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令和2年3月30日判決言渡
令和元年(ネ)第10064号職務発明対価請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第14685号)
口頭弁論終結日令和2年2月5日
判決
控訴人兼被控訴人X
(以下「1審原告」という。)
訴訟代理人弁護士木村貴司
補佐人弁理士廣田恵梨奈
被控訴人兼控訴人株式会社日本触媒
(以下「1審被告」という。)
訴訟代理人弁護士重冨貴光
松田誠司
大和奈月
主文
11審原告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1)1審被告は,1審原告に対し,256万4950円及びこれに対
する平成29年5月17日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
(2)1審原告のその余の請求を棄却する。
21審被告の控訴を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを25分し,その24を1
審原告の負担とし,その余を1審被告の負担とする。
4この判決の第1項(1)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
11審原告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)1審被告は,1審原告に対し,2100万円及びこれに対する平成29年
5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
21審被告
(1)原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。
(2)前項の部分につき,1審原告の請求を棄却する。
第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)
1事案の要旨
本件は,1審被告の元従業員である1審原告が,「多孔質架橋重合体材料の
製造方法」に関する本件各特許(国内特許3件(「144号特許」,「642
号特許」及び「811号特許」)及びこれらに対応する外国特許)に係る発明
は,1審原告が1審被告の他の従業員と共同で行った職務発明であり,その特
許を受ける権利の持分を1審被告に承継させた旨主張し,平成16年法律第7
9号による改正前の特許法35条(以下「特許法旧35条」という。)3項及
び4項の規定及びその類推適用に基づき,1審被告に対し,上記特許を受ける
権利の持分の承継に係る相当の対価の一部請求として5862万8568円
及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,1審原告の請求を226万4061円及びこれに対する平成29年
5月17日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延
損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余の請求をいずれも棄却した。
これに対し1審原告は,控訴の趣旨の限度で敗訴部分を不服として控訴を提
起し,1審被告は,敗訴部分を全部不服として控訴を提起した。
2前提事実
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の1記載のとお
りであるから,これを引用する。
(1)原判決5頁15行目から16行目までを次のとおり改める。
「ア1審原告は,昭和63年3月に大阪大学大学院基礎工学研究科を修了
して同年4月に1審被告に入社し,平成12年6月に退職するまで1審
被告に在職し,吸水剤の研究開発に関する業務に従事していた者であ
る。」
(2)原判決7頁8行目の冒頭に「ア」を加える。
(3)原判決7頁17行目から19行目までを次のとおり改める。
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(4)原判決8頁1行目から2行目までを「支払う(6条,7条)。」と改め,
同頁3行目から4行目までを次のとおり改める。
「(イ)国内優先出願,分割出願又は変更出願をする場合及び国内出願した
発明を外国出願する場合には,出願補償金の支払はしない(9条1項)。」
(5)原判決8頁5行目から6行目にかけての「受け取るものとする。」を「受
け取るものとする(10条)。」と,同頁13行目及び14行目の各「特許
法35条4項」を「特許法旧35条4項」と改める。
3争点
(1)本件各発明により1審被告が受けるべき利益の額(争点1)
(2)本件各発明がされるについて1審被告が貢献した程度(争点2)
(3)本件各発明の共同発明者間における1審原告の貢献度(争点3)
(4)1審原告が支払を受けるべき相当の対価の額(争点4)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件各発明により1審被告が受けるべき利益の額)について
原判決9頁22行目末尾に行を改めて当審における当事者の補充主張を加え
るほか,原判決の「事実及び理由」の第2の3(1)記載のとおりであるから,こ
れを引用する。
【当審における当事者の補充主張】
(1)1審被告の主張
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●●●●●●●●●●●●●●●
ウ小括
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●寄与率は,それぞれ20分の1とするの
が相当である。
これと異なる原判決の判断は誤りである。
(2)1審原告の主張
1審被告の主張は争う。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●寄与率をそれぞれ17.5分の1とした原判決の判断に誤りは
ない。
2争点2(本件各発明がされるについて1審被告が貢献した程度)について
原判決12頁13行目末尾に行を改めて当審における当事者の補充主張を加
えるほか,原判決の「事実及び理由」の第2の3(2)記載のとおりであるから,
これを引用する。
【当審における当事者の補充主張】
(1)1審原告の主張
ア原判決は,1審被告の貢献度に係る事情として,主に,①平成5年の研
究を中心とした平成8年以前の事情,②1審原告がFAMの研究を始めた
平成8年の姫路の研究所における研究状況,③FAMプロジェクトの開始
された平成9年10月以降の研究状況●●●●●●●●●●●●●●●●
他方で,1審原告を含む共同発明者の貢献度については,1審被告の費用
負担の下,1審被告に雇用された後に得た知識経験に基づき,FAMプロ
ジェクト内で知見を共有しつつ,発明に至ったにとどまると述べ,最終的
に,本件各発明により1審被告が受けるべき利益についての1審被告の貢
献度は高く,その貢献度は95%と認めるのが相当である旨判断した。
しかしながら,上記①及び②については,1審被告が平成5年に研究開
発していたのはアクリル系のHIPEの硬化物に関するものであり,本件
各発明とは関係がなく,同5年の1審被告の研究開発状況は,1審被告の
貢献とはおよそ無関係であるし,仮に何らかの貢献があったとしてもごく
僅かである。また,1審原告は,1審被告が平成5年に研究開発していた
アクリル系のHIPEの硬化物の研究開発が中断していた状況の中,平成
8年4月19日のミーティングを契機に以後自発的に研究を行うことにし
たものであり,1審被告から●●●●●●追試を行う指示やFAM研究を
するような指示を受けることなく,鋭意検討,試行錯誤を繰り返しアクリ
