弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の申立
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人らは大野町に対し、各自金四二〇万円及び内
金三八五万円に対する昭和五二年三月二六日から、内金三五万円に対する同年四月
二三日から、それぞれ支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟
費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を
求め、被控訴人両名及び参加人は主文同旨の判決を求めた。
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示のとおりである
から、これを引用する。
一 控訴人は次のとおり主張した。
被控訴人Aは、かねてじつ懇の間柄にあり、自己の町長選挙に際し選挙参謀として
多大の貢献をした訴外Bの遠せきに当る被控訴人Cとの間で本件契約を締結し、も
つてこれに報いようとしたものである。したがつて、本件契約はその動機において
公序に反し、法律全体の趣旨に照らし許容されないものであるから、無効といわな
ければならない。このことは以下の事実から明らかである。
1 有限会社和光運送は、昭和四五年から五一年まで誠実に一般廃棄物の収集業務
を遂行してきており、その間右業務に関して和光運送に対する町民の苦情はなかつ
た(もしも苦情があつたとすれば、町当局は和光運送の代表者である控訴人に対し
注意、指導をしたはずであるが、そのようなことは全くなかつた。)。そして和光
運送はそれ相当の設備投資もしている。
ところが昭和五一年度については、突如、理由も示されずに、和光運送以外の者と
の間で委託契約が締結されたのである。
2 一方、昭和五一年度委託契約の相当方とされた被控訴人Cは、本件契約締結時
は失職中であり、廃棄物収集に必要な車両も保有していなかつたし、右業務につい
ての経験も皆無であつた。
被控訴人らの主張によれば、昭和五一年度の受託希望者は六名であつたというので
あるが、そのうちDは昭和五〇年度も希望していたものであり、Eはし尿清掃業
者、Fは運送業者であつて、いずれも被控訴人Cと比較した場合に、年齢、経験、
設備の点で優れているのであるから、仮に和光運送が不適格であつてこれを変更す
る必要があつたとしても、前年度も希望していたDらが選定されるのが道理であ
る。
少なくとも、委託業者の選定に当つては、これら希望者について詳細な事情聴取を
行うべきである。
ところが被控訴人Cは、昭和五一年二月二〇日ごろ町役場窓口に赴いて口頭で申込
みをしただけで、同年三月一八日には町長、助役及び担当課長と面接の上、契約締
結を言い渡されたというのである。このように、昭和五一年度の業者選考の手続
は、ずさんかつ不明朗なものであつた。
3 昭和五一年度の受託業者の決定過程に疑惑を抱いた控訴人らは、昭和五一年三
月三〇日被控訴人Aらと業者選考の経過について話合いをしたが、その際被控訴人
Aは、被控訴人Cを選定した旨述べただけで退席し、町民の苦情が多かつたからで
あるとは告げなかつたばかりでなく、誤解を解こうとする真しな態度を全く示さな
かつた。また、右会談の際、大野町の担当課長は、和光運送について苦情の申し出
を耳にしたことはないと言明している。
被控訴人らは本訴において、和光運送と契約しなかつたのは町民の苦情が多かつた
からであると主張しているが、右のような町側の態度は、この主張と明らかに矛盾
している。
二 被控訴人両名及び参加人は、右主張に対して次のとおり答弁した。
訴外Bが被控訴人Aの町長選挙の際、同人を支援した者の一員であること、同訴外
人が被控訴人Cの遠せきに当ること、被控訴人Cには従前廃棄物収集業務の経験が
なかつたこと、昭和五一年度の受託希望者が六名おり、その中にD、E、Fが含ま
れていること、Dが昭和五〇年度も受託を希望していたこと、Eがし尿清掃業者、
Fが運送業者であることは認めるが、その余の事実は否認する。
本件契約の締結について控訴人主張のような事実のないことは、B自身がその子G
を作業従事者として受託の申込みをしたにもかかわらず、その希望が容れられなか
つたことに照らして明らかである。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 被控訴人Aが大野町長として、被控訴人Cとの間で昭和五一年三月二四日、昭
和五一年度一般廃棄物収集委託契約(本件契約)を締結したこと、昭和五一年度の
大野町の一般廃棄物収集業務については六名の受託希望者がいたが、本件契約は随
意契約の方法により、二人以上の者から見積書を徴することなく、締結されたこ
と、被控訴人Cは一般廃棄物の収集業務の実施に関し経験を有していなかつたこ
と、被控訴人Aが被控訴人Cへの業務委託料の支払として四二〇万円の公金を支出
させたこと、控訴人は大野町の住民であるが、本件契約の締結は違法であるとし
て、大野町監査委員に対し地方自治法二四二条一項所定の措置請求をしたところ、
監査委員は昭和五二年二月一七日、本件契約に違法な点はないとしてこれを拒絶し
たことは、当事者間に争いがない。
二 控訴人は、本件契約の締結は地方自治法二三四条二項及び大野町財務規則一二
八条二項に違反すると主張する。
地方自治法二三四条の規制の対象となる「契約」とは、同条が売買、賃借及び請負
契約を例示していることからみて、地方公共団体が私人と対等の立場において締結
