロント・レーシック手術の特徴・効能のみなら
ず合併症、同手術が先駆的治療法であり、コンピューターの解析に頼る治療法であることな
ど、原告がそのメリットとリスクを理解判断するために必要十分な情報を提供していたもので
あり、原告はこれに対し、自らの意思に基づいて「屈折矯正手術の同意書」に署名押印し、本
件第三回手術を受けるという決断を行ったというべきであるから、この点に関する被告の説明
義務違反は認められないし、上記認定に反する原告の陳述ないし供述は採用することができ
ない。
(2) その他原告は、被告がセントラルアイランドが発生したことを説明しなかったと主張する
が、前記1(3)エク、セ(イ)に認定したところと整合しないし、原告自らその陳述書において、本
件第三回手術前に、被告代表者から、セントラルアイランドが生じていることの説明を受けた
ことを認めている(甲A2・7頁)(なお、原告は原告本人尋問の最中に、前記陳述書の内容を
訂正する旨の供述を行っているが(原告本人・13頁)、採用することはできない)ことからする
と、かかる主張は採用できない。
(3) したがって、この点に関する原告の主張は、いずれも理由がない。
6 争点(4)(本件第三回手術における適正手術義務違反の有無)について
(1) 原告は、本件第三回手術の際に、乱視の軸及び角膜の切除深度の設定を誤った過失
があると主張するので、以下検討する。
ア この点に関するB医師の供述の趣旨は、以下のとおりである(証人B・4、31、32
頁)。
乱視の軸については検眼が10度方向であるにもかかわらず、トリートメントが78度とい
う、ほぼ直交する方向で軸の設定をしてあったりするのでこの辺りが分からない、ただ、そのと
きにやはりD先生の考えもいろいろあったと思う。切除深度については、一般的に眼科専門医
の間で、人間の角膜の強度、強さが耐えられる厚みの最低レベルが400ミクロンと言われて
いるが、手術前の角膜厚が396ミクロンで、47ミクロンのレーザーの照射をすると、400ミク
ロンをかなり下回り、角膜が薄くなるが、その点もどうだったかというとクエスチョンマークであ
る。
イ 以下個別に検討するのに、まず乱視の軸の設定については、前記1(3)セ(ア)、タ、5(1
)に認定したとおり、機械に任せざるを得ないものであり、原
告自身も、このようなウェーブ・フロント・レーシック手術の特性について説明を受け、納
得の上でウェーブ・フロント・レーシック手術の施行を受けていること、術前検査結果の値もウ
ェーブフロント・レーザー照射には影響しないこと、ウェーブ・フロント・レーシック手術は微小な
角膜や水晶体の歪み(不正乱視)をコンピューターで解析するものであって、乱視の軸の適否
のみを問題とすること自体がその原理上困難かつ無意味であると思われることなどからする
と、カルテ上に記載された術前検査結果との比較のみをもって、本件第三回手術の乱視の軸
の設定が誤りであるということはできず、他に原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はな
い。
次に角膜の切除深度については、前記1(3)スタに認定したとおり、照射記録の角膜厚
は安全係数を掛けた値であり、実際の本件第三回手術前の右眼の角膜厚は約438ミクロン
であったのだから、原告の主張及びB医師の陳述はその前提を欠くものといわなければなら
ない。なお、前記1(4)ウオに認定したところによれば、本件第三回手術後の原告の右眼の角
膜厚は388ミクロン(最も薄い計測結果)であって、B医師の指摘する400ミクロンを12ミクロ
ン余り下回っていることが認められ、そうすると結果的には本件第三回手術による切除深度
が被告代表者の認識よりも深くなっていたと認められないでもない。しかしながら、本件におい
ては400ミクロンを超えて角膜を切除した場合にいかなる症状が生じるのかは何ら明らかに
されていないことに加え、前記1(4)オに認定したとおり、被告病院の後医が原告の右眼にレー
ザー屈折矯正手術(PRK)を施行していることなどからすると、400ミクロンを12ミクロン余り
超えて切除したことを違法とすることはできない。
ウ そもそも原告は、乱視の軸及び手術深度の設定が、セントラルアイランドの発生その
他原告の右眼の視力異常に結びついたことを示す事実を何ら主張しておらず、本件全証拠に