ル系からスチレン系でのHIPEという大きな転換を果たし,1審被告社
内で初めて均一な網目構造を持つW/O比の高いものを作製し,●●●要
求するレベルのサンプルを作製できるまでに至ったものである。
次に,上記③については,機器の導入の資金提供が1審被告の貢献であ
ると認められるのであれば,各種機器を導入した1審原告の貢献も相応に
認められなければならない。1審原告は,●●●●●●●●●●●●●新
たな組成のFAM作製に必須となる特殊な撹拌羽根を導入したり,撹拌装
置,水相滴下用ロート,ジビニルベンゼンや乳化剤等の試薬を順次揃えた
りするなど,1審被告社内でFAM研究開発が進められるような実験環境
を全て整えたのであるから,設備や機器導入に関する1審原告の対応は,
発明者の貢献度として大きく評価されるべきものである。
上記④については,特許法旧35条4項は,「前項の対価の額は,その
発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて
使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。」と規定して
おり,かかる条文を素直に読めば,「その発明がされるについて」の使用
者の貢献度としては,文言上,発明完成までの事情を評価すべきであり,
発明完成後の事情は評価すべきでないのは明らかであるから,発明完成後
の事情である●●●●●●●●●●●●●使用者の貢献度として評価すべ
きではなく,仮に評価するとしても,過剰に評価すべきでない。
さらには,研究開発機関である独立行政法人理化学研究所や国立研究開
発法人量子科学技術研究開発機構等では,職務発明の対価算定について発
明者貢献度は20~50%や25~50%と算定され(甲27の1,2),
大学職員についても,発明者貢献度が30%や25~50%と算定されて
いること(甲28の1,2),特許庁においても,発明者貢献度は25~
50%とされていること(甲29)から理解できるように,発明者貢献度
は概ね20~50%程度とされているのであり,これらの対比からしても,
原判決認定の発明者貢献度は不当に低いものである。
イ以上によれば,本件各発明により1審被告が受けるべき利益についての
1審被告の貢献度は多くても50%と評価すべきであるから,原判決の前
記判断は誤りである。
(2)1審被告の主張
ア原判決の事実認定を前提とすれば,本件においては,本件各発明の研究
開発の開始に先立ち,使用者たる1審被告がFAM・HIPEに関する研
究開発基盤を有しており,1審被告自らが本件各発明の研究開発の開始を
決定し,FAMプロジェクトを企画し,ヒトモノカネを投下して1審被告
が事業成否のリスクを全て負担して本件各発明に係る研究開発事業を推し
進めたものであり,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●その全てが1審被告の貢献と評価すべきである。
そして,FAMプロジェクトは,●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●「最たる会社主導事業」であり,本件各発明
の1審原告を含む共同発明者らは,かかるプロジェクトのメンバーとして,
1審被告の業務命令に従って各研究開発に従事したにすぎない。
イ以上のように,本件は使用者貢献度の極めて高い事例である上に,発明
者は,給与及び身分等を保障され,研究開発に係るリスクを負わないのに
対し,使用者は事業の失敗のリスクを負っていることを斟酌すれば,本件
各発明により1審被告が受けるべき利益についての1審被告の貢献度は,
原判決認定の95%を優に超えるものであり,99%と認められてしかる
べきである。
なお,1審原告が挙げる国立の研究機関,大学及び特許庁の規程(甲2
7ないし29)については,これらの機関等においては所属する研究者等
が自らの発意に基づいて主体的に研究開発を行うことが念頭に置かれてお
り,1審被告のように企業が主導して研究開発テーマを設定して人員・設
備・資金を拠出する研究開発活動とは全く性質を異にするから,本件には
妥当しない。
3争点3(本件各発明の共同発明者間における1審原告の貢献度)について
原判決20頁16行目末尾に行を改めて当審における当事者の補充主張を加
えるほか,原判決の「事実及び理由」の第2の3(3)記載のとおりであるから,
これを引用する。
【当審における当事者の補充主張】
(1)1審原告の主張
ア144号発明等について
(ア)原判決は,144号発明等の特徴的部分の着想及びその具体化の一
部は●●●●●行われており,1審被告において行われたのは,多数回
にわたる排水の再使用技術を完成させた点にあると認定した上で,14
4号発明等の発明者を1審原告,N,B及びCの4名であり,1審原告
の貢献度は,他の発明者の平均的な貢献度よりも高いと認められないと
して,4分の1である旨判断した。
しかしながら,144号特許の請求項1記載の発明は,「油中水滴型
高分散相エマルションを形成して多孔質材料を製造するに際し,該製造
工程で得た廃水を該製造工程のいずれかで再使用することを特徴とする
多孔質材料の製造方法」というものであり,その特徴的部分は,廃水を
製造系に再使用することによって使用水量及び廃水量を低減できるとい
う点にある。原判決の上記特徴的部分に係る認定は,特許請求の範囲の
記載はもとより明細書にも記載のない外部的事情●●●●●●●を解釈
に取り込んだものであるから,誤りである。
また,1審原告は,生分解性ポリマーの研究を行っていたこともあり,
環境負荷低減に対する意識が高くFAMの実験過程において大量の廃水
を生み出す状況を危惧し,FAM生産において廃水リサイクルを行うこ
とを想起し,廃水リサイクルの方法について具体的な実験計画を策定し,
平成9年12月8日,●●●●技術会議において,廃水リサイクルを行
うことや,廃水リサイクルの具体的な実験を今後行っていくことについ
てプレゼンテーションをした。そして,1審原告は,平成10年1月頃,
オープンセル構造のFAMを調製することに成功し,遅くとも同年4月
頃までには,1審原告一人による創作活動の結果,3回の廃水リサイク
ルを実現し,この時点で,144号特許の請求項1ないし6,12ない
し15,17記載の発明は完成した。仮に1審原告が廃水リサイクルを
行うことを想起し,1審被告の指示なく自発的に廃水リサイクルの実験
計画を立てたこと等が,1審原告の貢献として認められないとしても,
1審原告が,廃水リサイクルの実験計画を立てて,●●●●●●●●●
発表し,その後,1審被告社内では一度も成功していなかった廃水リサ
イクルについて成功させた上,少なくとも3回の排水リサイクルに成功
し,不純物除去の必要性の把握,pHへの着目等をしたことは揺るぎな
い事実である。これらの点は,発明完成に対する貢献度として十分に評
価に値するものであり,1審原告の貢献度がpH技術や遠心分離技術の
下位の請求項を実施したにすぎない者と同様の貢献度というのはあり得
ない。
次に,Bは,1審原告の補助者にすぎず,Bが平成10年4月から同
年8月末頃まで行った中和技術に関する実験は,1審原告の具体的な指
導の下で行われたものであり,また,Nは,Bの行う実験を一部担当し
たにすぎない。C及びBは,遠心分離に関する実験を行ったものの,実
際の廃液を使用していないため,144号発明等とは無関係である。
さらに,1審原告は,144号特許の出願の願書に筆頭発明者として
記載され,明細書原案を作成した。
(イ)以上によれば,144号発明等の共同発明者間における1審原告の
貢献度は,低く見積もっても90%以上であるから,原判決の前記判断
は誤りである。
イ642号発明等について
(ア)原判決は,①HIPE連続重合発明の特徴的部分は,多孔質架橋重