する私法上の契約をいうものであることは明らかであつて、いわゆる公法上の契約
を含むものではないと解される。
ところで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律六条三項に定める、市町村が一般廃
棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する行為は、市町村の固有事
務、すなわち市町村の処理すべき本来の行政事務を私人に委託するという行為であ
るから、公法上の契約であることは明らかである。したがつて、本件契約について
は、地方自治法二三四条の規定は適用されないものと解される。
これをより実質的な観点から考えてみると、地方自治法二三四条は契約締結の方法
として一般競争人札を原則としているが、これは、第一に契約事務の執行の公正を
確保し、第二に地方公共団体と契約する機会を均等に与え、第三にできる限り地方
公共団体に有利な条件で契約を締結して経済性の要請にも応えるという理由による
ものであるところ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令四条六号は、同法六
条三項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に
委託する場合の基準の一つとして、「委託料が受託業務を遂行するに足りる額であ
ること。」と定めており、廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集等の業務の公共性に
かんがみ、右の経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視しているも
のと解される。すなわち、廃棄物処理法は、最低価格の入札と契約を締結する一般
競争入札の制度とは異なる建前をとつているのである。
もつとも、地方自治法施行令一六七条の一〇は、一般競争入札において最低価格の
入札者以外の者を落札者とすることができる場合を認めており、一般廃棄物の処理
業務の委託契約についてこの規定が適用されるとすれば、委託料の額を一定額以上
のものにすることは可能であるが、右規定が適用されるのは「工事又は製造の請負
の契約」に限られており、一般廃棄物の処理業務委託契約がこれに含まれると解す
ることは困難である。
また、廃棄物処理法施行令四条一号は、受託者の資格要件として、「受託者が受託
業務を遂行するに足りる設備、器材、人員及び財政的基礎を有し、かつ、受託しよ
うとする業務の実施に関し相当の経験を有する者であること。」と定めている。こ
れに対して地方自治法施行令一六七条の五第一項は、「必要があるときは、一般競
争人札に参加する者に必要な資格として、あらかじめ、契約の種類及び金額に応
じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び
状況を要件とする資格を定めることができる。」と定めるにすぎないのであつて、
この両規定は明らかに矛盾するものといわなければならない。この点からしても、
一般廃棄物処理業務の委託契約については、廃棄物処理法及び同法施行令のほか
に、更に重ねて地方自治法二三四条及び同法施行令第五章第六節(契約)の規定が
適用されるものではないと解するのが相当である。
要するに、廃棄物処理法は、一般廃棄物の処理業務を委託する場合の基準として、
受託者の資格要件、能力、委託料の額、委託の限界、委託契約に定めるべき条項等
について詳細に規定し、右基準に則り委託業務が適切に遂行されることを予定して
いるものであつて、右基準においては契約締結の方法については何ら触れられてい
ないが、それは地方自治法二三四条の適用を前提としているからではなく、契約締
結の方法を一般競争入札、指名競争入札又は随意契約のいずれにするかは市町村の
裁量に委ねている趣旨と解するのが相当である。
したがつて、本件契約の締結が随意契約の方法によつてされたことをもつて違法と
いうことはできない。
また、成立に争いのない甲第六号証によれば、大野町財務規則一二八条は、地方自
治法二三四条及びこれを受けた同法施行令一六七条の二を更に受けた規定であつ
て、地方自治法二三四条に定める契約について、その締結方法を定める細則である
ことが明らかであるから、右財務規則一二八条も本件契約に適用されるものではな
い。したがつて、本件契約の締結について見積書等を徴しなかつたからといつて違
法ということはできない。
三 被控訴人Cが一般廃棄物収集業務の実施に関し全く経験を有していなかつたこ
とは当事者間に争いがないから、この点において被控訴人Cは廃棄物処理法施行令
四条に定める基準に適合していないことは明らかである。
しかし、この基準はあくまでもよるべき基準であるから、その一にでも適合しない
場合には一般廃棄物収集等の業務をその者に絶対に委託してはならないという趣旨
のものではないと解される。
したがつて、受託者が業務の実施に関して経験を有しないとの一事で本件契約が無
効となるということはできない。
四 本件契約の締結は、被控訴人Aの選挙運動に対する報償であるとの控訴人の主
張については、この事実を直接認めるに足りる証拠は何もないから、右主張を推認
させるような間接事実があるか否かについて検討することにする。
1 成立に争いのない甲第一号証と原審における控訴人本人尋問の結果によれば、
和光運送は昭和三七年ごろ設立され、運送業を営むことを目的とする有限会社であ
つて、昭和四五年から私的な団体である大野町衛生組合の依頼で一般廃棄物の収集
業務を始め、昭和四六年もその収集業務を続けたこと、昭和四七年度から昭和五〇