よってもそのような事実を認めることはできないため、かかる観点からしても、この点に関する
原告の主張は採用できないといわなければならない。
(2) 原告は、合併症の発生を避けながら、セントラルアイランドを矯正できる知見はなかっ
たにもかかわらず、ウエーブ・フロント・レーシック手術を施行した過失があると主張する。
確かに、前記2(3)オに認定したところによれば、本件第三回手術当時、セントラルアイラ
ンド後のレーザー再照射の方法、時期等について医学的知見が確立していたとは認め難い。
さらに、ウェーブ・フロント・レーシック手術についても、前記2(2)イに認定したとおり、ウェーブ
フロント・レーザーによる屈折矯正手術は、平成14年12月の時点において厚生労働省の認
可を得ておらず、被告病院においても初めて導入されたのは平成13年であるのだから、ウェ
ーブ・フロント・レーシック手術が本件第三回手術当時、近視矯正治療の医療水準として確立
していたとは認め難い。
しかしながら、証拠(乙A7)及び前記1(3)イないしシに認定したところを総合すれば、原
告は本件第二回手術後、手術の結果が自らが思い描いていたものと大きく異なったことにつ
いて満足することができず、その原因について被告病院から何度となく説明を受けても納得す
ることができず、家族と一緒に被告病院及び被告代表者に対する不信感を募らせる一方で、
被告病院の有する治療技術についての信頼は失われておらず、被告病院による再度の手術
により良好な視力が得られるものと強く期待し、1年を待たないうちに再度の手術を受けること
を強く希望していたことが認められる。
そして、前記3(3)ウに認定説示したとおり、セントラルアイランド後のレーザー再照射が困
難であることについては、原告は既に本件第二回手術前に説明を受けていたのであるし、前
記5(1)に認定説示したとおり、原告は、被告から、ウェーブ・フロント・レーシック手術に関する
十分な情報提供を受け、同手術による危険も十分認識しながら、自ら「屈折矯正手術の同意
書」に署名押印し、本件第三回手術の実施を決断したものである。
このように、患者である原告が、手術による視力回復を強く希望し、被告病院から再手術
の危険性に関する情報についても十分に与えられており、この情報に基づき手術の実施につ
いて判断するに当たっての能力的な支障も特には見当たらない中、本件第三回手術の実施
について同意したという本件事情の下では、本件第三回手術が医療水準として未確立の術式
であって、仮に同手術によって原告の右眼の視力低下が生じたのだとしても、本件第三回手
術の実施が違法であると評価することはできない。
(3) その他原告は、争点(2)と同様の適正手術義務違反の存在を主張するが、前記1(4)ウ
に認定したとおり本件第三回手術直後には、手術前と比べて明らかな右眼視力の低下が認
められるものの、その程度は明らかでなく、その後の視力検査においては視力が低下したま
まであるとの結果も出ているが、それは主として原告の自覚的な訴えに依拠するものであり、
一般的に手術後の時間的経過により視力の回復可能性があることとこれらの検査時に測定
された屈折度数等の値からすると、原告の自覚的な訴えのみによってその右眼視力の状態を
認定することはできないから、本件第三回手術後相当期間経過後においてもなお原告の右眼
視力が低下したままの状態にとどまっていることを認めるに足りる的確な証拠はないといわざ
るを得ない。また、原告の主張する過失行為がなされたことを認めるに足りる客観的かつ的
確な証拠がないことは既に本件第二回手術について前記4(3)に認定説示したとおりであり、
このことは三度目のレーザー照射であっても何ら変わるものではないから、原告のこの主張も
採用できない。
(4) したがって、この点に関する原告の主張は、いずれも理由がない。
7 結論
以上のとおり、その余の争点について判断するまでもなく、原告の主張はすべて理由がな
いから、これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官  藤 山 雅 行
裁判官  大 須 賀 綾 子
裁判官  筈 井 卓 矢
 診療経過一覧表,検査結果一覧表は省略。

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