合体の表面性状を制御することが可能で,幅及び厚さを自由にコントロ
ールすることができ,かつHIPEを重合工程に連続的に供給しながら
HIPEを連続重合する多孔質架橋重合体の製造重合方法を提供できる
ようにした点にあり,着想したのはDであり,実験を行ったり,ベンチ
プラントにおける検討等によって具体化するのに貢献したのは,D,E,
F,G,H及びIであり,他方で,1審原告は,HIPEの重合条件等
の情報を提供し,人大装置を用いるためのHIPEを作製して提供する
などしたにとどまり,HIPE連続重合発明の完成に関与したものと認
められない,②フィルム発明については,1審原告がポリエチレンを用
いた実験を行い,ポリエチレンでは適切ではないことを確認したという
点で一応の貢献があるが,これにとどまり,他の部分については,J,
D,F,G,Cが貢献したと認められるとして,642号発明等の発明
者を9名と認定し,1審原告の貢献度は,他の発明者の平均的な貢献度
よりも高いとは認められないとして,9分の1である旨判断した。
しかしながら,HIPE連続重合発明については,1審原告は,水平
装置を用いてFAMを連続的に生産することや,HIPEを連続的に重
合することを想起し,当該着想に基づいて人工大理石の連続重合装置を
用いて行う実験計画を策定し,HIPE連続重合に用いるHIPEを調
製し,重合条件等を設定した上で,Dらの協力を得て上記装置を用いて
実験し,結果として重合物を得たものである。HIPE連続重合発明で
は,表面性状を制御でき,幅や厚さを自由にコントロールできるという
点までは要求されていないものであり,上記実験の完了により,HIP
E連続重合発明はおよそ完成したものであるから,HIPE連続重合発
明は1審原告が主体となって生み出された発明である。
一方,Dは,FAMに関する知識はなく,HIPEの調製をしたこと
もなく,1審原告による実験結果等の説明をまとめているだけの立場に
すぎず,人工大理石の連続重合装置を用いることを発案したという点に
ついてのみ貢献があるだけである。また,E,F,G,I,Hについて
は,1審原告による実験の補助者か,1審原告によって概ね発明が完成
した後に追加的な実験を行った者にすぎないから,1審原告以外の他の
関与者は,およそ貢献していないか,貢献があったとしても僅かである。
次に,フィルム発明については,1審原告は,平成9年11月12日
の会議以前からFAMと材質の関係に関する豊富な知識を有し,フィル
ム選定の必要性について十分に認識しDへ伝えていること,当時,FA
Mの実験を行っていたのが1審原告以外に存在しなかったこと,1審原
告がA社にフィルムに挟んだ重合についてプレゼンテーションをしてい
ることなどからすれば,フィルム選定の検討は1審原告の発案に基づく
ものである。また,1審原告は,平成10年1月以降,ポリエチレン袋
を用いた実験を行った上,自らポリイミド,ポリエーテルイミド等の材
料の材質の検討を繰り返し行い,重合装置のHIPEと接触する材質と
して適切なものを選別し,Gの実験やJの分析にも1審原告が関与して
おり,当時のフィルム発明の検討は1審原告が中心となって行われてい
たものである。
一方,D,F及びCは,フィルム発明とは無関係でありG及びJは,
1審原告の補助者であり,1審原告以外の他の関与者は,およそ貢献し
ていないか,貢献があったとしても僅かである。
さらに,1審原告は,フィルム発明に係る出願の願書に筆頭発明者と
して記載され,フィルム発明及びHIPE連続重合発明の明細書原案を
作成した。
(イ)以上によれば,642号発明等に対する共同発明者間における1審
原告の貢献度は,低く見積もっても90%以上であるから,原判決の前
記判断は誤りである。
ウ811号発明等について
(ア)原判決は,811号発明等の特徴的部分は,公知技術よりも短時間
で,かつ安定性を損なわずにHIPEの重合を可能にする技術的課題を
解決すべく,そのために,①どの程度まで前段重合を行うのかの分岐点
をその測定方法も含めて明らかにし,②後硬化における加熱以外の具体
的な硬化手段及び後硬化を行う時間を特定した点にあると認定した上で,
811号発明等の発明者を1審原告,H,D及びNの4名と認定し,1
審原告の貢献度は,他の発明者の平均的な貢献度よりもやや高いという
べきであって,5分の2と認めるのが相当である旨判断した。
しかしながら,発明への貢献度は特許請求の範囲の請求項記載の事項
が実施されているかどうかで評価すべきところ,原判決は,811号発
明等の特徴的部分を切り離して認定した上で,それぞれの要素を個別に
評価して,発明者らの発明への貢献度を判断している点において,誤り
がある。
次に,1審原告は,遅くとも平成8年7月26日までに,反応条件を
厳しくしてもエマルション構造が壊れないところまで重合をマイルドな
条件で行い,全体として反応時間が短縮できることを見いだした後,平
成10年6月から8月にかけて,HIPEへのマイクロ波の照射実験を
繰り返し行い,この頃には,水の沸騰には耐えられる程度に重合したタ
イミングで反応条件を厳しくすれば,エマルジョンの破壊を回避してト
ータルの重合時間を短縮できるのではないかと考えるに至った。このこ
とは,1審原告は,米国留学中に通っていた大学の卒業論文において,
人工レンズに関するポリマーの研究に対してガンマ線等の活性エネルギ
ー線を使用することに言及していること(甲32)からも裏付けられる。
このように1審原告は,811号発明等の出発のポイントを見いだし
ただけでなく,811号発明等において最も重要部分である臭素付加に
よる残存二重結合(ペンダント二重結合)の定量法による特定を見いだ
したことにより,どの程度まで前段重合を行うのかの分岐点を把握でき
るようになったものであり,さらには,マイクロ波照射の後硬化の実験
その他多数の照射実験等も行い,後硬化に関する検討を行い,811号
発明等における重要部分の創作を担い,811号発明全体に対して最も
深く関与していた。
一方,平成8年当時のFAM研究は,1審原告が中心となって行って
いたもので,Kは管理者,Lは補助者にすぎず,甲10の実施例はLに
よるものであったとしても,1審原告による指導に基づくものであり,
甲11の実施例等の実験は1審原告が行っている。
また,Kのコメントは,1審原告から聞いた話をまとめているにすぎ
ない。Dは,811号発明に関する実験を一切行っておらず,報告書(乙
40)等に名前が表示されているものが存在するというだけであり,同
人が貢献した事実は全くない。Hは,前段重合との関係を踏まえないで
後段重合の実験をしているだけであり,811号発明等への貢献と評価
されるものではないし,何らかの貢献がある場合,そこに関与した1審
原告の貢献も評価されなければならない。
さらに,前段重合と後段重合の分岐点の把握についてNが行ったとさ
れる実験(乙60)は,65℃で16時間という通常の重合条件を用い
て重合したものを用いて照射しており,このような条件で重合するので
あれば,後硬化はそもそも不要である。また,上記実験から,前段重合
の重合率が90%以下のときに後硬化処理としてエネルギーを照射する
ことが望ましいことではないとの結論を導くことは不可能であるから,
811号発明等に対するNの貢献はない。
このように1審原告以外の他の関与者の役割は部分的なものであり,
811号発明等の全体に対して,1審原告が圧倒的に関与しており,他
の者と比して格段に貢献している。なお,Mが行っていたのは,各担当
者からヒアリングしたものをまとめ,その結果をメモに記載していただ
けであり,Mのメモを根拠にMが1審原告に対して指示をしていたこと
はない。
さらに,811号発明等の筆頭発明者は1審原告であり,自ら発明届,
明細書原案を作成している。
(イ)以上によれば,811号発明等に対する共同発明者間における1審原