年度までは一年ごとに大野町との間で一般廃棄物収集業務の委託契約を締結し、そ
の業務を実施してきたこと、昭和五三年当時、和光運送の従業員は二四名、保有す
る車両は一七台であつたこと、もつとも右の一般廃棄物の収集業務に従事する従業
員は二名、車両は一台であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
2 訴外Bが被控訴人Aの町長選挙の際、同人を支援した者の一員であり、同訴外
人が被控訴人Cの遠せきに当ることは被控訴人らの認めるところである。そして、
原審における被控訴人Cの本人尋問の結果によれば、被控訴人CはBの妻の甥にな
るという関係であることが窺われる。更に、原審における証人Hの証言、被控訴人
Aの本人尋問の結果及び当審証人Iの証言によれば、昭和五一年度の大野町の一般
廃棄物収集業務を委託する業者の選考に当つた右A町長、I助役及びH担当課長
は、いずれもBと被控訴人Cとが親せきであることを知つていたことが認められ
る。
しかし、Bが被控訴人Aの町長選挙において、
どのような役割を果たしたのか、証拠上必ずしも明らかではない。
すなわち、原審本人尋問において控訴人は「BはA町長の有力な支持者であり、選
挙の地方参謀として奔走している。」と供述し、当審証人対Jは「Bは前回の町長
選挙において被控訴人Aの裏参謀であつた。裏参謀とは直接表に出ないで、陰で運
動員等に指示をする者である。」と証言している。また、当審証人Kは「BはA町
長の強力な支持者の一人であり、積極的に町長の選挙運動をしている者である。」
と証言している。
しかし、これらの供述中の「地方参謀」とか「裏参謀」とかいうものの実態は必ず
しも明らかではなく、Bの具体的な活動、役割は漠然としている。
かえつて、当審証人Iの証言によれば、Bは被控訴人Aの町長選挙において、公職
選挙法にいう出納責任者ではないし、少なくとも選挙運動の最高責任者といえるよ
うな地位にはなかつたことが認められる。ちなみに、被控訴人Aは原審本人尋問に
おいて、Bは多数いる有力な後援者の一人にすぎないと供述している。
以上のとおり、Bが被控訴人Aの町長選挙において極めて重要な役割を果したこと
を認めるに足りる的確な証拠はないといわざるをえない。
もつとも、原審における被控訴人Cの本人尋問の結果によれば、被控訴人Cは、本
件契約締結前から、被控訴人Aのもとへ正月に年始のあいさつに出向いていたこと
が認められる。
3 原審証人Hの証言とこれによつて成立を認めうる乙第五号証の二、原審におけ
る被控訴人Cの本人尋問の結果及び当審証人Iの証言によれば、被控訴人Cは昭和
五〇年七月までは建設会社の自動車運転手をしており、約一〇年の運転経験があつ
たが、同年八月に交通事故を起こして負傷、入院し、退院後は家業の農業を少し手
伝う程度で無職であつたこと、昭和五一年二月二〇日、保健環境課長Hの所へ出向
いて、昭和五一年度の一般廃棄物取集業務を受託したい旨口頭で申し込んだが、申
込書等は特段提出しなかつたこと、町当局は他の受託希望者からも申込書等の書類
は全く提出させていないこと、町当局は同年三月一八日に被控訴人Cを町役場に呼
び出して、町長、助役及び担当課長が面接し、受託する意思の有無を改めて確認し
たほか、業務に使用する自動車の準備が可能であるかどうかなどの点について種々
質問をした上で、同日被控訴人Cを昭和五一年度の受託者とすることを内定し、そ
の場で被控訴人Cにその旨告知したこと、右二月二〇日から三月一八日までの間
に、右の面接のほかは、被控訴人Cは町当局から何らの事情聴取、照会等を受けて
いないこと、町当局は他の希望者についても事情聴取等の調査はしていないこと、
もつとも、希望者の前科については、町役場備付の犯罪人名簿により、これを知る
ことができたこと、被控訴人Cは、右内定後に担当課長から見積書の提出を求めら
れ、三月二三日、月額委託料を三五万円とする見積書を提出したこと、右金額は三
月二四日に締結された本件契約における委託料と同一額であること、他の希望者か
らは見積書を全く徴していないことが認められる。
原審における控訴人本人尋問の結果中には、昭和五一年三月一二日(すなわち、受
託者を被控訴人Cとすることが内定する以前)、自動車会社のセールスマンが、被
控訴人Cが廃棄物の収集を始めるので、和光運送所有の車と同じものを購入したい
といつているから、自動車を見せてもらいたいといつて控訴人(和光運送の代表
者)宅を訪れたとの部分がある。しかし、原審における被控訴人Cの本人尋問の結
果によれば、被控訴人Cが自動車会社との間で廃棄物収集に使用する自動車の購入
契約をしたのは三月一九日であり、それ以前には車の購入について自動車会社との
折衡等はしていないことが認められ、この事実に照らして控訴人の右供述は採用す
ることができない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
なお、原審における控訴人本人尋問の結果によつて成立を認めうる甲第七号証に
は、昭和五一年三月三〇日に控訴人らとI助役、H課長らが昭和五一年度の一般廃
棄物収集委託契約について話し合つた際に、控訴人らが「某業者に対して、その準
備資金調達にまで関与したことに問題があると思うが。」と質問したところ、町当
局者は「新年度からゴミ処理事業ができるようにするためである。」と回答した旨
の記載があり、原審における本人尋問において控訴人は、右の甲第七号証に記載さ
れているような問答は確かに行われた旨供述している。
しかし、成立に争いのない乙第一三号証によれば、大野町当局が、町議会の議員全