告の貢献度は,低く見積もっても90%以上であるから,原判決の前記判
断は誤りである。
(2)1審被告の主張
ア144号発明等について
(ア)原判決が認定するとおり,144号発明の特徴的部分の着想及びそ
の具体化の一部は既に●●●●●●行われていたのであり,1審被告に
おいて行われたのは,多数回にわたる廃水の再使用技術を完成させた点
にある。そして,多数回にわたる廃水の再使用技術であるからこそ商用
化技術として有効なのである。かかる再使用を可能としたのは,廃水中
の不純物を同定し,廃水のpHを調整する方法及び遠心分離技術による
不純物の除去技術であり,この点に大きく寄与したのはB及びNである。
1審原告は,平成10年5月頃までに,3回程度廃水を再使用してF
AMを作製するに至ったが,3回程度では,商用化技術としての廃水の
再使用技術を完成させたとはいえない。そして,1審原告は,廃水中の
不純物の同定及び除去には何ら寄与していない。
このように1審原告は,多数回にわたる廃水の再使用技術の完成に寄
与したことはなく,144号発明等の具体的課題の解決手段である不純
物の同定にも遠心分離技術の具体化にも何ら寄与することはなかった。
一方,Bは,廃水中に生じる不純物を同定し,遠心分離による不純物
の除去という解決手段の具体化のいずれにも貢献している。Bは,他の
共同発明者よりも高い貢献度が認められるべきである。
(イ)以上のとおり,1審原告以外の共同発明者が商用化技術の確立に大
きな役割を果たしたのに対し,1審原告は何ら寄与するところがなかっ
たのである。原判決の事実認定及び上述した事情からすれば,144号
発明等に対する1審原告の貢献度は4分の1よりも低く評価されるべき
であって,原判決の1審原告の貢献度評価は適切であるとはいえず,よ
り低く是正されるべきである。
イ642号発明等について
(ア)原判決の事実認定によれば,642号発明はHIPE連続重合発明
及びフィルム発明からなる発明であるところ,HIPE連続重合発明の
具体化に貢献したのは,D,E,F,G,H及びIの6名である。また
フィルム発明の具体化に主として貢献したのは,J,D,F,G及びC
の5名であり,1審原告のフィルム発明に対する貢献(ポリエチレンが
適切でないことを確認したこと)は,他の共同発明者の平均的な貢献度
よりも高いとは認められない。
そうすると,1審原告のHIPE連続重合発明に対する貢献度はなく,
1審原告のフィルム発明に対する貢献度は6分の1を超えることはない
から,HIPE連続重合発明の発明者は6名(1審原告を含まない。),
フィルム発明の発明者は6名(うち1名が1審原告)である。したがっ
て,1審原告の642号発明に対する貢献度は,少なくとも12分の1
を超えるものではないと判断されるべきである。
(イ)以上のとおり,642号発明等に対する1審原告の貢献度は,少な
くとも12分の1を超えるものではなく,9分の1よりも低く評価され
るべきである。
ウ811号発明等について
(ア)原判決は,Mが発明届等において811号発明等の共同発明者のう
ちの一人として取り扱われているとしても,Mが,811号発明等の特
徴的部分に創作的に関与したということはできず,Mが811号発明等
の共同発明者の一人であるとは認められない旨判断した。
しかしながら,Mは,平成11年3月頃にFAMプロジェクトに参加
して以降,2段重合に関し,自己の知見に基づいて実験結果を考察し,
2段重合がFAMの物性向上をもたらし得ること及び前段重合と後段重
合の分岐点をペンダント二重結合量の定量によって把握すべきことを明
らかにし,かつ,自らが分岐点の把握について分析・考察していること
(乙151ないし153)からすると,Mは,単に管理者として作業内
容を指示したものではなく,FAMの物性向上という効果を具体的に予
測しつつ,適切な分岐点での前段重合と後段重合の切り分けを具体的に
着想した上で1審原告に対してその定量化作業を指示し,かつ,自らも
分岐点把握の分析・考察をしているから,Mは,発明者としての創作的
な関与をしたものと評価されるべきである。
(イ)811号発明に対する1審原告の関与としては,マイクロ波を用い
た後硬化実験を行っていることが挙げられるが,当該実験では,圧縮強
度の改善をもたらしたことはなく,最適化の余地があるとの結論を導い
たにすぎないから,1審原告において,後硬化手段の特定に関する貢献
はない。
次に,1審原告の最も大きな貢献としては,臭素価による分岐点の定
量化が挙げられるが,定量化作業自体は公知の方法により行えば足りる
ものであるから,811号発明においては前段重合と後段重合との分岐
点の把握が重要である。しかし,1審原告は前段重合と後段重合との分
岐点の把握そのものに対する貢献はない。また,臭素価の測定手法とし
て最終的に採用されたPSDB法は,1審原告が開発したものではなく,
公知の方法であり,1審原告は1審被告の品質管理部が保管していたP
SDB法に関する文献の送付を受けて,これに基づいて検討を行ったに
すぎない。このように,PSDB法を採用したことについて1審原告独
自の寄与は大きなものではない。
一方,1審原告以外の研究員の貢献としては,Mが,実験結果を解析
した上で,分岐点の把握においてペンダント二重結合量の定量によるべ
きことを導いており,また,Nはどの程度まで前段重合を行うかについ
ての分岐点の把握について貢献があり,H及びDは活性エネルギー線の
照射実験を行っている点で貢献がある。さらに,Nにおいては,前段重
合後に30秒のマイクロ波の照射による後段重合の実験を行っている点
で貢献がある。
(ウ)以上によれば,811号発明等については,原判決が認定した1審
原告,H,D及びNに加え,Mも発明者であるというべきであり,Mは,
前段重合と後段重合の分岐点を定量化するという811号発明等の重要
な点に大きく寄与している。これに対し1審原告は公知の方法に基づき
臭素価の定量化作業を行ったにすぎないから,811号発明の完成に対
する貢献は限定的である。
したがって,1審原告の811号発明等についての貢献度は共同発明
者間の均等割相当分である5分の1を超えるものではない。
4争点4(1審原告が支払を受けるべき相当の対価の額)について
(1)1審原告の主張
ア本件各発明により1審被告が受けるべき利益額は,144号発明等,6
42号発明等,811号発明等につき,それぞれ●●●●●●●●●円(=
●●●●●●●●●●●●円×1/17.5)の合計●●●●●●●●●
●●円であること(前記1(1)),本件各発明に対する1審被告の貢献度
が多くても50%であること(前記2(1)),共同発明者間の1審原告の
貢献度が少なくとも90%であること(前記3(1))からすると,1審原
告が1審被告から支払を受けるべき本件各発明の特許を受ける権利の持
分の承継に係る相当の対価の額は,144号発明等,642号発明等,8
11号発明等につき,それぞれ●●●●●●●●●円(=●●●●●●●
●●円×(1-0.5)×0.9)の合計●●●●●●●●●円となる。
イしたがって,1審原告は,1審被告に対し,本件各発明の特許を受ける
権利の持分の承継に係る相当の対価として,●●●●●●●●●円の一部
である2100万円及びこれに対する平成29年5月17日(訴状送達の
日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を求めることができる。
(2)1審被告の主張
1審原告の主張は争う。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,1審原告の請求は,256万4950円及びこれに対する平成
29年5月17日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を