員協議会に提出する資料として取りまとめた文書には、「助役は、そのような事実
は全くないと答えた。」と記載されていることが認められるし、当審証人I及び被
控訴人C(原審における本人尋問)は、いずれも、被控訴人Cが自動車の購入につ
いて大野町から資金的援助を受けるなど、便宜を図つてもらつた事実はないと供述
している。これらの証拠と対比して、前記甲第七号証の記載及び控訴人本人尋問の
結果は採用することができない。
4 成立に争いのない甲第二号証によれば、控訴人らは昭和五一年八月一八日、地
方自治法七五条に基づいて大野町監査委員に対し監査請求をしたが、その監査請求
書の「監査請求の要旨」中に、昭和五一年度の契約については四人の希望者がいた
とされているが、「これも始めから一人の契約者のためのかいらいだといわれてい
る。」との記載があることが認められる。また、原審及び当審における本人尋問に
おいて控訴人は、希望者の一人とされているEはBと縁故関係があり、Dも被控訴
人Aと縁故関係がある、Fは縁故関係はないが、同人は控訴人に対し、「自分の名
前を使つたことについては納得できないが、自分も種々の面で町の世話になつてい
るから、このことを公にする訳にはいかない。」と述べた旨供述している。
しかし、希望者とされている六人中、被控訴人C及び控訴人以外の四人がかいらい
であつたという点については他に的確な裏付けがなく、確かに六名の希望者があつ
たとする証拠として原審における証人Hの証言、被控訴人Aの本人尋問の結果及び
当審証人Iの証言があること、前記甲第二号証によれば、前記監査請求に基づく監
査の結果報告書においても六人の委託希望者があつたと認定されていることに照ら
しても、直ちにそのように断定することはできない。
5 原審における控訴人本人尋問の結果中には、「被控訴人Cの助手として廃棄物
収集の業務に従事している者が、自分は昭和五〇年八月に、五一年度は被控訴人C
が廃棄物の収集業務を担当するから、助手になつてもらいたいと頼まれていた、と
第三者に述べたということを周知している。」との部分があり、当審証人Kの証言
中にも、これと符節を合せるかのように、「控訴人は町長選挙で被控訴人Aの反対
派であつたが、昭和五〇年夏ごろから、町長選挙の後遺症ということで、今度は和
光運送が変わるんだという風評、噂を耳にしたことかある。」との部分がある(そ
して同証人は、他に特段の根拠を示すことなく、
和光運送から被控訴人Cに変つたのは、選挙の後遺症であると断言している。)。
また、当審証人対Jの証言中には、「Bがその友人に、ごみの収集は被控訴人Cが
やつているのではなく、自分がやつているのだ、と述べた旨同証人は聞いてい
る。」との部分がある。
しかし、これらはいずれも伝聞ないし風評の域を出ないものであつて、とうてい信
用に値するものではないことは多言を要しない。
6 以上検討したところによれば、和光運送は一般廃棄物の収集業務につき相当の
経験と実績を有していたのに対し、被控訴人Cは自動車の運転については経験があ
つたものの、廃棄物の収集業務についての経験は皆無であつて、その業務に使用す
る車両も保有していなかつた。そして、大野町当局が受託者を被控訴人Cと決定す
るについて行つた事前の調査は、とうてい周到なものとはいえないし、申込みから
契約締結に至る手続は形式的には必ずしも厳格に行われているとはいえない。更
に、Bは被控訴人Aの少なくとも有力な後援者の一人であり、町当局者は被控訴人
CがBの親せきであることを承知していたものである。被控訴人C自身も、少なく
ともA町長のもとへ年始のあいさつに赴く程度の間柄ではあつた。
しかし、Bが被控訴人Aの町長選挙に際し、極めて重要な役割を果たしたとまでは
認めることばできないし、町当局は昭和五一年度の契約を被控訴人Cと締結するこ
とをすでに前年夏ごろには決定し、被控訴人Cもこれを前提とする準備をすすめて
おり、他の希望者は全くのかいらいであつたとか、被控訴人Cが町当局から自動車
の購入について便宜を受けたとかいう点については、これを認めるに足りる的確な
証拠はない。
五 右に認定した事実だけを見る限り、昭和五一年度の契約を被控訴人Cとの間で
締結したことの相当性を疑わせる事実が絶無とはいえない。そこで次に被控訴人ら
が右契約を和光運送との間で締結しなかつた理由として主張する事実の有無につい
て検討する。
成立に争いのない乙第四号証、原審証人Hの証言によつて成立を認めうる乙第八号
証、原審における証人Hの証言及び被控訴人Aの本人尋問の結果、当審証人I、同
Lの各証言を総合すれば、以下の事実が認められる。
和光運送の廃棄物収集業務の実施方法についてはすでに昭和四九年度から、町民の
間に、ごみを完全に収集していかない、ごみを自動車から路上に落したまま行つて
しまう、従業員の態度が威圧的である等の苦情、不満があり、電話であるいは直接
に町の担当課等にその旨の申出があつた。昭和四九年の町議会の議員全員協議会、
あるいは昭和五〇年の町議会において、議員から町当局に対して、業者を変更する
意思はないのかという質問がされたこともあつた。
昭和五一年二月九日から同月一四日まで、大野町内の一七か所の会場において町政
懇談会が行われた。この懇談会は毎年行われているものであつて、町民の意見を町
政に反映させることがその目的であり、町長、各課長が町政の方針等について説明
をした後に、町民の質問を受け、意見、要望を聴くことにしていた。この年は町長
と助役が一七か所の会場のほぼ半分ずつを担当し、合計約四〇〇人の町民が出席し
た。そして、萩野、一本木、東前、役場等の会場において、町民の間から和光運送
のごみ収集について多数の苦情が出た。その主なものは、ごみ収集車の速度が速す
ぎる、ごみを入れた袋が破れて散らばつたごみを収集車に積載していかない、従業
員の態度が悪い等であつた。
そこで町当局は、町政懇談会終了後、和光運送のごみ収集車がごみ焼却場に到着す
る時間、すなわち作業終了の時間を調査したところ、ほぼ午前中に到着しているこ
と、すなわち午前中でごみ収集業務を終えていることが判明し、和光運送は、その
業務を処理するに当つて作業の能率のみを重視しており、それが町民の苦情の原因
ではないかと判断するに至つた。
以上の事実が認められ、右認定に反する原審証人Mの証言、原審及び当審における
控訴人本人尋問の結果は措信できない。
当審における本人尋問において控訴人は、町政懇談会において苦情があつた旨大野
町広報(乙第四号証)に発表された萩野、一本木、東前の各地区について、真実町
民の間に苦情があつたか否かを調査したところ、萩野、東前の両地区についてはい
ずれも和光運送側の責に帰すべき事由はなく、町民側の要求が不合理なものであつ
たことが判明したし、一本木地区については苦情の内容は広報記載のとおりであつ
たが、和光運送としてはそのような業務の処理をした事実はないと供述している。
しかし、この供述は、原審本人尋問における控訴人の供述と矛盾するものである。
すなわち、原審における本人尋問においては、控訴人は、控訴人らが調査した結
集、ごみ収集車に袋を持たせてもらいたいとの要望以外は、広報に記載されている
ような苦情は実際には出ていないことが判明したと供述しているのである。
また控訴人は、原審及び当審における本人尋問において、昭和五一年三月二四日に
H課長が控訴人方を訪れて、昭和五一年度の委託契約は和光運送とは締結できない
旨告げた際に、町民から苦情が出ている訳ではないし、自分としては和光運送をや
めさせる理由はないと考えていると述べた旨供述しているが、この点は原審証人H
の証言と対比して措信できない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。原審における控訴人本人尋問の結果及び
当審証人対Jの証言によつて成立を認めうる甲第八号証の一ないし六は、町政懇談
会において細入、市渡第一会館、市渡、稲里、白川、清水川の各会場ではごみ処理
についての苦情が出なかつたとするものであつて、必ずしも前記認定と矛盾するも
のではない。
次に、前出甲第二号証、乙第一三号証、原審における証人Hの証言及び控訴人本人
尋問の結果、当審証人I、同Lの各証言によれば、控訴人が昭和五一年三月二五日
に昭和五一年度の委託契約について和光運送が受託者となれなかつた理由をA町長
に問いただしたところ、同町長はその理由として、町政懇談会において町民からの
苦情が多かつたからであると述べたこと、同年三月三〇日に控訴人らと町当局者と
の話合いが行われた際にも、助役らは、和光運送に対しては従前文書での注意はし
ていないが、電話又は口頭で注意、指導をしていること、それにもかかわらず町政
懇談会において多数の町民から苦情が出ていることを明らかにしていることが認め
られる。
当審における本人尋問において控訴人は、三月二五日の町長の説明は、すでに他に
委託することに決定したから和光運送との契約はできないとの一点張りであつて、
控訴人は旅から来た流れ者であるからだめだとも述べていたと供述しているが、原
審における本人尋問においては、前記認定に沿う供述をしており、当審における本
人尋問の結果は措信できない。
また、前出甲第七号証、当審証人K、同対Jの各証言は、三月三〇日、助役は町政
懇談会において苦情が多かつたと述べたが、担当課長は、その在任中に町民の苦情
は耳にしていないし、したがつて町が和光運送に対して注意、指導をしたことはな
いと述べたというものであり、原審における控訴人本人尋問の結果中にも同旨の部
分があるが、乙第一三号証、原審証人H、当審証人I、同Lの各証言と対比して措
信できない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
そして右認定の事実によれば、町当局は、和光運送と昭和五一年度の委託契約を締
結しなかつた理由として、終始一貫して町民からの苦情が多かつたからであると述
べていたことが明らかである。
なお、控訴人は、三月三〇日の話合いの際、被控訴人Aは十分な説明をしないまま
に退席したと主張しているが、原審における被控訴人Aの本人尋問の結果及び当審
証人Lの証言によれば、A町長は当日他の公務のために途中で退席したものである
ことが認められるから、この点を非難するのは当らない。
ところで、右にみたところによれば、和光運送の業務についてはかねてから町民の
苦情があつたが、特に昭和五一年二月の町政懇談会の席上、これが表面化したこと
は明らかであり、これが和光運送と昭和五一年度の委託契約を締結しなかつた理由
であるとの町当局の説明も一貫して変わらないのであつて、このことを勘案する
と、前記四において認定した事実をもつてしても、控訴人の主張を認めるには十分
ではないといわざるをえない。
なお控訴人は、仮に和光運送が不適格であつたとしても、被控訴人Cよりも他の希
望者の方が適格であつたと主張しているが、受託業者の選定は本来町長の裁量に属
する事柄であり、被控訴人Cと和光運送以外の他の希望者とを比較して、被控訴人
Cを選定したことが著しく不合理であることを認めるに足りる証拠はないから、大
野町が被控訴人Cと契約を締結したことが違法であるとはいえない。
六 以上のとおり、本件契約が違法無効であり、被控訴人らの行為は不法行為に該