求める限度で理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1認定事実
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のとお
りであるから,これを引用する。
(1)原判決20頁22行目の「昭和63年4月に」を「昭和63年3月に大阪
大学大学院基礎工学研究科を修了して同年4月に」と改める。
(2)原判決27頁19行目の「高くなるため,」を「高くなり,油中水滴型高
分散相エマルションを形成するために多量の水が必要となるため,」と改め
る。
(3)原判決35頁15行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「また,WO-A-97-27240号公報では,HIPEの供給から重
合,さらにはスライスまでを連続して行うことのできるスライス方法につ
いては具体的な提案はなんらなされていない。したがって,本発明のさら
なる目的は,HIPEの供給,重合,およびスライスの全工程が連続工程
である多孔質架橋重合体の連続製造方法を提供することである。
発明の開示
そこで,本発明者は,上記諸目的を達成すべく,未だ提案されていない
HIPEの重合工程への供給,重合,(さらにはスライス)の全工程が連
続工程である多孔質架橋重合体の連続製造方法(以下,単に連続製法と記
す場合がある)につき,鋭意研究を重ねた結果,本発明を完成するに至っ
たものである(以上,4頁17行~26行)。」
(4)原判決43頁19行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「本発明者は,HIPE法による非常に短時間での多孔質架橋ポリマー材
料の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果,HIPEを臭素価が重合前
の25%の値以下になるまで重合させた後,活性エネルギー線の照射,ま
たは重合温度より高温で後硬化して架橋を進めることにより,十分な機械
的強度を有する多孔質架橋ポリマー材料が短時間で得られ,その吸収特性
も優れることを見出し,本発明を完成させるに至ったものである(【00
08】)。」
(5)原判決44頁9行目から10行目の「PSDB法」の次に「(後記実施例
のPSDB試薬を用いた臭素化測定の項に記載した方法)」を加え,同頁1
4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「次いで,HIPEを重合させて多孔質架橋重合体を連続的に製造する態
様の一例を,図1のフローを用いて説明する。図1に示すように,HIP
E101をHIPE供給部119から連続的にシート材203上に供給し,
回転ローラー209の設定高さ調整により所定厚みのシート状に成形する。
シート材203はコンベアベルト201と同期できるように巻出・巻取ロ
ーラーに208,212の回転速度が制御される。シート材205はHI
PE101の厚さが一定になるようにテンションをかけながら回転ローラ
ー209,211と巻出・巻取ローラー207,213により回転速度を
制御する。該コンベアベルト201の下部から温水シャワーからなる加熱
昇温手段219とコンベアベルト上方から熱風循環装置からなる加熱昇温
手段217によって,重合炉215内でHIPE101を重合させて多孔
質架橋重合体102を得る。次いで,上下のシート材203,205をは
がした後,活性エネルギー線照射装置501によって活性エネルギー線を
多孔質架橋重合体102に照射して後硬化を行う。該多孔質架橋重合体1
02’を脱水装置303の回転ロールによる搬送用コンベア302によっ
て回転するベルト上に載せ,ベルトの上下に設けた圧縮ロール301の間
に挟んでロールを回転しつつ脱水する。なお,脱水した多孔質架橋重合体
102’は連続して設けたエンドレスバンドナイフ式スライサー401に
移送させ回転するバンドナイフ402により厚み方向にスライスすること
もできる(【0015】)。」
(6)原判決47頁20行目の「同年8月28日」を「同年11月9日」と改め
る。
2争点1(本件各発明により1審被告が受けるべき利益の額)について
(1)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
(2)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
次のとおり訂正するほか,原判決52頁22行目から54頁9行目までに
記載のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決52頁22行目の冒頭に「ア」を加える。
イ原判決53頁3行目から17行目までを次のとおり改める。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●
これに反する1審被告の主張は採用することができない。
ウ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●①●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●それぞれ18.5分の1(1審被告の単独保有するもの17
件(別紙2●●●●●●●記載1ないし17)及び共有するもの3件
(●●●●●18ないし20)×0.5=1.5件の合計分の1)で
あり,②●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●それぞれ17.5分の1(1審被告の単独保有
するもの16件(原判決別紙2●●●●●●●記載1ないし11,1
3ないし17)及び共有するもの3件(●●●●●18ないし20)
×0.5=1.5件の合計分の1)と認められる。」
(3)小括
したがって,本件各発明により1審被告が受けるべき利益の額は,144
号発明等,642号発明等及び811号発明等につき,それぞれ●●●●●
●●●●円と認めるのが相当である。
(計算式・●●●●●●●●●●●円÷18.5+●●●●●●●●●●●
円÷17.5=●●●●●●●●●円)
3争点2(本件各発明がされるについて1審被告が貢献した程度)について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の3記載のとお
りであるから,これを引用する。
(1)原判決54頁23行目から55頁1行目までを次のとおり改める。
「(1)特許法旧35条3項は,「従業者等は,契約,勤務規則その他の定に
より,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を
承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対
価の支払を受ける権利を有する。」と規定し,同条4項は,「前項の対
価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明
がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければなら
ない。」と規定している。
そして,特許法旧35条3項及び4項が,従業者等と使用者等の利害
関係を調整する趣旨の規定であることからすると,同条4項の「使用者
等が貢献した程度」を判断するに当たっては,使用者等が「その発明が
されるについて」貢献した事情のほか,特許の取得・維持●●●●●●
●●●●●に要した労力や費用等を,使用者等がその発明により利益を
受けるについて貢献した一切の事情として考慮し得るものと解するのが
相当である。
これに対し1審原告は,発明完成後の事情●●●●●●●●●●●●
●●●は特許法旧35条4項の使用者の貢献度(使用者等が貢献した程