当するとの控訴人の主張は理由がないから、本訴請求はその余の点について判断す
るまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決は相当である。
よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につ
いて行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判
決する。
(裁判官 輪湖公寛 寺井 忠 矢崎秀一)
(原裁判等の表示)
○ 主文
一 原告の請求はいずれもこれを棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは大野町に対し、各自金四二〇万円と、内金三八五万円に対し昭和五二
年三月二六日から、内金三五万円に対し昭和五二年四月二三日からそれぞれ支払ず
みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
31 項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は<地名略>の住民である。
2 被告Aは大野町町長として、被告Cとの間で昭和五一年三月二四日昭和五一年
度一般廃棄物収集委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
3 本件契約はつぎの理由により違法無効である。
(一) 昭和五一年度の大野町一般廃棄物収集委託契約については六名の希望者が
存した。この場合、同町としては地方自治法二三四条二項、同法施行令一六七条の
二第一項各号の要件に該当する事由がないので、同法二三四条にもとづき競争人札
をもつて契約の受託者を決定しなければならないのにかかわらず、被告らは随意契
約の方法により本件契約を締結した。
(二) 仮に右随意契約が適法であつたとしても、大野町財務規則一二八条二項に
よれば、随意契約による場合には、契約書案その他見積りに必要な事項を指示し、
予定価格一万円未満の場合を除くほか、なるべく二人以上の者から見積書を徴さな
ければならないと定めているのに、昭和五一年度の契約に際しては六名の希望者が
いたのにもかかわらず、見積書等を徴せずに被告らは本件契約を締結した。
(三) 一般廃棄物収集を大野町が第三者に委託する場合、廃棄物の処理及び清掃
に関する法律(以下「廃棄物処理法」と略称する。)六条三項、同施行令四条の基
準によらなければならないのに、被告Aは、同施行令四条一項後段の
「・・・・・・かつ受託しようとする業務の実施に関し相当の経験を有するもので
あること」の資格要件を無視して他に経験者がいるのにかかわらず、経験のない被
告Cとの間で本件契約を締結した。
4 前項のように本件契約が違法無効であるところ、被告Cは本件契約が違法無効
なものであることを知りながら大野町に対しその業務委託料を請求し、被告Aはそ
の支払として昭和五二年三月五日までに金三八五万円の、同月二四日ころ金三五万
円の支出を命じて公金を支出せしめ、よつて大野町に対し金四二〇万円の損害を与
えたものであるから、被告らは共同不法行為者として、その賠償の責に任ずべきで
おる。
5 被告らの違法な本件契約について、原告は地方自治法二四二条一項の措置請求
をしたところ、大野町監査委員は、昭和五二年二月一七日本件契約に違法な点はな
いとしその措置を拒絶した。
6 よつて原告は大野町に代位して被告らに対し、各自右損害金四二〇万円と内金
三八五万円に対する昭和五二年三月二六日から、内金三五万円に対する同年四月二
三日からそれぞれ支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求
める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2、5の各事実は認める。
2 同3(一)ないし(三)の事実は認め、本件契約が違法無効であることは争
う。
廃棄物処理法六条三項が「市町村が行うべき一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関
する基準・・・・・・並びに市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以
外の者に委託する場合の基準は、政令で定める。」と規定したのは、市町村がその
区域内において一般廃棄物を一定の計画に従つて収集、処分することは市町村の公
共事務(いわゆる固有事務)として、その責務であるが、これをすべて市町村が自
ら処理することは実際上できないため、第三者に委託して右市町村の事務を代行さ
せることにより、自ら処理したのと同様の効果を確保しようとしたものである。か
かる趣旨にかんがみれば、市町村が一般廃棄物の処理について定めた一定の計画に
もとづいて市町村長が第三者に事務処理を委託するにあたり、その第三者を誰にす
るかは廃棄物処理法の目的と当該市町村の処理計画とに照らして、市町村がその責
務である一般廃棄物の処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどう
かという観点から、これを決すべきものであつて、原告の主張する「一般廃棄物収
集委託契約」は、地方公共団体の行政事務を私人に委託する契約として講学上「公
法上の契約」といわれ、その契約の締結についての方法と手続とは、市町村長の自
由裁量に委ねられているので、地方公共団体が私人と対等の地位において締結する
「売買、貸借、請負その他の私法上の契約」について、契約の方法、契約の相手方
の決定方法、入札保証金の帰属、契約確定の時期等を定めた地方自治法二三四条の
規定が当然適用されるものではないから、被告Aが町長として右法条に依拠しなか
つたからといつて何ら違法の廉はない。このことは、この事務が一般競争入札のよ
うに地方公共団体に最も有利な価格で申込した者と契約すれば足りるといつた性質
のものでないことは、廃棄物処理法施行令四条一項六号が「委託料が受託事務を遂
行するに足りる額であること。」と規定していることによつても理解できる。
大野町においては、昭和四七年度から昭和五〇年度までの間毎年原告が代表者であ
る有限会社和光運送と廃棄物収集委託契約を締結し、その事務を処理させたが、同
会社の事務処理の実情は、廃棄物処理法一条の目的にてらし住民サービスの徹底の
面からして必ずしも適格でないと判断されたのに対し、被告Cは、過去において経
験を有しなかつたが、その目的を十分達成しうべき設備と何よりも誠意、能力を具
有するものと判断されたので、被告Aは町長として、昭和五一年度の業務委託契約
を被告Cと締結したものであり、かつ一年間の実績は大野町の計画を円滑完全に遂
行して期待に答えたものであつたから、本件契約は町長の前記裁量権行使の正当な
範囲内にとどまるものである。
3 同4につき、被告Cが本件契約にもとづき業務委託料を請求したこと、被告A
がその支払として金四二〇万円の公金を支出させたことは認め、その余の事実は否
認する。
4 同6は争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因1、2、5の各事実および3のうち、本件契約が随意契約の方法によ
り、六名の希望者に対して事前に見積書等を徴することなく締結されたこと、およ
び被告Cは従前ゴミ収集の業務をした経験がないことは当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第一ないし第四号証、乙第一、二号証、同第四号証、同第
七号証、証人Hの証言により真正に成立したものと認められる同第八号証、被告A
本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる同第一二号証、証人Hの証
言、原告(但し後記措信しない部分を除く。)、被告A、同C各本人尋問の結果に
弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められる。
大野町では昭和四七年以前は住民が各部落毎に自主的に衛生組合を設立して部落内
のごみ等を収集しこれを町の塵芥焼却場に運び焼却等の処分をしていたが、昭和四
五年に廃棄物の処理及び清掃に関する法律が制定されたのに伴い、昭和四七年三月
二一日大野町廃棄物の処理及び清掃に関する条例を制定し、これによつて同法所定
のごみ等の一般廃棄物の収集業務を業者に委託することを決定し、同年四月一日か
らこれを実施することになつた。しかして原告が代表者である有限会社和光運送は
昭和三七年に設立されて以来、従業員二四名を擁し、且つ一七台の車両を保有して
大野町において手広く運送業を営んでいたものであり、且つ昭和四五年以降前記衛
生組合から依頼を受け車両一台をもつて一般廃棄物収集をなしてきた実績を有して
いたため、大野町は和光運送に対し随意契約の方法によつてその履行期間を翌四八
年三月三一日までの一年間と定めて右収集業務を委託した。その後、大野町と和光
運送との間で昭和五一年三月三一日まで四回に亘つて右委託契約が締結されてきた
が、その間同四八年、四九年、五〇年の各更新時には他に受託申込者が一、二名い
たにも拘らず和光運送との間で随意契約の方法によつて委託がなされ、且つ右各契
約の際和光運送から特別見積書を徴することはなかつた。ところで、和光運送の業
務については昭和四九年度までは問題はなかつたが、昭和五〇年春からごみを可燃
物と不燃物に分けて収集するように改められてから、和光運送の業務について、町
民から大野町に対し、ごみを路上に落す、ごみを完全に収集していない、ごみ収集
の態度が悪い等の苦情が電話ないし直接口頭で寄せられ、更に昭和五一年二月に実
施された萩野、一本木、東前、役場各地区の町政懇談会において住民から直接町長
ないし助役に右同様の苦情が寄せられたことから、大野町では昭和五一年二月一八
日から二六日ころまで和光運送のごみ収集業務の実態を調査したところ、ほとんど
午前中でごみ収集を終えており、非常に早く能率のみを重視していることを知つ
た。そこで町長である被告Aは、右能率重視の方法に前記苦情の原因があると判断
し、苦情を解消するためには住民の意向に沿つたサービスに徹する気持で誠実に業
務を遂行する者を受託者としなければならないと考え、昭和五一年度の一般廃棄物
収集業務委託契約を締結するに際し、受託を申し出ていたG、D、N、F、前記和
光運送、被告Cの六名について、本人の年令、本人自身が車を運転してごみ収集に
携わるか、家族の協力は得られるか、時間にこだわらずごみ収集に専念できるかの
観点から審査し、助役、保健環境課長、総務課長の協力を得て希望者らの人物、家
庭環境の資料を収集して検討した結果、和光運送は前記のとおり苦情が出ているこ
と、Nはし尿清掃業を行つていること等から除外していき、最終的に最も誠実にご
み収集業務をなしうる者として被告Cに決定した。なお、ごみ収集業務委託契約に
ついては、北海道内の九〇町村において随意契約の方法によりなされているのが実
情である。以上の事実が認められ、右認定に反する証人Mの証言、原告本人尋問の