度)として評価すべきではないなどと主張するが,採用することができ
ない。」
(2)原判決55頁18行目の「にとどまる。」を「ものである。」と改める。
(3)原判決56頁1行目から2行目までを次のとおり改める。
「(3)以上で認定した事情のほか,本件各発明の内容及びその技術的意義,
本件各発明の完成に至る経過その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮
すると,本件各発明に関する被告の貢献度は,いずれも95%と認める
のが相当である。」
(4)原判決58頁10行目の「それを踏まえても,」の次に「本件各発明の内
容及びその技術的意義,本件各発明の完成に至る経過に照らすと,本件各発
明は1審原告を含む本件各発明の発明者らの創意工夫がなければ,発明の完
成に至らなかったものであり,1審被告の貢献度は,」を加える。
(5)原判決58頁11行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「(6)当審における当事者の補充主張について
ア1審原告の主張について
1審原告は,①1審被告が平成5年に研究開発していたのはアクリ
ル系のHIPEの硬化物に関するものであり,本件各発明とは関係が
なく,1審被告の貢献とはおよそ無関係であること,②1審原告は,
1審被告の上記研究開発が中断していた状況の中で,1審被告から●
●●●●●追試を行う指示やFAM研究をするような指示を受けるこ
となく,自発的に研究を行い,1審被告社内で初めて均一な網目構造
を持つW/O比の高いものを作製し,●●●●●●●●●●●サンプ
ルを作製できるまでに至ったことは1審原告の貢献として評価される
べきであり,また,FAMの開発に当たり,各種機器の導入を提案し
た1審原告の貢献についても相応に認められるべきであること,③独
立行政法人理化学研究所,国立研究開発法人量子科学技術研究開発機
構,大学,特許庁等では発明者貢献度は概ね20~50%程度とされ
ていること(甲27の1,2,28の1,2,29)からすると,1
審被告の貢献度を95%とするのは不当である旨主張する。
しかしながら,上記①については,1審被告における平成5年当時
の研究開発や平成6年4月27日出願に係る131号特許は,本件各
発明と組成や性能が異なるものの,HIPEに関するものであり,平
成8年4月19日以降の研究開発も,上記各成果を出発点としてされ
たものであるから,本件各発明についての1審被告の貢献に係る事情
に該当するというべきである。
上記②の点については,前記認定のとおり,1審原告が,独自にF
AMの研究を行っていたわけではなく,平成9年10月にFAMプロ
ジェクトが立ち上げられたことにより,1審被告による人的資源の投
入や設備投資が行われ,このことが,本件各発明の完成に貢献したと
いうべきである。他方で,前記認定のとおり,1審原告が導入すべき
機器や設備を提案していたとしても,最終的にその機器や設備の導入
を決定し,その資金を提供したのは1審被告である以上,上記提案の
存在をもって,1審原告の本件各発明に対する貢献の度合いに大きな
影響を与える事情であるとはいえない。
上記③については,1審原告が挙げる独立行政法人理化学研究所,
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構,大学,特許庁等は,専
ら研究開発を業とする研究開発機関や発明を直接の業務としない官公
庁であるから,民間の営利企業である1審被告と同列に論じることは
できない。
したがって,1審原告の上記主張は採用することができない。
イ1審被告の主張について
1審被告は,本件各発明は,●●●●●●●●●●●●●●●●●
●「最たる会社主導事業」であるFAMプロジェクトの中でされたも
のであり,本件各発明の1審原告を含む共同発明者らは,かかるプロ
ジェクトのメンバーとして,1審被告の業務命令に従って各研究開発
に従事したにすぎないこと,発明者は,給与及び身分等を保障され,
研究開発に係るリスクを負わないのに対し,使用者は事業の失敗のリ
スクを負っていることを斟酌すれば,本件各発明により1審被告が受
けるべき利益についての1審被告の貢献度は,原判決認定の95%を
優に超えるものであり,99%と認められてしかるべきである旨主張
する。
しかしながら,前記認定のとおり,1審被告の指摘する諸事情を踏
まえても,本件各発明の内容及びその技術的意義,本件各発明の完成
に至る経過に照らすと,本件各発明は1審原告を含む本件各発明の発
明者らの創意工夫がなければ,発明の完成に至らなかったものであり,
1審被告の貢献度は,95%と認定するのが相当であるから,1審被
告の上記主張は採用することができない。」
4争点3(本件各発明の共同発明者間における1審原告の貢献度)について
(1)144号発明等について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の4(1)記載の
とおりであるから,これを引用する。
ア原判決58頁14行目の「特徴的部分」を「技術的思想」と,同頁15
行目の「前記第2の1(4)」から16行目の「特徴的部分は,」までを「1
44号発明の特許請求の範囲の記載と前記1(3)アの144号特許の明細
書の記載事項を総合すれば,144号発明等の技術的思想(技術的課題及
びその解決手段。以下同じ。)は,」と,同頁23行目の「にある。」を
「にあるものと解される。」と改める。
イ原判決58頁末行の「そうすると」から59頁3行目までを次のとおり
改める。
「そうすると,FAMの商用生産技術の確立化の観点からみた144号発
明等の技術的意義は,144号発明等の実施態様として,多数回にわた
る廃水の再使用技術を完成させ点にあるものと認められる。」
ウ原判決59頁6行目及び20行目の各「特徴的部分」を「技術的思想」
と,同頁8行目の「検討する旨」を「検討すべきである旨」と改める。
エ原判決62頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「カ当審における1審原告の補充主張について
1審原告は,①1審原告は,生分解性ポリマーの研究を行っていた
こともあり,環境負荷低減に対する意識が高くFAMの実験過程にお
いて大量の廃水を生み出す状況を危惧し,FAM生産において廃水リ
サイクルを行うことを想起し,廃水リサイクルの方法について具体的
な実験計画を策定し,平成9年12月8日,●●●●技術会議におい
て,廃水リサイクルを行うことや,廃水リサイクルの具体的な実験を
今後行っていくことについてプレゼンテーションをし,平成10年1
月頃,オープンセル構造のFAMを調製することに成功し,遅くとも
同年4月頃までには,1審原告一人による創作活動の結果,3回の廃
水リサイクルを実現し,この時点で,144号特許の請求項1ないし
6,12ないし15,17記載の発明は完成したこと,②共同発明者
のBは,1審原告の補助者にすぎず,Bが同年4月から同年8月末頃
まで行った中和技術に関する実験は,1審原告の具体的な指導の下で
行われたものであり,また,Nは,Bの行う実験を一部担当したにす
ぎないし,C及びBは,遠心分離に関する実験を行ったものの,実際
の廃液を使用していないため,144号発明等とは無関係であること,
③1審原告は,144号特許の出願の願書に筆頭発明者として記載さ
れ,明細書原案を作成したことからすると,144号発明等の共同発
明者間における1審原告の貢献度は,低く見積もっても90%以上で
ある旨主張する。
しかしながら,上記①については,前記認定事実に照らすと,1審
原告一人による創作活動の結果,3回の廃水リサイクルを実現した時
点で,144号特許の請求項1ないし6,12ないし15,17記載
の発明が完成したものと認めることはできない。
次に,上記②については,前記認定のとおり,1審原告が挙げる共
同発明者のB,N及びCに関する諸事情は認めることはできない。
さらに,上記③については,1審原告が明細書原案を作成したこと
を裏付ける的確な証拠はないし,また,144号発明等に係る特許出
願において1審原告が筆頭者に記載されたからといって,そのことか
ら直ちに1審原告の貢献度が客観的にみて高いことが根拠付けられる
ものでもない。
したがって,1審原告の上記主張は採用することができない。
キ当審における1審被告の補充主張について
1審被告は,1審原告以外の共同発明者が商用化技術の確立に大き
な役割を果たしたのに対し,1審原告は何ら寄与するところがなかっ
たから,144号発明等に対する1審原告の発明者間貢献度は,4分
の1よりも低く評価されるべきであると主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,144号発明等の共同発明者間
における1審原告の貢献度は4分の1と認めるのが相当であるから,
1審被告の上記主張は採用することができない。」
(2)642号発明等について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の4(2)記載の
とおりであるから,これを引用する。
ア原判決62頁25行目の「特徴的部分」を「技術的思想」と,同頁末行
の「前記第2の1(4)」から63頁1行目の「特徴的部分は,」までを「6
42号発明の特許請求の範囲の記載と前記1(4)アの642号特許の明細
書の記載事項を総合すれば,642号発明等の技術的思想は,」と改める。
イ原判決63頁17行目の「にあるということができる。」を「にあるも
のと解される。」と改め,同頁19行目の「照らすと,」の次に「HIP
E連続重合発明について,」を加える。
ウ原判決64頁1行目の「特徴的部分の完成に関与した」を「具体化に対
する貢献の程度は高くはないもの」と改め,同頁3行目の「照らすと,」
の次に「フィルム発明については,」を加え,同頁4行目の「644号特
許」を「642号特許」と,同頁7行目の「あるもの」を「あるものの」
と改める。
エ原判決65頁21行目の「とどまり」から23行目の「いえない。」ま
でを「とどまるから,これをもって,1審原告がHIPE連続重合発明の
おおよその完成に関与したことの根拠となるものではない。」と改める。
オ原判決66頁16行目の「特徴的部分の完成についての関与を」を「具
体化に対する貢献の程度が高いことを」と改め,同頁22行目末尾に行を
改めて次のとおり加える。
「オ当審における1審原告の補充主張について
1審原告は,①HIPE連続重合発明については,1審原告は,水
平装置を用いてFAMを連続的に生産することや,HIPEを連続的
に重合することを想起し,当該着想に基づいて人工大理石の連続重合
装置を用いて行う実験計画を策定し,HIPE連続重合に用いるHI
PEを調製し,重合条件等を設定した上で,Dらの協力を得て上記装
置を用いて実験し,結果として重合物を得たものであり,上記実験の
完了により,HIPE連続重合発明はおよそ完成したものであるから,
HIPE連続重合発明は1審原告が主体となって生み出された発明で
あること,②一方,Dは,FAMに関する知識はなく,HIPEの調
製をしたこともなく,E,F,G,I,Hについては,1審原告によ
る実験の補助者か,1審原告によって概ね発明が完成した後に追加的
な実験を行った者にすぎないから,1審原告以外の他の関与者は,H
IPE連続重合発明についておよそ貢献していないか,貢献があった
としても僅かであること,③フィルム発明については,フィルム選定
の検討は1審原告の発案に基づくものであり,また,1審原告は,重
合装置のHIPEと接触する材質として適切なものを選別し,Gの実
験やJの分析にも1審原告が関与しており,当時のフィルム発明の検
討は1審原告が中心となって行われていたものであること,④一方,
D,F及びCは,フィルム発明とは無関係であり,G及びJは,1審
原告の補助者であり,1審原告以外の他の関与者は,フィルム発明に
ついておよそ貢献していないか,貢献があったとしても僅かであるこ
と,⑤1審原告は,フィルム発明に係る出願の願書に筆頭発明者とし
て記載され,フィルム発明及びHIPE連続重合発明の明細書原案を
作成したことからすると,642号発明等の共同発明者間における1
審原告の貢献度は,低く見積もっても90%以上である旨主張する。
しかしながら,上記①については,前記認定のとおり,1審原告が
HIPEの連続重合を水平方式で行うことを着想していたことを認め
るに足りる証拠はなく,また,人工大理石の連続重合装置を用いた実
験は,Dを中心として行われたものであり,HIPE連続重合発明は
1審原告が主体となって生み出された発明であるものと認めることは
できない。
次に,上記③については,前記認定のとおり,シート材を重合装置
において使用することを具体化することに貢献したのは,D,F,G
及びCであると認められる。
さらに,上記②及び④については,前記認定のとおり,1審原告が
挙げる共同発明者に関する諸事情は認めることはできない。
また,上記⑤については,1審原告が明細書原案を作成したことを
裏付ける的確な証拠はないし,また,特許出願において1審原告が筆
頭者に記載されたからといって,そのことから直ちに1審原告の貢献
度が客観的にみて高いことが根拠付けられるものでもない。
したがって,1審原告の上記主張は採用することができない。
カ当審における1審被告の補充主張について
1審被告は,642号発明等は,HIPE連続重合発明及びフィル
ム発明からなる発明であるところ,HIPE連続重合発明の具体化に
貢献したのは,D,E,F,G,H及びIの6名であり,また,フィ
ルム発明の具体化に主として貢献したのは,1審原告,J,D,F,
G及びCの6名であり,1審原告のフィルム発明に対する貢献は,他
の発明者の平均的な貢献度よりも高いとは認められないから,1審原
告の642号発明等に対する貢献度は,少なくとも12分の1を超え
るものではない旨主張する。
しかしながら,HIPE連続重合発明とフィルム発明は酸素量低減
手段という点で関連しているから,HIPE連続重合発明とフィルム
発明の双方について発明者として挙げられている者(D,F及びG)
が2倍の貢献をしたものと直ちにいうことはできないから,642号
発明等の発明者は9名とみるべきである。
そして,前記認定のとおり,642号発明等の共同発明者間におけ
る1審原告の貢献度は9分の1と認めるのが相当であるから,1審被
告の上記主張は採用することができない。」
(3)811号発明等について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の4(3)
記載のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決66頁24行目の「特徴的部分」を「技術的思想」と,同頁
25行目から末行にかけての「前記第2の1(4)及び前記1(5)アにお
いて判示したところに照らすと,811号発明等は,」までを「81
1号発明の特許請求の範囲の記載と前記1(5)アの811号特許の明
細書の記載事項(図面を含む。)を総合すれば,811号発明等の技
術的思想は,」と改める。
イ原判決67頁3行目から4行目にかけての「ものである。」を「点
にあるものと解される。」と,同頁7行目の「811号発明の特徴的
部分は,」を「FAMの商用生産技術の確立化の観点からみた811
号発明等の技術的意義は,」と改める。
ウ原判決69頁20行目の「特開平10-36411号公報(甲1
0),」を削り,同頁22行目の「(【0040】~【0044】)」