結果は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
三 ところで地方自治法二三四条によれば、地方公共団体が第三者と契約を締結す
る場合は、その公正性と機会均等を担保するため原則として一般競争入札の方法に
よるべきこと、そして政令で定める場合に該当するときに限り随意契約等によるこ
とができる旨規定されている。そしてこれを受けて同法施行令一六七条の二第一項
に例外的に随意契約の方法によることができる場合が六項にわたつて列挙され、同
条一項二号によれば、その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しない場合
には随意契約によることができる旨規定されている。したがつて地方自治体の長に
右適否の判断がゆだねられているところ、右判断にあたつては結局住民全体の利益
又は福祉に寄与することが最終的な判断基準となるものであつて根本的にはその政
治的裁量にゆだねられているものというべきである。そうであれば、右適否の判断
の是非については通常は政治的裁量の当否の問題であつて司法判断の対象外であ
り、これが恣意にながれ右裁量権を著るしく逸脱し又はこれを濫用した場合にのみ
違法の評価を受けることになる。
ところで、本件契約は前記の如く数名の申込者があるにも拘らず随意契約の方法に
よつてなされたものであるが、廃棄物処理法施行令四条六号が委託基準として「委
託料が受託業務を遂行するに足りる額であること」と規定している趣旨に鑑れば、
委託料が低額になることにより業務の完全を期することができなくなり、住民の保
健衛生等に支障をきたす事態が予想されることから、そのような事態を阻止しよう
としたものとみられるところ、これが一般競争入札の方法によれば右法の趣旨がそ
こなわれるおそれがあるから、官商結託という一方の弊害をきたすものでない限
り、右委託契約自体は地方自治法施行令一六七条の二第一項二号に規定する「その
他の契約で、その性質又は、目的が競争入札に適しないものとするとき」に該当す
るものということができる。しかも前記認定の如く、大野町は前記委託の当初から
住民に対するサービスを第一義としてこれにこたえられる業者を競願者のうちから
独自の立場で選定し、その業者と随意契約の方法で委託してきたものであり、原告
自身右受託者の代表者であつたものであるから、結局、大野町長が随意契約の方法
によつて本件契約をなしたこと自体については、なんら違法不当な点はないものと
いうべきである。
四 次に成立に争いのない甲第六号証の大野町財務規則一二八条二項によれば、随
意契約による場合は、予定価格一万円以上の場合は二人以上の者から見積書を徴さ
なければならない旨定めていることが認められるが、この趣旨は公金の浪費、又は
不公正な出費を防止せんとするものであると考えられるところ、前掲二の各証拠に
よれば、大野町では被告Cに対する委託料金について、従前の各年度の委託料金
(昭和四七年度-月額金二〇万円、同四八年度-月額金二二万円、同四九年度-月
額金二五万円、同五〇年度-月額金三二万円)を参考として独自に算出決定し、予
算編成したうえで、被告Cに見積書を提出させたところ、ほぼ町の決定額と一致し
たので結局これを月額金三五万円と決定し約定するに至つたことが認められ、他に
右認定に反する証拠はない。右認定事実によれば、右委託料は昭和四七年度以降の
委託料の推移からみて異常に高額という訳ではなくほぼ妥当な額ということができ
るから、あらかじめ申込者から見積書を徴さなかつたという一事をもつて本件契約
を違法無効ということはできない。
五 次に廃棄物処理法施行令四条一号後段によれば、委託基準として受託者は受託
業務の実施に関し相当の経験を有する者であることと規定しているところ、被告C
にごみ収集業務の経験がないことは前記のとおりであるが、右はあくまでも基準で
あるから、右基準に適合しないからといつて直ちに違法無効の評価を下すのは相当
ではない。しかるところ、前掲二の各証拠によれば、本件契約は一般廃棄物であつ
て産業廃棄物ではなく、その収集範囲も大野町内に限られ、その業務自体もごみを
車に積みこれを焼却場まで運搬するだけの簡単な作業であつて特別の技術能力を要
求されるものではなく、現に岡被告が経験がないことによつて業務遂行に支障を来
しているとか、住民に迷惑をかけ苦情がきているとかの事情は一切ないことが認め
られるから、前記無経験の一事をもつて直ちに本件契約が違法無効ということはで
きない。
さらに前掲二の各証拠によれば、前記Gは、被告Aの町長選挙における有力な後援
渚であり、被告Cの親戚関係にあたることが認められるが、右事実のみをもつてし
ては未だ本件契約が違法な官商結託の場合ということはできず、また前記認定のと
おり助役、保健環境課長、総務課長の意見を収約して受託者を決定した経緯からみ
ても、官商結託の場合と断ずることはできない。仮に被告町長の右選定に不明朗な
点があり、原告の本件訴の主旨がこの点にあるとしても、原告の前記主張にとどま
る限りは、右選定の政治的裁量の当否の域を出ず、政治の場で解決されるべき問題
であつて司法権の判断の対象にならないのである。
六 以上の次第で、本件契約はその当否はともかく違法無効のものとは認められな
い。よつて原告の本訴請求はいずれもその余について判断するまでもなく理由がな
いからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文の
とおり判決する。

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