を「(特開平10-36411号公報(甲10)の【0040】~【0
044】)」と改める。
エ原判決70頁23行目の「特徴的部分」を「技術的思想」と改める。
オ原判決71頁19行目の「特徴的部分に対して具体的な関与をした
ことを」を「技術的思想を着想し,又はその技術的思想の具体化に創
作的に関与したことを」と改める。
カ原判決72頁8行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「カ当審における1審原告の補充主張について
1審原告は,①1審原告が,811号発明等の出発のポイント
を見いだした上,811号発明等において最も重要部分である臭
素付加による残存二重結合(ペンダント二重結合)の定量法によ
る特定を見いだしたことにより,どの程度まで前段重合を行うの
かの分岐点を把握できるようになったものであり,さらには,マ
イクロ波照射の後硬化の実験その他多数の照射実験等も行い,後
硬化に関する検討を行い,811号発明等における重要部分の創
作を担い,811号発明全体に対して最も深く関与していたこと,
②1審原告以外の他の関与者の役割は部分的なものであり,81
1号発明等の全体に対して,1審原告が圧倒的に関与しており,
他の者と比して格段に貢献していること,③811号発明等の筆
頭発明者は1審原告であり,自ら発明届,明細書原案を作成して
いることからすると,811号発明等の共同発明者間における1
審原告の貢献度は,低く見積もっても90%以上である旨主張す
る。
しかしながら,前記認定のとおり,811号発明等の発明者は,
1審原告,H,D及びNの4名であり,1審原告は,811号発
明等における課題の解決のいずれにも貢献し,特に,ペンダント
二重結合の定量化を行うことにより,どの程度まで前段重合を行
うかの分岐点の測定手法の部分について相応の貢献をしているこ
と,他の共同発明者も相応の貢献をしているものと認められるこ
と,特許出願において1審原告が筆頭者に記載されたからといっ
て,そのことから直ちに1審原告の貢献度が客観的にみて高いこ
とが根拠付けられるものでもないことを総合すると,原告の81
1号発明等に係る共同発明者としての貢献度は,5分の2と認め
るのが相当である。
したがって,1審原告の上記主張は採用することができない。
キ当審における1審被告の補充主張について
1審被告は,①Mは,平成11年3月頃にFAMプロジェクト
に参加して以降,2段重合に関し,自己の知見に基づいて実験結
果を考察し,2段重合がFAMの物性向上をもたらし得ること及
び前段重合と後段重合の分岐点をペンダント二重結合量の定量に
よって把握すべきことを明らかにし,かつ,自らが分岐点の把握
について分析・考察していること(乙151ないし153)から
すると,Mは,単に管理者として作業内容を指示したものではな
く,FAMの物性向上という効果を具体的に予測しつつ,適切な
分岐点での前段重合と後段重合の切り分けを具体的に着想した上
で1審原告に対してその定量化作業を指示し,かつ,自らも分岐
点把握の分析・考察をしているから,Mにおいては,発明者とし
ての創作的関与であると評価されるべきであり,811号発明等
については,1審原告,H,D及びNに加え,Mも発明者である
というべきであること,②1審原告は公知の方法に基づき臭素価
の定量化作業を行ったにすぎないから,811号発明等の完成に
対する貢献は限定的であることに照らすと,1審原告の811号
発明等についての貢献度は共同発明者間の均等割相当分である5
分の1を超えるものではない旨主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,ペンダントの二重結合自体
は,平成10年3月の時点で着目されていたのであるから,それ
までの実験成果を基に,その定量化を指示したからといって,8
11号発明等の技術的思想の具体化に創作的に関与したものと認
めることはできない。加えて,証人Mの供述(原審)中には,M
は,FAMプロジェクトにおいて,研究のマネージャーとして,
日々の研究の優先順位をつけ,進捗の管理をすることが重要なミ
ッションであり,日々の研究計画を策定し,研究員に渡して,そ
の結果のヒアリングをし,●●●●●●●●再度フィードバック
して計画を作り直す業務を行った旨の供述部分があることに照ら
すと,MはFAMプロジェクトに管理者として関与したものであ
ることが認められ,Mが811号発明等の共同発明者であると認
めることはできない。
そして,前記認定のとおり,原告の811号発明等に係る共同
発明者としての貢献度は,5分の2と認めるのが相当であるから,
1審被告の上記主張は採用することができない。」
5争点4(1審原告が支払を受けるべき相当の対価の額)について
(1)以上を前提として,本件各発明の特許を受ける権利の持分の承継に係る
相当の対価として,1審原告が1審被告から支払を受けるべき額を算定する
と,次のアないしウの各「差引額」の合計256万4950円となる。
ア144号発明等について
(ア)相当の対価の額●●●●●●●円
(計算式・●●●●●●●●●●●●●●●×0.05(前記3)×
1/4(前記4)=●●●●●●●円)
(イ)既払額●●●●円
1審原告は,1審被告の「職務発明取扱規程」に基づき,144号発
明について出願補償金及び登録補償金として合計●●●●円の支払を
受けたものと認められる。
a出願補償金●●●●円(●●●●円×2×1/4=●●●●円)
(乙114の1,2,乙129)
b登録補償金●●●●円(●●円×1/4=●●●●円)
(ウ)差引額●●●●●●●円
イ642号発明等について
(ア)相当の対価の額●●●●●●●円
(計算式・●●●●●●●●●円(前記2)×0.05(前記3)×
1/9(前記4)=●●●●●●●円)
(イ)既払額●●●●円
1審原告は,1審被告の「職務発明取扱規程」に基づき,642号発
明について出願補償金及び登録補償金として合計●●●●円の支払を
受けたものと認められる。
a出願補償金●●●円(●●●●円×1/6=●●●円)(乙12
0の1,乙130)
b登録補償金●●●●円(●●円×1/9=●●●●円)
(ウ)差引額●●●●●●●円
ウ811号発明等について
(ア)相当の対価の額●●●●●●●●円
(計算式・●●●●●●●●●円(前記2)×0.05(前記3)×
2/5(前記4)=●●●●●●●●円)
(イ)既払額●●●●円
1審原告は,1審被告の「職務発明取扱規程」に基づき,811号発
明について出願補償金及び登録補償金として合計●●●●円の支払を
受けたものと認められる。
a出願補償金●●●●円(●●●●円×1/5=●●●●円)(乙
124,131)
b登録補償金●●●●円(●●円×1/5=●●●●円)
(ウ)差引額●●●●●●●●円
(2)したがって,1審原告は,1審被告に対し,本件各発明の特許を受ける権
利の持分の承継に係る相当の対価として,256万4950円及びこれに対
する平成29年5月17日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
第5結論
以上によれば,1審原告の請求は256万4950円及びこれに対する平成
29年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限
度で理由があり,その余は理由がない。
したがって,これと異なる原判決は一部失当であり,1審原告の控訴はその
限度で理由があるから,1審原告の控訴に基づき,原判決を上記のとおり変更
し,1審被告の控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官古河謙一
裁判官岡山忠広

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